著者
辻 平治郎
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 人間科学編 (ISSN:13471228)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.9-18, 2004-03-18
被引用文献数
1

今までの自己意識研究では, 自己意識をもっぱら受動的なものと捉え, その能動的側面を見失っていた。これはすべての自己意識研究に共通の問題で, 私たちの研究 (Usa et al., 1990 ; 辻, 1993) もその例外ではない。Buss (1982) もプライヴェートにではあるが, 「自己について考えることは自己意識には含まれない」と述べている。しかし, こうして受動的な自己意識と能動的な自己内省を区分すると, たとえば自己自身にかかわる侵入思考, 悩みや心配 (worry) として現われる自動思考, 坂本 (1998) のいわゆる自己没入などが「自己意識」の範疇に入り, 内省や瞑想, 自己の問題解決過程としての心配, あるいは森田の「思想の矛盾」の原因となる思想などは「自己内省」に入ることがわかる。それゆえ, これらを区別することによって, 臨床的にはより精緻な理解と研究が可能になると期待できる。そこで, 私たちは自己意識と自己内省を分化して測定できる「自己意識・自己内省 (SCSR) 尺度」を作成しようと考え, 試行錯誤の末にほぼ満足の行く尺度を完成させることができた。このSCSR尺度を辻 (1992) の完全主義尺度, Wells (1998) のAnTIと Meyer ら (1990) のPSWQとともに88人の女子大学生に実施して, 因子分析したところ, SCSR尺度は, (1)公的自己意識, (2)私的自己意識, (3)自己内省, の3因子に分化し, その因子的妥当性は確認された。AnTIとPSWQについては, 因子分析すると, 前者は「一般的心配」と「健康の心配」に, 後者は「心配の常在」と「心配へのとらわれ」に分化した。そこで, これらの尺度の因子間相関を検討し, 心配を基準変数として, 自己意識, 自己内省, 完全主義を説明変数とする重回帰分析を行った。その結果, AnTIの「一般的心配」とPSWQの「心配の常在」の間には高い相関があり, どちらにも完全主義の不完全性回避と公的および私的自己意識が有意な影響を与えていることがわかった。しかし各変数の影響力は異なり, 心配の常在には私的自己意識がより強く関与していることが明らかになった。また, 「健康の心配 (心気症的な心配)」には自己意識も自己内省も関与していなかった。さらに「心配へのとらわれ」に対しては, 自己意識と自己内省は逆方向の影響を及ぼしており, 自己意識は心配へのとらわれを強めるのに対して, 自己内省はこれを弱めて, 心配へのとらわれを少なくすることが明らかになった。これは能動的な自己内省と受動的な自己意識を区別することの必要性を支持するデータといえよう。ただし, この結果だけを見ると, 受動的な自己意識は不健康につながり, 能動的な自己内省は健康につながると見られるかもしれない。しかし能動的な自己内省も, 上記のように思想の矛盾などの問題を生じる可能性が考えられる。したがって, これらの問題についてはさらに検討を進めていく必要がある。最後に本研究の問題点について考えると, この研究結果はリーズナブルではあるが, 被検者が女子大学生に限定され, その数も88人に過ぎないという問題がある。SCSR尺度も因子的妥当性や内的整合性は認められたものの, 並存的妥当性や予測妥当性については検討されていない。再検査信頼性も確かめる必要がある。また心配の尺度も, 原尺度には信頼性や妥当性が認められていても, 翻訳によって変化が生じている可能性も十分考えられる。実際, 因子構造には違いが認められた。したがって, 今後被検者の範囲と数を増やし, 追跡調査をしていかねばならない。ところで, 文脈は少し異なるが, 最近杉浦 (2003) は心配を能動的なものと受動的なものに分けて研究を進めている。彼は問題解決のために能動的に開始した心配が, いつの間にか制御困難になって, 受動的なものになっていく過程を, 共分散構造分析によって見事に明らかにしている。その重点の置き所は本研究とは異なるが, ここには私たちの研究と共通の狙いを見ることができよう。本研究では自己意識と自己内省を区別して測定できることがわかったので, 今後は杉浦の研究などとも関係づけながら, さらに研究を進めていきたい。また, この理解を治療にも生かしていきたいと考えている。
著者
深野 淳 水内 保宏 辻田 忠弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.78, pp.47-54, 2004-07-30
参考文献数
9
被引用文献数
1

NHK「新日曜美術館」が17世紀オランダの画家フェルメ?ル作「絵画芸術」の来日を記念して、そのモチ?フを再現する企画をした。このモチ?フに用いられている透視図法(遠近法)や神秘的な雰囲気を作り出している要因、部屋や人物等のサイズの推定に関しての調査が我々に依頼された。我々は絵画を科学的に分析することで、透視図法や当時の資料を元にしたモチ?フのサイズを推定し、またこの絵画の神秘的な雰囲気を心理的に分析した。この番組は2004年6月6日に放送されている。「絵画芸術」は、フェルメ?ル作品の中でも代表作の一つに挙げられている。また、フェルメ?ルは幾何学的透視図法やカメラオブスキャナなどの当時としては最新の絵画技法を用いた画家であり、構図に関しても緻密な計算の上に決定されている。「絵画芸術」を透視図法の観点から分析し、消失点・遠隔点を割り出し、17世紀に壁に使われていたタイル(一辺12.8cm)から床のタイルの長さを27.1cmと推定し、これらに基づきモチ?フに用いられている部屋や人物の大きさ、位置関係を割り出した。さらに、他のフェルメ?ル絵画や当時使われていた机、椅子等の資料を元に、「絵画芸術」で描かれている部屋の再現を行った。Cerebrating the arrival of "The Art of Painting" painted by Vermeer, Japanese TV broadcasting station NHK attenmpted to reproduce its motif in their TV program named "Shin-Nitiyo-Bijutsukan". In order to make an accurate guess about the size of the people and the interior, NHK requested us to do a research. This program was on the air on June 6th of 2004. "The Art of Painting" is one of the masterpieces of the work of Vermeer. Vermeer has left splendid pictures representing the shading of light as well as Rembrandt by using such scientific techniques as the camera of a scanner, perspective, and so on.
著者
山根 克 中村 仁彦 山本 知孝 辻 省次
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

1.神経筋骨格モデルおよびそのための順・逆動力学計算法の開発と神経医療における知見を基にした検証と改良従来の筋骨格モデルに比べて極めて詳細(155自由度の骨格と約1000本の筋)な筋骨格モデル,および脊髄神経から筋までの神経-筋ネットワークをモデル化した神経筋骨格モデルを開発した.また,体性反射や筋ダイナミクスなど生理学的な知見をもとに高精度な筋張力推定アルゴリズムを開発した.2.計算・シミュレーション結果の可視化と低次元化による診断・リハビリテーション支援への応用計測された運動データ,計算された筋張力などを三次元モデルやグラフとして可視化し,神経筋疾患の診断やリハビリテーションを支援するツールを開発した.また,多次元のデータを低次元化して容易に理解できるように提示する技術を開発した.3.神経筋骨格モデルパラメータを非侵襲に同定する手法の開発骨格モデルの運動学・質量パラメータ,関節粘弾性パラメータ,筋モデルパラメータ,神経-筋ネットワークパラメータを,非侵襲な運動・筋電計測データのみにより同定する手法を開発した.4.新しい非侵襲運動計測システム技術の提案従来の球状マーカを用いた光学式モーションキャプチャに代わる運動計測システムのプロトタイプを開発した.具体的には,平面状のメッシュマーカを用いて計測点数を増加するとともに安全性を高めた方法と,カラー画像を用いてマーカレスに運動とトポロジーの取得を同時に行う方法を実現した.
著者
川端 二功 辻 智子
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.55-60, 2011
被引用文献数
2

魚肉ソーセージは魚肉タンパク質を高含有する食品である.実験動物において魚肉タンパク質は血中の総コレステロール,LDL-コレステロール,中性脂肪を低下させることが報告されているが,ヒトにおいて魚肉タンパク質が血中コレステロール値を改善するかどうかについては明らかではない.本研究では,空腹時血中 LDL-コレステロールが 140&ndash;179 mg/dL の男性 20 名を被験者とした.各被験者に一日当たり 225 g の魚肉ソーセージを 8 週間摂取させた.摂取させた魚肉タンパク質は一日当たり 13.5 g に相当する.結果,魚肉ソーセージの摂取により,摂取後 4 週又は 8 週において血中の総コレステロール,LDL-コレステロール,動脈硬化指数は有意に減少し (<i>P</i> < 0.01, <i>P</i> < 0.05, <i>P</i> < 0.01),HDL-コレステロールは摂取後 4 週及び 8 週に有意に増加した (<i>P</i> < 0.01).投与期間中,副作用は特に観察されなかった.これらの結果より,魚肉タンパク質を含有する魚肉ソーセージの反復摂取は高コレステロール血症患者のコレステロール値を改善させる可能性が考えられた.<br>
著者
岡野原 大輔 辻井 潤一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.90, pp.59-64, 2008-09-17

本稿では,全ての部分文字列が素性として利用される文書分類モデル,及びその効率的な学習,推定手法を提案する.文書分類に有効な部分文字列は,単語と異なる場合や,署名やテンプレートなど,非常に長くなる場合が少なくない.しかし,部分文字列の種類数は文書長の二乗に比例するため,それらを素性として直接用いて学習することは,計算量的に困難だった.本稿では,テキスト長に比例する個数のみ存在する極大部分文字列に関する統計量を扱うことで,有効な部分文字列を漏れなく求めることができることを示す.また,拡張接尾辞配列を用いることで,これらを効率的に列挙可能であり,全文書長に比例した時間で学習可能であることを示す.さらに L1 正則化を適用することで,コンパクトな学習結果が得られ,高速な推定が可能であることを示す.このモデルは,形態素解析結果や TF/IDF などの統計量と組み合わせられることを示し,従来の単語ベースの Bag of Words 表現と比較し,精度が向上することを示す.This paper presents a novel document classification method using all substrings as features. Although an effective substring for a document classification task is often different from tokenized words, the number of all candidate substrings is the quadratic of the length of a document, and a learning using all these substrings as features requires a prohibitive computational cost. We show that all effective substrings can be computed exhaustively by checking only maximal substrings, which can be enumerated in linear time by using enhanced suffix arrays. Moreover, we use L1 regularization to obtain a compact learning result, which makes an inference efficient. We show that many prior weights (tf, idf, other tokenized result) can be included in this method naturally. In experiments, we show that our model can extract effective substrings, and more accurate than that of word-base BOW representation.
著者
岡本 信一 平岡 英一 辻井 幸雄 古田 純一郎
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.59-65, 1983-12-15 (Released:2017-01-16)

Neutron radiography was used for examination of the inner parts of a pearl as one of non-destructive methods. The neutron radiography is similar to the radiography by X-rays and gamma-rays from the radio-isotopes such as Co-60, Ir-192, and Yb-169. Thermal neutrons are used for neutron radiography. The mass absorption coefficients of water and organic materials for thermal neutrons are extremely larger than those of other pearl materials (CaCO_3, MnCO_3, ……). The neutron radiographs of blue and black pearls are compared with their X-rays and gamma-rays radiographs. The former are better and sharper than the latters. The exposure methods for photographic detection of neutron imaging are described in this paper.
著者
辻野 功
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.53-84, 1975-01-31

論説
著者
アンスコム[著] 大辻 正晴[訳]
出版者
熊本大学
雑誌
文学部論叢 (ISSN:03887073)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.115-137, 2013-03-10

A Japanese translation of G.E.M. Anscombe, "The First Person", an important article on the topic of the self. Anscombe argues that if "I" is a name it requires a conception, i.e. a way of being given, of the object referred to, through which "I" refers to the I, but that we can find no such conception. Then she points out that "I" can make no reference failure although such regular referring expressions as names and even demonstratives can ones, and concludes that "I" is no referring expression, there being no such thing as the self. Anscombe goes on to say that "I am E.A." is then not an identity proposition, but that it implies the verificational relation between her I-thoughts, such as "I am standing", etc., and her body. Finally she asserts that I-thoughts are unmediated, "subjectless" conceptions about that body which one is.
著者
斉藤 宗則 和辻 直 篠原 昭二
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.31-46, 2007-02-01 (Released:2008-05-23)
参考文献数
6

【目的】五更泄は寅卯時 (朝3~7時) にのみ出現する慢性の泄瀉であるが、その時間的概念や病機については諸説があり、その定義や概念は統一されていない。そこでこれらを明確にするため文献調査を行った。【方法】『中華医典』を用いて「五更泄」「五更瀉」「腎泄」「腎瀉」をキーワードとして検索し、書籍でその記述内容を確認したものを時代ごとに並べた。次に、五更や時辰という時間の概念、五更泄の病機と証候、五更泄の発症時間と病機、五更泄の名称、五更泄と痢疾、五更泄と現代医学といった視点から考察を行った。【結果】その結果、「五更泄」は31冊37件、「五更瀉」は12冊14件、「腎泄」は91冊216件、「腎瀉」は38冊74件であった。五更泄は12世紀中頃に腎の病とされた「腎泄」を源とし、その後病機が漸増し、「腎泄」の時間が子時 (23時~) まで拡大された。病機には腎陽虚、酒積、寒積、食積、肝乗脾土、少陽気虚、?血などがあった。【考察】五更泄と腎泄は共通する部分が多いが、その主たる病機の違いを述べると、五更泄は五更に肝・少陽の旺盛や火が生じることによって生じ、腎泄は子時に腎水が旺盛になることで子時から卯時に泄瀉が起きると考えられる。これらの症状の発現と時間帯との関連には疑問が残った。一方、名称については16世紀後半には五更という時間帯が強調されているが、腎泄の発症時間が亥子まで含まれたため、五更泄という名称が主とならなかった可能性がある。
著者
久保 順子 辻 慶太 杉本 重雄
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.15-31, 2010-02-26 (Released:2010-04-04)
参考文献数
28
被引用文献数
1

コンピュータを使用した専門用語自動抽出は,従来,対象とする専門分野のテキストコーパスのみをデータとして行っているものが多かった.しかし,専門用語の特徴として,対象分野のコーパスに頻出し,対象分野以外の他分野コーパスにはあまり多く出現しない点が挙げられる.そこで本研究では,対象分野コーパスと他分野コーパスとの用語の出現率の差を考慮した手法を提案する.実験では,女性学のテキストを対象分野のコーパスとして使用し,他分野のコーパスとして39分野のテキストを使用した.実験の結果,従来の代表的手法よりもかなり高い精度で用語が抽出できることが明らかとなった.また39分野のテキストから任意のテキストを選び他分野コーパスとして用いてコーパスの規模を縮小できるか実験を行った.その結果,対象分野と類似した分野のテキストを用いることで,39分野すべてのテキストを用いた場合の抽出精度・再現率に近づけることができた.
著者
末田 聖倫 池永 雅一 安井 昌義 宮崎 道彦 西塔 拓郎 三嶋 秀行 平尾 素宏 藤谷 和正 中森 正二 辻仲 利政
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.205-209, 2010 (Released:2011-04-25)
参考文献数
7
被引用文献数
2 1

当院はHIV/AIDS先端医療開発センターであり,HIV感染者を手術する機会も多い.症例1は54歳,男性.スプレー缶を自ら肛門内に挿入し,抜去不能となり当院を受診した.用手的排出は不可能であり,緊急手術を行った.全身麻酔下,砕石位でE式開肛器とL字鉤を用いてボトルの蓋を確認し,ミュゾー鉗子で蓋を把持し,異物を摘出した.異物は直径5cm,長さ15cmのスプレー缶であった.術後4日目に退院した.症例2は49歳,男性.夜間に肛門から上肢を挿入後,下腹部痛が出現し,症状増悪したため当院を受診した.腹膜刺激症状があり,腹部X線検査でfree airを認め,消化管穿孔に伴う急性汎発性腹膜炎と診断し,緊急手術を行った.腹膜翻転部より口側5cmの直腸前面に裂創を伴う穿孔部位を認め,ハルトマン手術を施行した.術後14日目に退院した.自慰行為による直腸異物は時にみられ,穿孔所見があれば緊急開腹術も必要になる.直腸異物の2例を経験したので報告する.
著者
辻上 弘
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.46-54, 2002-03-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
18
被引用文献数
4 3

オゾンは強力な酸化作用を有する気体で, その殺菌効果は様々な分野に応用されている。現在, 医科領域では, 末梢血液循環障害, 潰瘍, ウィルス感染症等の治療にオゾンが用いられている。本研究は, 歯周組織由来細胞ならびに歯周病原細菌に対するオゾン治療の影響について検索し, 歯周治療におけるオゾンの有用性を明らかにすることを目的とした。オゾン水処理後の歯周組織由来平面培養細胞に対する細胞傷害性はFDA-PI二重染色法を用いて評価した。浮遊細胞に対しては, オゾン水処理後6時間培養し, 付着した細胞数により評価した。歯周病原細菌および歯肉縁下プラーク細菌に対する殺菌効果はオゾン水処理後, 平板培地に塗抹し発現したコロニー数を計測することにより評価した。その結果, オゾン水による細胞傷害性は, 平面培養細胞に対しては軽微で, 浮遊細胞において著明に認められた。また, 5%ウシ胎仔血清含有ダルベッコ変法イーグル培地 (DMEM) はオゾン水による細胞傷害性を減弱した。これらのことは細胞外基質, またDMEMの含有する血清や有機物がオゾンの傷害に対し抑制的に働くことを示唆するものと考えられる。またオゾン水による殺菌効果は, 歯周病原細菌に対して著明に認められ, 食物残渣や細菌産生物質を多く含む歯肉縁下プラーク中の細菌に対しても, 濃度依存的に効果が認められた。以上のことからオゾン水の歯周治療における有用性が示唆された。
著者
内山 奈穂子 鎌倉 浩之 政田 さやか 辻本 恭 細江 潤子 徳本 廣子 丸山 卓郎 合田 幸広 袴塚 高志
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
pp.17-00136, (Released:2017-07-19)
参考文献数
14
被引用文献数
2

In January 2017, counterfeits of the hepatitis C drug 'HARVONI® Combination Tablets' (HARVONI®) were found at a pharmacy chain through unlicensed suppliers in Japan. A total of five lots of counterfeit HARVONI® (samples 1-5) bottles were found, and the ingredients of the bottles were all in tablet form. Among them, two differently shaped tablets were present in two of the bottles (categorized as samples 2A, 2B, 4A, and 4B). We analyzed the total of seven samples by high-resolution LC-MS, GC-MS and NMR. In samples 2A, 3 and 4B, sofosbuvir, the active component of another hepatitis C drug, SOVARDI® Tablets 400 mg (SOVARDI®), was detected. In sample 4A, sofosbuvir and ledipasvir, the active components of HARVONI®, were found. A direct comparison of the four samples and genuine products showed that three samples (2A, 3, 4B) are apparently SOVARDI® and that sample 2A is HARVONI®. In samples 1 and 5, several vitamins but none of the active compounds usually found in HARVONI® (i.e., sofosbuvir and ledipasvir) were detected. Our additional investigation indicates that these two samples are likely to be a commercial vitamin supplement distributed in Japan. Sample 2B, looked entirely different from HARVONI® and contained several herbal constitutents (such as ephedrine and glycyrrhizin) that are used in Japanese Kampo formulations. A further analysis indicated that sample 2B is likely to be a Kampo extract tablet of Shoseiryuto which is distributed in Japan. Considering this case, it is important to be vigilant to prevent a recurrence of distribution of counterfeit drugs.

4 0 0 0 OA ネット理論

著者
太田 淳 辻 孝吉
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.4_56-4_67, 2009-04-01 (Released:2011-05-01)
参考文献数
29
被引用文献数
2

ペトリネットはコンカレントシステムの重要なモデルの一つである.ペトリネットはチューリング機械と有限オートマトンの中間のモデル化,解析能力を持つ.ペトリネットの構造を限定することで,解析が容易となるサブクラスが得られる.一方,ペトリネットに拡張を加えることで,チューリング機械と等価なモデル化能力を持つ拡張クラスが得られる.本稿ではペトリネットの解析問題,サブクラス,拡張クラスに関して近年の研究成果の例を示しながら概説する.