著者
辻 憲男
出版者
神戸親和女子大学
雑誌
親和國文 (ISSN:02879352)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.1-25, 1997-12-01

醍醐寺本『諸寺縁起集』所載の淡海三船撰「大安寺碑文一首并序」の本文翻刻と略注。後に付録として、『文選』所収の「頭陀寺碑文一首」の本文を掲げた。
著者
辻 泰岳
出版者
Architectural Institute of Japan
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.79, no.704, pp.2291-2298, 2014

This paper investigates the 1966 exhibition "From Space to Environment," held at Matsuya Department Store in Tokyo, Ginza, involving the architects Isozaki Arata and Hara Hiroshi. This exhibitions subtitle was "Synthesized Exhibition of Painting + Sculpture + Photo + Design + Architecture + Music," which was instrumental in introducing the terms Intermedia and Environment Art (<i>Kankyo geijutsu</i>) to Japan. This paper examines the exhibition installations studying primary sources and clarifying the formation of the collective named Environment Society. This paper analysis the impact generated by the topic of "Environment" seen through a different point of view rather than the one of art movement establishment of the time.
著者
辻本 臣哉
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.92-95, 2019

<p>This paper studies the <i>Hosshinshū</i>, <i>Shasekishū</i> and <i>Tsurezuregusa</i> in relation to Tendai <i>hongaku</i> philosophy. The following results are obtained. Firstly, the <i>Hosshinshū</i> is not affected by Tendai <i>hongaku</i> philosophy. Its stance detests this impure world and encourages seeking rebirth in the Pure Land. The <i>Shasekishū</i> has the idea that everyone can reborn in the Pure Land. However, it does not contain the idea that this real world is a manifestation of Buddha. Finally, the <i>Tsurezuregusa</i> accepts the real world. It finds the truth in the real world and might be affected by Tendai <i>hongaku</i> philosophy.</p>
著者
黒髪 恵 今辻 由香里 佐久間 良子 有田 久美 皿田 洋子
出版者
医学書院
雑誌
看護教育 (ISSN:00471895)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.831-836, 2007-09-25

はじめに 人間が「泣く」ことの意味は,心理学的には,感情の蓄積を浄化するために泣くカタルシス理論がある。また,相手の反応に対して行動で反応し欲求を満たすという行動理論と,過去の記憶によって同じような事象が起こると泣くという認知理論からも説明されている。つまり,人間にとって「泣く」ことは,情動表出の一つの行動であり,情緒安定のために必要な行動であるといえる。 看護学生は臨地実習中,「泣く」ことが多いように思える。指導者に聞くと,泣く場面には一貫性はなく,優しい言葉をかけても,厳しい言葉をかけても,挨拶をしただけでも「泣く」ことがあるということであった。学生は18歳以上であり,発達段階から考えても,安易に「泣く」ことは考えにくい。したがって,看護学生の「泣く」行動には,何か意味があるのではないかと考えられた。 看護学生の臨地実習中に「泣く」ことに関する過去の研究で,寺本1)は,学生が泣く意味は,患者?学生関係の悩み,学生自身の課題,臨床指導者の非教授活動であったと述べている。しかし,これは教育者を対象にした調査であり,看護学生が「泣く」に至る構造は明らかにされていない。 そこで今回,学生を対象にどのような場面で泣いているのか,学生が「泣く」ことの裏にどのような心理的構造が潜んでいるのかを調査することで,臨地実習での効果的な指導方法を得ることができると考えた。
著者
田中 誠二 安居 拓恵 辻井 直 西出 雄大
出版者
独立行政法人農業生物資源研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

サバクトビバッタは混み合いに反応して、行動や形態、体色などを著しく変化する相変異を示す。ふだんは個体数が少なく、単独生活を好む習性があり、孤独相とよばれている。大発生すると群生相化して、体色は黒化し、集団で行進したり群飛して作物を食い荒らす群生相になる。本研究は、群生相化の刺激要因を特定し、相変異のメカニズムの解明を目指すのが目的である。孤独相幼虫の体色は緑などの薄い色だが、混み合いを経験すると黒くなる。この刺激として、視覚が重要な役割を果たしており、ビデオでバッタの集団を見せると、黒化することが分かった。
著者
田中 由美 宮田 正和 児玉 直樹 辻 貞俊
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.49-54, 2001-01-01

片側性の眼瞼下垂を主徴とし重症筋無力症が疑われたが転換性障害による偽性眼瞼下垂と診断された患者を2例経験したので報告する.1例目は23歳女性, 四肢脱力と左眼瞼下垂の主訴で受診.2例目は33歳女性, 右眼瞼下垂と右半身感覚低下の主訴で受診した.2例ともエドロフォニウム試験は陰性, 抗アセチルコリン受容体抗体陰性であり, 神経学的にも明らかな異常は眼瞼下垂以外には認められなかった.仕事上のストレスで症状の増悪が認められ, 最終的に転換性障害と診断した.転換性障害の眼症状としては, 複視, 視力低下, 注射麻痺などが知られているが, 偽性眼瞼下垂の報告例は海外で5症例と少ない.転換性障害の発症前や, 症状の増悪時には, 心理的要因が関与していることが多く, 神経学的所見や検査所見に矛盾点がある場合には, 発症前の心理社会的背景を把握するなど心身医学的なアプローチが必要であると考えられた.
著者
辻 貞俊
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1003-1005, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

片頭痛とてんかんは一過性発作性脳疾患であるため,関連が議論されている.国際頭痛分類第3版では,てんかん発作と関連する頭痛として,片頭痛てんかん,てんかん性片側頭痛,てんかん発作後頭痛があり,関連性は複雑でかつ双方向性であるとしている.ミグラレプシーの多くは後頭葉てんかんの症状といわれている.国際抗てんかん連盟のてんかん分類には頭痛関連てんかんはない.複雑部分発作後に拍動性頭痛発作を呈する症例は,臨床的には前兆のない片頭痛と区別ができないてんかん発作後頭痛であった.片頭痛とてんかんの病態には類似性があり,大脳皮質細胞の過興奮性や遺伝要因などの共通性もあり,今後の研究の進展が期待される.
著者
塚田 久恵 石垣 和子 辻村 真由子 都筑 千景 金川 克子
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.77-88, 2013-03

韓国における保健所の機能と公衆衛生における看護職の役割について現地調査及び文献検討をした.韓国の公衆衛生は,日本と同様,保健所を中核施設として始まり,発展してきた.日本の保健所が主な対人支援機能を市町村に移管し,企画調整や指導研修機能に転換したのに対し,韓国では今日でも保健所が診療機能の保有,保健支所の配置,農漁村では看護職が保健診療員として一次医療を担っている.一方,韓国は,急激な高齢化と,生活習慣病の増加により国民医療費が急増している.そこで,国民健康増進法,地域保健法を制定し,保健所機能の拡大,地域保健を担う看護職の専門化に取り組んできた.さらに,2010年から保健教育を担う保健教育師の養成を開始し,2012年8月には地域保健法改正案を立法予告して保健所の機能を再編強化する方針を打ち出している.今後,韓国の保健所において,企画調整,情報管理などが法的に付加されることにより,益々機能が強化されると考える.(著者抄録)
著者
福井 里香 梅本 雅彦 辻 勲 塩田 充 星合 昊
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.293-297, 2004 (Released:2004-09-30)
参考文献数
14

患者は19歳の未婚女性で,0経妊0経産.14歳時に腟内にプラスチック製の約12cmの棒状異物を挿入された.問診上,挿入された経緯については不明であった.19歳時パートナーができたため,腟内異物抜去希望にて他医産婦人科受診した.他医にてMRI検査の結果,腟内異物の直腸内への穿孔が疑われたため当院を紹介された.当科において大腸内視鏡検査を行い,後腟円蓋部から直腸上部への穿通が確認された.入院後は中心静脈栄養を開始し,術前1週間の絶食の後,全身麻酔下にて経腟的に異物抜去を試みた.異物は長径約12cmのプラスチック製のアイスクリームの棒であった.先端部位が直腸内に穿通しており,中間の傘の部分が後腟円蓋にとどまって肉芽に包埋されていた.術後は31日間絶食とし,注腸造影により造影剤の漏出のないことを確認した後,経口摂取を開始した.本症例はその後性交可能となり,妊娠,出産に至った. われわれが検索しえた治療目的以外の腟内異物により瘻孔を形成した報告例は自験例を含めて10例であった.その内訳は膀胱腟瘻6例,直腸腟瘻3例,尿道腟瘻1例である.年齢は20歳未満が6例と半数を超えている.挿入動機が成人では自慰目的やいたずらであることが多いのに対して,年少者では不明であることがほとんどである.本症例は5年間放置されていたが,他の直腸腟瘻形成例はいずれも4年間放置されていた. 今回われわれは5年間放置され直腸腟瘻を形成した腟内異物を経験した.また加療後性交可能となり妊娠,出産に至った稀有な症例を経験したので報告した.〔産婦の進歩56(3):293-297, 2004(平成16年8月)〕
著者
中辻 小百合
出版者
国立音楽大学
雑誌
音楽研究 : 大学院研究年報 (ISSN:02894807)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.17-32, 2011

本稿は、湯浅譲二(Joji Yuasa, 1929-)によるテープ音楽作品《ヴォイセス・カミング Voices Coming》(1969)における創作意図を探ることを目的とするものである。曲は全3曲から構成され、あらかじめ録音された発話言語が主な音響素材として用いられているが、第1曲目〈テレ・フォノ・パシィTele-phono-pathy〉では電話交換手と通話希望者とのコミュニケーションにおける言葉が、続く第2曲目〈インタビュー Interview〉においては発話されたセンテンスの中から抜粋された間投詞と接続詞の部分が、そして第3曲目〈殺された二人の平和戦士を記念して A Memorial for Two Men of Peace, Murdered.〉では浅沼稲次郎(Inejiro Asanuma, 1898-1960)とマーティン・ルーサー・キング(Martin Luther King, 1929-1968)牧師による演説の中の言葉が選択されている。本稿では、まず曲毎に、使用素材の言語的特性について検討を試みた結果、この作品においては、発話の意味内容と直接的に関わる部分、つまり意味論的側面が主たる問題とされているのではなく、第1曲目においては言語コミュニケーションにおける交話的機能としての側面が、第2曲目では言語の美的・芸術的な部分すなわち吉本の論じる自己表出的側面が、第3曲目においては音響的なヴァイオレンスとしての側面が問題とされていることが明らかになった。曲中では、会話の文脈から切り離された素材の新たな再配置によって、個々の素材の個別的・具体的特性がクローズ・アップされる一方、言語自体の持つ記号性や意味性が希薄となるのである。また、同じ語句によるカノン等の対位法的配置によって、詩における押韻の手法に似た効果が生み出されることで、言語の詩的側面が浮かび上がり、ある種の詩的な空間が作り出される。湯浅がこの作品で最終的に目指していたことは、言語の意味内容を音楽によって表そうとする従来の芸術歌曲やオペラの声の在り方を根本から問い直し、発話言語における指示的側面を排除した上で、音響的側面や自己表出的側面、交話的機能としての側面に焦点を当て、それらを詩的形式によってではなく、あくまで作曲家の立場から音楽芸術作品として、音楽的かつ詩的に再構成することにあったと結論付けた。続いて、本作品が《問い Questions》(1971)、《演奏詩・呼びかわし Performing Poem Calling Together》(1973)、《天気予報所見 Observation on Weather Forecasts》(1983)といった言語コミュニケーションに関わる声の作品群の中でどのように位置付けられるのかを探るべく、各作品を比較検証した結果、本作品はこれらの作品群の発端として位置付けられることが明らかになった。今後は、これらの作品毎の特性をより明確にし、流れを整理した上で、湯浅にとって言語コミュニケーション系列の作品とはいかなるものであるのかを検討していくことが求められる。
著者
海老原 孝枝 大類 孝 海老原 覚 辻 一郎 佐々木 英忠 荒井 啓行
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.448-451, 2007 (Released:2007-09-06)
参考文献数
3
被引用文献数
2

Angiotensin converting enzyme (ACE) inhibitor plays an important role not only as an antihypertensive drug but also for prevention of various complications related to geriatric syndrome. Pneumonia in the disabled elderly is mostly due to silent aspiration of oropharyngeal bacterial pathogens to the lower respiratory tract. Aspiration is related to the dysfunction of dopaminergic neurons by cebrovascular disease, resulting in impairments in both the swallowing and cough reflexes. ACE inhibitor can increase in the sensitivity of the cough reflex particularly in older post-menopausal women, and improvement of the swallowing reflex. In a 2-year follow-up study in stroke patients, patients who did not receive ACE inhibitors had a higher risk of mortality due to pneumonia than in stroke patients who were treated with ACE inhibitor. Moreover, the mortality of pneumonia was significantly lower in older hypertensive patients given ACE inhibitors than in those treated with other antihypertensive drugs. On the other hand, we found a new benefit of ACE inhibitor on the central nervous system. The mortality in Alzheimer's disease patients who received brain-penetrating ACE inhibitor was lower than in those who received other antihypertensive drugs. In a 1-year follow-up study, cognitive decline was lower in patients receiving brain-penetrating ACE inhibitors than in patients receiving a non-brain-penetrating ACE inhibitor or a calcium channel blocker. Brain-penetrating ACE inhibitors may slow cognitive decline in patients with mild to moderate Alzheimer's disease. ACE inhibitor might be effective for the disabled elderly, resulting in the prevention of aspiration pneumonia and Alzheimer's disease for the elderly.
著者
植木 琢也 平岡 俊也 大澤 美代子 黒川 理加 塚本 佐保 辻 恵子 矢野 実穂 横島 由紀 萩原 章由 松葉 好子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11585, (Released:2019-09-25)
参考文献数
47

【目的】回復期リハビリテーション(以下,回リハ)病棟における脳卒中患者の身体活動量を生活活動度計により定量的に評価し,入院時と退院時における変化や自立歩行の可否による相違を明らかにすること。【方法】当院回リハ病棟に入院した脳卒中患者169 名を対象とした。対象に生活活動度計を連続24 時間装着し,回リハ病棟入院時および退院時における身体活動量(歩行・立位・車椅子駆動・座位・臥位の各時間)を測定した。24 時間,日中,理学療法中,作業療法中の各時間帯別に入院時と退院時の比較,歩行介助群と自立群との比較を行った。【結果】退院時,歩行や立位の時間が増加する一方,臥位の時間は減少した。歩行や立位の時間は介助群で短い傾向にあった。【結論】回リハ病棟入院中の脳卒中患者の身体活動量は入院時と比べ退院時には増加する。一方で歩行自立に至らない患者の立位歩行時間は相対的に短く,身体活動量の確保に向けた方策の検討が必要である。
著者
金子 俊之 河本 高伸 菊池 弘恵 塩田 真夫 弥武 経也 飯野 久和 辻 啓介
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.245-254, 1993-04-15 (Released:2010-04-23)
参考文献数
18
被引用文献数
3

イソマルトオリゴ糖の摂取が, 腸内環境と便通に及ぼす影響を明らかにするために, 腸内Bifidobacteriumを増殖させる有効量である1日10gもしくは15gを有志健常人に摂取させて検討した. 試験期間は5週間で, 1週目は摂取前, 2~3週目は摂取, 4週目は摂取休止, 5週目は再摂取とした.1) 1日10gの摂取により, Bifidobuterium菌数及び占有率の有意な上昇, Lactobacillus菌数の有意な増加, Bacteroidaceae占有率の有意な減少, Clostridium出現の抑制など, 腸内フローラが改善された.2) 同時に, 糞便pHは有意に低下し, 短鎖脂肪酸は増加傾向を, 腐敗産物は減少傾向を示すなど, 腸内環境が改善された. しかも, 試験の後半ほど効果が著しいことから, より長期の摂取が効果的であると考えられた.3) 摂取前の排便回数が少ない (3回/5日以下) 便秘傾向者では, 用量依存的 (10gと15g/日) に便通が改善された. しかも, 下痢などの重篤な副作用は伴わなかった.4) 相関係数の検定より, 糞便に含まれる酢酸は, 腸内環境及び便通の改善と密接な関係を持つと考えられた.
著者
辻 貞俊
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1400-1406, 2016-08-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
9

てんかん発作に起因する交通死傷事故の発生により,運転免許制度が改正され,「道路交通法の一部を改正する法律」および「自動車運転死傷行為処罰法」が施行された.改正点は,一定の症状を呈する病気等に該当するかの判断に必要な質問票の虚偽の報告者に対する罰則および医師による届出に関する規定の整備である.さらに,特定の病気等の影響で正常な運転に支障を来たし,交通死傷事故を起こした場合の罰則(新類型)が強化された.医師にも患者にも法律の遵守が求められている.
著者
岩永 希 原田 康平 辻 良香 川原 知瑛子 黒濱 大和 和泉 泰衛 吉田 真一郎 藤川 敬太 伊藤 正博 川上 純 右田 清志
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.478-484, 2016 (Released:2016-10-30)
参考文献数
21
被引用文献数
11

症例は25歳女性.2013年6月前医で原発性シェーグレン症候群と診断.2014年7月発熱,著明な炎症反応,全身リンパ節腫脹,肝脾腫を認め前医に入院.抗生剤(ceftriaxone,meropenem)を投与,ステロイドを増量(PSL 50mg)するも無効で,急速に進行する全身浮腫を認め当院へ転院.リンパ節生検では好中球浸潤を認め,骨髄穿刺では巨核球増加と線維化を認めた.minomycinを併用したところ,発熱・全身浮腫・炎症反応は徐々に改善したが,貧血・血小板減少を認めていた.感染症を疑いステロイドを減量したところ,再び発熱,浮腫・胸腹水の出現,血小板減少・貧血の増悪を認めた.ステロイドパルス,ステロイド再増量を行うも治療抵抗性で,cyclosporin(CyA)を併用し軽快した.典型的なリンパ節の病理像を認めなかったが,本症例の臨床像はTAFRO症候群と酷似していた.TAFRO症候群は,Castleman病の一亜型と考えられているが,感染,リウマチ性疾患,悪性腫瘍などによる高サイトカイン血症により二次的に生じ得るとされている.本症例では原発性シェーグレン症候群を背景に発症し,化膿性リンパ節炎様のリンパ節病理像を認めた点が興味深いと考え報告する
著者
村上 三郎 中島 三恵 吉田 裕 橋本 大樹 辻 美隆 大久保 雄彦 浜田 節雄 平山 廉三
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-6, 2004 (Released:2009-06-05)
参考文献数
32
被引用文献数
6 3

血液透析治療中に繰り返し発症した宿便性大腸穿孔症例を経験したので,文献的検討を加えて報告する.症例は76歳,女性.慢性腎不全にて血液透析治療を受けている.3年前に宿便性S状結腸穿孔にてHartmann手術を施行されている.今回,突然の腹痛が出現し再入院となった.腹部X線写真および腹部CTで,freeairおよび多数の宿便を認め,宿便性大腸穿孔の再燃と判断し緊急手術を行った.S状結腸に穿孔を認め,その近傍に宿便を認めた.前回のストーマ造設部に新たなストーマを造設してHartmann手術を行った.水分摂取の制限を要した血液透析患者で宿便性大腸穿孔が発症したことを考えると,圧迫壊死という物理的因子以外に便塊表面の粘稠度の充進や腸粘液分泌減少などによって便塊が大腸粘膜へ強固に付着すること,さらに,それに続く大腸壁の局所循環血流障害などが本疾患の発症に関与している可能性がある.