著者
木元 広実 守谷 直子 酒井 勝 辻 容子 木村 智信 佐々木 啓介 鈴木 チセ 川口 孝泰
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.1-7, 2017 (Released:2017-04-22)
参考文献数
20

著者らはLactococcus lactis H61の摂取により,春季,冬季におけるヒトの肌の状態の改善(乾燥の抑制等)を報告している。本研究では夏季におけるH61株の当該効果を調べるために,被験食品として,一般的なヨーグルト用たね菌で製造したヨーグルト(標準ヨーグルト),これにH61株を加えて発酵させたヨーグルト(H61ヨーグルト)を用い,二重盲検にて2013年6月上旬からこれらのいずれか85g/日を健康な中高年層の女性(22名:40歳~74歳)に4週間摂取させ,摂取前後及び摂取終了1ヶ月後に,頬及び前腕の水分量,頬の油分量,血管年齢を測定した。ヨーグルト摂取終了後,摂取終了1ヶ月後に肌の状態(17項目),体調(22項目)について自己評価をさせた。その結果,両方のヨーグルト群で,摂取4週間後に頬及び前腕部の水分量,頬の油分量が増加し,ヨーグルト摂取終了1か月後でこれらの値が低下する傾向が見られた。摂取ヨーグルトの違いは肌の機器分析項目,血管年齢に影響を及ぼさなかった。ヨーグルト摂取終了後,終了1ヶ月後の肌の状態,体調のカテゴリーにおける自己評価では,調査時期によらずいずれの項目においても改善度合いに両群で有意な差は認められなかったものの,摂取終了1ヶ月後でH61ヨーグルト群のみで,肌,体調の評価が高くなる傾向が得られた。自己評価の効果の数値化の検討も含め,今後サンプルサイズを大きくし,摂取期間を長くして夏季におけるH61株の効果を検証する必要がある。
著者
佐藤 妙子 沼 玲子 阿部 正彦 酒井 隆
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.72, pp.53-54, 2019-12

鶏ムネ肉に多く含まれるイミダゾールジペプチドは、運動能力の向上や疲労回復効果により機能性成分として注目されている。また、核酸関連物質のイノシン酸は、鰹出汁のうまみ成分として知られている。そこで、福島県産市販鶏ムネ肉の流通促進を目的として、鶏節を想定した乾燥品を試作し、鶏ムネ肉の機能性成分とうまみ成分を測定した。
著者
小堀 真珠子 雨宮 潤子 酒井 美穂 白木 己歳 杉下 弘之 坂上 直子 星 良和 柚木崎 千鶴子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.408-415, 2006-08-15 (Released:2007-09-14)
参考文献数
24
被引用文献数
6 6

We previously demonstrated that bitter gourd (Momordica charantia L.) ethanol extract induced apoptosis in HL60 human leukemia cells. To examine the effect of different bitter gourd cultivars on cancer cell growth, we determined the effect of nine bitter gourd cultivars grown in Miyazaki prefecture on the growth of HL60 cells. Although growth inhibitory effect of seed extracts was stronger than that of pericarp or placenta extracts, all the extracts inhibited the growth of HL60 cells at concentrations of 25-200μg/ml. The extracts of pericarp, placenta and seeds of bitter gourds cultivars induced apoptosis in HL60 cells after 24h incubation.Suppression of inflammatory responses is expected to reduce inflammatory disease and development of cancer. Therefore, we determined the effect of the major bitter gourd cultivar ‘Sadowara 3’ on the bacterial lipopolysaccharide (LPS)-induced TNFα production from RAW264.7 mouse macrophage-like cells. Placenta extract inhibited the TNFα production induced by LPS ; however, it did not have any effect on the growth of RAW264.7 cells. The bitter gourd placenta is suggested to possess the suppressive effect on inflammatory responses.
著者
森 美加 馬渕 麻由子 酒井 佳永 安田(鹿内) 裕恵 岩満 優美 飯嶋 優子 日高 利彦 亀田 秀人 川人 豊 元永 拓郎
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.132-145, 2013-07-15 (Released:2017-01-26)

女性が多数を占める疾患である関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis : 以下,RAとする)患者がどのような心理的支援を望んでいるのか,そのニーズを調査し,さらに,RA患者に対するサービスのあり方を検討し,ニーズに合わせた支援プログラムを提案することを目的として,2011年2月から8月,RAに罹患し医療機関にて治療を受けているRA患者で,研究参加に同意した20名(女性18名,男性2名)を対象として,調査票および面接による調査を行い,面接の逐語記録の文書データをグラウンデッドセオリーアプローチを参考にして分析した.その結果,電話相談,ホームページ,メール相談,個別心理相談,心理教育,セルフケアグループすべての支援に対してニーズがあり,特に電話相談(必要時),個別心理相談(通院先),心理教育のニーズは顕著であった.そこで,個別心理相談,心理教育を中心とした,チームによる包括的なケアシステムがRA患者のQOLを高めるためには有効なのではないかと考えられる.また,心理教育のテーマとしては,確定診断時においては,(1)病気の具体的な説明,(2)身体的ケア,(3)心理的ケア,(4)療養上の工夫が,生物学的製剤開始時においては,(1)効果と副作用を中心とした具体的説明,(2)自己注射について,(3)費用について,(4)生物学的製剤を使用する上での不安と期待についてが,家族向けとしては,(1)病気の説明,(2)RA患者の心理について,(3)家族へのケアが考えられる.さらに,不安の受容と変化を併せ持った心理療法的チームアプローチであるDBTを参考にした包括的ケアシステムの開発は,不安と安心の間で揺れ動くRA患者の心理的ケアのモデルとして有効であり,また,RA患者の長期的Quality of Lifeを最大にすることを治療目標とするT2T(Treat to Target)の有効性に繋がるのではないかと考えられる.
著者
原 昭壽 中島 義仁 浅野 博 味岡 正純 酒井 和好 長内 宏之 桑山 輔 石濱 総太 坂本 裕資 大高 直也 小川 隼人 坂口 輝洋 村瀬 洋介
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.468-474, 2014

78歳男性. 2004年10月に洞不全症候群に対して左前胸部にAAIペースメーカを留置された. 2005年11月に植え込み部位の発赤を認めたため当院外来を受診した. ペースメーカ感染がまず考慮されたがバイタルサインや血液検査上は感染兆候認めず, 腕時計装着部の皮膚発赤から金属アレルギーを疑われた. ペースメーカ本体による接触テストを施行したところ接触部位の発赤が出現し, ペースメーカアレルギーと診断された. 対側への再植え込みに際し, 組織との接触防止のためリード・本体をpolytetrafluoroethylene (PTFE) シートで被覆して植え込みを行った. その後7年間発赤・腫脹などのトラブルなく経過した. バッテリー消耗により, 平成24年11月に電池交換を施行した. 術中所見としては, PTFE周囲は繊維性被膜に覆われおり, 滲出液などの感染やアレルギー反応を示す所見は認めなかった. 洗浄後にPTFE内に新規本体を収納し, 不足分を新規PTFEで被覆して閉創した. ペースメーカアレルギーへの対策として有効であったが, 感染リスクが今後の課題と考えられた.
著者
ヴォイチェフ ヤストシェンボフスキ:ポーランド語原本 ダヌータ コルデツカ:復刻版編集者 テレサ バウカ-ウレヴィチョヴァ:英語訳 斉藤 進:日本語訳 松田 文子:日本語訳 酒井 一博:日本語訳
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.189-219, 2012 (Released:2014-07-25)
被引用文献数
1

人間工学のルーツは,1857年にポーランドの科学者ヤストシェンボフスキが,ギリシャ語に由来するエルゴノミクスを「働くことの科学」として造語したことに遡る。人間工学の誕生である。ヤストシェンボフスキは,エルゴノミクスの概念を1857年発行の「自然と産業」誌にポーランド語で発表した。ポーランド労働保護中央研究所では原典を英訳し,「エルゴノミクス概説-自然についての知識から導かれる真理に基づく労働の科学」として,国際人間工学連合と米国人間工学会大会が2000年に併催されたときに記念出版した。歴史的に重要な書籍の復刻版を日本語で公開することに対し,快諾頂いたポーランドの英語版編集者ダヌータ・コルデツカ労働保護中央研究所長に感謝する。
著者
宇野 雄博 湯本 哲夫 片桐 麻紀子 金刺 祐一朗 藤田 桂一 山村 穂積 佐藤 常男 酒井 健夫
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.401-404, 2005-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
13

市販フードを主食とする平均年齢10.5カ月齢 (6カ月~1歳4カ月齢) の猫4例に, 黄色脂肪症を認めたので, 給与食餌との関連について検討した.発症猫2例に給与されていた2種類の市販フードの分析では, 推奨量のビタミンEが含有されていたが, 療法食メーカーの成猫用フードに比べて, リノール酸の含有率が低く, ドコサヘキサエン酸の含有率が高く, ω3系の比率はω6系に比べて高かった.次に, 健康な成猫2頭に, 発症猫に給与していたフードを70日間給与したところ, 血中のアラキドン酸, エイコサペンタエン酸, ドコサヘキサエン酸の濃度が著しく高く, ω3系の比率はω6系に比べて高くなった.以上, 推奨量のビタミンEが含有されていても, リノール酸含有率が低く, 高度不飽和脂肪酸含有率が高く, ω3系の比率がω6系に比べて高い飼料を継続給与すると, 黄色脂肪症を発症する可能性があると考えられた.
著者
山田 博之 川本 敬一 酒井 琢朗 片山 一道
出版者
日本人類学会
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.435-448, 1988
被引用文献数
3

クック諸島住民について歯の大きさを計測し,その結果をクック諸島内ならびに周辺諸地域の集団の間で比較検討した。資料として,クック諸島のラロトンガ,マンガイア,プカプカで採取した4歳から20歳までの男女397名の全顎石膏模型の中から,男性146個体のものを選んで用いた.計測は,上下顎の中切歯から第2大臼歯までの歯冠近遠心径&bull;頬舌径について1/20mm副尺付ノギスで行った。資料は両親あるいは祖父母の出生した島にしたがい次の6群に分類した.プカプカ群,N-S群(北島グループと南島グループの混血),ラロトソガ群,マンガイア群,S群(南島グループのうちラロトンガとマンガイアを除いたもの),混血群(ヨーロッパ人との混血)である。また周辺地域との比較では,クック諸島民をプカプカ群,混血群,南クック群(上記6群のうちプカプカ群と混血群を除いたもの)に分けて行った.集団比較にはマハラノビス距離を用い,これにもとついてクラスター分析,正準座標分析を行った.<br>その結果,クック諸島の中では,プカプカと南島グループの間で歯の大きさに有意差が存在し,とくにプカプカとマソガイアの間では28項目中8項目に有意差がみられた.しかし,南島グループの中では歯の大ぎさにほとんど差違は認められなかった.混血群もプカプカとの間に4項目で有意差が認められたが,南島グループとはあまり差を示さなかった.周辺地域との比較では,クック諸島とポリネシアン&bull;アウトライアーのタウマコは1つのサブクラスターを形成し,ハワイージヤワのサブクラスターと比較的近い関係を示した.一方,ニューギニアとブーゲソビルのメラネシアグループは異なった1つのクラスターを形成した.このメラネシアグルーフ.のクラスターには中央オーストラリアの原住民も含まれた(図4,5).<br>今回の結果では,歯の大きさに関してオセアニア地域では大きく分けて2つのクラスターが存在することが示された.一方はジヤワを含をポリネシア地域の集団からなり,他方はメラネシア地域のものであった.ここにみられた"dichotomy"はオセアニア地域での生体ならびに歯冠の形態特徴の結果とよく一致した.
著者
柴崎 大地 酒井 充 丸山 博
雑誌
第80回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.165-166, 2018-03-13

本稿では,音楽ゲームの譜面を自動生成する方法を提案する.音楽ゲームとは,リズムや音楽に合わせて画面に表示される指示に従って,プレイヤーがボタンを押したりすることで,得点を獲得するゲームである.音楽ゲームにはプレイヤーに指示するアクション等の情報(ノート)を記述した譜面が使用される.譜面を自動生成するプログラムはすでに開発されているが,生成された譜面に対するプレイヤーの評価は良いとは言えず,現状ではほとんど人間が作った譜面がプレイに使用されている.本研究では,人間が作った譜面と楽曲の波形をもとにニューラルネットワークの学習を行い,その結果を用いて譜面を生成する方法を提案し,有効性の検討を行う.
著者
酒井 奈緒美 森 浩一 小澤 恵美 餅田 亜希子
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.107-114, 2008-04-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

吃音者は変換聴覚フィードバック (AAF) 条件下で発話すると吃音が減少することが知られており, 特に遅延聴覚フィードバック (DAF) は訓練で利用されてきた.一般に訓練効果の日常への般化は困難であるため, 近年は日常で使用できる小型のAAF装置が開発されているが, その効果は主観的データや訓練室内のデータによって報告されているのみである.そこでわれわれは日常場面での耳掛け型DAF装置の客観的効果判定を目指し, DAFの即時効果がある成人1症例に対して, 約4ヵ月間電話場面で装置を適用した.その結果, 発話速度と吃頻度の低下が観察され, 日常場面における耳掛け型DAF装置の有効性が客観的に示された.また主観的評価からも, 回避傾向, 発話の自然性などの側面における改善が報告された.さらに4ヵ月間の使用後, 装置を外した条件下でも吃頻度の低下が観察されたことから, 一定期間の装用効果はcarry overする可能性が示唆された.
著者
酒井 佑士 外山 康平 戸田 偉 川谷内 哲二
出版者
金沢大学附属高等学校
雑誌
高校教育研究 (ISSN:02875233)
巻号頁・発行日
no.72, pp.7-18, 2021-03

数学科多くの学校でそうであったように,本校にとっても,2020年度はこれまでとは異なる方法での学校教育が求められた年であった。コロナ禍による2ヶ月の休校,2週間の分散登校を経て,3学年揃って通常登校が始まったのは6月15日であった。この間,学びを止めないように取り組んできた独自HPや金沢大学LMS(Learning Management System)を用いた授業動画やプリント教材の提供,Web上での確認テスト,ビジネスチャットslackでの質問対応について記したい。再度の感染拡大や自宅待機への備えとしたい。
著者
西 英二 田代 幸寛 酒井 謙二
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.559-565, 2017

<p>現在の犯罪捜査において,ヒトDNA型鑑定は多くの事件に活用され,犯人の特定や犯罪事実の証明に欠かせないものとなっている.しかし,いまだに解決できないさまざまな問題があり,昨今のあらゆる種類の犯罪に対応できていない.しかしながら,人体に存在する微生物叢を網羅的に解析するヒトマイクロバイオーム解析の発展に伴い,微生物を法科学分野にも利用する動きが見られるようになった.このヒトDNA型鑑定とは異なるアプローチによって,現在の法科学分野のさまざまな問題点を克服できる可能性がある.つまり,従来の一般の鑑定手法では有効な情報を得ることができなかった資料について,そこに存在する細菌叢を利用して個人の異同識別が可能であることがわかってきた.</p>
著者
水野 俊哉 小笹 芳央 酒井 穣
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.10, no.13, pp.54-57, 2011-07-19

実はビジネス書のマーケットは歴史が浅いんですよ。ドラッカーやカーネギーが出てきた時代が、はしりでしょう。でも、その後は長い空白がある。マネジメントやリーダーシップの本も、あくまで経営者の教養であって、普通のビジネスパーソンには縁が浅かった。 それがバブル崩壊以後、不況が本格化したのを機に、一般の人たちがビジネス書、リーダー本を多く読むようになった。
著者
藤谷 晃亮 善家 雄吉 山中 芳亮 目貫 邦隆 酒井 昭典
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.409-412, 2014-09-25 (Released:2014-11-11)
参考文献数
5

広範囲長管骨骨欠損に対して,Masquelet法(M法)を用いて良好な治療成績が得られた2症例を経験したので報告する.【症例1】34歳男性.高所から飛び降りて右下腿骨開放骨折(Gustilo II)を受傷.広範囲な骨欠損を認めたがM法とプレート固定を施行.9ヵ月後骨癒合は良好で独歩可能である.【症例2】66歳女性.左大腿骨骨幹部骨折後,不適切な固定により偽関節となり当院に紹介された.M法と髄内釘固定を施行.3ヵ月後骨癒合が認められ,屋内独歩可能である.【考察】M法では1st stageから6~8週後に2nd stageを行うべきとの報告が多い.しかし,induced membraneは1st stage後4週で活性と骨形成マーカーが最大になり,8週後には著しく低下するため2nd stageは4週後に行うべきであるとの新しい報告も見られる.症例2は4週後に2nd stageを行ったが経過良好であり,2nd stageまでの期間は4週間に短縮できる可能性がある.
著者
松田 賢一 片山(池上) 礼子 東 成美 酒井 賀乃子 中野 眞一 玉村 壮太 早川 隆宏 伊達 彩香 高居 恵愛
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.29-38, 2020
被引用文献数
2

<p>36本の5年生'ルビーロマン'ポット栽培樹を用いて,満開後54日目(ベレゾーン以降の13日目)から収穫(満開後90日)までの間,満開後54~63日(54日区),63~72日(63日区),72~81日(72日区)と81~90日(81日区)の4つの生育ステージに分け,全日光環境制御型温室で9日間の低温処理(昼28°C/夜20°C)を行った.低温処理以外の期間は高温室(昼35°C/夜27°C)で育成した.また,全期間(満開後54~90日)に低温(低温区:昼28°C/夜20°C)と高温(高温区:昼35°C/夜27°C)の両対照区も設けた.低温処理後の果房の着色の変化は,63日区が最も大きく,その次が72日区であった.収穫果粒の着色は,低温区が最も濃く,54日区と高温区が最も薄かった.このことから,'ルビーロマン'では,満開後63日から80日の間は低温に対する感受性が高いことが示唆された.遺伝子発現解析の結果,低温区より高温区の<i>VlMybA1-2</i>,<i>VlMybA1-3</i>の発現レベルが高かった.一方,63日区と72日区の<i>VviF3′H</i>と<i>VviF3′5′H2</i>の発現が低温区と高温区よりも有意に高かった.これらの結果から,成熟後期の温度変化に起因する'ルビーロマン'果粒のアントシアニン蓄積量の増減は,<i>VIMybAs</i>の発現の量的変化によりもたらされたのではなく,別の制御要因が関与する可能性が示唆された.</p>