著者
鈴木 康史
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.21-39, 2016-10-05 (Released:2017-10-05)
参考文献数
44

本研究は、明治時代の野球史を〈遊〉と〈聖〉という視点で再検討しようとするものである。 明治初期に、西洋伝来の「遊戯」として日本に紹介された野球は、「体育」に取り入れられることとなるが、しかし、こうした〈遊〉の「快楽」の利用に対して、もう一つの〈遊〉の世界があった。 日本に野球をはじめて持ち帰った平岡熙は「遊芸」好きの人物である。彼によって始まった日本の野球は当初は江戸的な「遊芸」と同じ〈遊〉なる地平に置かれることになる。だが時代がすすむにつれ、こうした江戸的な心性が消え、〈遊〉の禁欲化が始まる。その例をわれわれは正岡子規に見ることができる。子規は野球の「愉快」を屈託なく語った人物として名高いが、その背景には平岡の「遊芸」的な世界のうち「酒色」にまつわる部分を不健全として禁欲する、そのような〈遊〉の世界の分割が確認できるのである。 こうした〈遊〉の禁欲化はさらに第一高等学校において進められる。そこにおいては「武士道野球」が発明されることになるが、明治20 年代には、まだ野球はその「愉快」さで価値づけられており、武士道化が始まるのは、明治30 年代に入ってからである。今回はその始まりを一高の校風論争に確認した。剣道部の鈴木信太郎がはじめて「武道」(そこには野球も「新武道」として含められている)による「精神修養」と「武士道振起」を語るが、それは〈遊〉が〈聖〉なる苦行の手段として位置づけられるという事態であった。 それに対して、明治末に「武士道野球」を語った押川春浪は、少し異なった場所にいる。春浪は野球を「武術」化して「精神修養」せよと語るが、しかし彼のスポーツ実践はこうした禁欲的な修練のたまものではなく、むしろ一瞬一瞬を面白く遊ぶものであった。彼はそこで武士的な実践を模倣することで武士の精神を体現する。これは「世俗内禁欲」としての〈聖〉なる武士道野球に対する対抗的な〈遊〉ぶ身体なのである。
著者
鈴木 康裕 中田 由夫 清水 如代 田邉 裕基 新井 良輔 羽田 康司
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.38-46, 2019-03-31 (Released:2019-06-14)
参考文献数
25
被引用文献数
2

目的:本研究は,ボートレーサーの競技成績(勝率)をアウトカムとし,年齢,性別,体重および動的バランス能力との関連性を横断的に検討することを目的とした。方法:研究対象者は日本モーターボート選手会に所属する137名のボートレーサー(年齢24~69歳,平均40.2±8.2歳,BMI 19.5±1.0 kg/m2)である。2016年5月~2017年4月に行われたレース結果の勝率をアウトカムとした。2016年6~10月に動的バランス能力の指標として,閉眼片脚立位時間と重心動揺計を用いた姿勢安定度(modified index of postural stability; mIPS)を評価した。勝率と年齢,性別,体重および動的バランス能力との関連については,強制投入法による重回帰分析を行った。結果:重回帰分析の結果,勝率は体重およびmIPSと有意に関連していた(p < 0.001)。一方,年齢,性別,閉眼片脚立位時間については,関連因子としての有意性は認められなかった。結論:ボートレーサーの競技成績は,年齢,性別,閉眼片脚立位時間とは関連せず,体重と動的バランス能力と関連することが示唆された。
著者
鈴木 康弘 渡辺 満久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.30-41, 2006 (Released:2010-06-02)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1 3

2004年新潟県中越地震は,1990年代以降に存在が明らかになった小平尾断層と六日町盆地西縁断層の北部が震源となり,断層線上に地表地震断層が出現した.しかし,活断層分布の情報が十分周知されていなかったことと,地表地震断層の変位量が大きくなかったことから,このような認識が徹底されていない.本稿では,地表地震断層の認定根拠を変動地形学の立場から明確にし,地表地震断層の出現が確実であることを最新の研究成果に基づいて解説する.防災上,「地震はどこでも起きる」ことを念頭に置く必要がある反面,地域ハザードを適切に評価する必要があり,変動地形学はこのことに大きく貢献している.
著者
野村 泰伸 鈴木 康之 清野 健 付 春江 吉川 直也 佐古田 三郎
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.185-195, 2015 (Released:2016-04-15)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本解説では,静止立位姿勢および定常二足歩行の間欠制御仮説と,それに関連する最近の研究を紹介する.特に,これらの運動を生成する神経制御が実現すべき運動の特徴として,(1)直立姿勢あるいは周期的歩行(歩行サイクル)の平衡状態からの偏差の時間的変動(運動揺らぎ)として表出する関節の柔軟性,および,(2)運動揺らぎの時間パターンが示すフラクタル性あるいはべき乗則に従う長期相関に注目する.さらに,直立姿勢の安定性に関して,(3)体性感覚情報の神経伝達時間に起因する時間遅れ誘因性不安定化(delay-induced instability)を回避する姿勢制御メカニズム,および,(4)対応する制御器のパラメータ変化に対する姿勢安定化メカニズムのロバスト性に関して議論する.運動計測データに表出する(1)およ(2)の特徴は,(3)と(4)に関わる姿勢の安定化メカニズムが機能した結果として生成されると考えられる.そこで,本稿では,安定性と柔軟性という一見相反する運動特性を実現する制御戦略の有力候補の一つである間欠制御仮説に関して議論する.
著者
鈴木 康生 真柳 秀昭 福田 理 森主 宜延 西川 康博 田中 晃伸
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.571-582, 2005-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
7
被引用文献数
2

歯科大学・大学歯学部における小児歯科学の教育,障害児歯科の教育ならびに大学(附属病院)における障害児(者)の歯科診療の現状を知る目的から,29歯科大学・大学歯学部を対象にアンケート調査を行った.小児歯科学の教育については,講義学年や講義時間数の設定等は多様化の傾向がみられた.また小児歯科学の講義学年では,4学年が多いが,低学年や複数学年にまたがる場合もみられた.障害児歯科の教育については,9大学で「障害者歯科学講座」等が設置され,他の多くの大学でも授業科目としての「障害者歯科学」が設けられていた.また,小児歯科学の中での「障害児歯科」の教育は,大多数の大学で講義がなされていた.「障害児歯科」の講義内容については,「心身障害児の歯科診療」,「小児疾患と歯科治療」について多くの大学で講義されていた.また,「症候群・先天異常(染色体異常・遺伝性疾患)」はほとんどの大学の小児歯科学の中で講義されていた.大学(附属病院)における障害児(者)の歯科診療の現況については,「障害者歯誌科」等の診療科が設置されているのが22大学であった.また診療科がない場合の受け入れ窓口は,小児歯科,あるいは小児歯科と他科とで担当していた.また小児歯科における障害児の歯科診療は,大多数が15歳以上も対象としており,20歳以上の障害者も対象として診療を行っている大学も多くみられた.
著者
尾池 和夫 JO 華龍 金 性均 慶 在福 全 明純 大倉 敬宏 久家 慶子 中西 一郎 入月 俊明 秋元 和実 山路 敦 鈴木 康弘 渡辺 満久 岡田 篤正 KIM Sung-kyun JUN Myang-soon JO Wha-ryong KYUNG Jai-bok
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

韓国南東部の梁山断層は,ほぼ北北東-南南西方向に約200kmにわたって走り,顕著な破砕帯を伴っている.この断層系において活断層変位地形を野外調査し,その主断層についてトレンチ掘削を実施した.この断層は河成段丘面群とその構成層を変位させ,東側の相対的隆起を伴う右横ずれの活断層であることを確認した(岡田ほか,1994).蔚山郡彦陽南方では,大規模な宅地開発が進められているので,その用地を利用して,主断層に伴われる地殻運動やそれ並行すると推定した副断層について多くのトレンチ調査を行った。こうした調査から,次のような事柄が判明した.彦陽南方の台地(高位面)は北東流していたかつての酌川川が形成した扇状地であり,初生的には北東へ傾いていたはずであるが,トレンチ地点付近では西方へ逆傾斜している.掘削調査の結果,高位面を構成する礫層が撓曲変形を受けていることが判明した.この高位面の撓曲による上下変位量は約5mである.いくつかの断層は認められたが,地表面まで切断するものは見当たらなかった.梁山断層の平均変位速度や高位段丘の形成時期を解明する必要があるので,梁山断層が通過する彦陽地域から太和江沿いに河成段丘面を追跡し,海成段丘面との関係を調べ,段丘面編年に関する資料を得るように努めた.それらの結果は,次のように要約される.河成段丘面はfH面群(fH1面・fH2面)・fH面群(fH1面・fM2面)・fL面群(fL1面〜fL3面)に,海成段丘面はm1面〜m3面に区分できる.海成段丘の旧汀線高度は,それぞれ53.3m・18.7m・3.4mである.fH面群やfM面群には赤色風化殻が形成されており,とくにfH面群で顕著である.fL面群の構成層は新鮮でほとんど風化していない.各河成段丘面は滑らかに蔚山湾周辺まで連続する.蔚山湾周辺では,fH2面は+10mの位置へ,fH1面は数mの位置へと連続してゆく.fL1面は下流部で沖積面下に埋没し,蔚山湾周辺での推定高度は-10mである.こうした資料からみて,fM1面が最終間氷期直前の氷期に,m2面が最終間氷期に形成された可能性が高い.fH面群はそれ以前の海面低下期に,m1面は最終間氷期以前の高海面期に形成されたと推定できる.南北〜北北西-南南東走向の蔚山断層系(延長約40km)は慶州市付近で梁山断層系に会合するが,この中央部に沿っても活断層変位地形の存在と,段丘堆積物を変位させる断層露頭が確認された.この特徴や関連現象について調べ,次のような事柄が判明した.蔚山断層系の断層線は著しく弯曲している.断層露頭表現や地形面の変形状態とから考えると,この断層の活動様式は典型的な逆断層である.第四紀後期に形成された地形面や堆積物が明瞭に変位を受けているので,蔚山断層は明らかに活断層である.この断層は高位段丘面を15m,中位段丘面を5m,上下方向へ変位させており,累積的な変位が認められる.断層崖や段丘面の変位方向からみて,東側の山地域が少なくとも第四紀の中ごろから継続的に隆起している.蔚山断層に沿って,明瞭な断層露頭が2ヶ所で観察された.末方里集落東方にある寺谷池北岸では,破砕した花崗岩が地形面を構成する礫層に,走向:ほぼ南北で,傾斜:25-30°Eの衝上面をもって接している.露頭上部では,上盤の花崗岩を被覆する礫層と砂礫層・腐植質層が急斜・逆転している.数本の断層が伴われ,幅数10cmの断層帯となっている.開谷里集落北東方の淵安川河床でも,やや風化した礫層の上に花崗岩が衝上している.末方里集落東方では,中位面を構成するシルト質層が液状化作用を受けて変形し,堆積直後の大地震発生を示唆する.その再来時間については,堆積物や地形面の年代解明を現在行っており,それらの結果を待って評価したい.こうした南北方向の逆断層性活断層の存在は,当域もほぼ東西方向の広域応力場に置かれていることを示唆する.これは北北東-南南西方向の梁山断層系が右ずれを示すこととも符号し,同じ応力場にあることを意味する.また,浦項市付近には,海成中新統が分布していることから,中新世以降の梁山断層の運動像を解明するために,地質調査を実施した.
著者
松多 信尚 杉戸 信彦 後藤 秀昭 石黒 聡士 中田 高 渡辺 満久 宇根 寛 田村 賢哉 熊原 康博 堀 和明 廣内 大助 海津 正倫 碓井 照子 鈴木 康弘
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.214-224, 2012-12-31 (Released:2013-01-31)
参考文献数
26
被引用文献数
2 4

広域災害のマッピングは災害直後の日本地理学会の貢献のあり方のひとつとして重要である.日本地理学会災害対応本部は2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震直後に空中写真の詳細な実体視判読を行い,救援活動や復興計画の策定に資する津波被災マップを迅速に作成・公開した.このマップは実体視判読による津波の空間的挙動を考慮した精査,浸水範囲だけでなく激甚被災地域を特記,シームレスなweb公開を早期に実現した点に特徴があり,産学官民のさまざまな分野で利用された.作成を通じ得られた教訓は,(1)津波被災確認においては,地面が乾く前の被災直後の空中写真撮影の重要性と (2)クロスチェック可能な写真判読体制のほか,データ管理者・GIS数値情報化担当者・web掲載作業者間の役割分担の体制構築,地図情報の法的利用等,保証できる精度の範囲を超えた誤った情報利用が行われないようにするための対応体制の重要性である.
著者
宮坂 勝之 鈴木 康之 阪井 裕一
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.187-193, 1999-03-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
11

不可逆的な臓器不全に対しては, 十分な代替人工臓器が開発されるまでは, 臓器移植が最終的な治療選択である. とくに先天性の臓器奇形への対応が医療の中心ともいえる小児医療では, しばしば臓器移植医療が唯一の選択肢となる. しかし, わが国での移植医療は, 生・死体腎移植, 生体部分肝移植が臨床的に実践されているものの, 小児医療で最も重要だと考えられる心臓移植や肺移植に関しては, 海外へ出向いての移植医療に頼っているのが現状である.小児患者が臓器提供を受ける場合, 臓器提供源として臓器のサイズや機能の面では成人患者とはきわめて異なった要素や条件の関与が考えられる. 提供臓器の物理的サイズの影響のみを考えても, 移植臓器によっては臓器提供者自身も小児である必要があるなど, 小児医療特異の諸問題がある. しかし6歳未満の脳死判定基準が存在せず, 15歳未満の小児での臓器提供が実質的に困難な現状は医療関係者にも十分に理解されていない. 海外への移植患者の搬送の実際面も含め我々が考えるべき問題点をまとめた.
著者
神林 潤一 鈴木 康弘 沖津 卓二
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.41-48, 2004-02-28 (Released:2010-08-05)
参考文献数
7
被引用文献数
1

教室と廊下の間が, 壁や窓によって区画されないオープン型の普通教室が増えているが, 従来型の教室に比べ騒音環境の悪化が懸念される。そのため, 全教室がオープン教室である仙台市立の3小学校ならびに従来型普通教室をもつ小・中学校4校において, 教室内の騒音測定と現場の教師に対するアンケート調査を行い, それぞれの騒音環境について比較検討した。その結果, オープン教室の騒音レベルは, 明らかに学校環境衛生の基準値50dB (A) を超えていること, オープン教室内では児童も教師も隣接教室からの騒音に少なからず影響を受けていることが分かった。以上のことから, 学校の新設に際しては, 騒音に対する十分な配慮が必要であり, 既存のオープン教室に対しては, 適切な防音対策が望まれる。
著者
鈴木 康夫 COLMAN Peter WEBSTER Robe PETER M.Colm ROBERT G.Web COBMAN Peter
出版者
静岡県立大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

本研究は、インフルエンザウイルス膜抗原であるヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)の分子進化にともなう宿主細胞側の受容体シアル酸含有糖鎖認識機構の解析を目的としたものである。本研究では特に、HAおよびNAの分子進化に伴う宿主細胞膜シアロ複合糖鎖認識の変化の機構を分子・遺伝子レベル、3次元的に解明することに焦点を当てた。また、本研究の成果からインフルエンザウイルスの変異に関係しない広域性ワクチン開発への実験的基盤を作るための応用研究も同時に行った。以下に過去3年間に得られた結果を述べる。1、先ず、全てのインフルエンザウイルス株であるインフルエンザA,BおよびC型ウイルスのヘマグルチニン(C型ウイルスはヘマグルチニン-エステラーゼ)が認識する受容体シアロ糖鎖構造の詳細を初めて明らかにした。これは、我々が天然から得たシアル酸含有糖鎖パネル(70種以上)および化学合成シアロ糖鎖を用いることにより達成された。また、同時に受容体破壊酵素であるNA(A,B型)および9-0-アセチルノイラミネートエステラーゼ(C型ウイルス)が認識する基質特異性についても明らかにした。2、A型インフルエンザウイルスヘマグルチニンの全ての亜型(H1-H13)の遺伝子における塩基配列およびそれらがコードするアミノ酸配列を初めて解明した。さらに、これらが認識する受容体シアロ糖鎖の構造を調べたところ全てのヘマグルチニン亜型は共通してラクト系IおよびII型糖鎖を強く認識すること、ヘマグルチニンの分子進化による認識の変異はシアル酸の結合様式(2-3,2-6)に現れることを発見した。3、インフルエンザウイルスNAの新しい拮抗阻害剤(Neu5Ac2-S-3Galβ1-4Glcβ1-Ceramide、チオグリコシド結合を持つガングリオシド)を見いだし、これがウイルスNAのシアル酸結合ポケットに入り、ポケット中の数種のアミノ酸(Asn294,Arg292,Arg371,Arg118,Glu119,Glu276)と水素結合や疎水結合により結合することをX線結晶解析により初めて明らかにした(共同研究者であるPeter Colman博士「CSRIO、オーストラリア」との共同研究で成し遂げた)。いままで、インフルエンザウイルスNAのシアル酸との結合研究は遊離のシアル酸との結合を3次元的に解析しており、本研究により
著者
鈴木 康夫 フォン・イツスタイン マ プラニー タワ ショートリッジ ケネディ 河岡 義裕 ウェブスター ロバート・ SHORTRIDGE Kenney F. THAWATSUPHA Pranee WEBSTER Robert G. ITZSTEIN Mark von ITZSTEIN Mar THAWATSUPHA プラニー SHORTRIDGE K WEBSTER Robe
出版者
静岡県立大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は2年間でアジアにおける新変異インフルエンザウイルスの出現機構をあきらかにし、その制御についての可能性を探ることである。過去2年間において以下に述べる主要実績が得られ、本研究の目的は充分達成されたと考えられる。1)ヒト、トリ、ブタ、ウマなどインフルエンザウイルスのアジアにおける主たる宿主から分離されるすべてのインフルエンザウイルスに対する共通の受容体糖鎖構造を初めて明らかにした。2)インフルエンザウイルスは宿主に存在する受容体シアロ糖鎖のシアル酸分子種、結合様式による選択を受けつつ進化することを明らかにした。3)ヒトの気道上皮細胞が持つ受容体シアル酸の結合様式は、Neu5Ac2-6Galのみであり、2-3は存在しないこと、トリ腸管、ウマ気道上皮細胞には,Neu5Ac2-3Galのみが存在し、2-6は存在しないことを見いだした。さらに、ブタの上気道には、Neu5Ac2-3Gal,Neu5Ac2-6Galの両者が存在することを初めて見いだした。一方、ヒトから分離されるインフルエンザウイルスは、Neu5Ac2-6Galを受容体として認識し、2-3とは結合しないこと、トリA型インフルエンザウイルスはNeu5Ac2-3Galと結合すること、ブタから分離されるA型ウイルスはNeu5Ac2-6GalとNeu5Ac2-3Galの両者と結合できることを認めた。この結果から、インフルエンザAウイルスの宿主域は、宿主動物の受容体シアロ糖鎖のシアル酸結合様式(2-3,2-6)により制御され、受容体に結合できる変異ウイルスが選択され、宿主域の壁を越える可能性を明らかにした。4)ヒト、ブタ、トリが共生するアジアではブタがトリおよびヒトインフルエンザウイルスのミキサーとして働いていることを受容体分子のレベルで解明した。5)ウイルスヘマグルチニン遺伝子の解析から、宿主域変異(トリ型→←ヒト型)に関わるシアル酸の結合様式の変異(2-6→2-3)には、ヘマグルチニン分子内レセプター結合ポケットにあるただ1つのアミノ酸226(Leu→Gln)の変異により制御されていることを初めて解明した。上記の結果は、本研究の目的が概ね達成され、さらに付加的な研究結果も得られたことを示している。
著者
鈴木 康裕 田島 敬之 村上 史明 高野 大 亀沢 和史 青木 航大 羽田 康司
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.57-69, 2021-03-31 (Released:2021-05-09)
参考文献数
25

目的:本研究の目的は,男性勤労者を対象に我々の作成したボード・ゲーム教材を用いた介入を行うことで,身体活動量が増加するかどうか,また介入終了後に維持されるかどうかについて予備的に検討することである。方法:筑波大学芸術系と共同開発した本教材は,プレーヤーが身体活動量を増やすことで有利に進めることができる。本研究の対象者は,地域の大学および大学附属病院にて勤務する男性職員11名[年齢24~48歳,中央値(四分位範囲)34.0(33.5,39.5)歳]であった。介入期間は6週間,全4回(1回/2週間,30分間/1回)のゲームを行った。介入開始前に2週間,介入終了後に12週間を設定し,最初の2週間をベースライン期間,介入終了後の12週間を介入効果の持越し観察期間とした。対象者は,介入群と対照群の2群に無作為に割り付けた。対照群は日常生活における身体活動量の増減をゲームのインセンティブとして与えなかった。身体活動量は対象者全員に3軸型加速度計を配布し測定を行った。結果:中高強度活動時間(中央値)の群間比較において,介入期間中の変化量は,対照群+0.2分/日に対し介入群+1.6分/日であった。経時的変化については,ベースライン期間と比べた介入12週間後の変化率は,介入群+48%,対照群+10%であった。結論:男性勤労者の身体活動量は,我々の作成した教材を用いた介入を行うことで増加し,また介入後も中期的に維持される可能性がある。