著者
鈴木 雄一 玉井 克哉 村上 愛
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.3, pp.1-8, 2013-11-14

近年、欧州において、その豊かな歴史に育まれた文化的資産を保存するだけでなく経済発展に結び付けようとする試みがなされている。こうした試みは、電子図書館構想として、文化的資産を次世代に引き継ぎ、かつ、かかる資産の欧州全域からの一元的な利用を促進することを念頭に進められてきた。電子図書館という新しい形態の図書館を創設するにあたり、新たな課題として浮き彫りにされつつある法的問題も存在する。本稿では、こうした法的問題のうち、特に孤児著作物 (orphan works) に関する問題にふれながら、EU での審議過程を振り返ることによって、電子図書館構想における EU の著作権政策を概観する。This paper analyzes arguments on the establishment of the digital library in EU, called Europeana, in the context of copyright, especially orphan works.
著者
鈴木 雄一
出版者
防衛大学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、通信・放送融合時代において今後普及が見込まれるオールIP(インターネットプロトコル)化されたネットワーク・インフラ経由の映像コンテンツ配信という新たな局面に、著作権法がいかに対応すべきであるかを多角的に検討した。また、欧米諸国における法制をも比較法的に研究するとともに、著作権法関連の国際条約との兼ね合いについても検討を加えた。
著者
鈴木 雄志
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

研究計画通り、研究指導を頼んだパリ第4大学ギュイヨー教授の指導を受けながら、フランス、パリでの資料・文献収集を引き続き行った。研究対象となる18・19世紀の文献、特に近年になっても校訂版やファクシミリ版さえ出版されず、日本の図書館にも所蔵されてない作品を、パリの国立図書館等で調査し、必要に応じて収集した。また、パリやフランス各地の学会にも参加し、最先端の研究に触れることで有意義に研究を進めることができた。研究実績としては、調査した内容の一部を、日本国内のフランス文学会にて二度発表した。詩と造形芸術との関連、造形芸術における官能性と詩におけるその表現を示した発表内容に関し、学会誌の査読委員会から執筆依頼を受け、提出した論文が現在審査中である。来年度にかけて、今年度の研究成果を学会や論文誌等で発表するために、現在論文準備を進めている。資料調査のために海外で研究を進めることで、日本におけるフランス文学研究が遅れている領域について書かれた研究に多く触れることができた。特に当研究者が取り組んでいる18世紀リベルタン文学と19世紀文学の関わりは、間にフランス革命という大きな断絶が存在しているために、従来フランスでも研究が遅れている領域であった。しかし、近年多くの研究者たちが革命期の文学についての論文を多く発表し、革命という断絶を繋ぐ文学史の流れを再構築しようとしている。その流れに沿ったところに位置づけられる本研究によって、フランス文学研究全体が近年行っている文学史、そして文学の意義の再検討する研究活動の一端をになう成果を挙げることができた。
著者
鈴木 雄大 山岸 真澄
出版者
The Japanese Society for Horticultural Science
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.224-231, 2016 (Released:2016-07-23)
参考文献数
31
被引用文献数
14 16

日本で主に生産されている食用ユリはコオニユリ(Lilium leichtlinii, 2n = 2x = 24)であるが,ウイルス病やボトリチス病が問題となっている.三倍体オニユリ(L. lancifolium, 2n = 3x = 36)の鱗茎も食用に利用できる.後者は道端や農地の周辺で野生化していることより日本の気候に適応していると考えられ,食用ユリの遺伝資源として重要である.しかしオニユリは葉腋にムカゴを発生させるため(ムカゴは鱗茎と栄養を競合し,鱗茎の肥大を妨げる),経済栽培には用いられていない.種間交雑は遺伝的な多様性を増加させるので観賞用ユリの品種育成には積極的に用いられているが,食用ユリの育種にはあまり使われていない.本研究では三倍体オニユリとコオニユリを交雑し,その F1 の形質を調査した.結果,得られた F1 はすべて,染色体数 26 本から 34 本の異数体であった.ムカゴ発生能力は F1 集団で連続分布し,量的形質として認められた.F1 57 個体のうち 49 個体(86%)でムカゴが発生しなかった.このことはこの交雑組み合わせから,ムカゴをつけない異数体が得られることを示している.葯の形態に異常が認められる個体が分離した.また F1 における花粉の発芽率は20% を超えるものはなく,85% の個体で発芽しなかった.しかし,食用ユリの収穫対象は鱗茎なので,花器官の形態異常や低い花粉稔性は食用ユリにおいては大きな問題にはならないと考えた.以上の結果より三倍体オニユリとコオニユリの種間雑種によってすぐれた食用ユリ品種を育成できる可能性が示された.
著者
日方 希保 諸橋 菜々穂 樽 舞帆 鈴木 雄祐 中村 智昭 竹田 正裕 桑山 岳人 白砂 孔明
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.127-134, 2021-12-24 (Released:2022-02-28)
参考文献数
13

ミナミコアリクイ(Tamandua tetradactyla)は異節上目有毛目アリクイ科コアリクイ属に分類される哺乳類の一種である。コアリクイの計画的繁殖には,基礎的な情報の蓄積による繁殖生理の解明が必要である。これまでミナミコアリクイの妊娠期間中の血中ホルモン変動に関しては,1個体で1回分の妊娠期間についての報告がされているが,同一個体で複数回の妊娠期間中のホルモン変動に関する報告は存在しない。本研究では,同一雌個体のミナミコアリクイに対して長期間における経時的な採血(約1回/週)を実施し,同一雌雄ペアで合計6回の妊娠期間における血漿中プロジェステロン(P4)またはエストラジオール-17β(E2)濃度の測定を実施した。全6回の妊娠期間中のP4濃度測定の結果から,妊娠期間は156.8±1.7日(152~164日)と推定された。各時期のP4濃度は,妊娠前では0.6±0.1 ng/ml,妊娠初期(妊娠開始~出産100日以上前)では13.2±1.8 ng/ml,妊娠中期(出産50~100日前)では28.1±4.3 ng/ml,妊娠後期(出産日~出産50日前)では48.2±11.8 ng/mlであった。出産後のP4濃度は0.4±0.1 ng/mlと出産前から急激に低下した。血漿中E2濃度は妊娠初期から出産日に向けて徐々に増加した。また,妊娠期間前後で6回の発情周期様の変動がみられ,P4濃度動態から発情周期は45.5±2.4日(37~52日)と推定された。以上から,ミナミコアリクイの同一ペアによる複数回の妊娠中における血漿中性ステロイドホルモン動態を明らかにした。また,妊娠初期でP4濃度上昇が継続的なE2濃度上昇よりも先行して観察されたことから,P4濃度の連続的な上昇を検出することによって早期の妊娠判定が可能であることが示唆された。
著者
鈴木 雄大 坂本 真士 村中 昌紀 山川 樹 亀山 晶子 松浦 隆信
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.247-253, 2023 (Released:2023-08-25)
参考文献数
18
被引用文献数
1

The present research examined the relationship between interpersonal sensitivity (IS), privileged self (PS), and internet addiction, focusing on the direct effects among these variables and the indirect effects of problem-solving coping tendency and expression of emotional coping tendency. A total of 114 university students participated in the questionnaire survey, of which the 92 who completely answered the questionnaire were included in the analysis. Our data showed a significant positive direct effect of IS and PS on internet addiction tendency. Although the indirect effect of IS on internet addiction mediated by problem-solving coping tendency was not significant, the indirect effect of PS on internet addiction mediated by expression of emotional coping tendency was significant. We discussed the direct and indirect effects in terms of IS and PS characteristics and motivations.
著者
薄 雪晴 寺部 慎太郎 柳沼 秀樹 海野 遥香 鈴木 雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.22-00327, 2023 (Released:2023-09-20)
参考文献数
17

モータリゼーションの進展や人口減少,高齢化を背景に,多くの都市の空洞化が進行している.地域経済の活性化を推進するため,まちの賑わい創出の検討が重ねられている.既往研究では,商業や歩行者空間整備に着目した研究が多い.しかし,公共施設に関する分析が不十分である.そのため,本研究は首都圏の市を対象として,居住,行政,交通,商業の4種類の拠点の周辺における各公共施設の立地状況を評価し,公共施設の立地とまちの賑わいとの関係を明らかにした.今後,都市を開発する時に,商業施設の立地分析は当然重要ではあるが,公共施設の立地についての分析も重要であることを示した.
著者
鈴木 雄 日野 智
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.673-679, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
17
被引用文献数
7

本研究では、秋田市のタクシー利用に対する価格感度やタクシー利用の満足度について分析を行った。分析の結果、タクシー利用者は現在のタクシー運賃について満足していないことが明らかとなった。また、タクシー運賃はタクシー利用の総合満足度に与える影響も大きいことが明らかとなった。つまり、タクシーの運賃は改善することが求められる。価格感度に関する分析では、タクシーの初乗り運賃について「安い」と「高い」のバランスが取れている「基準価格」が647円となった。これは現行の710円よりも低い値である。つまり、タクシー利用者は現行の初乗り運賃である710円に割高感を持っていることが示された。しかし、免許返納割引や障害者割引により運賃が1割引になった場合には、割高感は解消されることが明らかとなった。また、タクシー利用の満足度が高い人ほど運賃に対して割高感を持たないことも明らかとなった。今後は、タクシー運賃の値下げを検討するとともに、接客態度や社内の清潔性・快適性の確保などによる満足度の向上も重要であることが示された。
著者
鈴木 雄介
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.229-244, 2020-04-15

エンタープライズ領域においてデジタルトランスフォーメーション(以下DX)と言われるようなビジネスモデルの変化に合わせ,システム開発にアジャイル開発プロセスを導入する取り組みが増えている.しかし,実際に導入しても高いビジネス成果を上げることは容易ではない.本稿ではシステム開発手法を組織の意思決定プロセスと捉え,エンタープライズ領域におけるアジャイル開発の課題を論じる.また事例を挙げて,この解決に向けた取り組みを紹介する.
著者
鈴木 雄太 糸井川 栄一
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.253-262, 2019-11-01 (Released:2020-05-08)
参考文献数
17

After an earthquake, real-time evacuation guidance, which guides inhabitants to safe site from danger area based on fire information, is important as an emergency measure against simultaneous fires. In this study, we optimized a realtime route considering incompleteness of fire information. First, we constructed the stochastic model called “evacuation probability”, which is the probability that evacuee can reach evacuation site without encountering an undetected fire. Second, we maximize an evacuation probability on a real-time route under condition of securing a specified value of “safe margin of evacuation”, which means maximum tolerance on a deviation between a forecasted fire speed and an actual one. Finally, we discussed characteristics of the route with visualizing and analyzing results of simulations.
著者
鈴木 雄太 浦辺 幸夫 前田 慶明 笹代 純平 森田 美穂
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.209-212, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

〔目的〕競泳選手と非競泳選手の上肢挙上時の脊柱アライメントの変化の違いを探るため,立位とストリームライン(以下,SL)での脊柱アライメントを比較した.〔対象〕競泳群26名,非競泳群20名とした.〔方法〕Spinal Mouse®を用いて立位とSL立位の胸椎,腰椎および骨盤のアライメントの変化量,SL立位での上肢挙上角度を測定した.〔結果〕競泳群では上肢挙上角度が大きな対象ほど,胸椎の後弯,腰椎の前弯,骨盤の前傾が小さかった.非競泳群では,いずれの変化量も上肢挙上角度と有意な相関は認められなかった.〔結語〕上肢挙上角度が大きい競泳選手は胸椎の伸展運動によって腰椎前弯と骨盤前傾を小さくすることが可能であることが示された.
著者
岡田 泰河 鈴木 雄太 吉田 康兵 浦辺 幸夫 白川 泰山
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.115-118, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)

目的:重度栄養障害を呈した大腿骨頚部骨折患者に、体重を指標として多職種で連携することで、栄養状態が改善し自宅退院した症例を経験したので報告する。 症例紹介:症例は人工骨頭置換術を施行し、当院へ転入院した80代の女性であった。入院時の体重は35.9kg、Body Mass Index (BMI): 15.5、平常時体重比71%で重度栄養障害であった。 経過:運動療法は運動強度を3METs以下とし、日常生活動作獲得を目的に1日6~8単位実施した。病棟で集団リハビリを行い、補食としてゼリー飲料と野菜ジュースを摂取した。入院4週後に体重は4.8kg増加し40.7kg、BMI 17.6、平常時体重比80%で中等度栄養障害となり、5週目に3.5METs程度の筋力強化練習を開始した。11週目に栄養指導を実施し、12週目まで体重40kg程度を維持し自宅へ退院した。 結論:体重を指標として多職種で連携することは日常生活動作の獲得に有効と考えられた。
著者
田城 翼 浦辺 幸夫 鈴木 雄太 酒井 章吾 小宮 諒 笹代 純平 前田 慶明
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.83-87, 2020-03-31 (Released:2020-08-21)

目的:足関節捻挫を受傷した選手は、医療機関で受療せずに競技復帰する場合が多く、「たかが捻挫」と足関節捻挫を軽視している可能性がある。本研究では選手が足関節捻挫受傷後の治療の重要性をどのように捉えているかを調査した。 方法:大学男子サッカー選手235名を対象として、インターネットによるアンケート調査を実施した。 結果:90名(38%)の有効回答のうち、70名(78%)が足関節捻挫を経験していた。受傷後、医療機関を受診した者は37名(53%)で、そのうち28名(76%)は継続的に通院し、治療を受けていた。医療機関を受診しなかった、または通院を中止した理由は、「治療しなくても治ると思ったから」という回答がそれぞれ最多であった。 結論:治療しなくても治ると思っていた選手は、足関節捻挫受傷後の治療の重要性を認識できていない可能性がある。このような選手に対して、足関節捻挫の治療の啓蒙が不可欠である。
著者
横尾 亮彦 鈴木 雄治郎 井口 正人
出版者
京都大学防災研究所
雑誌
京都大学防災研究所年報 = DPRI annuals (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
no.55, pp.163-167, 2011

桜島昭和火口の噴火を対象とした空振観測を行った。観測された昭和火口噴火の空振は2Hzと0.5Hzにピークを持っており,前者は火口内の地形構造が,後者は噴出噴煙そのものに起因して励起されたものでと考えられる。また,爆発的噴火の観測波形は,噴火開始期に放射される爆発波の位相が,桜島山体や姶良カルデラ地形で回折・反射し,1分以上にわたって断続的に多方向から到来したものであった。
著者
横尾 亮彦 鈴木 雄治郎 井口 正人
出版者
京都大学防災研究所
雑誌
京都大学防災研究所年報. B (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.B, pp.163-167, 2012-09-30

桜島昭和火口の噴火を対象とした空振観測を行った。観測された昭和火口噴火の空振は2Hzと0.5Hzにピークを持っており,前者は火口内の地形構造が,後者は噴出噴煙そのものに起因して励起されたものでと考えられる。また,爆発的噴火の観測波形は,噴火開始期に放射される爆発波の位相が,桜島山体や姶良カルデラ地形で回折・反射し,1分以上にわたって断続的に多方向から到来したものであった。
著者
滝澤 恵美 鈴木 雄太 伊東 元 鈴木 大輔 藤宮 峯子 内山 英一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100534-48100534, 2013

【はじめに、目的】股関節内転筋群の内転作用以外は諸説あり不明な点が多い。これは,関節の肢位によって筋の作用が変化することが関係している。本研究は股関節の角度変化に伴う股関節内転筋群のモーメントアームの変化を調べ,その作用を検討した。なお,本研究ではDostalら(1981,1986)の方法(モーメントアーム・ベクトル,以下MAV)を用いてモーメントアームの各成分(屈曲/伸展,内転/外転,外旋/内旋)を算出した。【方法】1. 材料:死亡年齢84 〜98 歳(平均90 歳)の未固定標本5 体の右下肢を用いた。神経筋疾患を有した遺体,関節拘縮が見られる下肢は除外した。標本は骨盤〜大腿骨部分を使用し,関節包および恥骨筋(PE),短内転筋(AB),長内転筋(AL),大内転筋(AM)を残して計測した。なお,AMは大腿深動脈の貫通動脈を基準に4 つの筋束(AM1-AM4)に分けた。2. 計測:骨盤を木製ジグに固定し,大腿骨を屈曲・伸展方向に同一験者が動かした。その際,磁気式3D位置センサー(Polhemus社製)を用いて,骨および筋の参照点の座標変化を記録した。参照点は,筋の起始部と停止部,上前腸骨棘,恥骨結合,大転子,外側上顆,大腿骨頭上の3 点とした。また,筋の起始部と停止部の直線距離を計測し,筋腱複合体の長さ(筋長)とした。3. データ処理:大腿骨頭上の座標と骨頭の半径から骨頭中心の座標を非線形最小2 乗法で求めた。骨頭中心座標と参照点を用いて直交座標系を構成し,関節座標系を定義した。骨盤側の座標系を絶対座標系(GCS),大腿骨側を移動座標系(LCS)とした。GCSとLCSの関係から関節角度を求めた。筋の張力方向は,停止部から起始部へ向かう単位ベクトルとした。更に単位ベクトルと筋の停止から骨頭中心に向かうベクトルの外積から3 軸(屈曲/伸展,内転/外転,外旋/内旋)のMAVを求めた。MAVは,筋が1Nの張力を発揮した時の各軸周りの関節トルクの大きさと向きを示す。4. 分析:大腿長で標準化されたMAVおよび筋長と股関節屈曲角度の関係を2 次式で近似した。得られた近似式を用いて,15 度間隔で股関節屈曲-15°から75°の範囲におけるMAVと筋長の値を求めた。最大値を示したMAV成分を主成分,主成分の50%以上の値を示した成分を二次成分とした。【倫理的配慮、説明と同意】使用した遺体は,本人および家族が未固定遺体として使用されることを同意している。なお,本研究は札幌医科大学倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】股関節屈曲-15°から75°の範囲で,AM4 を除く全ての内転筋群の主成分は内転成分であった。一方,AM1 とPEを除き,外旋/内旋成分は常に小さな値を示した。屈曲角度の増加に伴い,AM4 を除く全ての筋の屈曲/伸展成分が屈曲から伸展に転換した。AM2 とAM3 は,それぞれ股関節屈曲45 度,75 度以上で伸展成分が二次的成分になった。AM4 の伸展成分は屈曲0 度以上で二次成分,さらに45 度以上では主成分となった。ALは股関節伸展15°で屈曲成分が二次成分となった。AM1,PE,ABでは二次成分を認めなかった。いずれの筋束も二次成分を示す股関節肢位で筋長は伸長位にあった。【考察】全屈曲角度を通じて,AM4 を除く股関節内転筋群の主成分は内転であったが,屈曲/伸展成分は各筋で異なる特徴を示した。大内転筋のAM2-AM4 は股関節屈曲位において伸展作用を有すると示唆される。特に,AM4 は股関節屈曲45 度以上では主成分が伸展になることから,股関節伸展筋としての要素が強い。ALは従来股関節屈曲位において股関節伸展作用を持つとみなされていたが,股関節屈曲位におけるALの伸展成分はそれほど大きくなく,また筋が弛緩する肢位のため,伸展作用は小さいと考えられる。ALは股関節伸展位で二次成分に屈曲を示し,加えて筋も伸長位にあることから,股関節伸展位近傍で屈筋作用を持つ筋であると考えた。【理学療法学研究としての意義】股関節内転筋群は下肢を内転させるだけの筋ではない。股関節に対する長内転筋の屈曲作用や大内転筋の伸展作用は,腸腰筋やハムストリングスのサブモーターとして機能していると考える。このため,内転筋群は効果的な運動療法を行う上でもっと考慮すべき筋である。
著者
坪井 志朗 三村 康広 山崎 基浩 鈴木 雄 西堀 泰英
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.1405-1412, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
10
被引用文献数
2

新型コロナウイルスの感染防止による新しい生活様式によって、テレワークやオンライン会議が普及し、職場と居住地が必ずしも近くにある必要はなくなる等、我々の暮らしを大きく変えている。地方都市や郊外地域の居住意向が向上し、職場にとらわれない居住選択ができるようになった一方、地方都市移住や田舎暮らしを適切な地域に誘導しなければ、単なる都市のスプロールとなり、都市の広域化が懸念される。本研究では、愛知県豊田市をケーススタディとして、コロナ禍における地方都市の人口動態の変化と居住地選択の意向変化を分析した。その結果、人口動態について転入者数の減少により人口減少へとなっていること、コロナ禍前後で居住地選択の考え方が変わっていることが指摘できた。
著者
鈴木 雄二
出版者
日本AEM学会
雑誌
日本AEM学会誌 (ISSN:09194452)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.339-342, 2014
被引用文献数
11

Unlike low-cost massive energy sources for grid systems, energy harvesting is a high-added-value power generation technologies, in which small power can be extracted from energy sources in the environment. Energy harvesting technologies will make an important contribution to autonomous devices including wireless sensor nodes by providing battery-less long-lived power source. Recently, significant efforts have been paid in the country and abroad toward various applications such as building energy management system.