著者
鈴木 治
出版者
独立行政法人医薬基盤研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

生物資源保存の重要性が指摘されているが,実験用齧歯類として重要なシリアンハムスター,スナネズミ,モルモットなどは胚・精子凍結保存が完備されていない。そこで卵巣を凍結保存することによる系統保存法の確立を試みた。シリアンハムスターではガラス化保存卵巣由来の産仔が得られたが,スナネズミとモルモットについては産仔が得られなかった。それらの動物種では移植免疫や手術手技を考慮する必要があると思われた。
著者
本多 俊貴 鈴木 裕利 石井 成郎 遠藤 守 高橋 友一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.3, pp.460-472, 2012-03-01

一般に,災害時に住民に対して提供される情報は行政やマスメディアから発信されている.このような公助的情報は広域にまたがり,あるいは,被害の大きな地域の情報に集中する傾向があるために,住民にとって身近な地域,あるいは,限定された地域における共助的情報の流通は難しいのが現状である.また,情報伝達の取組みにおいても,住民への伝達情報が,果たして住民が必要とする情報であるのか,住民が伝達情報をどのように活用しているのかなど,システムのユーザである住民の側からの評価,システムを使用する際の住民の行動についての分析は行われていない.そこで,本研究では認知心理学的なアプローチの導入により,災害情報収集システムを利用する人々が,「どのように情報を判断するか」について評価することにより,構築システムの最適化とシステムに求められる流通情報の特徴を明らかにすることを目的とする.これまでの評価実験の結果からは,システム利用時にユーザが必要としていた情報である,災害が起こった地域の場所や方向の安全/危険に関する情報を提案システムが提供できている点,災害時を想定した時間的制約のある状況においてもそれが有効である点がそれぞれ確認された.
著者
卯木 希代子 早崎 知幸 鈴木 邦彦 及川 哲郎 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.161-166, 2009 (Released:2009-08-05)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

数年来の耳鳴に対して蘇子降気湯を投与した症例を経験したので,著効を得た2症例の症例呈示と合わせて報告する。症例1は70歳女性。主訴はめまい,耳鳴,不眠である。5歳時の両耳中耳炎手術後より耳鳴があったが,3カ月前より回転性めまいが出現,以後耳鳴が強くなり来所した。頭重感,不眠,足先が冷えやすい等の症状があり,蘇子降気湯加紫蘇葉を処方したところ,服用1カ月でめまいは改善し,3カ月後には不眠や耳鳴も改善し,8カ月後には普通の生活ができるようになった。症例2は58歳男性。難聴,耳鳴を主訴に来所した。5年前より回転性めまいと右の聴力低下が出現,進行して聴力を喪失し,さらに1年前より左の聴力低下も出現した。近医にてビタミン剤や漢方薬を処方されたが聴力過敏・耳鳴が出現した。イライラ,不眠,手足が冷える等の症状も認めた。八味丸料加味を投与したが食欲不振となり服用できず,気の上衝を目標に蘇子降気湯加紫蘇葉附子に変方したところ,服用1カ月で自覚症状が改善し,騒音も気にならなくなった。その後の服用継続にて不眠・足冷も改善した。当研究所漢方外来において耳鳴に対する蘇子降気湯の投与を行った13例中,評価可能な10例のうち5例に本方は有効であった。有効例のうち4例は,のぼせまたは足冷を伴っていた。蘇子降気湯は『療治経験筆記』において「第一に喘急,第二に耳鳴」との記載がある。数年経過した難治性の耳鳴にも本方が有用であることが示唆された。
著者
大東 一郎 石井 安憲 芹澤 伸子 小西 秀樹 鈴木 久美 佐藤 綾野 于 洋 上田 貴子 魏 芳 大東 一郎 石井 安憲 清野 一治 木村 公一朗
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、中国の制度・政策転換と東アジア圏の国際相互依存関係への影響に関わる政治経済学的問題を、財政・金融・産業・環境に焦点を合わせて考究した。財政制度の効率性比較、途上国での望ましい工業汚染規制、企業の株式持合いと政策決定の関係、混合寡占下での公企業の役割、途上国企業の部品の内製・購買の選択を理論的に分析した。中国の社会保障制度の実態、マイクロファイナンスの金融機能を明らかにし、税制の機会均等化効果の日韓台間比較、為替介入政策の市場の効率性への影響分析を行った。
著者
鈴木 英雄
出版者
東京大学理学部
雑誌
東京大学理学部廣報
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.8-9, 1988-12
著者
鈴木 哲也 関田 俊明
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究の目的は,高齢無歯顎者における義歯装着状態の違いが摂食,嚥下機能に及ぼす影響を明らかにすることである.被験者には,無歯顎者,高齢有歯顎者,成人有歯顎者,偏食傾向の者の4群を選択し,5種類の半固形状食品および2mlの冷茶を摂食させた.無歯顎者には3種の義歯装着条件(上下顎義歯装着,下顎義歯撤去,上下顎義歯撤去)を設定し,顎二腹筋前腹筋電図,咬筋筋電図,下顎運動の測定を行った.統計処理には反復測定分散分析とscheffeの方法を用いた.以下に結果示す.1.高齢正常有歯顎者と若年正常有歯顎者では,高齢正常有歯顎者の方が咀嚼所要時間は長かった.2.高齢正常有歯顎者と全部床義歯装着者では,食品によっては,咀嚼所要時間には必ずしも有意差がみられなかった.3.全部床義歯装着者と若年正常有歯顎者では,上下顎義歯撤去時ではすべての食品で若年正常有歯顎者より咀嚼所要時間は長かった.しかし,上下顎義歯装着時では,はんぺん,試験用ゼリー(強度650),芋ようかんで有意差はみられなかった.4.義歯の装着状況で比較すると,上下顎義歯装着時と上下顎義歯撤去時では,上下顎義歯撤去時の咀嚼所要時間が短かった.5.下顎義歯撤去時と上下顎義歯撤去時では,下顎義歯撤去時の咀嚼所要時間が短かった.6.ゼリー,芋ようかん以外では,上下顎義歯装着時と下顎義歯撤去時の咀嚼所要時間に差はみられなかった.7.口腔内条件の違いよりも,食品の好き嫌いが咀嚼所要時間に最も大きく影響を与えた.以上の結果から,高齢者における全部床義歯の装着は,半固形状食品の円滑な咀嚼の遂行,維持に重要であることが示唆された.
著者
鈴木 薫
巻号頁・発行日
2010-03-25

本稿では、『就業構造基本調査』(1992年・1997年・2002年)の個票データを用いて、フリーターやニートの若年人口に対する割合が定義によりどのように異なるのか、同一のデータを用いた複数の集計により検証を試みた。また、フリーターやニートの割合の変化を世代間で見るために、生年階級・性別・学歴別のコーホートを作り、同一属性の中でフリーターやニートになる割合「フリーター率」「ニート率」が、年齢推移とともにどのように変化していくかを分析した。過去に厚生労働省や内閣府で行われた集計の定義を基にして定義した「厚生労働省定義」と「内閣府定義」では、フリーター・ニートもともに「内閣府定義」での割合が高く、それぞれ「厚生労働省定義」での割合の約1.5~1.25倍の値となった(2002年)。また、内閣府(2005)に準じてニートを類型化したところ、男女計では増加の見られなかった「非希望型」のニートが、女性では1992年から2002年にかけて若干増加していることもわかった。コーホート分析では、フリーターについては、(1)後に生まれた世代ほどフリーター率が高くなる、(2)高学歴者は比較的世代間のフリーター割合の上昇が小さくなる、という2つの傾向がわかり、中学校卒の1983~1987年生まれの世代では15~19歳時点でのフリーター率が男性で40%超、女性で約60%となっている。一方、ニートについては、ニート率の水準と世代間の格差は男女とも短大・高専卒と大学・大学院卒のグループと中学校卒と高校卒のグループで明らかに異なる。短大・高専卒と大学・大学院卒のグループではニート率はほとんど0%から推移していないが、他の学歴では後から生まれた世代ほど、ニート率が高くなる傾向があるのに加え、年齢に関わらず高止まりする可能性がある。1983~1987年生まれの世代は15~19歳時点で男女ともにニート率が15%近くにもなっている。 61p. Hokkaido University(北海道大学). 修士(経済学)
著者
平田 恵子 島村 保洋 鈴木 敬子 貞升 友紀 伊藤 弘一
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.263-269, 2005-12-25
参考文献数
9
被引用文献数
3

食品添加物酵素処理ステビアの成分分析法を開発した.分析条件を設定するため,まずグルコアミラーゼを用いて付加糖の加水分解条件を検討したところ,反応温度および時間は55℃,3時間,グルコアミラーゼ量は反応溶液10mL中250 Uが適切な条件であった.C18カートリッジカラムによる固相抽出法で試料から多糖類などの除去を行い,さらに加水分解して得られた配糖体および遊離糖をC18カートリッジカラムで分離し,それぞれの含有量をHPLCにより測定した.本法により,3試料を分析したところ付加糖としてグルコースが検出され,その含有量は25~42% であり,未反応配糖体含有量を除いた配糖体総含有量は35.7~52.5% であった.両含有量を合計した酵素処理ステビア成分含量は77.5~80.4% で,回収率(C18カートリッジカラム処理後の試料量を100としたとき)はすべて85% 以上であった.また,糖量に係数(×0.9)を乗じさらに乾燥物換算して得られた成分含量値は,すべての試料で80.0% 以上であり,日本食品添加物協会の規格値を満たした.
著者
羽田野 袈裟義 安福 規之 兵動 正幸 橋本 晴行 久保田 哲也 福岡 浩 里深 好文 山本 晴彦 高橋 和雄 宮田 雄一郎 鈴木 素之 牛山 素行 田村 圭子 後藤 健介 藤田 正治 牧 紀男 朝位 孝二 善 功企 守田 治 滝本 浩一 三浦 房紀 種浦 圭輔
出版者
山口大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2009

(1)災害概況:2009年7月の豪雨により防府地域と福岡県北半部の全域で土砂災害が多発し合計で27名が亡くなった.(2)土砂災害の実態:防府の土砂災害は,土石流中の巨礫堆積後の土砂流による埋没である.土質調査からマサ土地域での崩壊発生と間隙水圧の関係が示唆された.土石流の流動解析で石原地区の土砂流出量を評価し,砂防施設の有効性を評価した.(3)情報伝達と警戒避難体制の状況:防災・避難情報の収集・伝達や警戒避難体制の整備状況や土砂災害警戒区域の指定に伴う警戒避難体制の整備状況と問題点を明らかにした.
著者
豊川 秀訓 鈴木 昌世
出版者
(財)高輝度光科学研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

半導体放射線検出器の電子等価雑音は電子・正孔密度(n_e,n_h)に支配され、指数関数的な温度依存性n_e=n_h∝exp(-E_<th>/kT)を示す(E_<th>:活性化エネルギー、T:温度、k:ボルツマン定数)。E_<th>=1.1eVであるシリコンではT=25℃に於ける電子・正孔密度が10^<10>cm^<-3>程度となり、室温動作が可能になる。一方、E_<th>=0.7eVであるゲルマニウムでは、同温度で、10^<13>cm^<-3>となり冷却動作が必須で、放射線計測の常識として液体窒素温度に冷却して使用されている。しかし、近室温領域(T=-65℃)ではゲルマニウム中の電子・正孔密度も室温に於けるシリコンのそれと同程度に減少する事が予想される。更に、この熱雑音電流は、Ge結晶中に一様に存在し、素子体積に比例し、本研究で最終的に想定するピクセルサイズ100μm角程度の微小空乏層に関しては、熱雑音電流が100nA以下に減少することが予想される。一方、入射放射線励起の電子正孔対は、体積には依存せずに、入射放射線の持つエネルギーに比例し、かつ数100μm角程度の微小領域で発生する。この事実は、数100μm角サイズのGe検出器では、暗電流が著しく軽減され、近室温で動作する可能性を示唆する。上記の趣旨に基づき、単素子1mm角の単素子微小Geセンサーを製作した結果、熱雑音電流が室温(22℃)でさえも10μA程度に抑えられ、近室温の-73℃ではさらに2桁程度減少する事を確認した。この結果は、ピクセル化した際の基本的なサイズ、0.2×0.2×0.3mm^3では、約30nA程度になる事を意味し、本課題の目的である近室温で動作が可能である事を示唆する。ただし、印加電圧10V以上では、表面電流の影響と考えられる暗電流の増加が問題となった。この表面電流の影響を防ぐ為に、最終的に、ガードリング付き単電極素子(素子サイズ5mm×5mm×0.5mm、電極面積2mm×2mm)、ガードリング付き多電極型素子(素子サイズ5mm×5mm×0.5mm、電極面積0.75mm×0.75mm、電極数2×2個)を製作した。本研究の結果は、2003年春季応用物理学会(「ゲルマニウム検出器の温度特性」、神奈川大学)、日本物理学会2003年秋季大会(「微小ゲルマニウム検出器の温度特性」、岡山大学)、及び、同学会第59会年次大会(「微小ゲルマニウム検出器の温度特性II」、九州大学)に於いて口頭発表を行った。また、国際会議SRI2003に於いてポスターセッション発表を行った。
著者
鈴木 達朗
出版者
応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.222-224, 1966-03
著者
鈴木 久実
出版者
東京都立桐ヶ丘高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

今回の研究は、高校生にリスニングのストラテジーを明示的に指示することで、リスニング力向上に寄与することを目標とした。指示したストラテジーは、次の3つである:(1)聞こえてきた音声を頭の中で繰り返しながら聞く、(2)聞こえてきた音で強く読まれている部分に注意しながら聞き取る、(3)聞こえてきた音声をよく聞く。(1)は、意味処理のために、英語を頭に長く残すストラテジーである。(2)は、英語の音声の強形は内容語であることが多いため、強く発話される語に注意を向け、意味理解を促すストラテジーである。(3)は(1)、(2)に対する統制群としての指示である。事前にこのような指示を与え、注意を向けて生徒に聞かせることは大切なことである。この実験は公立高校3校で行った。測定は、日本英語検定協会の英語能力判定テストのリスニングテストの得点で行った。異なる問題で事前テスト、事後テストを行い、その差を分析した。指導には、生徒の習熟度に応じて英検2級と英検3級のリスニングテストの問題を使用した。指導前の各グループ間の差がないことは、事前テストの結果を分散分析することにより証明した。各グループの結果は二元配置分散分析により分析した。全体的には、3つの指示の間に有意な差は見られなかった。次にトラテジーを指示した各グループの内で、事前テストにより上位者、中位者、下位者のグループに分け、対応のあるt検定により分析を行ったところ、特に下位群について、どの指示でもテストの得点に有意な伸長が見られた。上位者、中位者の得点の伸長については学校によって異なった。現時点での分析から言えることは、英語の聞き方のストラテジーをあまり使用していないと考えられる成績下位者は、明示的な指示を教師が与えることで得点が伸長したと考えられる。成績上位者については、すでにストラテジーを持っているので、教員の指示が邪魔になり、結果がまちまちになった可能性がある。
著者
鈴木 紀子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.277-280, 1978

The biological economy in the nymph of Locusta migratoria when it feeds on the leaves of the grass Bromus unioloides was studied with special reference to dry matter and phosphorus at a constant temperature of 25℃. The phosphorus contents of the food plant, nymphal body, feces and the exuviae were 0.35%, 0.93%, 0.22% and 0.03%, respectively. The conversion efficiency for dry matter from the plant to the insect body was 16%, while that for phosphorus was 52% ; the latter being thus about three times as much as the former.
著者
鈴木 俊一
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.37, 1988-09-12

日本語の入力方式として、かな漢字変換が主流であるが、人名や地名には難読漢字が含まれる場合があるので、他の入力方式として一漢字を入力する方法が用意されている。従来の漢字入力方法には、音訓入力、部首入力、画数入力そしてコード入力などの方法がある。しかし、「國」を入力する場合など部首名の「くにがまえ」が判らない、または「くにがまえ」の部首を持つ漢字が多い等の理由から、所望の漢字を選択・入力するまでに多くのキータッチ数および検索時間を要しているのが現状である。昭和62年後期情報処理学会全国大会において、JIS第2水準漢字の入力方法として、漢字構成要素の一部を入力して所望の漢字を入力する方法を提案した。本稿は前回報告した方法を実用化するために行ったユーザインタフェースの改良について述べるものである。なお本稿中で、一つの漢字に含まれる漢字を部分漢字という言葉を用いて表現している。
著者
酒井 洋 鈴木 文直 吉井 章 米田 修一 野口 行雄 吉田 清一
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.941-945, 1990-10-20

16歳女性.健診の胸部X線写真で右後縦隔に5×4cm大, 第10胸椎の破壊を伴った球形の腫瘤陰影を指摘され, エコー下生検で骨巨細胞腫と診断, 手術にて全摘, 胸椎掻爬, 腓骨移植が行われた1例である.胸椎より発生したものとしては本邦11例目であり, 縦隔腫瘍像を塁した胸椎巨細胞腫としては本邦で2例目である.
著者
飯島 幸人 浜田 悦之 鈴木 裕 荒井 郁男 鈴木 務 林 尚吾 大津 皓平
出版者
東京商船大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

船舶の知能化に関連する分野は極めて広く, ただ単に船舶自身が知能を持つだけでは安全なる運航はできず, 陸上からの支援や, 海図データ, 海気象データなど数多くのデータの収集と伝送などが必要となる. 本研究ではまず船舶自身の知能化に関する基本的問題を研究し, 大よその指針を得ることができた. 本研究は1988年オーストラリアで開催されて国際航法学会で発表され, 世界中から注目されるところとなった. また航海, 特に知能化無人航行に必要であるディジタル海図, いわゆる電子海図については, 海岸線や等深線までの距離計算の高速処理のためには海図データのフォーマットを緯度経度表示ではなくラジアン表示の方が良い. また, レーダ映像との比較には大圏図法で行うべきだが高速処理には特に高精度を必要としないなら漸長緯度図法の方が良い. 高度知能化船では, 海象気象情報は正確で高精度であることが要求されるが, 海洋観測衛星(MOS-1)の現状の性能では不充分である. MSRアンテナパターンと偏波回転によるひずみ補正の基礎的研究を行った. その結果偏波回転の影響を補正した上で逆フィルタをかければ, 沿岸部や島などにおいてメインローブのみの画像を上回る分解能が得られ, しかも海域の輝度温度もメインローブのみの画像に近いものとなった. これらを総合した実験は, 実験規模の制約から一部の実験にとどめたが初期の目的は達成できた. 今後, 海運界と造船界では現状の改革の面から知能化少人数船の建造要求は強くなり, 研究が盛んになると思われるが, その際本研究がその基礎をなすものとして大いに参照されることと思われる. しかし研究は完成したものではないので, かえって残された問題や今後鋭意研究しなければならない事項が数多く浮上してきているので, さらに一層の研究を続けていく予定でいる.