著者
岡本 貴幸 爲季 周平 榎 真奈美 藤沢 美由紀 阿部 泰昌
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.B0057, 2006

【はじめに】運動機能は比較的良好であったが、重度記憶障害により能力との乖離を認めた症例を経験した。運動療法に加え記憶を代償するため外的補助具の使用により、活動範囲が拡大した症例についてPTの役割を検討する。<BR><BR>【症例】44歳男性。公務員。(現病歴)頭痛、嘔吐出現。2日後発熱、見当識障害を認め、3日後K病院を受診しヘルペス脳炎と診断。機能障害として左片麻痺、重度記憶障害が残存。8日後ベッドサイドにてPT開始。1ヶ月後ADL能力拡大目的にてOT開始。更なるリハビリテーション目的にて4ヵ月後当院入院。<BR><BR>【評価】(画像所見) CTより右前頭葉、側頭葉、後頭葉にLDAを認め、両側前頭葉、右側頭葉に軽度脳萎縮を認める。(理学所見)随意性はBRS左上肢、手指、下肢とも6。深部感覚は左下肢中等度鈍麻。筋力はMMT右下肢5、左下肢4。姿勢筋緊張は立位、歩行時に左上肢屈筋群、足関節底屈筋群軽度亢進。歩行は屋内T字杖使用100m、非使用で80m可能。(ADL)最小介助だが自発性は無く、促して行ったことも忘れる。排泄はトイレの場所が分からず、しばしば紙オムツ内に排泄する。FIMは運動項目47点、認知項目21点。(神経心理学的所見)記憶は、病前20年程の逆行性健忘と重度の前向性健忘を認める。更に、前向性健忘に由来する日時や場所の見当識障害、近時記憶障害を認める。記憶検査は、RBMT SPS 1/24、SS 0/12、WMS-R言語性記憶73、視覚性記憶 62、一般的記憶66、注意/集中力103、遅延再生50↓。知的機能はWAIS-R VIQ105 PIQ78 FIQ92。遂行機能はBADS総プロフィール得点18、全般的区分平均。<BR><BR>【経過】入院時より歩行練習と並行してサーキットトレーニングを実施するが、指示通り実施不可能。外的補助具としてメモリーノートを導入することで問題解決がある程度可能あり、手続き記憶の残存が示唆される。次の段階では、外的補助具として地図を利用して目的地に行く練習を実施。1ヶ月後、歩行能力はT字杖非使用で屋外歩行200m可能となるが、地図の使用が習慣化せず、一度病室を出ると帰室困難。病室隣のトイレに行くにも迷う。2ヶ月後、遠位監視下で地図を使用して目的地まで間違わず移動が可能となり、4ヶ月後、院内移動が自立。記憶検査は著変なし。FIMは運動項目85点、認知項目27点となる。<BR><BR>【考察】本症例は、重度記憶障害によりPT場面での歩行能力と病棟での活動が乖離していた。手続き記憶が残存していることに着目し外的補助具の使用を検討した。外的補助具の使用が習慣化したことで目的動作へつながり、院内の生活が自立したと考えられる。<BR><BR>【まとめ】PTとして残存している手続き記憶に着目し、移動能力の向上を目的にアプローチ法を検討、実施した。結果、活動範囲は拡大し、院内の生活は自立に至った。<BR>
著者
松井 丈夫 阿部 太郎 吉田 博一 牧野 瑤子 長谷川 誠 石田 宏司
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育学会年会物理教育研究大会予稿集 22(2005) (ISSN:24330655)
巻号頁・発行日
pp.128-129, 2005-08-06 (Released:2017-07-20)

平成16年度採択の文部科学省「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」に基づくプロジェクトとして、学生グループが考案・開発した「LEDで遊ぼう」「電気の世界」と題する実験授業の内容ならびにその中で使用した実験教材を紹介する。これらは、小学5・6年生の総合的な学習の時間で、実際に演示した。「LEDで遊ぼう」では、簡単なLED点灯回路を作成し、次にそのLEDを実際に点灯させながら、別途配布した豆電球点灯回路との類似点・相違点を小学生に考えさせた。また、「電気の世界」では、小型モータを利用した手回し発電、さらに風力発電や水力発電を、実際に体験させた。両テーマとも、身近な素材を利用することで小学生の理科への関心の喚起を心がけるとともに、小学生が積極的に実験に参加し且つ現象や結果を観察して自らの考えをまとめていくような配慮がなされている。
著者
功刀 正行 阿部 幸子 鶴川 正寛 松村 千里 藤森 一男 中野 武
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.967-984, 2010-11-05
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

残留性有機汚染物質による地球規模の海洋汚染の時空間変動及び化学動態を把握するため,商船を篤志観測船として用い,この目的のために開発した海洋汚染観測システムを搭載し,太平洋及び南シナ海における広域観測を実施した.日本-オーストラリア間は鉱石運搬船を,南太平洋(含む南極近海)はクルーズ船を,北太平洋(東アジア-北米間)及び南シナ海はコンテナ船を,それぞれ篤志観測船として用いた.鉱石運搬船,クルーズ船には専用の海洋汚染観測システムを開発し搭載し,コンテナ船にはユニット化した小型の海洋汚染観測システムを開発して搭載し,試料採取及び観測を実施した.海水中の残留性有機汚染物質の捕集は,固相抽出法を用い,船上で100 Lの海水を濃縮捕集し,採取試料は直ちに船上で冷凍保存し,日本に持ち帰った.持ち帰った試料は冷凍庫で保存し,分析直前に前処理後HRGC/HRMS-SIM法で分析した.すべての試料から残留性有機汚染物質が検出された.低緯度海域では,HCHsの濃度は低く,かつその異性体のうちβ-HCHが最も高い,一方高緯度海域では中央から北米沿岸域ほどα-HCHが高い傾向にあるなどその濃度や異性体存在比などは極めて特徴的であり,発生源及び輸送過程を推定する上で貴重な情報を与えることが明らかとなった.
著者
阿部 一博 棚瀬 匡彰 茶珍 和雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.123-129, 1998-01-15
参考文献数
17
被引用文献数
5 15

本研究では, バナナ果実(熟度;グリーンチップ段階)から種々の形状の切片を調製し, 切片の生理・化学的特性を調べた.ポリエチレン包装した切片では, 実験期間(96時間, 20℃)には明らかな糸状菌を伴った腐敗はみられなかったが, 果皮と果肉の切断面の褐変ならびに果肉の軟化がみられた.これらの変化は切断角度が大きくなるに従って顕著であった.果皮と果肉の切断面のハンター測色値(L値)の低下は0度切片で最も少なく, 切断角度が大きくなるに従って低下が明らかとなり, 縦切り切片で最も顕著であった.果肉硬度の変化は0度切片で最も少なく, 切断角度が大きくなるに従って硬度の低下が明らかとなり, 縦切り切片での軟化が最も顕著であった.C<SUB>2</SUB>H<SUB>4</SUB>生成量は貯蔵に伴って多くなり, 増加は縦切り切片が最も顕著で, 切断角度が小さくなるに従ってC<SUB>2</SUB>H<SUB>4</SUB>生成量も減少した.縦切り切片のCO<SUB>2</SUB>排出量は他の切片より多かったが, 0度, 30度, 60度切片間の差は小さかった.バナナ果実切片の貯蔵性とC<SUB>2</SUB>H<SUB>4</SUB>生成量には関連性がみられた.貯蔵環境中のC<SUB>2</SUB>H<SUB>4</SUB>を除去したり, C<SUB>2</SUB>H<SUB>4</SUB>濃度を高めても(20μl・l<SUP>-1</SUP>), L値ならびに果肉硬度の低下は0度切片で最も少なく, 切断角度が大きくなるに従ってこれらの低下が明らかとなり, 縦切り切片での低下が最も顕著であった.
著者
阿部 真由美 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S42011, (Released:2018-09-28)
参考文献数
12

本研究では,英語を自主的に学ぶ学習者が自ら学習リソースを選択する際の根拠を明らかにし,支援方法を検討することを目的として,日本人の成人英語学習者を対象にウェブ調査を行った.英語学習リソース選択根拠尺度を作成し,因子分析を行った結果,「自己ニーズ」と「外的影響」の2因子が抽出された.さらに,学習者の特性による違いを比較するために,英語の熟達度3群,学習継続期間3群,学習目的4群で分析したところ,継続期間および目的で違いが見られた.これらの結果から,学習者のリソース選択は「自己ニーズ」と「外的影響」の2つの根拠に基づくことが分かった.また,学習者の特性によって支援方法を変える必要性が示唆された.
著者
阿部 英樹 佐藤 晃
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.149-153, 2013-03-10 (Released:2013-03-22)
参考文献数
7

Japan is facing a challenge of wide-spread radioactive contamination by isotopes of cesium (Cs). Here we demonstrate that titanium oxide (TiO2) can be an efficient material to immobilize high concentrations of Cs ions in a durable solid-state framework. TiO2 was dissolved in a Cs-containing melt of molybdenum trioxide (MoO3) at 950oC. The melt was then electrolyzed at −1200mV (vs. a Pt reference electrode) to obtain a single-crystalline titanate, Cs0.169TiO2 (titanium-oxide immobilizer) , which contained 1g cm−3 of Cs. Moreover, the titanium-oxide immobilizer exhibited a 170 times lower Cs leaching rate than did Cs-containing borosilicate glass. The titanium-oxide immobilizer will contribute to the Cs decontamination because of its high Cs content and low Cs leaching.
著者
阿部 亮吾
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.14, pp.951-975, 2005
被引用文献数
3

1980年代以降急増したフィリピン人女性エンターテイナーの存在は,アジア系ニューカマーの中でも看過できない存在である.なぜならば,彼女たちは外国人を厳しく規制する日本の入管行政において,合法的な入国・就労が認められてきたエスニック集団だからである.本稿の目的は,システム化された移住労働の今日的状況のもとで,彼女たちを他者として位置づけているポリティクスを明らかにすることである.本稿では,名古屋市栄ウォーク街のフィリピン・パブを事例に,雇用者との労使関係,顧客との相互関係に着目し,彼女たちが雇用者と顧客双方からどのようなパフォーマンスを期待されているのかを議論した.そこで明らかとなったのは,ミクロ・スケールの日常空間で作用する雇用者の空間的管理のポリティクスと顧客のまなざしのポリティクスが,移住労働の制度・法的背景と相互に関係し作用する様相であり,それに果たすフィリピン・パブという空間の役割であった.
著者
瀬尾 育弐 宮島 泰夫 橋本 敬介 神田 良一 手塚 智 岩間 信行 橋本 新一 小笠原 洋一 阿部 康彦 本郷 宏信
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.109-117, 2005
参考文献数
11

生体の複雑な構造把握や術中応用のために超音波による3次元イメージングのニーズが高まっている。電子スキャンとメカスキャンを融合した装置はすでに製品化されているが, リアルタイム性, プローブサイズなどの問題がある。ここでは, 2次元アレイトランスジューサを使ったリアルタイム3次元超音波(以下RT-3D)を開発した。振動子は64×64=4, 096からなり, バッキング材を通して振動子面に対し垂直に信号線を引き出し, S/N向上のためインピーダンス変換器ICをプローブ内蔵した。振動子配列はスパースアレイとし, 送受おのおの1, 000chの信号線を取り出し, ビームフォーミングされた受信信号はリアルタイムボリュームレンダリング処理を行い, 15 volume/sで3次元表示した。
著者
阿部 正路
出版者
江戸川短期大学
雑誌
江戸川女子短期大学紀要 (ISSN:09125310)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.48-55, 1993-03-31
著者
阿部 純義
出版者
素粒子論グループ 素粒子論研究 編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.118, no.4, pp.D177-D186, 2011-02-20 (Released:2017-10-02)

複雑系の非平衡定常状態を記述するために提出された超統計(superstatistics)の考え方について概説する。
著者
鈴木 智大 小川 哲弘 阿部 暢男 赤地 拓澄 増田 貴久子 小山 智之 矢澤 一良 河岸 洋和
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.383-388, 2007

Osteoporosis is caused by an imbalance between bone resorption and bone formation, which results in bone loss and fractures after mineral flux. Osteoclast-like multinucleated cells can be differentiated in vitro from co-cultures of mouse bone marrow cells and osteoblastic cells by treatment with osteotropic factors, 1α,25-dihydroxyvitamin D3 (1α,25(OH)_2D_3) and prostaglandin E2 (PGE2). During screening for osteoclast-formation suppressing effects of the extracts of various mushrooms by using the assay, we found very strong activity in the extract of the mushroom Agrocybe chaxingu. Therefore, an attempt was made to isolate the active principles from mushroom and to determine their structures. Powder of the dried fruiting bodies of Agrocybe chaxingu was extracted with CH_2Cl_2, EtOAc and then EtOH. The CH_2Cl_2-soluble fraction only showed the suppressing activity. After repeated chromatography of the fraction, compounds 1 and 2 were purified as the active principles. Osteoclast differentiation was estimated by TRAP-(+) multinucleated cell formation. The addition of compound 1and 2 (3.1μg/ml, 6.8mM) reduced the number of TRAP-(+) multinucleated cells to 66% and 0%, respectively.
著者
阿部 隆明
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.447-449, 2014-05-15

はじめに コタール症候群は抗うつ薬や電気痙攣療法(ECT)の導入によって減少したと指摘されるが,最近では英語圏での関心の高まりを受けて,臨床報告や神経生物学的研究が相次いでいる。とはいえ,臨床的な文脈と無関係に,自分が死んでいるという妄想的信念を持つだけで,その診断がなされる傾向もある3)。これは,器官の否定,不死・巨大妄想,永罰・悪魔憑き(possession)妄想などの特徴をセットで指摘したCotardの原著からの大きな逸脱である。操作的な診断基準が存在しないので仕方ない面もあるが,筆者自身はCotardの意図を最大限尊重する立場である。ここでは原著に立ち返るとともに,その後の諸研究もまとめていくが,特に最近の文献は必ずしも古典的なコタール症候群を扱っているわけではないことを念頭に置いていただきたい。なお,本概念は日本でも繰り返し紹介されている8,9,11)ので,こちらも参照されたい。
著者
永田 正樹 松浦 美穂子 阿部 祐輔 高梨 伸行 福井 美彩都 山崎 國弘 長谷川 孝博
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2018-IOT-43, no.5, pp.1-6, 2018-09-20

静岡大学では,災害時の安否情報を共有する Web 安否確認システムを 2008 年から開発および運用している.安否確認システムの運用では,災害時の安否確認を迅速に実施するために,登録ユーザの組織構成,通知手段,管理者の操作など,様々な点を考慮しなければならない.組織構成について教育機関は学生の卒入学があり,名簿情報の入れ替えが毎年大きな規模で発生する.通知手段については,SNS の流行や通信端末の多様化によりメール利用率が低下しているため,その他の通知手段を確保しなければならない.また,組織構成や通知など Web システムにて操作するため管理者は操作に習熟する必要があり,システムには直感的でわかりやすい機能が望まれる.本稿では,教育機関での安否確認システムの効果的な運用手法を提案する.企業と比較し,教育機関では組織統制に異なる点が多い.教育機関に適した運用手法を用いることで,運用業務の軽減かつ効果的な安否情報の共有を実現する.