著者
長澤 哲郎 木村 育美 阿部 裕一 岡 明
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.295-298, 2006-07-01 (Released:2011-12-15)
参考文献数
12

ヒトヘルペスウイルス6型 (HHV-6) による脳炎・脳症のうち, 解熱・発疹期に短時間のけいれんが群発する症例の報告が散見される. 今回,この「けいれん群発型HHV-6脳症」において,急性期にsingle photon emission computed tomography (SPECT) にて患側の脳血流量増加が示された.これまで, けいれん群発型HHV-6脳症におけるSPECTでは全例で脳血流量の低下が報告されているが, いずれも慢性期に測定されていた. 本症例では,けいれん群発当日に患側大脳半球で血流量増加が認められた. けいれん群発型HHV-6脳症は予後不良例も報告されており, 今回はじめて血流量増加が確認されたことは, この脳症の病態解明と治療を検討する上で意義があると考えられた.
著者
三浦 周 関口 真理子 大倉 拓也 小竹 秀明 白玉 公一 斉藤 嘉彦 カラスコ-カサド アルベルト 阿部 侑真 辻 宏之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.9, pp.344-353, 2023-09-01

5G/Beyond 5Gと衛星通信を含む非地上系通信網(Non-Terrestrial Networks:NTN)の連携に関し,現在の動向や技術課題,情報通信研究機構(NICT)による研究開発の取組みを俯瞰的に記述する.衛星通信を含むNTNプラットホームが低軌道(Low Earth Orbit:LEO)衛星,高高度プラットホーム(High-Altitude Platform Station: HAPS)等の登場や電波・光技術の進展によって従来よりも大容量化,低遅延化,低コスト化が進んでいる.これを背景として,衛星通信/NTN-5G/Beyond 5G連携のためのネットワークアーキテクチャや無線アクセス方式が検討され,The 3rd Generation Partnership Project(3GPP)等での標準化が進んでおり,国内でも議論や提言,構想の提案がなされている.衛星通信/NTN-5G/Beyond 5G連携のキーとなる技術はネットワーク技術と,これを支える電波・光技術である.NICTでは,Beyond5Gにおける海・空・宇宙をつなぐ3次元ネットワークの実現を目指して衛星通信/NTNと5G/Beyond 5Gの連携技術の研究開発の取組みを進めている.ネットワーク技術では,異なる特徴をもつ複数のネットワークを連携させ,ユーザ及び運用事業者の満足度を最大化するため,統合的なネットワーク制御が必要である.そのため5Gネットワークと衛星の連携の研究や,NTNと地上系を相互接続するためのシステム構成の検討,リソース割当アルゴリズムの開発を行っている.電波技術では,高速大容量化を実現するための高周波数帯(Ka/Q/V帯)の利用,高速大容量化のためのマルチビーム化と周波数利用効率を向上するためのデジタル化を活用したリソース割当の柔軟性の向上,移動体地球局の柔軟性向上のための電子走査型平面アンテナ(AESA)の開発を行っている.光技術では,高速大容量通信や小型軽量化を実現できる利点を生かし,GEO衛星やLEO衛星,HAPS,ドローン等様々なプラットホームに搭載可能な光通信機器の開発や,地上衛星間光通信における大気揺らぎを補償する補償光学の研究を行っている.
著者
阿部 和俊
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.155-175, 2015 (Released:2016-01-14)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

本稿の目的は,経済的中枢管理機能を指標として日本の主要都市を位置づけ,その都市システムを検討することにある。対象とする年次は2010年である。経済的中枢管理機能とは,通常,民間大企業の本社と支所のことであり,本稿では2010年の上場企業2,442社を民間大企業とする。まず,本社から主要都市をみると,東京は1,072(全企業の43.9%)の本社を持ち,大阪がこれに次ぎ,309(12.7%)の本社を持つ。しかし,複数本社制を考慮し,第2本社の方を実質的な本社とみなすと,東京の本社数は1,189(48.9%),大阪のそれは259(10.6%)となり,両都市の差は大きくなる。支所数においても,最多都市は東京であり,大阪,名古屋がこれに続く。その差は本社数ほど大きくはない。また,業種・上下関係・テリトリーを分析すると,支所数多数都市ほど「鉄鋼諸機械」部門が多いことが指摘できた。上下関係からは,東京・大阪・名古屋・福岡・仙台・広島・札幌・高松の各都市が上位にあること,そしてこれらの都市が広域のテリトリーを持っていることが指摘できた。さらに,本社と支所の従業者数を考慮して,各都市の経済的中枢管理機能量を算出した。これと企業の支所配置から日本の主要都市の都市システムを提示した。
著者
阿部 真由美 石川 奈保子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.2, pp.105-111, 2023-07-21 (Released:2023-07-21)

大学3年生を対象としたゼミナールにおいて,2022年度春学期に反転授業形式で研究指導を行い,効果を検証した.その結果を踏まえ,同年秋学期には事前学習や授業内での活動を一部変更し,また,オンライン同期・非同期の授業形式を織り交ぜることで,多面的な授業を展開した.本発表では,秋学期終了後に行った受講生対象のインタビュー調査をもとに,授業デザインの各要素について検証した結果を報告する.
著者
阿部 美穂子 神名 昌子
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.157-167, 2016 (Released:2019-02-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

本研究は、質問紙調査と面接調査により、障害のある子ども(以下、同胞とする)の兄弟姉妹(以下、きょうだいと表記)の同胞に関する否定的感情の強弱と親からのサポート期待感の高低の関係を検討することを目的とした。小学生から成人のきょうだい335名の質問紙調査の結果、サポート期待感が高い群の否定的感情の平均値は、サポート期待感が低い群より有意に低いことが示された。また、否定的感情の強い群、弱い群に属するきょうだいとその親計12組の面接調査の結果、否定的感情が強いきょうだいの特徴として、家族に悩みを相談しない傾向、父親とのかかわりの希薄さが示唆された。また、否定的感情が弱い群の親がきょうだいの意思や感情を受容するサポートをしているのに対し、強い群の親には同胞の障害理解・対応促進を重視するサポートがみられた。このことから、きょうだい支援にあたり、両親ときょうだいとの受容的・支持的関係性を促進する必要があることが示唆された。
著者
吉田 智美 阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.17-20, 2016 (Released:2017-05-31)
参考文献数
9

都市には空間を物理的に分断するものが多く存在する。それは都市空間(もしくは都市空間を構成する要素)が隣接する周辺の地域と、ある存在によって切り離されることであると解釈できる。その中には貧困や差別などといった社会的課題と連動し、地域の人々にとって負の存在になるものもある。本研究ではその一例として大阪市住吉区浅香町1丁目・2丁目を取り上げる。浅香町は地下鉄車庫によって周辺地域と分断されていたが、住民の反対運動によって撤去されたという経緯がある。本稿では浅香町の分断に対する政策的アプローチと空間構造の変化を読み解き、分断の発生・解消・接続のプロセスを明確にし、浅香町の事例を都市空間の分断の一事例としてどう位置づけることができるかについて考察する。
著者
前田 佑輔 伏木 宏彰 角田 玲子 木下 修 阿部 靖 遠藤 まゆみ 西村 信子
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.692-697, 2017-12-31 (Released:2018-02-03)
参考文献数
7
被引用文献数
4 1

In the United States of America, physiotherapists are involved in vestibular rehabilitation. With the aim of clarifying the degree of interest in Japanese physiotherapists regarding vestibular rehabilitation, this study used a questionnaire to survey physiotherapists who had previously been exposed to equilibrium research at workshops and physiotherapists who had not been exposed as a control group. Approximately 80% of those in the control group were interested in vestibular rehabilitation. However, most physiotherapists had very few opportunities to receive education regarding the pathophysiology of the vestibular system and related diseases in a clinical setting. Physiotherapists who participated in workshops received this education from senior physiotherapists as their instructors. The small number of physiotherapists who were given such opportunities was engaged in vestibular system rehabilitation based on requests from otolaryngologists for a small number of cases. A question regarding vestibular rehabilitation was on the national examination for physiotherapists in 2015. However, there are few opportunities for education regarding vestibular system before and after graduation.
著者
竹内 寛貴 井手 一茂 林 尊弘 阿部 紀之 中込 敦士 近藤 克則
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.22-088, (Released:2023-06-08)
参考文献数
61

目的 健康寿命延伸プランの主要3分野の1つに,高齢者のフレイル対策が掲げられ,その1つとして社会参加の活用が期待されている。しかし,これまでの先行研究では,社会参加の種類や数とフレイル発症との関連を縦断的に検証した報告はない。本研究では,大規模縦断データを用い,社会参加の種類や数とフレイル発生との関連について検証することを目的とした。方法 日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study : JAGES)の2016年度と2019年度のパネル調査データを用いた縦断研究である。2016年度(ベースライン時点)と2019年度(追跡時)のJAGES調査に回答した高齢者から,ベースライン時点の日常生活動作の非自立者と無回答者,フレイル(基本チェックリスト8点以上/25点)とフレイル判定不能者などを除いた,28市町59,545人を分析対象とした。目的変数は追跡時のフレイル発症とし,説明変数はベースライン時点の9種類の社会参加の種類と数を用いた。調整変数には,ベースライン時点の性,年齢,等価所得,教育歴,婚姻,家族構成,就労,プレフレイル(基本チェックリスト4~7点/25点)の有無,喫煙,飲酒,都市度の11変数を用いた。多重代入法により欠損値を補完し,ポアソン回帰分析を用いて社会参加とフレイル発症との関連を検証した。結果 追跡時のフレイル発症は6,431人(10.8%)であった。多重代入法後(最小64,212人,最大64,287人)の分析の結果,老人クラブを除く8種類の社会参加先である介護予防(Risk Ratio: 0.91),収入のある仕事(0.90),ボランティア(0.87),自治会(0.87),学習・教養(0.87),特技・経験の伝達(0.85),趣味(0.81),スポーツ(0.80)で,フレイル発症リスクが有意に低かった。さらに,社会参加数が多い人ほどフレイル発症リスクが有意に低かった(P for trend <0.001)。結論 社会参加とフレイル発症リスクとの関連を検証した結果,ベースライン時点で8種類の社会参加をしている人,社会参加数が多い人ほど3年後のフレイル発症リスクが低かった。健康寿命延伸に向けたフレイル対策の一環とし,社会参加の促進が有用であることが示唆された。
著者
阿部 泰郎 稲葉 伸道 山崎 誠 福島 金治 末木 文美士 岡田 荘司 川崎 剛志 近本 謙介
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究の中心的対象である真福寺大須文庫の聖教典籍について、当初の方針にもとづき、基幹となる聖教を、全115合中50合まで調査を行い、カードに再訪し、そのうち40合まで、すなわち教相書の全てと事相書の前半部分にっいてデータ入力を終えた。そのうち20合までは報告書に略目録を収めた。調査の過程で発見した貴重な文献については、その一部を臨川書店『真福寺善本叢刊』第2期に影印翻刻と解題を付して、既に9巻を公刊している。本研究期間中には、『伝記験記集』『真福寺古目録集二』『法儀表白集』『伊勢神道集』『聖徳太子伝集』『中世先徳著作集』『性霊集注』の7巻が刊行された。本研究において真福寺の聖教典籍のうち、特に平安鎌倉期の諸宗の章疏や記録および神祇書については、二世信瑜を介した東大寺東南院伝来の文献群であることが明らかになり、中世真言教学興隆の中心的学僧であった頼瑜の著作群と併せて、真福寺の蔵書の価値が一層解明された。調査の一環として、未整理の大量の断簡について、平成16年度から予備調査を試み、その大半を閲覧し複数の分野で重要な文献を発見し、復原を試みた。その本格的な整理に、次年度からの科研費により着手を予定するが、これにより悉皆調査の基礎が築かれる。真福寺を軸として、中世寺院の経蔵が形成し蓄えた知的体系についての解明と歴史・宗教等諸学の研究との連携が進展し、その文献学一目録学的研究の重要性について学界共通の認識が醸成されつつある。特に説話文学会シンポジウム・ワークショップなどで文庫の保存の意義を社会に向けて発信した。なお関連する中世文学研究上の主題にっいて、本科研費の支援を得て毎年度公開研究集会を開催し、多大な成果を挙げた。勧修寺大経蔵聖教の調査については、入力されたデータの原本による確認を継続して遂行し全体の30%が完了している。
著者
高野 真悟 阿部 順子 鈴木 賢一
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.84, no.755, pp.87-96, 2019 (Released:2019-01-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

This report explains the concept of arts in health in the UK is and how it is implemented and financially managed by which organizations in British hospitals. In the UK, artistic activities are understood to contribute to the comfort and recovery of patients and the people around them. These activities are offered through partnerships between the government and arts in health organizations. Arts in health activities are diverse. We can classify them into eight fields, including arts in psychotherapy, arts on prescription, participatory arts programs for specific patient groups, arts in healthcare technology, arts-based training for staff, general arts activities in everyday life, arts in the healthcare environment, and arts in health promotion. These activities are offered strategically with specific objectives and targets. The targets are not only patients but also the people around the patient, such as a patient's family, visitors, medical staff, and citizens. While British hospitals have profited from various artistic activities in healthcare since the 1970s, most Japanese hospitals do not use them. This is due to the Japanese belief that medical treatment by experts is the most important function of a hospital, not recuperation. UK arts in health organizations are classified into four types of organization in partnership with hospitals: the internal section of National Healthcare Service (NHS) hospital type, the hospital charity type, the exclusive to specific NHS hospital type, and the independent type. An arts in health organization has three functions, including arts in health activities, research and development (investment, provide grants, development of resources, and investigation on efficacy), and organizational management (fund raising, public relations, and report). The importance of these three functions differs depending on the social and historical background of the organization. The three leading hospitals in the UK—Chelsea and Westminster Hospital, Royal London Hospital, and Great Ormond Street Children's Hospital—are filled with diverse visual art work collections of museum quality, selected by an art manager. These collections are installed to enhance the well-being of the people who use the hospital. Information about the practices in these three hospitals demonstrates the benefits and the costs of arts in health. These three hospitals have specific art management organizations, which provide various art programs in their hospitals, conduct research in collaboration with universities and other researchers, and manage finance and promotion to sustain their activities. They work for their own specific hospitals, but they possess autonomous human and financial resources. In the UK, the intervention of art in healthcare provides useful health outcomes, such as enhanced feelings of happiness and well-being, and the reduction of national medical costs. This view is shared by the government, policymakers, NHS staff, and arts in health organizations. Today, artistic activities are developing in Japanese hospitals. The UK model provides an excellent example of good practice, especially how to implement the autonomous management of Japanese arts in health activities.