著者
三宅 正二郎
出版者
日本工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

極低摩擦を実現するためナノ周期積層膜、ナノコンポジット膜など,カーボンを主成分とするナノ構造薄膜を形成した。その構造,組成の評価は透過型電子顕微鏡などの表面分析法を活用し、ナノメートルスケールの摩擦・摩耗など機械特性の評価と対比させた。さらにカーボンと各種金属を組み合わせた積層膜、ナノコンポジット膜について膜の構造と境界潤滑特性の関係を追求した。その結果からコバルト(Co)、マグネシウム(Mg)などを複合したカーボン系膜について境界潤滑下で極低摩擦を実現した。
著者
山内 博 吉田 貴彦 高田 礼子 高田 礼子
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

現在、無機ヒ素(iAs)の飲料水や土壌汚染からの大規模な慢性ヒ素中毒がアジア諸国で発生している。中毒の原因であるiAsの無毒化は、慢性ヒ素中毒の予防や根絶に寄与すると推測している。社会普及に繋がるiAsの無毒化技術を検討した。本研究から、酸化チタン光触媒、酢酸の存在下、光照射により、iAsは無毒化ヒ素であるアルセノベタイン(AsB)に変換された。この手法はヒ素汚染土壌や水の浄化に応用が期待される。海洋投棄モデルとしてAsBの海水中での挙動を検討した結果、短時間で海水中ヒ素濃度(2ppb)に安定的に到達し、この結果は究極の低コストプロセスとしてのAsBの海洋投棄の可能を示唆するものである。
著者
牛田 一成 大熊 盛也 丸山 史人 塚原 隆充 井上 亮 土田 さやか
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

家畜用のプロバイオは、ヒト用に開発された菌株を転用したものが多く、家畜に適しているかどうか曖昧である。宿主と共進化してきた菌種を分離し、ゲノム解析と抗菌作用検定を組み合わせた。飼養形態と品種を異にする、野生と飼育下のアジアイノシシ、アカカワイノシシ、イボイノシシの新鮮糞のNGSによるメタゲノム解析のほか、単離乳酸菌の全ゲノム解析を行った。ブタ用プロバイオ候補菌として、イノシシ科の共生乳酸菌B. thermacidophilum やL. mucosaeの可能性が高いと判断した。B. tは、薬剤耐性を伝播するので、抗菌性に優れた菌株も存在したL. mucosaeが有力であると考えられた。
著者
黒堀 利夫 青島 紳一郎
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

フェムト秒(fs)パルスの際立った二つの特徴を最大限に活用した「単一パルス干渉露光法」を用いて, 透明材料であるフッ化リチウム(LiF)結晶へのサブミクロン間隔のグレーティングの直接書き込みと同時に同じ材料中に形成されるレーザー利得を有するカラーセンターからのルミネッセンスとを併用した室温での二波長(緑, 赤色)可視域, パルス動作分布帰還型(DFB)カラーセンターレーザーを実現した.
著者
高原 淳一 久武 信太郎 栗原 一壽
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

プラズモニック導波路は金属を用いた光導波路であり、光の回折限界よりずっと微小な領域での光伝送など誘電体光導波路では不可能な機能を実現できる。金属薄膜は最も基本的なプラズモニック導波路である。本研究では金属薄膜を用いて超集束、分散制御によるスローライトや負屈折などの新しい光機能へとつながる現象を見出し、実際に受動機能デバイスを実現した。将来はナノ空間での非線形光学デバイスの効率向上に応用できる。
著者
座間 紘一 任 雲 小松 出 金山 権
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

得られた知見を以下の11項目にまとめる。1.国有企業改革の性格は現物資産所有に基づく計画の執行体としての国有企業を近代的財産権に基づく法人化=株式会社への転換によって所有と経営を分離し、現代企業への転換を図ろうとするものである。今日の到達段階は国有企業の改革の構図が明らかになり、外的市場的条件(金融証券)、内的条件(国有資産管理とコーポレートガバナンス機構)の同時的整備が開始された段階である。2.国有企業の制度問題は外部制約の弱化によるインサイダーコントロール、特に経営者のレントシーキングである。その原因は委託-代理関係の不明確さにある。3.今日における国有企業改革の重要な側面は国有資産管理である。3階層の国有資産管理の「上海モデル」は政府職能の分離、所有と経営の分離、コーポレート・ガバナンスの模範的形態である。4.3階層の国有資産監督管理機構の問題点はこの巨大な機構を誰が管理するかということである。5.グローバル競争に勝ち抜くための巨大な企業集団形成の現段階はこれら企業集団が未だ政府の保護と管理の下での育成段階にあるということである。6.金融改革は立ち後れており、従来の国有企業を中心とした改革から、金融システムと国有企業両方の改革を並行する総合的改革へと移行しなければならない。7.電力産業と電力企業の改革は様々な問題を抱えるものの、最近確実に市場化への方向で進んでいる。8.鉄鋼産業の改革は新しい戦略再構築が必要な段階にある。9.国有紡織企業の退出では、民営化コストは多大であり、中西部地域では更なる財政的支援が不可欠である。10.今日の国有企業経営者の利益請求権は「欠如」しているが、それは改革の段階性に規定された合理性を持つ。漸次的整備の必要とその形態を提起した。11.国有企業改革で蔑ろにされがちな労働者への矛盾のしわ寄せ問題について、その解決のために6項目の提案をした。
著者
高濱 和夫 白崎 哲哉 副田 二三夫 田中 英明
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

我々はこれまでに,グリシン(Gly)受容体が排尿反射の中枢機序に関与する可能性を明らかにしてきた.本研究では,まず脳幹Gly受容体が排尿反射に如何に関与するか検討した.中脳水道中心灰白質(PAG)から、排尿期に発火が増加するI型と、逆に発火が減少するII型の2種類のニューロン活動を微小電極法により記録した。両タイプとも、ブレグマより-8000〜-8300μmの領域に多く、I型は腹側に、II型は背側に多い可能性が示された。これらを含む腹外側および背内側PAGよりニューロンを単離し、Gly誘発電流を記録した。検討した全例でGly応答が記録され、その特性は脊髄等での報告とほぼ一致した。GlyとGABAの電流比は約1であり、ニューロンの形態(錐体細胞、双極細胞、多極性細胞)に依存しなかった。無麻酔の中大脳動脈(MCA)梗塞モデルラットにおいて、膀胱容量、排尿閾値、尿流率および膀胱コンプライアンスの減少、排尿潜時の短縮と尿道抵抗の増加が、梗塞後24時間以上持続した。この時、PAGおよびLDT領域のGly受容体α_1サブユニットの発現は変化しなかった。ストリキニーネ(Str)はMCA梗塞による排尿反射障害に影響しなかった。デキストロメトルファン(DM)は梗塞24時間後の投与で膀胱容量と排尿潜時を改善した。膀胱内酢酸注入は、内側視索上核、PAG、バリントン核、腰仙髄の後角、副交感神経核など、多くの脊髄・脳幹部でFos蛋白質を増加させた。StrおよびDMはPAGやバリントン核など排尿関連核でFos蛋白質の発現を抑制した。マウスMCA梗塞モデルにおいて、クロペラスチン(CP)は尿流率の減少と尿道抵抗の増加を改善し、無排尿性収縮の発現回数を抑制した。CPは、選択的GIRK(チャネルブロッカーとは異なり、5-HT誘発シングルGIRKチャネル電流の開時間に影響せず、閉時間を延長させた。
著者
時松 孝次 田村 修次 鈴木 比呂子
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

戸建て住宅の液状化被害予測・対策・修復技術の向上について検討し、(1)直接基礎建物の被害は、建物階数、接地圧、アスペクト比、地盤沈下量が大きいほど、また表層の非液状化層厚が薄いほど、大きくなること、(2)摩擦杭基礎の沈下挙動は、建物・地盤条件により、抜け上がり、共下がり、めり込み沈下に分類できること、支持杭の被害無被害に杭頭固定度、杭の変形性能と耐力が大きな影響を与えること、(3)液状化対策としてドレーンパイプを基礎外周に設置することが有効であること、(4)鉛直荷重と転倒モーメントに関する安全率により直接基礎の被害をある程度推定できることを示した。
著者
大野 仁美
出版者
麗澤大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

この研究では、アフリカ南部で話されているコイサン諸語・コエ語族内においてさまざまな点で「非コエ語族的」な特徴を有するガナグループの位置づけを再考するために、親族名称体系と文法体系の2つの観点から、ガナグループ成員内・コエ語族内における比較対照を、さらに語族の枠を越えて近隣の言語であるホアン語との比較対照をおこなった。その結果、ガナグループにみられる「非コエ語族的」な特徴は、文法項目においてはコエ語族内で歴史的変遷の結果もたらされた連続体の一部として位置づけ可能であるが、親族名称・親族体系に関しては外部との接触によって獲得されたものとみなすべきであるという結論に達した。
著者
間 陽子 小沼 操
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本及びアメリカ大陸のウシ材料を用いて独自に開発したsequence-based typing(PCR-SBT)法を、フィリピン牛のDNA を用いて、東南アジアのウシにも適応できるように改良し、牛白血病発症に対して抵抗性・感受性の牛主要組織適合性遺伝子複合体(BoLA)クラスIIDRB3 遺伝子のアジア地域における分布調査を行った。最初に、フィリピンの5 つの島に生育するHolstein、Sahiwal、Brahman、固有種およびその交雑種の計981 頭のDNA を収集し、nested PCR によりBLV の検出を行ったところ、BLV 感染率は1.6%~11%と島によって異なるものの全体的に低かった。次に、フィリピン牛に適応できるように改良したPCR-SBT 法に6 種類の新規を含む81 種類のBoLA-DRB3 アリルが検出されたことから、アジア牛のMHC が高度な多様性を示すことが示された。また、白血病発症を規定するアリルはフィリピンのウシ品種では非常に低い頻度であることも示された。
著者
赤瀬 章 藤浦 建史 今川 順一
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

トレリス栽培されたオウトウを対象にして,三次元視覚センサを取り付けた直角座標ロボットを試作した。収穫ハンドは開閉型,平行リンク型,リング型,カット型を試作した。果実とロボット間の距離は40cmが最も適していた。ほ場試験では,ハンドの位置が果梗からずれる場合があった。そのずれは最大約1cmであり,ハンドの位置決定成功率は57.2%であった。ハンドの位置決定が適正になされた時の各ハンドの果実収穫率は,開閉型と平行リンク型では80%以上であった。リング型ではその直径が果実直径に比して小さかったため0%であった。1本仕立てのオウトウを対象とした収穫ロボットも試作して実験を行った。この栽培様式は側枝を整枝して主幹のみを並木状に栽培するものである。このロボットは,4自由度マニピュレータ,三次元視覚センサ,ハンド,コンピュータ,走行部などで構成した。三次元視覚センサの画像を処理して,果実や障害物の位置を認識し障害物を避けて果実収穫を行うようマニピュレータの軌道を決定した。ハンドは果実を吸着したあと,フィンガで果梗を把持して収穫するものとした。実験の結果,目的外果実をフィンガで把持することがあったため,フィンガの開口幅を小さくして実験を行った。開口幅を小さくすると目的外果実は損傷しなかった。低樹高一本仕立ては,植栽5年目に10a当たり約500kg,7年目に10a当たり約800kgの収量を得ることができた。作業時間は盃状形と比べて,収穫は約3分の2,剪定は約4分の1に抑えられたが,摘芯は約3倍かかった。ポットを用いた加温栽培試験では,休眠覚醒直後(7.2℃以下の遭遇時間が1,400時間)に最低温度5℃から漸次昇温し,5月中旬収穫を目標とするのが効率的と考えられた。
著者
北島 健 佐藤 ちひろ 山口 芳樹 真行寺 千佳子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

受精における糖鎖の重要性は多数の報告があるが、遺伝子改変動物の解析結果から受精の成立には必ずしも必須ではない場合があることが例証されるなど、現在、糖鎖が関わる受精の分子機構の再評価が課題である。その課題解決のために、我々は糖鎖が集積してタンパク質や脂質とともに形成する分子複合体「細胞膜マイクロドメイン」に着目して研究を行った。本研究では、精子マイクロドメインに局在し糖鎖に富むGPI-アンカー分子が、これまで見出されていたウニと哺乳類以外にも、鳥類、両生類にも存在することを明らかにした。また、これらの分子が糖鎖を介して細胞内Caイオン調節に関わることを証明した。
著者
山口 隆英
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

日本企業が海外進出する市場として新興国が重要になっている。新興国は、これまで生産拠点であったが、市場ではなかった。新興国の経済成長に合わせて、新興国の市場としての重要性が高まってきた。新興国を市場として利益を上げることが課題となっている。その課題に対して、日本企業にはどのような組織能力が必要とされるかを検討することが本稿の課題である。この課題のキーポイントは、従業員の長期的な雇用を実現することによって、現地でつくり販売するというビジネスモデルを構築することであった。長期雇用にむけて、将来のキャリアパスの明確化が必要であった。この点については、今回の研究では十分に議論されず、今後の課題である。
著者
吉田 一彦 上島 享 脊古 真哉 佐藤 文子
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究では、日本の神仏習合の成立と展開について考察し、それを日本一国史の中で内在的に理解するのではなく、アジア東部における仏教と神信仰の融合の中で考え、この地域の宗教文化の中に日本の神仏習合を位置づける作業を行なった。この視座から以下の点を明らかにした。①『日本書紀』に記される仏教と神信仰の対立の話は創作性が高く、歴史的事実を伝えるものとは評価できない。②比叡山、白山などの神仏習合の聖山は、中国の神仏融合の聖山である天台山や五臺山の強い影響を受けて成立した。③「本地」の思想は真言宗の護持僧によって考え出されたもので、日本の「本地垂迹説」は11世紀前半に成立した。
著者
湯山 トミ子 武田 紀子
出版者
成蹊大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

社会的需要を背景に、大学教養課程での中国語学習者が増大しているが、中国語の言語学的特色、授業時間数の制約から、学習者が望む言語能力の習得はなお未達成である。本研究は、この課題に応えるべく構想、開発されたe-Learning活用中国語教育プラン & システム"游"の使用成果を基礎に、自律的な学習能力をもつ意欲的な学習主体の創造、学習状況に基づく教員と学習者の相互啓発による双方向性教育を可能とする学習情報活用型教育法と、それを実現するためのシステムを構築した。
著者
白土 博通 八木 知己
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

瞬発気流を再現する風洞実験装置の検討,試作を行い,正方形断面柱の揚力を測定した.揚力ピーク発生とカルマン渦による揚力変動周期の間の密接な関係が一部明らかとなったが,両空気力成分の分離に課題を残した.一方,既存の突風風洞を用いて矩形断面や5本円柱の過渡空気力を測定し,前者は上下面の剥離バブルの非対称な成長,後者は円柱間の複雑な流れの生成の重要性を明らかにした.さらに,過渡空気力のLES数値シミュレーションを実施し,カルマン渦との関係を得たほか,竜巻移動時の風速時刻歴シミュレーションにより,風速急変時の鉄道車両の安全性評価を試みた.
著者
佐野 みどり 新川 哲雄 阿部 泰郎 原口 志津子 米倉 迪夫 藤原 重雄 高岸 輝 織田 顕行 阿部 美香 加藤 みち子 島田 健太郎 小平 美香 林 東洋 宮下 真理子 鴈野 佳世子 池田 美弥子
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

寺社縁起・祖師伝を大画面に描いた中世の掛幅絵を中心対象とし、原本の調査、物語の現地調査を重ね、相対的に研究が手薄となっているこの分野の基礎資料を蓄積するとともに、周辺の仏教説話画・絵巻・垂迹画などとの関係も分析して、関連する専門分野の横断的な議論を深めた。特に、原本調査等にもとづく図柄の読み取りを反映させたトレース図を作成し、展示や出版にも活用した。また海外の日本研究者とともに国際シンポジウムを開催して、作品の魅力を発信することに努めた。
著者
楠戸 一彦 中村 哲夫 鈴木 明哲 崎田 嘉寛 孫 喜和
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,1946年に「対日アメリカ教育使節団」の一員として来日したC.H.マックロイ(1886-1959)の実践と理論が中国と日本に与えた影響について,まず中国で活動した時期(1913-1926)における実践と理論を中国の国立文書館や大学図書館及びアメリカの公立図書館と大学図書館で調査を実施した。次いで,調査結果に基づいて,マックロイの体育思想の中国と日本への影響について考察を進めた。これらの研究成果については,学会で発表すると同時に,学術誌に投稿し,『研究成果報告書』を作成した。
著者
松本 健 小野 健吉 青木 繁夫 大井 邦明 川西 宏幸 藤井 英夫
出版者
国士館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

近年の海外における日本の考古学的、人類学的、民俗学的調査研究はめざましいものがある。また同時に海外の文化遺産の保存・修復事業も盛んに行われるようになり、日本も国際貢献の立場からその協力を求められている。国際協力にはその地域の文化遺産を中心とした基層文化を研究し、また保存修復に関わる法律の整備、環境の調査や技術的研究が必要である。さらに各地域において長期に渡って調査研究に携わっている各分野の専門家による調査研究で、文化遺産を護る現在の経済的、政治的、文化的要因や環境が地域によって極めて異なることが明らかになった。従って文化遺産に対する画一的な経済的、技術的協力ではむしろ問題を残す結果となる。また従来のように、学術的調査研究や保存修復研究だけでは真の文化遺産の研究とは言いがたい。今後は各地域の文化遺産の学術的研究特に人文科学的研究を推進するとともに、保存科学や分析などを中心とした自然科学的研究、そしてさらに学術的価値の高い文化遺産を単に保存修復するだけでなく、それらを未来へ活かす研究、すなわちその地域における現在の政治、経済、宗教、社会教育、地域などと文化遺産の関わりを調査研究する社会科学的研究を実施していくことが不可欠となる。
著者
吉田 正人 山本 浩之
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

樹木の姿勢はあて材に発生する成長応力で調整されている。しかし、木材にあて材が含まれると、割れ・反りが大きくなり、高度利用の障害となる。そこで本研究は、針葉樹のあて材がどのように形成するのかを遺伝子発現の立場から理解することを目指した。細胞壁リグニンの合成に関連する遺伝子を調べたところ、あて材が形成されるときだけに発現する遺伝子を発見し、これをCoLac1と命名した。この遺伝子はあて材の細胞壁においてリグニン増加と密接な関係にあることを明らかにした。また、次世代シーケンサであて材形成時の遺伝子発現を網羅し、あて材形成の理解を深めた。