著者
市川 淳士
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

各種フルオロアルケン類に対して、金属錯体やLewis 酸による穏やかな条件下で行える求電子的活性化法を見出し、これらの活性化法をFriedel-Crafts 型環化に利用して、フッ素置換多環式芳香族炭化水素(F-PAH)の位置選択的合成法を3種開拓した。ここでは、フッ素置換基によるα-カチオン安定化効果を積極的に活用して、位置選択的な炭素-炭素結合の生成とフッ素置換基の導入を達成している。これら曲折型F-PAH合成法と直線型F-PAH合成法の両者を組合せて用いることにより、様々なピンポイントフッ素置換多環式芳香族炭化水素の系統的合成が実現できる。
著者
伊藤 康一 青木 孝文
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題では,画像間の類似性を高精度に評価するための「局所位相特徴」と呼ぶ新しい特徴量を定義するとともに,基本となる画像照合アルゴリズムを開発した.また,これに基づいて,高精度な類似度評価が重要となるバイオメトリクスの問題に適用した.局所位相特徴に基づく画像マッチング手法を用いることで,顔認証,虹彩認証,掌紋認証,指関節紋認証において,世界最高水準の性能を達成することを実験を通して実証した.
著者
山中 俊夫 相良 和伸 甲谷 寿史
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

大空間を有するオフィスにおいて、自然換気を利用した次世代型自然換気・空調システムにおける様々な通風導入システムの室内気流・温度分布特性を温度、CRI3、CO_2濃度などの指標を用いて明らかにするとともに、省エネルギー性について検討を行い、自然風の利用によって空調による冷房負荷の約60%が削減されることを明らかにした。また、自然換気用チムニーの設置位置に関する基礎的なデータも収集した。
著者
田口 紀子 増田 真 永盛 克也 吉川 一義 杉本 淑彦 多賀 茂 王寺 賢太 アヴォカ エリック 辻川 慶子 村上 祐二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

フランスにおける、「文学」と「歴史」という二つの隣接ジャンルの美学的、認識論的境界の推移と、具体的文学作品での歴史認識の表出を、17 世紀から 20 世紀までのいくつかの特徴的局面に注目して検証した。2011 年 11 月には国内外から文学と歴史の専門化を招いて日仏国際シンポジウム「フィクションはどのように歴史を作るかー借用・交換・交差」を京都日仏学館で開催した。その内容を来年度を目途にフランスで出版するべく準備を進めている。
著者
丸山 浩明 宮岡 邦任 仁平 尊明 吉田 圭一郎
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ブラジルの南パンタナールを研究対象に,住民が世代を越えて継承してきた湿地管理のワイズユース(wise use,賢明な利用)を発掘し,その有効性を検証した。パンタナールでは,雨季にアロンバード(自然堤防の破堤部)から内陸部へと水を引き込み,水位が低下する乾季にはアロンバードを閉鎖して浸水域を消失させることで,木本種の侵入による草地の森林化に向かう植物遷移を抑制し,良質な天然草地の維持・形成を実現してきたことが明らかになった。
著者
西成 活裕 岡田 雅之 Bandini S. Schadschneider A.
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、車、および人の流れ等に発生する渋滞の緩和方法について、理論とシミュレーション、および実測データを用いて考察した。高速道路における車の渋滞緩和のため、渋滞吸収走行を提案し、渋滞が緩和される条件を数学的に示した。そして理論をもとに実際の高速道路での実験を行い、その効果を確認することができた。そして人の流れの研究では、実際の駅の狭い通路での対向流を分析し、デッドロックが起こる条件を明らかにした。さらに現実への応用として空港における入国審査場における待ち時間短縮システムを構築し、社会実験によりその有用性が確かめられた。
著者
野家 啓一 座小田 豊 直江 清隆 戸島 貴代志 荻原 理 長谷川 公一 原 塑 北村 正晴 村上 祐子 小林 傳司 八木 絵香 日暮 雅夫 山本 啓
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

討議倫理学に基づく科学技術の対話モデルを作るために、科学技術的問題をテーマとする対話を実践し、そこから理論的帰結を引き出す研究を行った。その結果、以下の成果がえられた。1. 高レベル放射性廃棄物の地層処理に関する推進派と反対派の対話では、合意にいたることは困難だが、対話を通じて、理にかなった不一致に至ることは重要性を持つ。2. 推進派専門家と反対派専門家が論争を公開で行った場合、その対話を一般市民が聴いて、めいめい自分の見解を形成することがあり、このことが対話を有意義にする。3. 対話を成功させるためには、信頼や聴く力、共感のような習慣や徳を対話参加者がもつことが重要であり、このような要素を討議倫理学の中に取り込んでいくことが必要である。4. 対話では、価値に対するコミットメントを含む公正さが重要で、追求されるべきであり、それは、価値に対する実質的コミットメントを持たない中立性とは区別される。
著者
畑江 敬子 戸田 貞子 香西 みどり
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

われわれは保存した食物の安全性を確認したり、食べられるか否かの判断をする際に、しばしば味やにおいを手がかりにする。苦味および酸味はそれぞれタンパク質およびデンプンの腐敗のシグナルである。また、変敗臭やかすかな異臭も変質や腐敗のシグナルである。高齢者はこのような判断の機能がどの程度保持されているかについては、明確なデータは得られていない。そこで、65才以上の高齢者のべ248名の協力を得て、いくつかの味の閾値、ならびに腐敗のシグナルとなるにおいの閾値を官能検査によってしらべ、20才前後の若年者のべ127名と比較した。塩味についてはNaCl水溶液(8段階)、甘味についてはスクロース水溶液(7段階)、酸味についてはクエン酸水溶液(6段階)を用い水を対照として、濃度上昇法による2点比較法でしらべた。水と区別できる検知閾値を求めた後に、濃度を上昇させて何の味かわかる認知閾値の濃度を求めた。その結果、塩味の検知閾値と認知閾値、および甘味の検知閾値には、高齢者と若年者の間に有意の差(p<0.05)あり、高齢者は感度が低下していることがわかった。しかし、個人差が大きかった。においの閾値については、酢酸(10段階)、トリメチルアミン(11段階)、メチルメルカプタン(13段階)を用い、水を対照として官能検査を行った。いずれの試料についても高齢者は若年者より有意に閾値が高く、においにたいする感度が低下していることがわかった。しかし、高齢者の70%は自分のにおいに対する感度が低下しているという自覚がまったくなかった。以上のように高齢者は味にもにおいにも感度が低下しており、食物の腐敗や変質に対する直感的な識別能力が低下しているので、高齢者自身も自覚して注意を払う必要がある。
著者
高橋 正道 山田 敏弘 長谷川 卓 安藤 寿男
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

これまでに、2009~2011年の間、5回にわたるモンゴルの白亜紀についての野外調査を行った。主な調査地は、バガヌール、フレンドホ、テブシンゴビ、ツグルグ、シーブオーボ、シネフダク、バヤン、エルヘートなどのウランバートルの東南のゴビ地域である。この調査に参加した人数は、モンゴル古生物学研究所、エール大学、シカゴ植物園、金沢大学、新潟大学のメンバーである。これらの調査によってモンゴルの白亜紀の地層から初めて、3次元的構造を残している小型炭化化石を発見し、被子植物の初期進化と地球環境の変遷解明に有効な手掛かりを得ることができた。分担者の長谷川は,フレンドホ地域のフフテグ層において地質柱状図を作成し,植物化石試料採集露頭周辺についての地質学的な記載を行った。また、シネフダク地域のシネフダク層に関して柱状図を作成の上、採集した試料について有機炭素の同位体比を測定した.その結果,7‰程度の変動があることが明らかになった.この結果は,湖堆積物への植物プランクトン類と高等植物の相対的な含有率の変動を示していると考えられ,湖の成層状態や河川による高等植物遺体の流入量など,気候に関連する要因の変動読み取れることが判ってきた。また、マレー大学のLee教授と筑波大学の久田教授の協力を得て、モンゴルと対比可能なマレーシアで、熱帯地域での白亜紀の地層からの小型炭化化石の探索の可能性を探った。
著者
山下 俊一 大津留 晶 光武 範吏 サエンコ ウラジミール 難波 裕幸
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

甲状腺がんの発症分子機構を解明する為に、手術がん組織ならびに培養細胞を用いた発がんに関連する細胞内情報伝達系異常と遺伝子不安定性の詳細を明らかにすることを研究目的としている。BRAF遺伝子との相互関連分子であるARAFやRAPA1、GNAQなどの点突然変異の有無を検索し、いずれも異常がないことを証明した。さらに遺伝子導入発がん誘発候補遺伝子群の探索成果からはARAF異常の関与をin vitroでは証明したが、in vivoサンプルではその異常は見出されなかった。染色体再配列異常や点突然変異の蓄積による細胞死や細胞死逸脱機構について解析し、DNA損傷応答と細胞周期調節機序の関連について研究成果をまとめた。放射線誘発甲状腺乳頭癌のSNPs解析は不安定かつ不確実なデータの為、現在症例数を増やしその正否を確認中であるが、甲状腺特異的転写因子の一つである染色体9番目のFOXOE1(TTF2)のSNPs関連遺伝子異常がチェルノブイリ放射線誘発がんでも関連することを証明した。さらに遺伝子多型に関するSNPs解析結果をDNA損傷応答関連遺伝子群において取り纏め一定の相関を見出すことができた。以上に対して、甲状腺進行癌の分子標的治療の臨床応用は遅々として進まない現状である。p53を標的とする治療法の有用性は証明されたが、他の細胞増殖情報伝達系を標的とする有効な分子標的薬は臨床治験が実施されず欧米の情報に依存している。グリベックを中心に放射線照射療法との併用効果について臨床治験を進め進行癌、未分化癌の一部に有効性を証明した。
著者
大坪 英臣 北村 欧 鈴木 克幸
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1989年のアラスカ沖のエクソンバルデス号の座礁事故後、相次ぎ発生するタンカーからの油流出事故は、海洋環境に甚大な影響を与えるとともにその対策の必要性を強く認識させた。タンカーの構造に対しても、国際海事機関(IMO)において二重殻またはそれと同等な効果を持つことが義務づけられた。しかし、その後もタンカーからの油流出事故は引き続き起こっている。96年2月にはシーエンプレス号がイギリスで座礁事故を起こし、6万5千トンの原油の流出事故を起こし大規模な環境汚染を引き起こした。日本でも、97年1月に発生したナホトカ号の事故は、日本近海で発生した油流出事故としては最大の被害を与え、97年7月には東京湾でダイアモンドグレース号が座礁事故を起こし、国民に油流出事故の脅威及びその対策の必要性を強く認識させた。本研究では、この事故時の油流出を低減する技術等の研究を行い、将来の基準化、MARPOL条約の改正に向けてその妥当性を検討した。緩衝型船首構造の有効性を検討した。詳細FEM解析、模型試験により衝突の簡易評価式を作成し、試設計した緩衝型船首構造に対してシリーズ計算を行った。最後に、緩衝型船首構造を設計する際の指針を示した。今後、緩衝型船首構造が真に有効性を発揮するためには基準化が必要となる。その際には、船首構造を具体的に規定するのではなく、船首構造が持つべき単位面積あたりの圧潰強度の上限、下限(船首構造が柔らかすぎる場合は逆に吸収エネルギーが小さくなり、危険側になる)を規定する必要がある。本研究では基準案における具体的な強度の策定まで行うことはできなかったが、試設計した緩衝型船首構造の有効性をシリーズ計算により確認し、基準となるべき具体的な設計指針を示した。
著者
正田 誠 北 宜裕 北 宣裕
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.殺菌剤(ネビジン)耐性菌を収得することに成功した。この菌のiturin生産性は安定していたが、surfactin生産性は低下した。2.この耐性菌を農地に用いて植物病抑制試験を行ったところ、育苗の段階で使用することが有効であることが判明した。3.農業モンカット耐性は元株RB14Cが保持していることが明らかになった。4.RB14Cとモンカットの併用試験をポットにより実施し、使用するモンカットの量を1/5に減らすことができることを証明した。5.トマトの苗立枯病に対する効果をテストした結果、菌体かん注あるいは発芽種子処理と農薬フルトラニルのかん注を組み合わせると高い効果がみられた。6.キュウリホモプシス根腐病の抑制テストを実施した。キュウリの菌を移植する時、RB14Cの菌体懸濁液を根に浸す処理によって顕著な病害抑制がみられた。7.キチナーゼ遺伝子をRB14Cおよび枯草菌M1113に導入し、キチナーゼを生産することを確認した。各種の病原菌とキチナーゼ遺伝子保育菌を混合すると病原菌の菌糸の成長が抑制されることが実証された。8.iturin生合成遺伝子のクローニングに成功した。iturin合成遺伝子は約30kbpからなる巨大分子であり、上流部分に側鎖である脂肪酸合成に関与すると考えられる遺伝子が思い出された。9.surfactin耐性遺伝子をクローニングし、その特性を明らかにした。今まで知られている多剤耐性遺伝子と相関性を示した。この遺伝子の増幅はsurfactinの生産性の向上にはつながらなかった。10.iturinおよびsurfactinの高生産条件元株によるiturinおよびsurfactinuの生産量は数100ppmであったが培地組成を検討した結果、surfactinでは20g/l、iturinは38/lまで生産量を向上させることに成功した。こうして生産性が向上した培養液による植物病抑制効果を検討し、その有効性が証明された。
著者
吉井 邦恒 大山 達雄 長谷部 正 勝又 健太郎 長友 謙治
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

地域インデックスタイプの収入保険については、①収量と価格の両方が負の相関をもって変動する状況下では、収量保険に比べて保険金の支払いが少なくなるものの、収量と価格の両方が下落する年には、収入の大幅な低下を緩和すること、②価格が低下傾向にある状況下では、収量と価格の相関関係が小さい地域における支払いが特に大きくなることから、その制度設計に当たっては、収量と価格の相関関係に留意した保険料率の設定が必要であることを明らかにした。
著者
辰己砂 昌弘 松田 厚範 忠永 清治 南 努
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、メカニカルミリング(MM)法により得られる非晶質微粒子を熱処理することにより、高イオン伝導性結晶を析出させた新しいタイプの固体電解質ガラスセラミックス材料を創製することを目的としている。2年間で得られた主な成果は以下の通りである。(1)MMによるLi_2S-P_2S_5系、Li_2S-P_2S_5-SiS_2系およびLi_2S-P_2S_5-GeS_2系非晶質固体電解質材料の合成を試みた。その結果、何れの系でも広い組成域でガラスが得られた。これらのガラスは室温において10^<-4>Scm<-1>程度の高い導電率を示した。(2)上記(1)で作製したガラスを様々な条件で熱処理することにより、室温での導電率が10^<-3>Scm^<-1>付近の極めて高い導電率を有するガラスセラミックスが得られた。(3)上記(2)で得られたガラスセラミックス中には、現在室温で最も高い導電率を示すLi_<4-x>Ge_<1-x>PxS_4系チオリシコン結晶と類似の結晶がいずれも生成しており、これが高い導電率の得られる要因であることを見出した。(4)Li_2S、単体リン、単体イオウを出発原料として、Li_2S-P_2S_5系ガラスおよびガラスセラミックスの合成をMM法により試みたところ、熱的・電気的性質においてLi_2SとP_2S_5から作製したものとほぼ同等の生成物が得られた。(5)MM法によって得られたLi_2S-P_2S_5系ガラスセラミックスを固体電解質とし、負極にIn金属、正極にLiCoO_2を用いて全固体二次電池を試作し特性を評価した。その結果、初期数サイクルの不可逆容量が大きいものの、初期充電を容量規制で行うことによって放電容量が増大し、200サイクル経過後も放電容量約100mAhg^<-1>、充放電効率ほぼ100%の極めてサイクル特性に優れた全固体電池が得られた。
著者
平野 恒夫 長嶋 雲兵 鷹野 景子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本年度は、1)剛体近似の代わりに分子自由度を許す分子性結晶構造予測プログラムMDCPを作成し、テストとしてアルコールなど若干の分子に適用して期待した成果を得た。2)MDCPプログラムの並列化をほぼ終了した。3)ab Initio分子軌道法の分子動力学への導入分子動力学の最大の問題点はいかにして良いポテンシャル関数を手に入れるかという問題である。我々は、力を分子軌道法で求めながら分子動力学の各タイムステップを進めていく方法をとることを考えていたのであるが、まず手始めに、炭酸ガスの分子性結晶の構造を化学式CO_2のみから予測することを試みた。すなわち、炭酸ガス分子の2量体に関する相互作用エネルギーを高精度のab Initio分子軌道法で求めてexp-6型のポテンシャル関数にフィットし、その結果得られたポテンシャル関数を使ってMDCPによる分子性結晶の構造予測をやってみたところ、常圧および高圧での結晶構造、および10万気圧あたりから始まる相変化まで十分な精度で予測出来ることが判明した。なお、本来の目的は、分子集合体についての分子動力学計算において、ポテンシャル関数を使うかわりに、分子動力学の各ステップで量子化学的に力を計算することにあるので、計算が早く、かつ精度がよいという密度汎関数法の適用を考え、予備的な計算を行った。
著者
西村 昌也 宇野 隆夫
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

大規模面積をもち,かつ各時代に亘って利用されてきた遺跡を構造的に理解することは,大規模発掘調査を除けば非常に困難である。本研究は,ベトナムにおける城郭遺跡や大型居住遺跡を対象に,小規模な発掘調査と地形の観察や測量調査、さらに地図資料の分析などから,遺跡の構造的理解をめざす研究を行ったものである。これまで構造的理解が未提出であった各遺跡に対して,地図資料分析と微地形観察調査とGPS測量を組み合わせた胡朝城遺跡の構造、試掘調査と微地形観察と測量調査を組み合わせたホアチャウ城の形成過程と時期別の構造、衛星写真と地形踏査によるチャンパの各城郭遺跡の構造などの全く新しい知見を提出し,後続研究が追随できるよう。その方法論を説明しつつ研究成果を出版した。
著者
小倉 充夫 青木 一能 井上 一明 遠藤 貢 舩田 クラーセンさやか 眞城 百華
出版者
津田塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

大半のアフリカ諸国で、 国民統合は言語やエスニシティの同一性によってもたらされはしなかった。冷戦後の現代においても国民形成はアフリカでは最重要な課題であり続けている。この問題を民主化、移動、都市化と関連させて検討した。都市第一世代であった年長者に比して、現在の都市青年層はより教育を受けているが就業が困難であり、彼らの国民的そしてエスニックなアイデンティティの動向に注目する必要がある。
著者
重村 力 三橋 伸夫 川嶋 雅章 三笠 友洋 西 和夫 田中 貴宏 山崎 義人 内平 隆之 佐藤 栄治
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

横浜市など南関東の都市内に残る「谷戸=やと」の地形・実態と、都市生活・都市環境に果たしている役割とその関連行政を分析した。「谷戸」は横浜市域だけで約4,600あり、典型的単位では2~30mの斜面からなるU字谷の下方に幅数十m奥行き200mほどの平地がある。市街地化したもの、緑地を維持しているものに分かれ、自然が保全されているものでは、その環境的役割・生活的社会的役割は大きく、今後の市街地環境の向上にとって貴重な資源であることを実証した。
著者
佐々木 史郎 小谷 凱宣 荻原 眞子 佐々木 利和 財部 香枝 谷本 晃久 加藤 克 立澤 史郎 佐々木 史郎 出利葉 浩司 池田 透 沖野 慎二
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、北海道内の博物館に収蔵きれている、アイヌ民族資料の所在を確認し、その記録を取るとともに、その資料が収蔵された歴史的な背景を解明することを目的としていた。本研究で調査対象としたのは、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター植物園(北大植物園)、函館市北方民族資料館、松前城資料館である。この3つの博物館が調査の対象とされたのは、資料の収集経緯に関する記録が比較的よく残されていたからである。3年にわたる調査の結果、北大植物園が所蔵する2600点に及ぶアイヌ文化関連の標本資料全点と松前城資料館が所蔵する320点余りの資料の全点について調書が作成され、写真が撮影された。また、函館市北方民族資料館では約700点(総数約2500点の内)の資料について、調書作成、写真撮影を行った。その結果、総計約3500点を超えるアイヌ文化の標本資料の詳しい調書と写真が作成された。本科研での調査研究活動では、標本資料の熟覧、調書作成、写真撮影にとどまらず、当該資料が各博物館に所蔵された経緯や背景も調べられた。植物園の資料の収集には、明治に北海道開拓指導のためにやってきた御雇外国人が関わっていたことから、彼らに関する史料をアメリカの図書館に求めた。調査の過程で、これらの博物館、資料館の資料が、明治から大正にかけての時代に収集されていたことが判明した。それは時代背景が明らかな欧米の博物館に所蔵されているアイヌ資料の収集時期と一致する。本科研の調査により、以上の3つの博物館のアイヌ資料は、すでに数度にわたる科研で調査された欧米の博物館の資料に匹敵するほどの記録と情報を備えることになった。それは、記録がない他の国内の博物館のアイヌ資料の同定、年代決定の参照に使えるとともに、アイヌ文化の振興と研究の将来の発展に大きく寄与することになるだろう。
著者
李 海峰 米谷 雅之 藤田 健
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、中国における市場経済発展の過程において社会経済がどのように変動しているか、大衆消費社会がどのように形成されているか等について、経済水準の異なる都市で消費者の生活や意識行動の調査を行い、中国における大衆消費社会の形成過程を解明するための調査研究である。本研究は計画とおりに大都市の北京市、上海市、広州市、重慶市において、各300世帯、地方都市の瀋陽市、石家荘市、武漢市において各200世帯、計1800世帯を無作為で抽出し、アンケート調査を実施した。この定量的調査研究を行うと同時に、定性的調査研究も行っている。北京市、上海市、広州市、重慶市、瀋陽市の5都市で計120世帯に対し、聞き取り調査を実施した。二通りの各調査は回収率が99%で、広範囲にわたって質の高い調査結果が得られた。回収したデータを日本に持ち帰り、分析を進めてきた。1990年代との時系列の比較、都市間比較、国際比較の観点から、解明している。従来,アメリカや日本における大衆消費市場の形成過程では,所得階層間の格差が次第に縮小し,上流階層だけではなく,多くの家庭が消費の自由選択力を持ち,消費財を絶えず買い換えたり,購買量を増やしたりする。しかし,中国は欧米や日本と異なり,都市間、所得階層間の格差が1990年代より拡大している一方、「中流階層意識」が急速に増加し、消費者はより高次の欲求の充足を求めているのは特徴である。都市における消費者ニーズは、必需品への支出から贅沢品への支出へ、モノへの支出からサービスへの支出に重点を移している。総体として「量」的欲求から「質」的欲求へと向上している。「消費生活水準の上昇」「所得増加への欲求」「今後の消費支出傾向」「消費者行動の特性」からみて,今後,中国の経済成長率は「政府」「企業」だけではなく,「消費者(家計)の力」から大きな影響を受けることになる。