著者
青井 哲人 角南 聡一郎
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、台湾漢人家屋の寝室に広く観察される〈総舗〉等と呼ばれる揚床状の設備について、(A)分布・類型、(B)起源と形成過程、(C)定着と変容の過程について、植民地期における在来住居・住様式の「日本化」という観点から、主として臨地調査(実測・インタビュー)を通して解明した。日本の植民地支配は、衛生・経済政策による家族人員増加、日本家屋およびその室内意匠の文化的規範としての機能、材料流通の再編と技術移植などの回路を通して、台湾漢人の寝室・就寝様式に深く及ぶものであったことが明らかになった。
著者
松井 幸夫 植村 勝慶 江島 晶子 倉持 孝司 榊原 秀訓 小松 浩 元山 健
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本科研研究は、1997年総選挙によって登場したニュー・レイバー(新生労働党)のブレア政権が推進した「憲法改革」を、近代憲法の21世紀的な展開を展望しつつ、その基礎にある「第三の道」のフィロソフィーを視野に入れて総合的に研究しようとするものであったが、3年間の研究によって極めて大きな、画期的な成果を生むことができた。本研究は、所属研究機関が異なる14名の研究者による共同研究であったが、それぞれの研究分担課題を明確にし、それらを研究代表者及び世話人の密接な協力と連携によってひとつの総合的な研究として遂行することができた。3年間を通して、春と秋の全国学会時には必ず研究会と情報交換の場を持ち、8月には3日の合宿研究会を開催して研究の進捗の確認、相互交流、情報交換を行い、また、毎年3名をイギリスに派遣し、憲法改革の実施状況の調査と情報収集、現地の研究者・政党はじめ主要機関との交流を進め、この点でも成果は大きかった。それぞれの研究成果は、本科研研究会のメンバー全員が参加した『新版現代憲法-日本とイギリス』の編集発行や、メンバーによる二冊の単著はじめ、12冊の著書の刊行、25本に上る学術雑誌への論文掲載、さらに、11件の学会発表を生んだ。それぞれの研究課題についての成果の集約は、研究成果報告書にまとめられている。本研究の何よりも大きな成果は、同時代的に進行しているイギリス憲法改革を、近代立憲主義の21世紀的展開という視野の中で比較憲法的視野で捉え、多数の研究者が一体となってこれを総合的に研究できたことにある。また、憲法改革の各分野についても、その内容、評価、展望等について、それぞれ大きな成果を生むことができた。それらは、さらに出版助成を得て公刊し、されにその成果を世に問う予定である。
著者
宮腰 英一 森田 朗 大桃 敏行 高橋 寛人 若林 直樹
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、公財政支出の削減が推し進められる中で、わが国及びイギリスが「子ども・青少年」施策の効率化を図り、かつその意思決定と実施過程において責任体制を支える「ネットワーク型ガバナンス」を構築し、教育運営システムの改善を進めている実態を現地調査により明らかにした。(1) 英国バーミンガム市の「子ども・青少年」行政について市当局及び「子どもセンター」への訪問調査と職員へのインタビューを実施した。その結果、教育行政に隣接する福祉・医療・労働の分野を「子ども・青少年」行政として統合している実態がわかった。(2) 国内調査 : 太田市、佐賀市、出雲市、豊田市、駒ヶ根市、大分市等の「子ども行政」に見られる教育委員会の部局再編の経緯について情報を収集し、成果を関連学会において発表した。
著者
浦 雅春 石光 泰夫 小林 康夫 杉橋 陽一 河合 祥一郎 高橋 宗五
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究は既存の国や文化の枠を超えてますますクロスオーバー化する現代の演劇の諸相を歴史的淵源にさかのぼって分析するとともに、近年著しい成果をあげているインターディシプリナリーな分析装置を手がかりに多角的に演劇の表象システムを再検討することを目指したものである。年度ごとの研究成果を記せば、以下の通りである。平成9年度においては、まず研究の端緒として広くヨーロッパ近代演劇の成立にかかわる各国の演劇理論を再検討し、個々の演劇理論が具体的にどのような舞台表象とつながりの中で発展してきたかを解明した。平成10年度には、「身体論」と「空間論」の観点から演劇の表象システムを考究した。おのおの文化に固有な身体観や空間意識がいかなる形式を演劇に与えるか、また逆に演劇という表象システムが演劇固有の身体や空間を形作ってきたか、その相互のダイナミズムを理論化した。平成11年度には、精神分析の立場から演劇に分析を加えた。たんに戯曲というテクストを精神分析的に解剖するのではなく、演劇と精神分析がきわめて類似した表象システムであることを分析し、演劇の中でヒステリー的身体がいかに抑圧され、また解放されてきたを歴史的に解明した。最終年の平成12年度には、これまでの研究成果の取りまとめの段階として、演劇という表象システムの歴史的変遷を総括した上で、演劇と他のメディアの相互作用、個別身体論や空間論との交叉から演劇のインター・カルチャー的本質を抽出し、演劇理論の新しいパラダイムを構築した。
著者
吉岡 章 嶋 緑倫 杉本 充彦 松本 雅則
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

心筋梗塞や脳梗塞をはじめとした致死的な病的血栓症は多彩な要因で成立するが、生体防御に本来必須である止血機構が発症トリガーになると考えられている。止血機構は血小板粘着、凝集相と血液凝固相の2つが協調的に機能して成立するが、興味深いことに各々の相で中心的役割をはたすvonWillebrand因子(VWF:血小板粘着、凝集)と第VIII因子(FVIII:血液凝固)の2分子は生体では複合体を形成して存在することが知られている。本研究では古典的な血小板生物学や血液凝固学の枠組みを越えた視点で、第VIII因子/VWF複合体の包括的な血栓促進機能を生理的血流下で解析し、この複合体の適正な制御による新しい抗血栓症戦略の構築を目標とした。(1)第VIII因子の制御:我々は、強力な生理的線溶因子であるプラスミン(Plm)の第VIII因子制御機能の解明をおこない、PlmがFVIII活性を初期段階で約2倍上昇させ、その後速やかに低下させることを明らかにした。これらの知見で、今まで注目されていなかった凝固系と線溶系の密接なリンクが判明した。(2)VWFの制御:VWFの生物学的機能に大きく関与するマルチマーサイズの制御はADAMTS13がつかさどっているが、今回、ADAMTSI3によるVWF切断活性発現メカニズムを生理的な前血流動状況下で解析した。その結果、ADAMTS13は高ずり応力下での血栓形成現場でVWFを切断し、リアルタイムにVWF機能ならびに血栓成長を制御していることが判明した。このADAMTS13のVWF切断メカニズムはずり応力依存性であり、血流に直接暴露される血栓外表面部に優先的であった。今回明らかとなったADAMTS13のVWF切断メカニズムは、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の病因論を明確に説明するのみならず、止血機転が機能した後に血管閉塞のみを特異的にブロックするユニークなものであり、止血機能と抗血栓機能とが両立する新世代型の抗血栓症戦略の可能性を示唆する。
著者
寺内 信 佐藤 圭二 山本 剛郎 安田 孝 馬場 昌子 西島 芳子
出版者
大阪工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

近代産業都市の住宅地形成を日本の長屋建住宅とイギリスのテラスハウスの比較研究として実施した。日本では大阪と名古屋の都心周辺部における長屋建住宅地の形成過程と第2次世界大戦後の変容、消失実態を明らかにした。イギリスではリバプール、バーミンガム、リーズを主として、テラスハウス地区の形成過程、戦後の改善過程、改善主体や改善手法について考察した。また、老朽住宅の建て替えや、居住者の高齢化に伴う高齢者居住対策の活動について、およびバーミンガムにおける居住者分布のパターンについて分析している。日本の長屋建て住宅は19世紀末からの近代産業都市建設の過程で、庶民住宅として供給されたが、第2次大戦後は社会経済的争件の欠落により減少した。一時的に非木造テラスハウスとしての普及が試みられたが、成功しなかった。都心居住の再生が推進されつつある今日では、新たな再建の方法とルールが必要とされている。イギリスでも戦後の住宅建設では増加していないが、1960年代以降の居住地改善活動によって、改善・維持がすすめられた。その過程で重要な役割を果たしたのがハウジング・アソシエーションである。しかし多様な主体による居住地再生活動にもかかわらず、テラスハウスの高齢者・障書者対応の改造は進展せず、新たな改修方法の開発と実験が必要と考えられる。
著者
田口 洋美 佐藤 宏之 辻 誠一郎 佐々木 史郎 三浦 慎悟 高橋 満彦 原田 信男 白水 智 佐藤 宏之 辻 誠一郎 佐々木 史郎 原田 信男 白水 智 三浦 慎悟 神崎 伸夫 前中 ひろみ 高橋 満彦 岸本 誠司 中川 重年 梶 光一
出版者
東北芸術工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究が開始された翌年平成18年度においてクマ類の多発出没が発生し、捕殺数は約5000頭、人身事故も多発した。本研究はこのような大型野生動物の大量出没に対する対策を地域住民の歴史社会的コンテクスト上に構築することを主眼とし、東日本豪雪山岳地域のツキノワグマ生息地域における狩猟システムと動物資源利用を「食べて保全」という市民運動へと展開しているドイツ連邦の実情を調査し、持続的資源利用を含む地域個体群保全管理狩猟システムの社会的位置づけとその可能性を追求した。
著者
浅川 修一 藤森 一浩 清水 厚志 堺 弘介 満山 進 小島サビヌ 和子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では次世代シーケンサーを用いてメダカおよびトラフグの各組織(速筋、遅筋、腸、眼、脳、心臓、肝臓、卵巣、精巣、初期胚など)から得た小分子RNA(miRNA, piRNA, siRNA)の塩基配列を解読し、その発現プロフィールを明らかにした。精巣、卵巣以外の各組織ではmiRNAが主要な発現産物であったが、精巣、卵巣ではpiRNAが主要な発現産物であることが推定された。またメダカとトラフグに共通に発現している未同定の小分子RNAを多数見いだした
著者
松村 和則 柳沢 和雄 前田 和司 甲斐 健人 西原 康行 矢崎 弥
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

研究は、以下のような構成でまとめられた。序:松村和則「白いスタジアムのある風景-「開発とスポーツ研究」序説-」I 鹿島の開発とW杯柳沢和雄「鹿島開発とワールドカップ-外発的発展の必然としてのワールドカップ-」橋本政晴「『地域』へとコンテクスト化されるメディアイベント-鹿嶋市S地区におけるT氏のサポーター活動を事例として-」石岡丈昇「農業退出者の軌道とサッカー開発-地元旅館業者からみたワールドカップと鹿島-」II 「在日」とW杯鈴木文明「2002FIFAワールドカップと在日朝鮮人-大阪生野区・コリアタウンにおけるワールドカップ観戦会を通して-」III 札幌の開発とW杯大沼義彦「五輪開催都市からW杯開催都市ヘ-札幌市におけるメガスポーツイベント誘致と都市開発-」前田和司「2002FIFAワールドカップと都市開発-札幌ドーム建設をめぐって-」IV 招致問題とW杯甲斐健人「ワールドカップキャンプ招致のシナリオと国際交流-三重県鈴鹿市の事例-」矢崎弥「キャンプ誘致と地域づくり・地域活性化-新潟県十日町市クロアチア共和国代表チームキャンプの事例-」西原康行「ワールドカップ新潟開催の遺産-あるボランティアの活動から見えるもの-」調査資料Richard Light"The 2002 FIFA World Cup on Youth sport and Identity石岡丈昇・松村和則「中津江村住民意識調査」
著者
衛藤 幹子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成15年度のイギリス調査では、12の女性団体を調査した。イギリスの女性団体の多くは、大きく2つの包括組織(NCWGBとNAOW)に統合される一方、女性の意見を政府の女性政策に反映させるという役割を担う「全国女性委員会(Women's National Commission, WNC)」が全組織を束ねている。イギリスにおける女性政策の形成過程では、個々の女性団体の提案は、NCWGBとNAOWから、WNCに渡され、WNCが取りまとめて、政府に提起するという政策形成の行程が確立していた。平成16年度のデンマーク調査は、(1)EUおよび北欧5力国との協力関係、(2)デンマーク政府と女性団体との関係、(3)デンマークにおける代表的な女性団体の実態の3つのレベルで実施した。デンマークのジェンダー関連政策の形成において女性組織の意見は政府政策の中に反映されていたが、それは女性団体の一方的な圧力行動の結果ではなく、デンマーク政府がこうした非政府団体の意見を求め、それを政策に取り入れようとしているからであった。平成17年度のスウェーデン調査では、ストックホルム大学のドゥルデ・ダレループ教授のもとで、(1)政策決定における女性団体の影響力、(2)スウェーデンにおける代表的な女性組織の実態、(3)クオータ・プロジェクトの活動調査と学術交流を行なった。国家の主導の所謂「上からのフェミニズム」という通説に反して、現実にはスウェーデンの女性団体は大きな政治過程において強い影響力を行使していた。ジェンダー平等局は、非政府・非営利女性活動組織との対話の場を定期的に設定していた。平成18年度は、(1)9月17日に実施されたスウェーデン総選挙に初登場したフェミニスト政党の選挙キャンペーンの観察と(2)フィンランドにおける女性団体と政党との関係を調査した。スウェーデンでは、フェミニスト政党の選挙運動に参加し、スウェーデンの女性たちが世界のトップ・レベルにあるスウェーデンの男女平等政策に必ずしも満足しておらず、真の平等を求めて政党が結成されたこと、すなわち「上から」の国家主導の変革と同時に、「下から」の女性たちのエンパワーメントが不可欠であることが明らかになった。また、フィンランドの女性運動は、よく組織化され、すべての女性団体の頂点には、NYTKISという政治家一研究者一活動家の連携組織が結成され、女性の声が政治に直結する仕組みがあることがわかった。
著者
村松 潤一 井上 善海 盧 濤 原口 恭彦 奥居 正樹 加藤 厚海 秋山 高志 上林 憲雄 三崎 秀央 柯 麗華
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

発展著しい中国には早くから日本企業が進出し、製造業を中心とした産業集積が形成されてきた。本調査研究は、そうした産業集積に焦点をあて、メーカーとサプライヤーがどのような関係を構築しているか、また、その基盤としての組織内マネジメントがどのようになされているかについて現地調査した。その結果、日系企業間での強い結びつき、また、日系企業の人的資源管理はプロセスコントロールを重視していることが明らかとなった。
著者
寺川 進 阿部 勝行 櫻井 孝司
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

取り扱いが容易でかつ最も高性能の、超高開口数対物レンズ使用のエバネッセンス顕微鏡を目指して、その照明用光束の導入法について調べた。レーザー光直接方式、円錐ミラー方式、単一モードファイバー方式を比較したところ、単一モードファイバー式が安全性、視野の広さ、簡便性において優れていた。この方式はメーカーの採用するところとなった。しかし、装置は高価で、やや不安定性があり、直接方式にも利点があった。エバネッセンス法を用いて、クロマフィン細胞やβ細胞の開口放出の動態を調べた。両細胞で顆粒内の蛍光物質がフラッシュ反応を伴って放出され、その大きさは顆粒によって大きく異なることが明らかとなった。このフラッシュは、顆粒内から細胞外へ向かう水の噴出を示していた。レーザートラップ法で細胞近傍に微小ビーズを把持すると、分泌に伴いビーズがパルス状に動くことが確認できた。従って、顆粒の内容物は単に拡散で外に出るのでなく、穎粒から同時に噴出する水に乗って外に出ることが分かった。この水流の強さは顆粒膜に在るClチャネルの密度で決まり、抗体法によって観察したチャネル密度は顆粒によって大きくばらついていた。Clチャネル阻害剤は開口放出を抑えずにフラッシュ反応を抑えた。これらのことより、顆粒ごとにその放出の強さが大きく異なっていることが明らかになった。さらに、β細胞においては、顆粒からの放出直後にも、顆粒は細胞膜に結合したまま横方向に移動することが明らかになった。顆粒内物質は完全に放出されずに残留し、リサイクル後に再充填される可能性が示唆された。以上の結果を、すでに観察した共焦点顕微鏡による顆粒蛍光の段階的な減少の観察結果と合わせると、内分泌系の細胞では、開口放出に際しての信号物質の放出は量子的には起こっていないことが結論され、いわゆるquantal仮説は成り立たず、より複雑な調節作用が存在することが結論された。
著者
川村 千鶴子 中本 博皓 石橋 春男 山口 由二 北澤 恒人 福島 斉 貫 隆生 冨田 祐一 川村 千鶴子
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.現地環境調査の実施:グローバル化の影響によって大量消費社会となった太平洋島嶼諸国がどのような環境問題を抱えているのか、その実態を多面的に調査し、課題と問題解決への道を研究した。特に医療面と健康の被害、伝統文化の破壊と消滅、自動車の普及と廃車問題、廃棄物と廃車処理問題、環境教育の進展に主眼をおいた。それらの結果をまとめた調査報告書はすべて学会誌『環境創造』4,5,6,7,8号に収められている。2.調査対象国:トンガ王国、サモア、ツバル、マーシャル諸島共和国、パラオ共和国、キリバス、ミクロネシア連邦、フィジー共和国、その他移民先の国々。日本国内では離島の廃車事情、自動車リサイクル工場を見学3.海外での研究発表:第9回太平洋芸術祭シンポジウム基調講演(2004年7月24日パラオ共和国)川村千鶴子 テーマ"Environmental Issues through a Global-Ethnoscape Point of View"4.ネットワークの構築:これらの調査国において環境問題に関わる研究者・実践者・行政・企業・国際機関などの人々との連携を深めることができ、そのネットワークをもとに国際シンポジウムを開催し広く実態を報告した。シンポジウム・パシフィックウエイ開催(3年間の研究結果を発表、英語・日本語通訳・翻訳)テーマ「太平洋島嶼諸国の連帯と環境問題への取り組み -廃棄物・廃車問題への日本の貢献-」日時:2005年2月14日 場所:大東文化大学板橋校舎、後援:日本島嶼学会、太平洋学会、日本オセアニア学会、太平洋諸島センター、(社)太平洋諸島地域研究所、NPO法人 汎太平洋上級教育推進機構基調講演:天野史郎(SPREP 南太平洋地域環境計画)、講演:カシオ・ミダ特命全権大使(ミクロネシア連邦共和国)、シンポジウム・パネリスト:川嶋正和(ミクロネシア振興協会事務局長)、竹内啓介(全日本自動車リサイクル事業連盟副理事長)、長嶋俊介(鹿児島大学多島圏研究センター教授)、石橋春男(環境創造学部学部長)、川村千鶴子(研究代表)5.さらに座談会の開催し、自動車リサイクルの専門家との連携からいくつかの解決策を提案:3月10日(司会:川村千鶴子)J・フリッツ公使(ミクロネシア連邦大使館)、竹内啓介、川嶋正和、貫隆夫、貫真英6.以上の研究論文と調査報告書、シンポジウム、座談会を編集し、研究成果報告書にまとめ製本した。国内の関係者はもとより海外の関係者にも配布。2006年に予定されている太平洋島サミットの基礎資料としても役立にたち、多数のNPO法人の実践者、マスコミ関係者、他大学との連携も深めることができた。
著者
荒野 泰 上原 知也 遠藤 啓吾
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

3'-Iodohippuryl-N^ε-maleoyl-L-lysine (HML)で標識した抗体Fabフラグメントは腎臓の刷子縁膜酵素の作用で,ヨード馬尿酸を遊離して,腎臓での放射活性を投与早期から低減する.本薬剤設計を細胞滞留性の官能基を有するヨード化合物あるいは放射性金属核種へと展開するため,グリシルリジン以外の配列のペプチド結合について刷子縁膜小胞を用いて検討を行った.その結果,リジンをアスパラギン酸,チロシン,フェニルアラニンに変換したペプチド配列は,速やかに馬尿酸を遊離した.とりわけ,チロシンおよびフェニルアラニンが速やかな遊離を示したことから,タンパク質への結合部位の導入の可能なチロシンについてさらに検討を行った.その結果,グリシルチロシン配列は,シラスタチンにより大きく阻害を受けることから,腎刷子縁膜に存在する金属酵素のなかでもヒトにおいてもその高い発現が知られているジペプチーダーゼによる開裂を強く受けることが明らかとなった.次いで,チロシンのフェノール性水酸基にタンパク質との結合部位を導入した化合物を合成し,放射性ヨウ素標識後に抗体Fabフラグメントとの結合した.本標識抗体は,血液中でも安定に存在し,グリシルチロシン配列は,血液中で安定な構造を維持することが確認された.さらに,実験動物に投与したところ,投与早期から,腎臓への放射活性の集積を大きく低減した.本研究成果は,刷子縁膜酵素を利用した標識薬剤の開発において,ヨード馬尿酸以外の標識化合物を遊離する標識薬剤の設計の多様性を示すことを示すものであり,本薬剤設計のさらなる応用への可能性を強く示すと考えている.
著者
西尾 勝 新藤 宗幸 三宅 博史 五石 敬路 高井 正 棚橋 匡 木村 佳弘 川手 摂 田中 暁子 萬野 利恵 畑野 勇 小石川 裕介
出版者
公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、「平成の市町村合併」が一段落した現時点において、「平成の市町村合併」がなにをもたらしたのかについて、多面的に把握するために、地域区分変更に関する国際比較を行うとともに、行政(職員数、職種別職員数、行政組織、施設)、財政(普通会計、特別会計、公営企業)及び住民負担、政治(議会議員及び首長の属性)について、それぞれデータベースを作成した。併せて、中央省庁、都道府県、市町村の合併事務担当者などにヒアリング調査を行った。「合併」の効果と喧伝された諸事項は、非合併自治体との比較ではあまり見ることはできなかった。また、行政と住民の距離感が開くなどの「合併の弊害」と想定された項目に対する定数特例や選挙区、地域自治組織などの諸措置は、措置自体の時限性や行政改革の帰結として、事実上剥落していった。以上の分析結果から、「平成の市町村合併」とは、「究極の行財政改革」を市町村に推進させるためのツールであった、と評価できる。
著者
古谷 大輔 立石 博高 大津留 厚 小山 哲 中本 香 中澤 達哉 後藤 はる美 近藤 和彦
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、近世ヨーロッパ周縁部の国家編成に見られた地域統合の方法と論理に着目し、戦争・内乱などの背景に立ち現れる普遍的な秩序観や君主観の存在、そうした観念に基づいて実践された統治者と地域社会の交渉、その結果としての多様な結合関係を比較した。その結果、普遍的な秩序観や君主観を脊柱としながら複数の地域が集塊する、近世ヨーロッパに普遍的な国家の輪郭を、「礫岩国家」として結論づけた。
著者
島谷 弘幸 松原 茂 神庭 信幸 高橋 裕次 富田 淳 和田 浩 恵美 千鶴子 赤尾 栄慶 丸山 猶計 太田 彩 鍋島 稲子
出版者
独立行政法人国立文化財機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では日本、中国、韓国に残る装飾料紙を使用した書の作品について、その書の特徴の詳細を調査・データ化するとともに、料紙の科学的分析を行なうことを目的として、まずは国内外の関連作品のデータ収集を行ない、そのうち約200件の調査を実施した。それらの調査結果はデジタルデータで蓄積し、東京国立博物館での陳列に活用しながら、研究成果報告書を作成し公開している。
著者
御堂岡 潔
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

地球社会的諸問題に対して、日本・日本人がグローバルな貢献をすることが期待されている状況から、日本人にとって、偏狭な自国意識から脱却し、グローバリスムにのっとった世界意識を養い、さらに、その世界意識と両立する適切な自国意識を培うことが、必要と考えられる。本研究の目的は、日本人の世界意識と自国意識のダイナミクスを、その相互関連をとらえつつ、かつ歴史的経緯を踏まえながら、意識調査により体系的に把握し、日本人にとって好ましい世界意識、自国意識のあり方とそこへといたる過程を、理論的・実証的に探究することにある。上記目的を達成するために、理論的検討を随時進めた。実証的研究としては、平成7年度は学生とその父母を対象に予備調査をおこない、(1)調査の枠組みの洗練、(2)世代差の検討、(3)世代間伝達の可能性の検討をおこなった。この予備調査の結果と理論的検討を踏まえ、平成8年度は、無作為抽出法により選ばれた一般個人合計1,550名を対象に、本調査(全国調査と首都圏調査)を実施した。その結果から、(1)日本人の世界意識と自国意識のダイナミクスの実態把握が明らかになり、偏狭な意識の存在が確認された。また、(2)首都圏調査から、首都圏の人々の世界意識と自国意識の時系列的変化が検討され、「国際化」「地球社会」などが唱道されてきたにも関わらず、この10年間で、偏狭な意識が薄れているということはなく、むしろ部分的には強まっていることが明らかとなった。
著者
春日 直樹 小泉 潤二 中川 敏 栗本 英世 田辺 明生 石井 美保 森田 敦郎 中川 理
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は「社会的なもの」の構築過程をラディカルに再検討して、社会的なものと自然的なものとを同一水準で論じる方法を探求した。「社会」と「自然」が概念と実在としていかに一緒に構築されていくのかを問い、因襲的な二分法を超えるような諸関係と状況について、またそうした状況下でさまざまな存在がいかに生成するかについて、明らかにした。本研究は最終的に、人類学・科学技術研究・科学史・哲学が融合する次元を提供し、それによってあらたな実在の可能性と生成に寄与することを目指した。
著者
大木 裕子 柴 孝夫 高尾 義明 野長瀬 裕二 山田 英夫
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

楽器のブランドは楽器作りの長い歴史の中で形成されてきた部分が大きく、楽器を進化させてきたメーカーは確固たるブランドを築いている。更に必要とされるのは、トッププロの音楽家を囲い込むマーケティング力である。技術経営とマーケティングの相乗効果によって、ハイエンドユーザー向けの信頼性の高いブランドを獲得することが、ニッチな楽器メーカーにとって不可欠な戦略である。ハイエンドを狙うことができない後発のメーカーは、総合楽器メーカーとしてマス市場を狙う方法を取らざるを得ない。