著者
宮武 公夫 桑山 敬巳 権 錫永
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、従来の博覧会研究が、展示されたモノや建築、権力・イデオロギー論からの演繹的研究、文化の政治学の側面に焦点を当てていたのに対し、20世紀初頭の博覧会における具体的なヒトの展示(経験や実践)に焦点を当てることで、近代への過渡期における国民国家、植民地主義、近代人類学、先住民アイデンティティの生成や変容に関して新たな視点を与えるものである。研究成果としては以下の通りである。宮武公夫の研究は、1904年セントルイス博覧会の人類学展示のために渡米した9名のアイヌに関する写真や工芸品という非文字資料に焦点を当て、20世紀初頭の異種混交的なセントルイス博覧会における人類学展示の姿を明らかにした。具体的には、国内と米国の7カ所の研究機関や個人の所蔵する、多様な撮影者によるアイヌ関係写真のほぼ全数を調査するとともに、博覧会で作成されたハイブリッドな工芸品などを明らかにした。また、これらをとおして、近代への過渡期における博覧会での、アイヌの人々の民族やエスニシティの領域を横断する実践と創造の姿を明らかにすることができた。また桑山敬巳の研究は、展示領域と外部世界の境界にあるギフトショップに注目し、各地のギフトショップにおけるキモノのギフトが生み出す「異民族イメージ」について明らかにした。また権錫永の研究は、植民地統治下に支配者側によって開催された特異な博覧会として、日本の朝鮮統治下の博覧会を対象にしている。この研究では、従来の研究が日本側資料に依拠しているのに対して、当時の朝鮮メディア資料や、近年の韓国における博覧会研究を参照しながら研究をおこない、植民地支配者側と批判する朝鮮メディアという対立する言説の検討と、実際に動員された朝鮮農民などの経済問題や博覧会体験の問題を明らかにし、植民地博覧会の複合的な姿を明らかにしている。
著者
谷本 潤 萩島 理 成田 健一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

一連の風洞模型実験,Large Eddy Simulation(LES)に基づく数値実験により,建築物を主体とする地上の粗度要素が大気境界層下端への熱・空力学フォーシング(強制力)として如何に作用するかに関して,その素過程解明の端緒を得た.[流体物理科学への貢献]また,都市キャノピーモデルへの適用,更には街区内歩行者レベルの温熱環境予測評価大系への応用を念頭に置き,上記の熱・空気力学フォーシングを実際には複雑系である都市や建築の幾何形状を適切にパラメータライズすることで,バルク輸送係数としてモデル化した.[都市環境工学への貢献]
著者
呉 景龍 峠 哲男 高橋 智 楊 家家 福山 秀直 福山 秀直 高橋 智 楊 家家
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

認知症の早期診断を実現するために(1)海外での認知症調査研究(2)認知症診断技術の国際基準の提案,および(3)認知症社会対策の提言を目指して調査研究を実施した共同研究者,海外の認知症関連研究者と連絡を取って,認知症に関する認知実験などの実験結果の収集,検討を行い,特に健康高齢者と認知症患者の間の触覚の認知機能の差が,認知症の早期診断に有効であるという結果を得た.この結果と本研究で構築したネットワークを元に,国際的な大規模実験に向けての準備をすすめることができた.
著者
鎌田 とし子 鎌田 哲宏 大野 剛志 栗田 克実 羽原 美奈子 高波 澄子 信木 晴雄 佐々木 悟 豊島 琴恵 嶋崎 東子 松浦 智和 松岡 昌則 北島 滋 山下 由紀夫 中澤 香織 石川 紀子 菅原 千鶴子
出版者
旭川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、北海道北部地域にある集落を3か所(北海道中川郡音威子府村、増毛郡増毛町、上川郡東川町)選び、①限界集落、②維持集落、③再生・発展集落とし、3者の比較を行うことで、集落の限界化が進行する社会的要因を探求する実態調査を行った。その結果、人口流出を阻止する要因は5万円程度の雇用機会であり、最低生活を維持できる自給経済と、無償の相互援助関係の存在であった。生産性の高い農地は、借り手と買い手がいるため、農業企業が出現し、周辺地域に雇用市場が発生した。また、子育て支援策と団地造成で人口流入が進むことが明らかになった。
著者
安田 明生 北條 晴正 樊 春明 海老沼 拓史 久保 信明
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,海面で反射したGPS信号を利用した新しい海面高度計測センサを開発した.このセンサは,GPS衛星を信号源として利用するパッシブなシステムであるため,小型・省電力である.また,一度に複数のGPS反射波を観測できるため,広範囲な海洋観測が可能である.航空機からの観測実験では,数十cmの精度で海面高度を観測できることが確認された.本研究成果の応用として,航空機や人工衛星から津波監視などが考えられる.
著者
際田 弘志 石田 竜弘
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究により、"bio-inertであると考えられてきたポリエチレングリコール(PEG)であっても薬物キャリア表面に提示されることによってB細胞を直接刺激し、T細胞の補助を受けることなく、特異的なIgM(anti-PEG IgM)を分泌させることを明らかにした。また、バイオ応用に関しては、PEG修飾ナノキャリアによって感作されたB細胞がanti-PEG IgMをその表面に過剰に発現し、2回目投与PEG修飾リポソームを積極的に取り込む可能性があることが明らかとなり、この免疫応答を利用すれば静注型のアジュバントが開発できる可能性が示唆された。
著者
橋本 岳 土屋 智 竹林 洋一
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

土砂災害は身近かつ大変危険な災害であり,土砂災害の予兆検知に関する技術の確立は緊急かつ不可欠である。しかし現状では計測精度・計測範囲・計測装置の複雑さ等から妥当な方法が存在しない。本研究期間中には,橋本が有する高精度計測技術を活用して,屋外遠距離にて,広範囲かつ高精度な計測方法を実現した。具体的には,カメラ基線長約1m,計測距離約90mで最大誤差10mm以下という画期的な計測システムの試作に成功し,それを高速道路の法面計測へ適用した。また,本計測方法の様々な応用へも積極的に取り組み,一例として建物や橋梁の振動計測実験を行った。これらは,建物の耐震判定やインフラ構造物の点検にも有効と考えられる。
著者
後藤 一寿 井形 雅代 高橋 京子 井上 荘太朗 須田 文明
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

地域経済の成長と国民の健康福祉の向上を同時に実現する方策としては、健康や安全に資する先端科学バイオ技術開発と産業界・経済界への円滑な技術移転による新産業クラスターの創出が必要不可欠である。そこで、バイオ産業・企業と、機能性食品等の開発を行う食品産業・企業との融合による栄養・健康産業クラスターの構築に焦点を絞り、日本・ヨーロッパ・アジアの栄養・健康産業クラスター事例の発掘・評価ならびに国際比較を行った。その結果、オープンイノベーションの視点による研究開発支援の重要性や、機能性農産物、漢方・生薬の自給率向上による医療産業支援などの重要性が明らかとなった。
著者
大戸 安弘 梅村 佳代 川村 肇 木村 政伸 天野 晴子 八鍬 友広
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は概ね以下の三つの方向で行われ、それぞれにおいて一定の成果を収めたということができる。(1)古文書資料合同調査、(2)刊本資料分担髑査、(3)視点別個別研究調査の三っである。このうち中心となったのは(1)と (2)であるが、(3)についても、本格的な展開は今後を待たねばならないとはいえ、注目すべき成果を得ている。(1)の目的は、前近代日本における識字状況を解明するために、民衆の花押(白署)をともなう資料、たとえば、人別帳・起請文・村掟・契約書などを収集することにある。2002年8月から2005年11月にわたって、各地の歴史資料所蔵機関を訪問し、花押を有する原文書ないしはその複製資料を調査し収築した。花押を有する資料は概ね17世紀以前のものであり、貴重資料に属するものが多い。報告書に掲載した資料は、すべてこの調査によって収集されたものの一部であり、識字資料としての花押原型が磯認できるよう、有力な資料を可能な限り採録した。(2)の目的は、公刊されている諸文献のなかに、花押を有する有力な資料、とくに民衆の花押を有する資料を確認することにある。それらのなかには、短期間で原文書を確認することが困難であったり、あるいはすでに原文書が滅失したりしているものも少なくない。「平安遺文」「鎌倉遺文」などの綱羅的資料群、各県で編纂されている自治体史を分担して調査し、数多くの資料を収集した。(3)は、調査結果によりながら、職業・宗教・女性・地域・学問・花押と印章などの観点から、研究代表および各研究分担者において個別に研究を深めた成果である。
著者
後藤 行延 平松 祐司 揚山 直英 榊原 謙 徳永 千穂
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

(1)骨髄由来白血球(好中球・単球)の体内動態をフローサイトメトリーで解析するカニクイザル体外循環モデルを確立した。(2)骨髄由来白血球(好中球・単球)の血中での半減期および、骨髄通過時間を指標として、これまで示唆さていた体外循環で惹起される骨髄刺激を定量的に証明した。(3)体外循環刺激により骨髄から循環血中に放出された白血球が肺に集積することを示した。(4)体外循環刺激により骨髄から循環血中に新たに放出された白血球が、体外循環術後肺傷害の病態形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。
著者
阿部 雅二朗 丸山 暉彦 杉本 光隆 志田 敬介 仲川 力 藤野 俊和
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

不整地盤上作業機械とその運転者である人間よりなる系において、複雑条件下の機械転倒安全性を快適に確保するシステムの構築を目的に、運転室シミュレータと小型クローラクレーンおよびその支持地盤モデルよりなるリアルシミュレータに加え、クレーン-支持地盤系のバーチャルシミュレータを開発した。これらシミュレータより機械の転倒限界状態近傍における運転者の運転・生体特性と機械およびその支持地盤挙動との相関関係を総合考察し、転倒安全快適確保のための基本原理を示した。運転支援システムの試作および有用性確認も実施した。
著者
芳村 博実 荒牧 典俊 桂 紹隆 早島 理 能仁 正顕 内藤 昭文 藤田 祥道 乗山 悟 那須 良彦
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

「何が仏説か」という問いは大乗経典の登場によって部派仏教徒から初めて投げかけられたものではない。仏滅後徐々に増大していった初期経典のなかに「善説」であれば「仏説」であるという考えが登場し、アビダルマの学僧たちによって「法性に違わなければ仏説である」と定義されたのを受けて、大乗仏教徒たちは「大乗仏説論」を確立することができた。『大乗荘厳経論』第1章は、最も完成された「仏説論」を展開している。
著者
山本 達之 山本 直之 安藤 正浩 秋吉 英雄 伊村 智 工藤 栄
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

砕氷艦しらせが,H24,25年度の2か年連続して接岸に失敗したために,南極昭和基地周辺でのリアルタイム分光分析の実施を断念せざるを得なかった。このため,夏隊期間中の研究計画のうち,比較的遂行が容易な研究計画は実施されたが,本研究計画遂行の前提となるヘリコプターが,物資輸送に専念することとなったためである。そこで,生体固体の採取を断念して,すでに確保されていた死亡個体解剖学的研究を中心に計画を変更し,アデリーペンギン眼のガングリオン細胞分布の様子と種間差に関する基礎的データを得ることができた。
著者
久米 郁男 北山 俊哉 大西 裕 曽我 謙悟 直井 恵
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、グローバル化、とりわけ自由貿易がどのような国内政治的反応を生み出しているのかを、計量分析と事例分析による過程追跡の手法を結合することで実証的かつ総合的に解明することを目指した。そこでは、自由貿易協定の締結で日本に先行する韓国との比較及び日本国内における中央と地方でのTPPをめぐる政治過程の比較を事例分析的に検証する一方、そこでの知見をサーベイ調査と国会議員候補者調査を利用して自由貿易がもたらす「雇用不安」と「消費者利益」そして、自由貿易協定をめぐって論じられる外交戦略、とりわけ「安全保障」という要因が、貿易をめぐる政治過程に影響を与えることを実証し、そのメカニズムを解明した。
著者
NGUYEN V. Chuyen 川上 正舒 黒木 昌寿
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究において、カロテノイドの一種であるアスタキサンチンは酸化反応および白内障の進行を効果旨的に抑制するという結果を得ていることから、他の食餌性抗酸化剤の併用による糖尿病合併症の抑制効:果について明らかにすることとした。即ち、アスタキサンチンとアスコルビン酸、α-トコフェロール、トコトリエノールの各抗酸化剤の併用による効果について検討した。その結果、アスタキサンチンとトコフェロールあるいはトコトリエノールを併用した場合では、対照群に比し酸化抑制が観察された。また、酸化ストレスの指標となる尿中8-OHdGの低値も観察された。一方、アスタキサンチンに高濃度のアスコルビン酸を併用した場合では、腎臓中の過酸化脂質生成量が多く、過剰なアスコルビン酸の摂取は、生体内における過酸化反応を促進する可能性があることが明らかとなった。また、アスタキサンチンには、体内におけるα-トコフェロールの消費を抑制し、体内に蓄積させる作用があることも示された。さらに、アスタキサンチンと水溶性抗酸化剤のフラバンジェノールの併用による糖尿病の進行抑制効果を検討した。その結果、糖尿病ラットにおいて、肝臓、腎臓および血清において、アスタキサンチンとフラバンジェノールを併用した場合では、対照群に比べて脂質過酸化反応および白内障の抑制がみられた。また、尿中8-OHdGも低値を示したことから、これらの抗酸化剤の併用は、酸化ストレスの抑制により、生体組織中の過酸化脂質の生成および蓄積を有効に抑制しうることが示唆された。さらに、血清中の中性脂肪値についても、アスタキサンチンとフラバンジェノールの併用により低くなる傾向が示され、糖尿病における脂質代謝異常を改善させる可能性が示唆された。これらの結果から、アスタキサンチンとフラバンジェノールの併用は、糖尿病による生体内の過酸化反応を有効に抑制し、糖尿病およびその合併症の予防・進行抑制に効果を示すことが期待された。今後、糖尿病の予防法と治療法の開発が大きな課題となると考えられ、本研究の成果がその一助となることを期待する。なお、病院での臨床試験は2007年中に行う予定である。
著者
喜々津 仁密 奥田 泰雄
出版者
国立研究開発法人建築研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、近年顕在化した建築物の甚大な竜巻被害の実態を踏まえ、既往の科研費課題で開発した竜巻発生装置を活用した低層建築物の風圧実験を実施するとともに、竜巻による突風荷重モデルの精緻化を行った。具体的には、竜巻と建築物との相対的な大小関係に関するパラメータをモデルに導入し、屋根に鉛直上向きに作用する突風荷重が建築物の規模が小さいほど大きくなる傾向を示した。また、竜巻の作用を受ける大規模な屋根を有する鉄骨造施設に着目し、折板屋根と鋼板製外壁の有限要素モデルを構築した。そして、上記の風圧実験データを用いて、屋根上を竜巻が通過する状況を想定した時刻歴応答解析を行って竜巻による被災機構を解明した。
著者
加藤 丈佳 鈴置 保雄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

半径 4km 圏内の 17 地点で観測した日射量データや、協力企業から提供を受けた中部地域の日射量データについて、観測地点間における短周期変動の独立性などを解析した。その結果、1/√N 則を適用することで、1 地点の観測データは半径 15~20km の範囲の空間平均日射変動特性を表せることを確認した。その結果に基づき、遷移仮説を応用して観測点周辺の日射変動平滑化効果を表すローパスフィルタ(LPF)を構築した。LPF を中部地域 61 地点の日射データに適用するとともに、住宅分布に基づく各観測点の重みを考慮して、中部地域全体の空間平均日射を算定し、 32 分周期以下の短周期変動特性や数時間にわたる大きな日射変動の年間発生回数等を統計的に評価した。また、日射変動特性の評価の一環として、翌日の空間平均日射量 1 時間値を予測する手法を開発した。さらに、スプライン補間によって観測地点間の任意地点の日射量を推定する手法や天空画像の解析によって一定範囲内の空間平均日射量をリアルタイムに把握する手法を開発した。
著者
村田 忠禧 須川 英徳 白水 紀子 村崎 恭子 任都栗 新
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

1)日本語、中国語、韓国語における情報交換を行なううえで、人名・地名等固有名詞に使用される漢字は翻訳不能なため、その互換性確保が大きな課題となる。本研究ではそのためにどのような漢字がそれぞれの言語の情報交換用漢字符号集で不足しているのかを具体的に明らかにすることができた。2)日本語と中国語における漢字の使用状況を政治演説、国語教科書、新聞、人名地名などの分野でかなり大量な素材を用いて分析した結果、それぞれの漢字符号集に含まれる漢字のうち、日本語では4,710字、中国語においては6,593字が使用されていた。日本語の場合にはJIS漢字符号集の約4分の3にすぎない。中国語の場合にはGB漢字符号集の漢字総数とほぼ等しい。JIS漢字符号集には現実の現代日本語で使用されることのない漢字がかなり多く、再考を要する漢字符号集であることが明らかになった。3)それぞれの言語の漢字情報を99.9%をカバーするのに、日本語の場合には約2,800字、中国語の場合には約4,300字が必要であるが、日本語も中国語もいずれをも99.9%カバーできるようにするためには4,700字以下の漢字集合でよいことが判明した。これは東アジアで漢字情報を共有化するうえの貴重なデータといえる。4)日本と中国での中学校の国語教科書における漢字使用状況を分析した結果、学校教育や外国語として日本語や中国語を学ぶ人への漢字教育を行なううえの役立つデータが集まった。5)漢字をそれぞれの言語特有のものと考えるのではなく、東アジア共通の文字体系として考えることが大切であり、日本語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国・朝鮮語の共同実態調査が必要であることが明確になった。
著者
小林 芳規 佐藤 利行 佐々木 勇 沼本 克明 月本 雅幸 鈴木 恵 原 卓志 山本 真吾 山本 秀人 青木 毅 本田 義央
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

醍醐寺蔵宋版一切経6,102帖に書き入れられた角筆情報を加えた目録出版を期し,その精査を基に,日本に伝来した宋版一切経の角筆点の発掘と東アジア言語文化の交流と影響関係を考察することを目的とする本研究は,2010~2012年に7回の現地調査を行い,書誌事項と共に角筆点の有無を再調査し,新たに521帖を加え約8割に角筆書き入れ帖を認めた。又,神奈川県称名寺蔵宋版一切経からも角筆点を認め,新羅写経の角筆仮名の解読を進めた。
著者
鈴木 賢 高見澤 磨 宇田川 幸則 崔 光日 石井 知章 坂口 一成
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

2009年段階で正式に登記された社会組織は43万1069団体(うち社会団体23万7847、民営非企業事業体19 万479、基金会1843)に上るが、これを遙かに上回る未登記の団体が闇で活動しており、不安定な法的状態にある。設立に当たっての業務主管部門での設立許可と民政部門における登記という二重の管理体制を取ることにより、法人格取得へのハードルを高くしていることがその背景にある。結社については「許されていないことは、禁止される」というのが実態であり、憲法の結社の自由規定とは裏腹に「結社禁止」が原則となっている。目下、社会団体法制の整備に向けて議論が続いているが、いかに社会団体の活性化を図りつつ、他方でその反体制化を避けるべく上からの政治的統制も緩めないという二律背反を具体的な制度に表現するかは容易な課題ではない。厳しい法制環境、共産党組織による統制のなかでもすでに民間団体は、市場経済化のなかで多元化しつつある利益の調整機能、社会の自律調整機能、行政には困難なサービス提供機能、ある種の政治的「参加」機能、社会的公益機能を果たすことによって、政治の民主化を欠く中国で一種の緊張放散的効果をもたらしている。