著者
山崎 晃司 後藤 優介 小池 伸介 釣賀 一二三 泉山 茂之 セオドーキン イワン ゴルシコフ ディミトリー ソウティリナ スベトラーナ ミケール デール
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ロシア沿海地方において,ツキノワグマと,ヒグマの種間関係研究に着手した。2016年に必用な許認可が揃い, 2017年春までに計11頭の捕獲に成功し,内9頭(ツキノワグマ5頭,ヒグマ4頭)に衛星通信型首輪を装着した。首輪に内蔵した近接検知センサーにより,種間の遭遇時の動きを記録できた(n=5)。遭遇時には互いに回避を行い,不要な闘争を避けていた。追跡個体の利用クラスター調査では,ツキノワグマおよびヒグマの計148個の糞分析を終えた。共通品目も多かったが,より樹上生活に適応したツキノワグマでは木本の果実であるサクラ属,開放的環境を好むヒグマではコケモモやスグリの地上性の食物に依存していた。
著者
山田 哲 吉敷 祥一 島田 侑子 石田 孝徳
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、大地震時に鉄骨造建物が倒壊に至るまでの3次元挙動を明らかにし、耐震設計における安全余裕度を明らかにすることである。そのためには、構成部材の現実的な挙動を反映した応答解析を行う必要があることから、主要部材であり耐震要素でもある柱と梁を対象に、地震時の現実的な条件を反映した実験を実施し、3次元応力下で部材が最大耐力に到達し、その後復元力を喪失するまでの挙動を把握した。そして、部材の挙動を反映した数値解析を行うための、解析プログラム作成に取り組んだ。
著者
尾嶋 史章 近藤 博之 阿形 健司 荒牧 草平 近藤 博之 阿形 健司 荒牧 草平 白川 俊之 多喜 弘文 西丸 良一 古田 和久 吉田 崇
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では教育達成過程の国際比較を行うことによって、教育機会格差が生じるメカニズムの日本的特徴を明らかにした。特に中心においたのは、PISAを用いた青少年の学力形成に及ぼす家庭背景の影響である。入学試験による選抜と学校の階層構造、学校外教育など異なる学校教育システム下における家庭背景と生徒の学力形成との関係を分析した結果、日本を含めた東アジアの国々は欧米諸国とは異なる教育達成過程を持つことが明らかになった。
著者
大塚 英典 星 和人
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

スフェロイド間隔を系統的に制御したスフェロイドパターニング技術を開発した結果、軟骨大型化のために最適なスフェロイド設計指針を確定できた。さらに分化誘導のための添加因子を用いることにより細胞外マトリクスの産生能を長期間維持させることに成功した。これらの検討から最適化されたスフェロイド状態において、再生エレメントとして、スフェロイドの体積にして約10倍という大型化を達成した。次にこの技術と合わせ、スフェロイドをより実際的な移植可能な材形へと展開するためのマトリックス材料の設計と合成を行った。このような一連の実験を統合し、運動器系組織の再生技術として開発を進めた結果、関節軟骨における動物実験において移植する構造体として十分機能する再生エレメントであることを示した
著者
鈴木 啓司
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

DNA二重鎖切断で誘導されるヒストンH2AXのリン酸化が、クロマチン損傷部位を特定する分子タグとして機能し、それを目印にMDC1/53BP1センサーシャペロンがクロマチン損傷を検出している可能性を明らかにするために、分裂中期染色体上でリン酸化ヒストンH2AXおよびMDC1/53BP1センサーシャペロンのフォーカス形成を検出できる実験系の検討を行った。放射線照射によるDNA二重鎖切断に起因した染色体異常は、照射直後は染色分体型の異常が、照射20時間後には染色体型の異常が観察されることを確認した。リン酸化ヒストンH2AXのフォーカスは、染色分体型の異常部位に確認されたが、MDC1フォーカスを同じ部位に局在することがわかった。さらに、染色体型の異常でも、リン酸化ヒストンH2AXおよびMDC1のフォーカスは局在し、その部位は染色体異常が確認されない個所であった。以上の結果から、照射直後にDNA二重鎖切断部位に局在するリン酸化ヒストンH2AXおよびMDC1は、照射後時間が経つにつれて必ずしも損傷部位に残存しないことが示唆された。さらに、MDC1/53BP1センサーシャペロンが、放射線照射後初期の段階でどのような役割を果たしているかを明らかにするため、EGFP-53BP1蛋白質を発現する正常ヒト二倍体細胞を樹立し、X線照射後のEGFP-53BP1フォーカスをタイムラプス法により解析した。その結果、放射線照射後15分以内に形成される初期フォーカスは、その後30分の間に徐々にその領域が拡大することが判明した。さらに、この拡大したフォーカスには、ヒストンH2AXやその他のDNA損傷チェックポイント因子が共局在し、多重蛋白質複合体を形成していることもわかった。MDC1/53BP1センサーシャペロンのフォーカス形成に重要なATMによりリン酸化をATMの特異的阻害剤であるKU55933で阻害したところ、リン酸化ATMフォーカスが完全に消失した条件で、53BP1フォーカスは消失することから、MDC1/53BP1センサーシャペロンのフォーカス形成には、ATM機能依存的なリン酸化が必須であることが明らかになった。
著者
緒方 茂樹 相川 直幸
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は障害児教育における「音楽を活用した取り組み」をより効果的に行うことを目的として計画されたものである。「音楽を活用した取り組み」を理論的に計画し、さらにその教育効果について科学的に評価するためには、音楽が人間に及ぼす効果や影響について客観的に知る事が不可欠である。初年度は琉球大学内にまず脳波計を軸とした生理学的な指標全般の計測システムを整備した。この琉球大学内に整備した計測機器を用いて今年度も引き続き実験的検討を進め、特に健常者を対象とした基礎実験を継続的に行った。この実験的検討から得られた所見として、音楽鑑賞時の脳波変動には、特に「心理的構え」の相違がきわめて大きな影響を与えていることが明らかとなった。次の段階としては障害児を直接的に対象とする前に「心理的構え」について重点的にデザインされた実験的検討を行うことの重要性を指摘した。そのことによって音楽鑑賞時に生じる意識変動の特異性について、今後さらに詳細な所見が得られるものと考えている。さらに昨年度には学校現場や臨床場面での計測を可能とするために小型の計測機器を導入し、その使用の可能性と有効性を検証した。今年度は解析のためのソフトウェアを導入しながら様々な状況での計測を試みた結果、将来的に学校現場やフィールドにおける有用性を実証することができた。一方、混入雑音が多くみられる障害児からの生理学的指標に関わるデータの分析には、デジタル信号処理を応用したフィルタリングの手法を用いた検討を進めてきた。これまでに265次のFIRデジタルフィルタを用いた広域遮断型の特性が有効であることが明らかとなっている。今年度は従来的なアナログフィルタと移動平均との方法論的な比較を行うことによって具体的な波形変化を示しながらその有効性を明らかとした。
著者
小林 一郎 田中 尚人 星野 裕司 ギエルム アンドレ マルラン シリル 本田 泰寛 岩田 圭佑 永村 景子
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,高齢化・過疎化の著しい中山間地の農村を対象に,歴史的構造物や文化的景観を含む土木遺産を基盤とした,地域コミュニティと基礎自治体の協働による持続可能な観光支援システムを構築することを目的とする.そのために,地方分権により既存の道路ネットワークと農村の持つ利点を活かした観光支援政策,事業の先進地であるフランスに範を求め,同地と地理的・歴史的に共通点を多く有する熊本県,鹿児島県の中山間地域の農村を事例として,日仏の事例分析を行う.さらに,フランスにおける現地事例調査,国内における実践的地域づくり活動を通して,農村観光支援のための政策,人材育成,道路ネットワークの活用手法を提案する.本研究の研究対象地は,全て農業を主産業として発展してきており,道路や橋梁,運河,水利施設などを社会的資産としてストックしてきている.フランスにおける先進事例分析として文化的景観保全調査を行い,観光支援に繋がる社会的資産を分析,評価する.さらに,自立した農村観光を成功させている基礎自治体の政策立案・実施システムについて調査する.国内では,文化的景観保全調査及び,先進事例分析を受けて,日本でも実施可能な政策としていくための,地域コミュニティと基礎自治体の協働による地域づくりとして実践する.さらに,このシステム開発に有用と考えられる,研究者,行政担当者,実務者の交流を行う.研究の成果として,フランスの文化的景観制度ともいえるシット制度について,策定手法,住民参加の意味合い,歴史・景観の価値共有手法を整理した.この文化的景観保全地域の現地踏査を行うとともに,海外事例との比較調査を実施し,さらにフランスにおける景域保全計画策定への地域住民参画について整理した.日本においては,各地において,着地型観光の担い手となる観光ボランティアガイド導入の支援を行い,農業や各地の生活・生業の持続可能性に着目した地域内外の交流促進に資する視点・手法の提供を行った.
著者
青木 英明 久保田 尚 中村 文彦 大森 宣暁 高見 淳史 望月 真一 諏訪 嵩人 森井 広樹 森 和也
出版者
共立女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

3年の研究活動では、海外事業者から情報が得られ、英国ロンドンBarclays Cycle Hire計画担当者の講演会、フランス、ラロッシェル市副市長の講演会も主宰した。そして海外のバイシクルシェアリングの大規模なものが本格的な第三世代へ至ったことを理解した。国内ではシクロシティ富山の事業で得られたデータを解析することにより、東京大学、横浜国立大学研究室のスタッフがサービスの供給需要に関する定量的な検討を行い、利用実態の把握ができた。
著者
徳山 薫平 佐藤 誠 長坂 昌一郎
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

遅い時刻の夕食や朝食欠食などの食習慣は24時間のエネルギー消費量に影響しないが、24時間の平均血糖値を上昇させた(研究発表論文1)。朝食前の運動は朝食後の運動に比べて24時間で脂肪される酸化の量が多く、体脂肪増加の抑制に有効である可能性が示唆された(研究発表論文2)。また非運動性身体活動によるエネルギー消費の有無が血糖調節に影響することを明らかにした(研究発表論文3)。睡眠時無呼吸が重症化するに従ってエネルギー消費は高い傾向となり、脂肪酸化が抑制されていた(投稿準備中)。
著者
角松 生史 小田中 直樹 桑原 勇進 小玉 重夫 佐々木 弘通 進藤 兵 都築 幸恵 長谷川 貴彦 藤川 久昭 山本 顕治 横田 光平 世取山 洋介 DIMITRI Vanoverbeke 内野 美穂
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

1990年代後半以降のわが国の統治システムの構造的変容(「構造改革型」統治システム)を対象として、社会構成主義的方法を共通の立脚点とした学際的共同研究を行った。各年度毎に研究キーワードを設定して(2009年度「参加」、2010年度「責任」、2011年度「関係」)シンポジウム・共同研究会を開催した。「まちづくり」と市民参加、説明責任、教育基本法改正、歴史的記憶、裁判員制度、子どもの権利といったトピックについて、構造改革型統治システムのマクロ的・ミクロ的諸相が社会構成主義的観点から分析された。
著者
桑沢 清明 松村 伸治 矢沢 徹
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

有爪動物(Onychophora)カギムシperipatusは環形動物と節足動物をつなぐ幻の動物の近縁動物とも考えられていて、系統進化上で貴重な動物群である。このため比較生理学、神経生物学上興味がもたれる動物であるが、現在までのところほとんど研究されない。本研究では心臓とその神経支配について、主として、すでに調べられてきた周辺の動物群である甲殻類、昆虫類、環形動物、軟体動物との関係のなかで研究を進めることを目的とした。カギムシをオーストラリアに求め、Euperipatoides kanangrensisを取得して研究室で飼育管理し研究に用いた。神経伝達物質または神経修飾物質の面から中枢及び末梢のニューロン構成を明らかにして、ニューロンのマッピングを行うため各種推定伝達物質の抗体を用いて免疫細胞化学的に研究を行った。1. 中枢神経系は左右の脳神経節球とそれぞれに続く腹神経索および多数の腹神経索横連合神経からなる。全神経系に亘ってFMRFamide様免疫陽性細胞やそのプロセスを検出した。心臓神経、腸管にも免疫陽性プロセスが認められた。脳神経節中では横連合中に、特に多くの免疫陽性ニューロンが存在した。腸管にも免疫陽性ニューロンの存在が認められた。本研究により有爪動物にFMRFamide様物質が存在するこという最初の知見がえられたことになる。2. 神経系全般に亘りセロトニン様免疫陽性ニューロンプロセスが観察された。脳神経節では横連合に陽性プロセスを多く認め、その近くの領域にニューロン細胞体が多く認められた。アンテナには陽性プロセスが認められなかったが、基部の脳糸球体構造に陽性プロセスが観察された。視索には認められなかったが、網膜および視神経節に免疫陽性プロセスが認められた。心臓、輸卵管に免疫陽性プロセスが認められた。これらのことから、セロトニンは感覚、運動神経で神経伝達物質として使われていると推測された。
著者
中村 好一
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

心後遺症を持たない者も含めた川崎病既往者の追跡を行い、生命予後を明らかにする目的で、第8回~第12回川崎病全国調査(1982年7月~1992年12月)で52病院から報告された患者のうち、特定の要件を満たす6,576人について、戸籍を用いて2009年末日までの生存状況を確認し、死亡が判明した場合には死亡診断書に基づく死亡の解析を行った。全体でのSMRは1.00であったが、心後遺症を持つ者の急性期以降のSMRは1.86と有意に高かった。
著者
小笠原 康悦 佐々木 啓一 中山 勝文
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

近年、医療用生体材料の多くが開発され、広く用いられている。金属は加工が容易であり、金属は剛性、弾性、及び延性を有するため、金属は、歯科治療における生体材料の構成成分として用いられる。歯科において、金属はしばしば義歯、インプラントと歯冠修復物の一部として使用される。また、それは、血管ステントおよび医学分野にいて人工関節の材料としても利用される。しかし、金属は、口腔疾患、炎症及びアレルギー性皮膚炎を引き起こすために、その危険性は、以前から指摘されてきた。近年、医療や歯科技術の向上により、金属材料の使用頻度が高くなっており、また、ネックレス、イヤリングなどの装飾品をつける人が増加しているために、金属によって引き起こされるアレルギー性皮膚炎または炎症の患者が増加している。しかしながら、金属によって引き起こされる疾患の病因はよく理解されていない。本研究では、実験動物モデルを用いて、金属により引き起こされる遅延型過敏症や炎症に対する新しい診断法を開発することを目指した。また、我々は、金属アレルギーや炎症の開発のための分子機構を探った。金属アレルギーの診断のためのリンパ球刺激試験において、我々は、CTLA-4を阻害することにより、患者の末梢血を使用することによって感度が向上することを見出した。この方法では、金属アレルギーの診断のためのリンパ球刺激試験の新しい方法を開発することができると考えられた。金属アレルギーマウスモデルでは、ヒト病理に近い金属アレルギーの新たな動物モデルを開発することができた。
著者
緑川 光正 麻里 哲広 小豆畑 達也 石原 直 岡崎 太一郎
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

鉛直荷重は建築構造物の耐震性能を損なうものと一般に考えられている。柱中間部浮き上がり(CMU)機構を有するロッキング架構は,鉛直荷重を活用して地震応答低減を図る構造システムである。先行研究では,浮き上がりに伴って容易に降伏するベースプレートを柱脚部に設置したロッキング架構の地震応答低減効果や地震時挙動を明らかにした。本研究では,今までの研究成果に基づき,CMU機構を有するロッキング架構(CMU架構)の耐震性能を明らかにすることを目的として,簡易解析モデルによるCMU架構の基本力学特性,CMU機構(荷重伝達+エネルギー吸収)の静加力実験に基づく性能評価,CMU架構の地震応答特性を解明する。
著者
塩見 淳 岩間 康夫 橋田 久 高山 佳奈子 安田 拓人 齊藤 彰子 古川 伸彦 中森 喜彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

人の死亡・傷害などの結果が発生する事態となっているにもかかわらず、これに気がつかずに救助を行わず、結果を発生させた者は、どの範囲で刑事責任を負うのかについて、また、そのような者が複数存在する場合、誰が責任を負うのかについて考えた。当該の者が結果を予見し回避できたか(注意義務の存在)を検討し、次に結果を回避する地位や権限を有していた者(作為義務の存在)を選び出すこと、その選び出しは特定の者に一定の行為をせよと強制することになるので、十分な根拠づけを必要とすること、情報の開示を怠ることを処罰する特別法の創設も考えられることを明らかにした。
著者
小林 宏光 安河内 朗 綿貫 茂喜 中山 栄純
出版者
石川県立看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

心拍変動解析の手法は数学的には高度化してきているが,これが必ずしも生理学的指標としての心拍変動測定の精度・信頼性の向上につながっていない。我々は以前から心拍変動測定における呼吸コントロールの必要性を主張してきており,現状では専門の研究者の間では一定の理解が得られていると思われるが,市販されている心拍変動解析ソフトウェアではこの点に配慮したものは存在しない。本課題は、心拍変動測定・解析のためのソフトウェアを開発することを目的とするものであるが,周波数解析の手法などは従来からあるシンプルで確立した手法を用い,一方で呼吸の影響やデータの時間的整合性などに関しては十分な配慮した設計を行い,この指標の実際の測定における信頼性の向上につなげることを目標とする。本課題ではそれぞれに特徴を持つ3種類の心拍変動測定・解析システムを開発した。開発されたソフトウェアは,できるだけハードウェア環境に依存しないよう心がけて作成したが,AD変換を要するシステムでは特定の計測ボードに依存する部分が存在する。しかし,逆に心電計に関しては汎用性を持つので,心電計と解析ソフトウェアが一体となったメーカー製のシステムと比べれば,汎用性の面でもメリットがあると思われる。POLAR S-810を用いたシステムは,特定の心拍計に依存したシステムであるが,この機器の価格が非常に安いため,多人数の同時測定には特に適していると思われる。呼吸の影響やデータの時間的整合性に対する配慮はメーカー製の製品で最も欠けている点であるが,これらの点についても一定の配慮をした設計を行った。今回開発したソフトウェアは,まだ改良の余地を残すものではあるが,現段階でも十分な有用性を持つものであると思われる。
著者
山中 由里子 池上 俊一 大沼 由布 杉田 英明 見市 雅俊 守川 知子 橋本 隆夫 金沢 百枝 亀谷 学 黒川 正剛 小宮 正安 菅瀬 晶子 鈴木 英明 武田 雅哉 二宮 文子 林 則仁 松田 隆美 宮下 遼 小倉 智史 小林 一枝 辻 明日香 家島 彦一
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

中世ヨーロッパでは、辺境・異界・太古の怪異な事物、生き物、あるいは現象はラテン語でミラビリアと呼ばれた。一方、中世イスラーム世界においては、未知の世界の摩訶不思議は、アラビア語・ペルシア語でアジャーイブと呼ばれ、旅行記や博物誌などに記録された。いずれも「驚異、驚異的なもの」を意味するミラビリアとアジャーイブは、似た語源を持つだけでなく、内容にも類似する点が多い。本研究では、古代世界から継承された自然科学・地理学・博物学の知識、ユーラシアに広く流布した物語群、一神教的世界観といった、双方が共有する基盤を明らかにし、複雑に絡み合うヨーロッパと中東の精神史を相対的かつ大局的に捉えた。
著者
前田 芳信 池邉 一典 香川 良介 岡田 匡史 権藤 恭之 神出 計
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

地域高齢者の疫学研究の結果から,残存歯数と平均歯周ポケット深さは,高血圧,認知機能といずれも有意な関連がみられた.一方,いくつかの循環器系疾患ならびに認知症関連遺伝子と歯数ならびに平均歯周ポケット深さとの間に,有意な関連がみられた.一般線型モデルによる分析の結果,高血圧,認知機能を従属変数とした場合,遺伝因子と歯数ならびに歯周ポケット深さの間に交互作用は見られなかった.以上の結果より,歯科疾患と循環器系疾患や認知機能との間には,共通の遺伝素因があることが示唆された.
著者
益田 裕充 鈴木 康浩 藤本 義博 片平 克弘 森本 信也 久保田 善彦
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究はPLCとDBSの理論に基づいて、教師の資質・能力形成のプロセスを明らかにし、理科授業を通して学び続ける新たな教師教育プログラムを開発することである。研究の成果として、理科授業の「問題解決の過程」をコアにした授業カンファレンス、リフレクションのプログラムが、「集団としての一般化」、「課題解決の連動性・適応性」を高めることが明らかとなった。
著者
高橋 智
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

小・中学校だけではなく高校においても特別支援教育を構築し、高校生が抱える多様な困難・ニーズへの支援の具体化が早急の課題となっている。公立高校では徐々に特別支援教育に関する取り組みが検討され始めているが、私立高校においてはほとんど未着手の状態である。しかし高校の特別支援教育の実態そのものが不明であり、その解明は不可欠の課題である。本研究では、高校における特別支援教育の現状と当面の検討課題を探るため、(1)近年の文部科学省や都道府県・政令指定都市教育委員会等の高校特別支援教育施策、(2)学界・当事者団体等における高校特別支援教育に関する論議や調査研究、(3)高校現場で取り組まれている発達障害等の特別な配慮を要する高校生への教育実践について整理し、高校特別支援教育の全体的動向を把握した。高校特別支援教育のシステム開発をしていくための検討課題として、以下の点を指摘できる。第一に、高校はその入り口と出口で多様な接続・連携が求められている。中学校と高校の接続の課題、高校以降の進学・就労等に関する進路指導・移行支援の課題など検討すべき課題は多い。高校の場合、入学者選抜試験を経ている等の理由からわが子の障害を認めない保護者も目立つ。しかし障害者手帳の取得や外部専門機関(教育相談・医療・福祉・就労)との連携が特別な配慮を要する生徒の将来を切り拓くきっかけになることから、発達障害者支援センター・就労支援センターなどと連携する必要がある。第二に、特別な配慮を要する生徒の困難・ニーズの実態をふまえて入学試験、欠時数、単位取得、進級・卒業認定の配慮など、これまでとは異なる評価基準の検討や教務規定の弾力的な運用を行う必要がある。そのためには文科省レベルでの法令整備や都道府県・政令指定都市教育委員会によるガイドラインの作成等が必要である。第三に、国・自治体からの財政措置の問題である。高校における特別支援教育支援員や専門職の配置、教員の加配、教職員の研修、学習環境のユニバーサルデザイン化などの体制整備に行政による財政措置は不可欠である。とくに私立高校には特別支援教育推進の経費が国・自治体から支給されておらず各校の自助努力に任せられている。このことの見直しも不可避である。