著者
加藤 茂明 河野 博隆 川口 浩 山本 愛一郎 山田 高嗣 中村 耕三 加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

転写共役因子の骨組織における機能を解明する目的で、SRC-1(Steroid receptor coactivator-1)遺伝子欠損(KO)マウスを作出し、その骨組織の解析を昨年に引き続き行った。昨年、SRC-1KOマウスは、雄・雌ともに、代謝回転が亢進した高回転型の骨量減少を呈し、この原因はアンドロゲン及びエストロゲンによる骨量維持作用が抑制されているためであることを報告した。この骨量減少について、24週齢の大腿骨を用い、pQCTとμCTを用い、更に詳細に検討を行ったところ、海面骨の骨量は約40%低下していたにも関わらず、皮質骨の骨量は野生型(WT)とあまり差がみられなかった。海面骨・皮質骨におけるエストロゲン受容体(ER)の2種類のisoformの発現を免疫染色で確認したところ、海面骨ではERα・ERβ共に同程度に発現していたにも関わらず、皮質骨では主にERαのみが発現していた。骨芽細胞の培養系において、SRC-1はERβの転写活性は上げるが、ERαの転写活性にはあまり影響がみられなかったことから、海面骨・皮質骨でみられた表現型の違いは、SRC-1が主にERβによる骨量維持作用に関与しており、ERβの発現が多い海面骨で主に機能しているためと考えられた。雄においても、骨量の維持はアンドロゲン受容体(AR)のみでなく、ERにも依存していることが明らかになっており、ERのisoformの局在の違いが、雌同様に海面骨・皮質骨における表現型の違いを生じていると考えられた。また、KOで観察された骨量減少は、12週齢の時点では有意差がみられず、高齢化に伴い骨量減少が顕著になっていることが明らかとなった。これは、高齢化に伴い、フィードバック機構によって上昇した性ホルモンがシグナル伝達の障害を代償しきれなくなっているためと考えられた。また、性ホルモンと同じステロイドホルモンの一種であるプレドニゾロンの負荷実験では、骨量減少がWTとKOで同程度に見られたことより、SRC-1のグルココルチコイドシグナルへの関与は小さいことが明らかになった。
著者
神崎 初美 片山 貴文 芦田 信之 周藤 俊治 牧本 清子 東 ますみ
出版者
兵庫県立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

Web上で療養記録が実施できる症状管理サイトを作成し、RA患者の記述した内容を分析することで病気や症状がコーピングに与える影響を明らかにするため調査している。現在、まだ調査は継続中であるが途中の経過を報告する。PCや携帯の画面で使用できるよう作成した。「今日の体調」をクリックすると日々の症状(痛み・痛む関節の場所・数・その他記述データ)と天候・気分・活動度を毎日入力できる。入力した数値データはパソコン上で月間グラフとして、また記述データはテキスト内容を見ることができ、A4サイズ1枚にプリントアウトもできる。このため療養記録として診察に持参することもできる。研究対象者:Web上に自発的に登録する者と入院RA患者のうちWeb上の症状管理サイトへの記述を説明し承諾した者としている。以下(1)〜(6)の内容について現在、データを収集中である。(1)Webサイトへの使用頻度の集計(2)記述文字数(3)記述内容のカテゴリー分け(4)天候や痛みと症状との相関(5)診療内容や療養生活と症状との関連(6)Webサイト改良のため生活上の利点欠点、診療場面利用への有効性など研究協力者の感想を聴くリウマチ患者にとっても自身でも把握が困難だったRA患者の病状変化をセルフモニタリングにより自身で分析でき、病を悪化させている要因を客観的に分析することができる。また、それを診療場面に活かすこともできる。例えば天候・痛み・薬物療法と症状との関連など系統的な把握が可能になる。個別対応型であり、より深く正確な情報がプライバシーを保持しながら得る事が出来ると考える。
著者
池松 裕子
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

University Hospitals of ClevelandのInstitutional Review Boardから8月11日に正式なデータ収集の許可が降りた。データ収集者をCase Western Reserve University, Frances Payne Bolton School of Nursingで募集したところ、即日応募者があり、面接の上、決定した。データ収集場所となる同病院Surgical Intensive Care UnitとCardiac Intensive Care Unitにおいて、看護スタッフの協力を得るため、研究の概要とデータ収集について説明した。同病院でのデータ収集を行うにあたり、経費を名古屋大学から送金する必要があり、病院CEOと名古屋大学医学部長との間で覚書が交わされる必要性が生じた。覚書は10月31日に両者のサインがされ、11月1日からデータ収集開始となった。データ収集者は週3回、両ICUを訪ねて潜在的対象患者がいないかどうかを調べ、対象者がいる場合は、主治医と主任看護師にインタビューできるくたいに状態が安定しているかを尋ね、許可が降りたら患者にインタビューを依頼する。2007年2月11日の時点で9人の患者に打診し、6人の患者にインタビューすることができている。6人の内訳は男性4人女性2人で48〜85歳。心タンポナーデの原因は、癌が2人、感染2人、出血傾向1人、その他1人である。心嚢穿刺前の血圧は116〜175/49〜91mmHgと低下はしていなかったが心拍数は84〜118/minとやや頻脈傾向であった。血圧・心拍数は穿刺後も著明な変化は見られていない。6人中、ふたりはまったく自覚症状がなかったが、それ以外の患者は息苦しさや胸痛とともに、死にそうな感じや、恐怖・不安を感じたを答えた。現在、引き続きインタビューを行うとともに、既存の6人のデータを整理中である。
著者
荒木 英樹
出版者
山口大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究では,蒸散によって生じる"水圧シグナル(hydraulic signal)"が,地上部の乾きを素早く根系に伝達するシグナルとなり得るかどうかを検証した.ササゲを,高大気湿度条件下と低大気湿度条件下,すなわち葉面にかかる水要求度が異なる環境下で生育させ,根系における水の通導コンダクタンスをハイプレッシャーフローメータ法で測定した.高湿度条件では生育させたササゲでは,葉の水分要求度が低く水欠乏が生じなかった.そのような個体では,照明点灯後3〜9時間の間に根系の通導コンダクタンスが上昇しなかった.一方,低湿度条件に曝された個体では,照明点灯後3〜6時間の間に葉に軽度の水欠乏が生じるとともに,根系の通導コンダクタンスが有意に上昇した.気孔コンダクタンスを測定した結果,低湿度条件下,すなわち高蒸散要求条件に曝された個体でも,気孔が閉鎖していなかった.すなわち,低湿度条件下に曝されたササゲは,地上部の乾きを感知して,蒸散要求に見合うように根の吸水能力を高めていた.次いで,葉の乾きを根に伝達する経路について検討を行った.導管のみが地上部と根系の連絡路となっている個体を用いて同様の測定を行った結果,師部の物質輸送能力を消失させても根の通導コンダクタンスが上昇した.地上部を切除しその切り口から吸引圧をかけた個体でも同様の反応が起こった.また,地上部の水ポテンシャル(吸引圧)が低下した個体ほど通導コンダクタンスは大きく上昇した.以上の結果から,ササゲには地上部の水欠乏や水要求を感知して,根の吸水能力を高める適応性があることを明らかにした.その乾きを伝達するシグナルは,化学物質の合成と輸送を要する師部経由ではなく,導管を経由する吸引圧であることが示唆された.
著者
藤光 康宏 西島 潤 江原 幸雄
出版者
九州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

平成18年度は、前年度に引き続き福岡県中部の警固断層及び福岡県南部の水縄断層を対象とした重力測定を行った。重力測定には既存の2台の相対重力計を用い、また測定点の座標(緯度・経度・標高)の決定は、本研究で導入したGNSS受信機、及び福岡市発行の1/2500都市計画図と久留米市発行の1/2500都市計画図を用いた。警固断層の調査では、福岡市中央区輝国・谷・小笹・平尾地区、及び南区大橋・清水・大楠地区を中心に、高密度に測定点を配置した(測定点間隔50〜200m)重力探査を実施し、平成18年度までの結果と合わせて福岡市重力異常図の詳細部分の範囲をさらに拡大した。また、警固断層を横切る6本の測線を抽出し、基盤岩深度及び堆積層の層厚を推定するために、これらの測線に沿って基盤岩(花崗岩類)・第三紀層・第四紀層の3層構造による鉛直2次元解析を行った。既存ボーリングデータのある地点において鉛直2次元解析で推定された基盤岩深度や第三紀層・第四紀層の層厚と比較したところ、非常に整合性の高い結果が得られた。水縄断層の調査では、平成18年度に実施した水縄断層西端部(久留米市中心部)の重力測定の結果を受け、久留米市市街地で見られる水縄断層の延長線南側の低重力異常がどの程度の規模のものであるかを把握するために、測定点間隔500m程度で久留米市街地西方及び南方の重力探査を行った。その結果、この低重力異常を示す地域は、耳納山地の北側を山地に沿って東西方向に延びる水縄断層とは逆に南側が落ちており、かなりの広がりがあることから久留米市南西部は非常に厚い堆積層に覆われていることが推定された。以上のことより、高密度に測定点を配置して行う重力探査は、基盤構造及び堆積層の層厚の推定に有効であることが判明した。ボーリング調査より短時間で低価格な探査手法であるため、広範囲の基盤構造・堆積層分布調査に適した探査手法であると言える。
著者
有木 康雄 滝口 哲也
出版者
神戸大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研課題では、スポーツ実況放送の音声認識、及び状況理解を目的としている。状況理解により、スポーツ実況放送のシーンを構造的な単位に分割し、検索のためのメタ情報として利用可能とする。本研究課題では、確率的な枠組みに基づく音声と状況の同時認識、スポーツの進行に伴う状況変化のモデル化、状況に基づく音声認識モテルに特色がある。状況変化モデルは、発話された音声を認識し、発話内容に基づいてイベント推定、及び状況の遷移を行うモデルとなる。ここでは特に発話内容からのイベント推定が重要となる。本研究では、多様な発話を高精度に分類可能なAdaBoostを推定のためのモデルとして用いた。ただし、AdaBoostの出力は確率ではないことから、スコアをsigmoid関数により擬似確率化して用いた。また、AdaBoostを行う際の特徴量として、単語順序を考慮可能な手法であるDTA-Kernel PCAについても研究を行った。状況に基づく音声認識では、状況に応じて変化する言語的・音響的変化に対し、音声認識のモデルを適応する手法について研究を行った。本研究では、それぞれ状況に対応した複数の言語・音響モデルを構築しておき、認識時にモデルを切り替える手法を用いた。状況依存モデルの尤度、及び発話内容からの状況推定の尤度を統合し、最大化することにより、音声認識と状況推定を同時に行った。スポーツ実況放送では、興奮した音声を含む場合があり、興奮音声の認識は通堂の音響モデルでは困難である。研究課題では、さらなる認識性能向上のため、新しい音声認識特徴量、発話スタイルの変動に頑健な音響モデルについても研究を行った。
著者
小野 恭靖
出版者
大阪教育大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

今年度は昨年度に引き続き、諸図書館・文庫などに所蔵されることば遊び関連文献資料の閲覧調査、及び複製の収集を行った。具体的には国立国会図書館、東京都立中央図書館、早稲田大学図書館、京都大学附属図書館、京都府立総合資料館、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター図書室、大阪府立中之島図書館、大阪市立中央図書館を訪ね、ご所蔵のことば遊び関連文献(写本・版本)の閲覧と複製の収集を実施した。今年度はきわめて多岐にわたることば遊び資料の閲覧が叶った。また、自ら古書店を訪ね、研究費の一部を用いて、貴重な江戸期のことば遊び文献資料(文字絵関係資料、三段なぞ関係資料を中心とした諸種のことば遊び資料)を購求し、大阪教育大学図書館に蔵書として収めることができた。そして、それらの一部については『学大国文』誌に翻刻紹介をし、広く公開を図った。ことば遊び研究に関わるその他の実績としては、高校生向けの啓蒙的な文章を執筆し、大阪桐蔭高等学校発行の教育研究誌『桐』に二度(「回文・倒言・アナグラム」と「早口ことば」)にわたって発表した。また、今年度も、歌謡文学に見られることば遊びの分析を文献調査と並行して行った。中でも昨年度に引き続き、ことば遊びときわめて関連の深い子どもの歌謡(以下、「子ども歌」と呼ぶ)を対象として研究を実施した。この「子ども歌」の研究成果の一端は、医療生活協同組合編『comcom』誌上に連載エッセイの形で発表した(本成果についてはエッセイのため裏面の「雑誌論文」からは除外した)。また、NHKラジオ第二放送「私の日本語辞典」に出演し、「子ども歌の系譜」と題して40分の番組を4本収録した(放送は平成20年4月)。
著者
常田 聡 青井 議輝
出版者
早稲田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

環境中では多種多様な微生物が雑多に存在する複合微生物系を形成している。本研究では個々の微生物の現象に着目するのではなく,生態系全体を一つのシステムとしてとらえるシステムバイオロジーの概念を微生物生態学に導入し,実験的手法および知識工学的手法を併用してコンピュータ上に微生物のコミュニティーを再構築し,微生物生態形成メカニズムの真の理解につなげる新規方法論を確立・提案することを目的とした。本研究では,特に,複合微生物系の一例として,多孔質膜を介して通気を行い,膜上にバイオフィルムを形成させる方法(いわゆるメンブレンエアレーション法)によって得られたバイオフィルムを取り上げた。本年度は,シミュレーション結果の精度に多大な影響を与える微生物パラメータを精査し,シミュレーション結果と実験結果を比較した。まず,バイオフィルムからサンプリングした従属栄養細菌(HB),アンモニア酸化細菌(AOB),亜硝酸酸化細菌(Nitrobacter,Nitrospira)を対象に,水質回分実験・呼吸活性実験・蛍光遺伝子プローブ法(FISH法)・レクチン染色・画像解析を行い,それぞれの徴生物の活性パラメータを評価した。一方,形成されたバイオフィルムを壊さずに,微小電極測定およびFlSHを行い,バイオフィルム内の基質濃度分布と微生物分布を得た。つぎに,この結果を,すでに得られた微生物パラメータを用いてシミュレートした結果と比較した。完全には実験結果をシミュレーションでは再現することはできなかったが,文献値のパラメータを用いてシミュレーションをした結果と比較して,多くの部分の傾向を再現することができるようになった。またMABの内部に存在する亜硝酸酸化細菌はNitrobacterであることが明らかになった。
著者
西尾 文彦 近藤 昭彦 中山 雅茂
出版者
千葉大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

寒冷な大気状態で降る雨や霧雨(着氷性降水)が付着凍結する雨氷現象は、森林被害や構造物・送電設備の倒壊被害を発生させる。本研究では、日本における着氷性降水の気象学的および気候学的な特徴の解明を目的として、(1)気候学的な特徴の把握(総観規模の特徴)、(2)発生条件の形成過程の解明(局地規模の特徴)、(3)大気の熱力学的構造の解析(雲物理規模の特徴)の観点から解析と研究を行った。そして、着氷性降水の発生予測手法を提案し、地上降水種(降雪・雨氷・凍雨・雨等)の地域分布の予測手法の可能性を示した。(1)では、中部地方以北の内陸山間部と関東地方以北の太平洋側平野部で着氷性降水の発生率が高く、着氷性降水の発生に関する季節変化と経年変化、地上気圧配置の特徴について示した。(2)では局地解析より、内陸山間部では盆地地形による寒気滞留が発生気象条件の形成に寄与し弱風下で発生し、太平洋側平野部では内陸からの局地的な寒気移流が関与して風を伴って発生するのが特徴である。この違いにより、太平洋側平野部では雨氷表面における負の熱フラックスが大きく、雨氷が発達しやすい大気状態にある。(3)では、熱力学的な理論計算により降雪粒子の融解条件と雨滴の凍結条件を求め、これと地上の露点温度の条件から着氷性降水の発生を予測する方法を提案した。推定された地上降水種の地域分布は、関東平野の事例における実際の降水種の地域分布に良く一致した。本研究では、着氷性降水の現象解明から発展して予測手法へ導く極めて独創性のある研究成果であると考えています。
著者
山崎 文雄 丸山 喜久
出版者
千葉大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は,反発度法(シュミットハンマー)によるコンクリート強度の非破壊計測,常時微動観測による地盤卓越周期の計測,および壁・柱の量による建物剛性の違いを常時微動観測による建物固有周期で推定し,安価で短時間に耐震性能を把握する方法を開発することである。これまでに,常時微動観測によって地盤の卓越周期を推定し,それらの観測結果と余震記録(強震と弱震)を用いて本震の応答スペクトル,計測震度を推定する方法を提案し,その推定精度を確認した。今年度は,広島県内の鉄筋コンクリート造学校校舎2棟を対象に,常時微動観測と数値モデルを用いた固有値解析によって,耐震補強前後での固有周期の変化を明らかにした。表層地盤と建物の振動特性を考慮して,耐震補強効果を確認するため,前後の固有周期の変化に着目して耐震補強前後で常時微動観測を実施した。その結果,耐震補強により固有周期の変化があり,常時微動と数値解析のいずれからも同様の値が示された。観測を行った2つの建物は,柱とそれにとりつく壁の間にスリットを入れ靭性の向上と,鉄骨ブレースやRCフレームを増設することにより建物の剛性の向上を目的としている。常時微動観測から靭性の向上について把握することは困難であるが,剛性の上昇の程度に関しては固有周期の変化から推測が可能である。従って常時微動観測をこれまでの耐震診断や数値解析と併用することで,耐震改修の効果を精度よく評価できるものと考える。
著者
土居 修一 中川 明子 吉村 剛 堀沢 栄
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

ヤマトシロアリの採取をするためにアカマツあるいはクロマツ林内で枯れ枝や切り株中を探索した時、褐色腐朽材や健全材ではシロアリが営巣・摂食して居ることには頻繁に遭遇するが、白色腐朽材にはほとんどシロアリが営巣・摂食していない,褐色腐朽材ではセルロースやヘミセルロースなどが優先的に分解されリグニンが残されているのでシロアリの餌としてはむしろ不都合であるが、初期腐朽では適度に柔らかくなって養分もほとんど残されており、また腐朽菌種によっては道しるべフェロモンとして働く代謝産物を作ることもあるため営巣・摂食しやすいと考えられる.他方、白色腐朽材にはリグニンが少なくセルロース、ヘミセルロースが残されており、しかも適度に柔らかくなって営巣・摂食しやすく褐色腐朽材より優れた餌になりうるはずであり、上記の事象の合理的な説明がつかない。本研究の目的はこの理由を萌らかにすることである。昨年度は、京大生存研のシロアリ試験地でトランセクト法による調査を実施し、白色腐朽材がイエシロアリおよびヤマトシロア夢に忌避される傾向があることが確認された。また、2年前に埋設しておいたアカマツステークにおいても同様の現象が確認された。しかしながら分離菌で腐朽した木材を加熱すると忌避効果は示されないことがわかった。そこで、今年度は野外杭試験で暴露された腐朽材を試料として加熱、風乾およびそのままの状態で摂食試験を行ない、そのままの状態では、忌避効果が示されることが明らかになった。この試料につき、凍結乾燥後ヘキサン抽出を行い抽出画分をペーパーディスク法で検定したところ、この画分に忌避活性があることが明らかになった。今後、この画分の活性物質の化学構造を特定するとともに、活性を持つ腐朽菌の探索を行う予定である。
著者
鈴木 泰子
出版者
信州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

【研究目的】病気におけるすこやかな生への「はずみ」が、病気とともに成長する子どもにとってどういう経験であるのかを明らかにする目的でフィールドワークを継続し分析をすすめる.【研究対象】13歳〜22歳の慢性疾患患者5名で、発症後5年以上経過した者で、本研究への参加の同意の得られた者.【データ収集方法】(1)対象が参加するボランティア活動における参加観察(2)グループおよび個別のインタビュー.【分析】小児看護分野・小児がん臨床分野の研究者・実践家、質的研究を継続して実践している研究者らによるスーパーバイズを受けながら、データを質的帰納的に分析した.【結果及び考察】病気との対峙を通して子どもは、(1)発病前の自分へのわだかまりを何度もいったりきたりしながら捨て、いやなことがあってもとがめだてせずにあるがままを受け入れるようになる、(2)健康であったときより高次のすこやかさ(安定感や身体感覚)を獲得する、(3)自分の成長とともに病気への感謝を実感するようになった.これらはボディイメージの耐え難さや受け入れ難さと深く関わりながら、周囲の者への反発、自らや周囲への語り、他者との相互関係によって熟成され、上昇停止体験や未来への諦めとは異なる現在と未来を精一杯生きる意思や生きる意味の獲得へとつながりゆくものと考えた.この病気と対峙する過程で、発達段階に適切な多面的、継続的なサポートが必要とされ、自らや他者のいのちをみつめ、相互に関わりあうことで、子どもは強くしなやかなすこやかさ(安心や安定)を獲得し、病気がすこやかな生への「はずみ」を強める要因となり得るとみなされた。【今後の課題】本研究は発症時の記憶がはっきりした少数の限られた発達段階を対象としたものであることが研究の限界であり、今後は対象数を増やし、隣接する発達段階による比較検討も必要とされる.周囲への反抗や攻撃を実感できず表現もできない子どもへの着目の重要性も示唆された.
著者
篠原 ひとみ 兒玉 英也
出版者
秋田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

乳児の夜泣きへの看護介入方法を探索するために、児の唾液中のメラトニン濃度が睡眠-覚醒リズムの発達の有効な指標となり得るかどうかを明らかにすることを目的に児の唾液中のメラトニン濃度を測定した。そして起床時刻、就寝時刻、最長持続睡眠時間、総睡眠時間、昼寝回数、昼寝時間、保育環境との関係を分析した。対象は生後3-15ヵ月の児(平均7.6±3.2ヵ月)67名(男児36例、女児31例)とその母親である。唾液は母親が1日4回、朝起床時(6時-9時)、昼(11時-13時)、夕方(15時-18時)、夜就寝前(20時-23時)に採取した。67名の唾液中のメラトニン濃度の平均値(SD)は朝起床時40.1(35.3)、昼13.6(21.7)、夕方14.6(24.7)、夜就寝前23.2(28.4)であり、昼や夕に高濃度(10pg/ml)を示す児は生後3-5ヵ月に多く認められた。児の1日の総睡眠時間、最長持続睡眠時間、夜間の覚醒回数、昼寝回数との関係では、昼と夜のメラトニン濃度は昼寝回数と正の相関、昼のメラトニン濃度と最長持続睡眠時間に負の相関、朝のメラトニン濃度と総睡眠時間に負の相関が認められた。また夕と夜のメラトニン濃度は1週間当たりの外気浴日数と負の相関が認められた。生後3-5ヵ月の乳児では昼や夕でもメラトニン濃度が高値を示す例が多く認められたが、月齢と伴にその頻度は減少した。昼のメラトニン濃度が高値の場合昼寝回数が多く、最長持続睡眠時間が短縮する傾向がみられたことから、生後5ヵ月以降、月齢が進んでも日中のメラトニン濃度が高値の場合、睡眠-覚醒リズムの発達の遅れを検討する必要があると考えられる。
著者
吉田 正尚
出版者
福島県ハイテクプラザ
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン(PO)類は一般に表面不活性であり表面修飾が非常に困難な材料である。しかしシラン系結合剤(3-ルメタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)と微粒子を含んだ攪拌液相中にPO基材を浸漬し表面に微粒子を固定していく独自の手法であれば表面修飾が可能である。今回は何故表面修飾が可能なのか更に考察した。1.PO基材に表面修飾出来るシラン系結合剤の化学的条件を調べた。即ちシラン系結合剤分子の末端結合基を(a)メタクリロキシ基(b)エポキシ基(c)アミノ基(d)イソシアネート基の4種類のシラン系結合剤1%水溶液中にタングステン(W)微粒子及びPE平板を同時に投入し時間毎に基材表面に固定されるW量を定量した。その結果W量は結合剤(a)を用いた時が最多であり他3種の結合剤は殆ど固定されなかった。故に結合剤の結合基はPO基材の表面修飾に大きな影響を与えることがわかった。2.表面修飾可能なPO基材の物理的条件を調べた。即ち走査型プローブ顕微鏡によりPO基材の表面状態を評価した。可能なPE基材(高結晶且つ顔料無)の表面には板状結晶やラメラ晶などの高分子の整列部分が多数存在した。一方困難なPE基材(低結晶又は顔料有)にはそれらは見られなかった。3.溶媒極性を変化させ本現象の駆動力について検討した。即ち溶媒を水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノールの順に極性低下させた時の各溶媒のW量は水が最多であった。また微粒子を投入せず結合剤のみ投入した場合の(a)〜(d)の各結合剤自体の固定量は結合基が非極性基である結合剤(a)が最多であった。このことは結合剤(a)は水分子間の水素結合ネットワークに入れず微粒子を伴いつつ水からはじかれる形で同じ非極性のPE基材表面に集まる現象即ち疎水性相互作用により微粒子固定されるものと推察された。
著者
我部山 キヨ子 永山 くに子 坪田 明子
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

1.助産学担当教員198人に卒業時までに必要とする臨床経験回数と経験させたい技術を郵送による質問紙調査を行った。健康診査、助産技術、保健指導などの49項目のうち、経験必要と考える臨床技術で多かったのは、分娩監視装置の装着と判読、分娩経過中の産婦診察で、いずれの項目も、大学教員は他の教育機関の教員に比べると、有意に低率であった。また、7割以上の教員が経験させたい技術項目として挙げたのは、分娩時の酸素吸入、妊娠期の超音波診断、妊娠反応テストであった。2.助産師学生700人(有効回収率90.8%)に対して、卒業時の臨床技術経験の到達度調査を行った。全34項目の平均到達度は2.44で、時期別到達度の平均は分娩期が最も高く(2.60)、以下産褥期(2.47)、新生時期(2.42)、妊娠期(2.38)となった。全項目の平均到達度は専門学校が最も高く(2.55)、次いで専攻科(2.46)、大学(2.29)であった。学生による臨床技術到達度は、実習期間が長いほど到達度が高くなっており、実習時間数が短い大学教育への移行が進む昨今、助産教育における臨床実習のあり方を検討する必要性が示唆された。3.京都府内の産科を要する35施設300人(回収率84.7%)の助産師に対して、卒後教育に関する調査(調査内容:対象の属性、新人助産師の教育システム、施設における助産師の卒後教育とその内容など)を行った。年齢層は20歳代35.8%、30歳代29.9%であった。新人助産師の教育システムはプリセプター制度が最も多く、実践能力の査定時期は就職1年目が多かった。卒後教育上の問題としては、「時間がない」「受講料が自己負担」「助産師独自の内容が少ない」がほぼ半数を占めた。卒後教育の時期で最も重要な時期は1年目と2〜3年目で、卒後教育内容で最も求められているのは「産科救急」「新生児蘇生」「乳房管理」「異常周産期管理」「分娩診断」「分娩技術」でいずれも高次の知識・技術を要する内容であった。卒後教育では新人教育の重要性が指摘されており、卒前教育と卒後教育の連携に重要性が示唆された。
著者
岩船 昌起 鈴木 雄清 境 洋泉 木下 昌也
出版者
志學館大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

体育学・医学等での身体活動に関する成果をスポーツ環境の評価に展開するため,"拍速"という運動効率の新指標を提唱した。拍速は,1拍当たりの移動距離(meter/beat)を示し,酸素脈や一回拍出量と関連する。本研究では,拍速を用いて自転車ロードレースでの"坂"の評価を試みた。実験道路(比高約200m平均勾配0.056)を上る場合,被験者の持久力に応じて約12〜30分かかる。拍速は,スタート直後に急激に減少し,約1〜2分で安定化する。拍速の平均値は,運動強度ごとに若干異なるが,被験者の持久力をほぼ反映する。また道路を急勾配と認める度合やペダルを踏み込む意識との相関が高く,坂の知覚の一面を指標する。一方,約5〜8分かかる下りでは,拍速は,カーブや急勾配でのブレーキによる速度制御のため,持久力よりも技術力と関連し,急勾配の認識や爽快・恐怖感との相関も高い。このように坂の知覚の過程は上りと下りで異なり,道路のアフォーダンスに起因すると思われる。また,上り下りだけでなく,コースの勾配・曲率や被験者の能力に応じた違いも拍速は定量化できる。「ツールドおきなわ市民200km」のコースで,移動地点ごとの拍速は,その地点と約30秒前の地点との相対比高と相関が高い。30秒での移動距離は,勾配や速度との関係から一般に上りで約50m,下りで約400mとなる。200kmコースでは,約70km以降の区間で上記の規模を超える上り下りが連続するため,上りで約50m,下りで約400m先までの勾配・曲率の変化を見越して走行を効率化することが持久力温存の鍵となる。また,約80〜90km区間と約145〜165km区間では,数100m規模の上り下りが周期的に繰り返すため,精神・技術的な素早い切り替えも要求される。ArcGISで上記の成果を基に,霧島市のサイクリングマップなどを作成した。近く大学のWebで公開する。
著者
田村 公江 鍋島 直樹 柿本 佳美 細谷 実 川畑 智子 荒谷 大輔
出版者
龍谷大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究は、性をめぐる学術的研究を踏まえて現代の日本社会における望ましい性のあり方を検討すること、そして市民を読者対象とする著書を出版することを目的としている。今年度は最終年度にあたるので、青年の性意識調査を手がけるグループAを理論的考察を行うグループBが補佐する形で調査データの分析を行い、調査に協力してくれた青年層の人々に役に立つ情報発信の準備を行った。なおグループAの連携研究者として竹中健(札幌市立大非常勤講師、社会学)が加わった。詳細は以下のとおり。1.インタビューデータの整理合計29本(1本あたり90〜120分)のインタビューデータを、インタビュー協力者のプライバシー保護、及び、公開意志の尊重に留意して整理し、『青年の性意識/インタビュー決定稿』として仕上げた。これは、(1)固有名詞を伏せるマスキングを行い、(2)それに対するインタビュー協力者の本人チェックを要請し、さらに、(3)本人チェックに基づいてデータを書き換えるという3重の作業を経て獲得されたものである。このような厳重な作業を経て獲得されたデータは非常に貴重なものであり、性という領域についてはこれまでに殆ど例がないものである。このデータは『青年の性意識/インタビュー決定稿』というタイトルを付けて保存され、今後の学術的研究、及び出版のために役立てられる。2.研究会年度内に3回の研究会を実施して、アンケート及びインタビューの、(1)データ整理の進め方、(2)考察に関する編集方針について協議した。日程は、1回目が9月1日、2日、2回目が12月18日、3回目が2月16日である。3.出版企画インタビューに基づく図書『インタビュー「大学生の性意識」』(仮題)の出版企画を、出版社に打診しつつ作成した。第一部では10人前後のインタビュー協力者を選んで比較的詳しく紹介し、第二部では、論文及びコラム形式で青年層が抱える諸問題を考察するという2部構成とした。第二部の考察に際してはアンケートデータも取り入れる。この図書は、青年層の多様な現状を伝えると共に、青年層が抱えている困難を抜き出して解決策を提案するものとなるはずである。年度末に執筆分担を決め、執筆を開始した。
著者
鈴木 啓子 大屋 浩美 石村 佳代子 金城 祥教 吉浜 文洋
出版者
静岡県立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的はわが国の精神科における危険防止のための看護技術を明らかにし、より安全な技術を開発することである。平成15年度の研究成果は下記のとおりである。1.わが国の護身術(柔道および空手)および取り押さえ術(刑務官による)の研修を受け、その内容について精神科看護のエキスパートと検討した。これらは日本の伝統的な武術の技が使用されているが、基本的には関節技を中心に対象者に痛みを与えることにより、行動を封じ込めるものが中心になっていた。その基本には対象者を「正常な判断能力を有しているが故意に問題を起こした者」とする見方があり、一般精神科病棟において精神的健康問題をもち危機状況にある患者に対する看護技術としては適切性が低いといえ、刑法上合法となる緊急避難の場合以外は使用すべきでないと考えられた。また、これらの技術は訓練しなければ誰でも身につけられるものではないことからも、これら攻撃型の技術を習得するよりは、緊急時に身を守る技、逃げる技などの防御型の技術を看護師は習得するほうが合理的であると考えられた。2.平成14年度に引き続き、先進的な精神科医療を提供している8施設において急性期看護経験のある看護師85人を対象としグループインタビューおよび危機状況にある患者モデルを設定した実演によるデータ収集を計12回実施した。継続的比較分析を行った結果、言語的な介入が可能な段階では看護師は患者のもてる力に働きかける言語的介入を積極的に行い、また危機がエスカレートする段階では暗黙の了解により互いの役割を引き受け隔離・拘束にあたる点が、海外の危機介入では見られない特徴だった。また強制的な治療後にも患者の側にいて寄り添い患者をねぎらうなど海外の技術に近い実践があることも明らかになった。抽出された看護技術について、より安全な危険防止のための方法を明らかにすることが、今後の課題である。
著者
鈴木 文明 前旺 和司
出版者
市立名寄短期大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

以下のことを、在日朝鮮人一世のハルモニたち(80歳代)に対する集団面接、個人面接によって明らかにした。インフォーマントの記憶牽たどるために、孫基禎と力道山の二名を提示した。孫基禎がベルリン・オリンピックのマラソン競技で優勝し、それを報道する東亜日報に掲載された彼の写真から日の丸が抹消されると言う事件が起こったのは1936年であった。このことについて、「(ずっと後になって=解放後)聞いたことがあるような気がする」ハルモニが何人かいた他は、当時、既に思春期以上の年齢に達していたはずであるが、ハルモニ達の記憶の中に孫基禎はいない。非識字者(1930年当時、郡部における女子の推定就学率は5.5%)であったということが最も大きな要因であるが、植民地下の朝鮮人女性の生活がメディア・スポーツなどとそもそも全く無縁であったことを示している。次に、1950年代に「アメリカで最も有名な日本人」と言われた在日朝鮮人の力道山については、すべてのハルモニが記憶していた。「(力道山が)朝鮮人とわかってから、それはもう応援の力の入り方が違いました」と言うように、同じ朝鮮民族であったことが記憶を強烈なものにしている。しかし、その記憶は力道山そのものというよりも、お父さん(夫)が「ものすごく好きやった」とか、「力道山のプロレスのある日は機嫌が良かった」というように、「力道山のプロレスを観る夫」を眺めていた記憶であった。さらに、力道山の記憶は、テレビの所有/非所有にまつわる困窮生活の記憶であった。
著者
川村 理
出版者
香川大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

マイコトキシンは、カビが産生する有毒2次代謝産物で、様々な農作物や食晶を微量汚染しており、耐熱性で調理程度の加熱ではほとんど分解しない。よって、マイコトキシンを迅速かつ高感度に測定し、汚染食品を排除することが食の安全において重要である。そこで、水晶発振子バイオセンサーを用い、抗原抗体反応を利用したデオキシニバレノール(DON)とアフラトキシンB_1(AFB_1)の迅速検査法の開発することを本研究の目的とした。1.抗体の作製抗DONと抗AFB_1モノクローナル抗体産生細胞を無血清培地で大量培養し、培養上清を回収後、硫安分画法で精製抗体を調製した。2.測定系の検討生体分子間相互作用定量QCM装置AFFINIX Qを用いて、特に迅速測定法の必要性が高いDONとAFB_1の測定のための測定系を検討した。(1)直接法抗体を振動子に固定化し、規制値に相当するDON又はAFB_1標準品を加え測定を行ったが、いずれの場合も反応が微弱で測定できなかった。(2)競合法振動子に結合する質量を増幅させれば、測定が可能となる。そこで、次に規制値に相当するDONとDON-OVA結合体又はAFB_1とAFB_1-BSA結合体とを同時に加え競合法について検討した。その結果、DONでは、規制値の約1/5程度相当までの測定が可能であったが、AFB_1の揚合は、規制直相当の濃度では、反応が微弱で測定できなかった。以下の実験は、DONのみで行った。(3)DON汚染穀物への適用性の検討競合法で、DONを各濃度添加した小麦を調製し、アセトニトリルー水で抽出し、祖抽出液中のDONを測定し、本法の穀物検体への適用性を検討した。その結果、小麦からの抽出マトリックス存在下では、抽出マトリックスが振動子や抗体およびDON-OVAに付着し、規制値相当量のDONの検出も不可能であった。抽出マトリックスの付着防止のために界面活性剤の添加も試みたが、現時点では解決していない。