- 著者
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山上 裕機
谷 眞至
川井 学
- 出版者
- 和歌山県立医科大学
- 雑誌
- 萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2007
本研究は、網羅的DNA1次構造異常解析と網羅的遺伝子発現プロファイリングを統合することで、膵癌特異的遺伝子の同定を試みた。まず膵癌摘出標本における凍結サンプルを薄切した後、マイクロダイセクションにより膵癌細胞のみを回収した。そのDNAとRNAを抽出し、DNAはGeneChip Mapping Array10OKに、RNAはGeneChip Human plus U133arrayにかけ、網羅的遺伝子解析を行った。膵癌1次構造異常解析において、homozygous deletionを認めた領域はch3p24.1-p23, ch9p21.3, chgp22.3, ch9q22.32, ch17p12, ch18q21.1の6カ所であった。このうち2サンプル以上(10%)で認めたのは2カ所で、ch9p21.3が9サンプル(45%)とch18q21.1が5サンプル(25%)であった。この2領域の候補遺伝子は前者がCDKN2A(p16),CDKN2B(p15)およびMTAPで、後者はSMAD4であった。次に膵癌におけるLOH領域の同定を試みた。LOH領域のうち、最も頻度が高い領域はch17p13.3-p11.2で18サンプル(90%)、ch9p23-p22.3, ch18q22.1, ch18q22.3で17サンプル(85%)、ch9p21.3, ch18q12.3-q21.1で16サンプル(80%)であった。そのうちch17p13.3-p11.2の18サンプルのうち1サンプルで一部homozygous deletion領域を認め、ch9p21.3ではLOHの16サンプルに加え3サンプルにhomozygous deletionを認め、ch18q12.3-q21.1では16サンプルのうち5サンプルの一部にhomozygous deletion領域を認めた。3copy以上の増幅を認めた領域はch18q11.1-q11.2で9サンプル(45%)と最も頻度が高く、続いてch1q21.1-q23.1, ch1q23.3-q24.1, ch1q42.2-q44, ch7p, ch8q24.21, ch17q12-q21.32で5サンプル(25%)であった。Homozygous deletion領域における候補遺伝子群のRNA発現量の絶対値はいずれも200未満で、ほとんど発現を認めず、DNA1次構造とその発現に矛盾を認めなかった。Hemizygous deletion領域における候補遺伝子群のうち、CDKN2A, CDKN2B, SMAD4の遺伝子発現プロファイルを検討した。SMAD4における1copyサンプルの発現量は、2copyサンプルと0copyサンプルの平均発現量の間に認め、また最大発現量サンプルと最小発現量サンプルとの比は2.1であった。一方、CDKN2AとCDKN2Bにおける1copyサンプルの発現量には、サンプル間で大きなばらつきを認め、最大発現量と最小発現量の比はそれぞれ5.2と3.0であった。このことは、SMAD4の発現量はcopy数に大きく影響を受けるのに対し、CDKN2AとCDKN2Bの発現量はcopy数のみならず、メチル化などのeventに左右されていることが示唆きれた。