著者
中垣 啓
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.36-45, 1989-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

A previous study (Nakagaki 1987) has shown that the thematic material effects on logical reasoning, caused by illogical problem-solving strategies, were more apparent than real. This effect has been explained by the degeneration theory proposed by the author. The present study was designed to examine possible degeneration effects on the abstract four card problem (FCP), when the card form or the conditional sentence (p→q) was modified. Three types of abstract FCPs were administered to 88 high school students the standard FCP, a FCP containing a card expressing explicitly the negation of the consequent (q), and a FCP having a conditional sentence with a double negative form (p→q). The subjects performed significantly better on the second and third types of aostract FCPs than on the standard one. This result was in accordance with the prediction of the degeneration theory and confirmed the degeneration effects even on abstract FCP. Based on this evidence, it was concluded that the matching bias in abstract FCP (Evans et al. 1973) could be better interpreted from the standpoint of the degeneration theory and that the thematic material effects on realistic FCP and the high performance of some tasks in abstract FCPs, having been thought to be caused respectively by different reasoning strategies, could both be systematically explained by the degeneration theory.
著者
中垣 恒太郎
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

アメリカ大衆文化における「ホーボー」表象の変遷を探る。ホーボーは「渡り労働者」を指す言葉であり、世紀転換期から1930 年代にかけて労働環境の変化などを背景として社会現象と化していたが、1960年代以降の表象においては労働の描写が抹消され理想化された姿で復活を遂げる。19世紀中庸に出現する「放浪者」(tramp)との連関、映画やフォーク・ソングをめぐるメディア横断的視座、ヴァガボンド、ボヘミアン、瘋癲などの概念を参照し、アメリカ大衆文化における放浪者表象を比較文学の見地から展望する。現代の労働者たちの姿、中南米をはじめとする移民の視点にも目を向けることで分断が進むアメリカの現況と課題をも探る。
著者
宮田 りりぃ 石井 由香理
出版者
関西大学教育学会
雑誌
教育科学セミナリー = Educational sciences seminary (ISSN:02880563)
巻号頁・発行日
no.50, pp.85-91, 2019-03

本研究は、日本学術振興会若手研究 (B)「性別違和を覚える人々を巡る性の商業化とジェンダー規範の変容に関する研究」(17K13849) の研究成果の一部です。
著者
糸数 裕子 板谷 清司 梅田 智広 幸田 清一郎
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
日本セラミックス協会 年会・秋季シンポジウム 講演予稿集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.420, 2006

噴霧熱分解法によるβ-オルトリン酸カルシウム(β-Ca3(PO4)2; β-TCP)の生成に及ぼす種々の有機化合物添加の影響を調べた。出発水溶液(Ca/P=1.5)の調製では1.8 mol・dm-3 Ca(NO3)2、1.2 mol・dm-3 (NH4) HPO4、濃HNO3の他に、0.2 mol・dm-3 有機化合物を添加した。有機化合物にはカルボン酸としてグルタル酸、また糖類としてラクトースを使用した。相変化はDTA-TGおよび高温X線を用いて検討した。以上の結果を基に噴霧熱分解によりβ-TCPが生成する過程で有機化合物がどのような影響を及ぼしているかを考察した。
著者
ウンサーシュッツ ジャンカーラ
出版者
立正大学心理学研究所
雑誌
立正大学心理学研究所紀要 The journal of the Institute of Psycology, Rissho University (ISSN:13482777)
巻号頁・発行日
no.13, pp.35-48, 2015

Recently, Japanese names given to children are said to be undergoing dramatic change, particularlyin the ways that they use kanji, making them difficult to read. Criticism of such names—often calledDQN neemu ('stupid/ill-educated names') or kirakira neemu ('glittery names')—has been generallynegative, focusing on a perceived ignorance of parents for using kanji' inappropriately' and their lackof consideration for those who must read them. However, by looking at how such names are talkedabout in the media and their emergence as a phenomenon, I show that such criticism may not beentirely fair, particularly in that it has primarily been made not by parents or children involved in thegiving of such names, but by third parties lacking a full vision of the naming process. In addition, criticismof new names has generally lacked appropriate consideration of history and processes of change,in the sense that it tends to be based on faulty considerations of( 1) previous naming practices and(2) how such changes will affect the name-landscapes, so to speak, of the future. Instead, I suggestthat new names may be seen as part of the larger discourse on youth problems, thus locating thesense of crisis often expressed within their criticism within a larger framework of socialization andsocial change.
著者
桺精子識
出版者
千鍾房須原屋茂兵衛
巻号頁・発行日
0000
著者
加藤 寛一郎
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.40, no.461, pp.338-345, 1992-06-05 (Released:2010-12-16)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

Trim, static stability and endurance are discussed about the model airplane and simplified formulas are given for them. Also, wing aerodynamic characteristics are reviewed for Reynolds No. at about 104. Combining these, the reason is estimated why model airplanes have larger horizontal tail (relative to wing) than real airplanes.
著者
勝部 伸夫
出版者
専修大学商学研究所
雑誌
専修ビジネス・レビュー (ISSN:18808174)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.23-34, 2019

わが国では高度成長期に労使一体となった経営が行われ,それは欧米とは異なる特質を備えており日本的経営と呼ばれた。一般には,主に雇用,賃金などの人事労務管理の慣行として論じられることが多いが,より広義には企業間関係やガバナンスなども含むものとして特徴づけることができる。日本的経営は80年代に世界的な注目を集めたものの,バブル崩壊以降は経済停滞の元凶であるかのように批判され,企業の現場では成果主義の隆盛,非正規従業員の急増,さらにはガバナンス面などでも大きな変化が見られた。しかし,部分的な修正はあったものの,日本的経営は現在も維持されてきていると見るべきである。日本的経営の柱の一つである長期安定雇用(「終身雇用」)はまがりなりにも守られてきており,従業員の側でもそれを求める声は根強い。グローバリズムの進展で,日本的経営の将来を楽観視することはできないが,その命運は経営者が長期的視点に立ち,人間中心(尊重)の経営をしていくか否かにかかっているように思われる。
著者
山本 志帆子
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.109-122, 2010

本稿は,近世末期下級武士とその家族の日常会話における言語実態を知りうる『桑名日記』を対象として,そこにみられる命令形による命令表現の運用実態を社会生活との関わりから捉えようとしたものである.本稿では,日記の内容や桑名藩に残る歴史的な史料から属性や場面の性質といった待遇表現の使い分けに関わる要因を把握し,そのうえでそれらの要因と関わらせながら命令形による命令表現の運用実態を分析した.その結果『桑名日記』には,日常会話における命令形による命令表現として,御〜ナサレマシ,御〜ナサレ,ナサレ,ナレ,ヤレ,[敬語動詞連用形]+マシ,[普通動詞命令形]があり,次のように場面によって使い分けられていることがわかった.すなわち,【ア】礼儀を必要とするような改まった場面では御〜ナサレマシ,[敬語動詞連用形]+マシ,御〜ナサレが用いられる.一方,【イ】親しい間柄の打ち解けた場面では,ナサレ,ナレ,ヤレが用いられる.そのうちナサレは,親しい間柄の中でも一定の礼節を必要とする近しい人に対して用いられ,ナレ,ヤレは親しい間柄の中でもより近しい人に対して用いられる.さらにナレとヤレは上下関係によって使い分けられ,具体的な形式をみると「ナヘ」「ヤヘ」「ヤレ」がそれぞれ上位,同等,下位の者に対して用いられる.また,これらの形式の下に位置する[普通動詞命令形]がある.
著者
根崎 光男
出版者
法政大学人間環境学会
雑誌
人間環境論集 = 人間環境論集 (ISSN:13453785)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.158(1)-133(26), 2016-01-31
著者
三浦 正
出版者
島根農科大学
雑誌
島根農科大学研究報告 (ISSN:05598311)
巻号頁・発行日
no.9, pp.(A-1)222-236, 1961-03-31

ニシキソウ科のアブラギリの実から搾取した桐油が,乾性油として重要性をもっていたことは特筆するまでもない.特に第二次大戦後の数年は桐実の生産者価格も非常によく,農家にとっては有利な特用樹であった.島根県は我国でもアブラギリの主要生産地として大きな役割を果たしてきた.ところが,1950年頃から島根県下のアブラギリ栽培地帯にオオキンカメムシ(Eucorysses grandis THUNBERG)が大発生して桐実に大被害を与えた.島根県に栽培されているアブラギリの大部分は日本種で,支那アブラギリや広東アブラギリは比較的近年植付けられたもので生産量も僅かである.この支那種も広東種も島根半島地域の割合暖い場所でみられる.このアブラギリの害虫であるオオキンカメムシは島根においては日本種に被害を与え,支那種,広東種は被害を全く受けなかった.桐実が加害されると結実不良となり,桐油かとれないので被害は大きい.島根は気侯条件からして日本種が最適で外国種は霜凍害を新芽に受けやすく生育が良好でない.日本種が本虫の被害を集中的に受けるので県としても,農家としても重要な問題であるので防除対策を講じなけれぱならない必要から著者は本虫に関する研究をなしてきた.本虫の発生当時はオオキンカメムシに関する研究は殆ど皆無であった.著者は本虫の生態について研究し,三浦,近木(1953),三浦(1954),三浦,近木(1957),三浦(1958)として公表してきたが,近年オオキンカメムシが減少し実験も殆ど不可能になってきたので一応研究を打切りたいと考えて,今までの研究成果をとりまとめて印刷公表し,参考に供したいと考える.本研究は1952年から'57年までに実施したもので,その間多くの人から御援助いたゞいた.特に本学近木助教授には共同研究者として又本文をまとめるについて色々と教示いただいた.京都大学内田教授,島根県農林部吉岡,須山両技師の御厚意に深く感謝いたします.
著者
岡田 幸彦 小池 由美香
出版者
日本簿記学会
雑誌
簿記研究 (ISSN:24341193)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.12-25, 2021-06-30 (Released:2021-08-31)

三式簿記論の基礎理論として,さらには新たな会計理論として期待された井尻雄士教授のMomentum Accountingは,簿記研究や会計研究として新たな分野を確立するような研究の蓄積・発展がなされていないのが現状である。本稿は,1990年代以降にMomentum Accounting研究が蓄積・発展しなかった理由として,井尻理論の史的展開におけるMomentum概念の変化に研究者たちが気づいておらず,本稿で指摘する2つのMomentum概念(Wealth-based MomentumとIncome-based Momentum)が日本語圏と英語圏とで正確に伝わっていない可能性を指摘したい。そしてその背後には,数学的な正しさ,物理学的なもっともらしさ,会計学的な新しさの全てを満たそうとした井尻教授の苦悩があったと推察される。本稿では,Momentum Accounting研究の史的展開をふまえ,その致命的な問題を克服する将来の発展方向として,三式簿記論とMomentum Accountingの新たな世界観を議論・提示する。
著者
吉村 征浩 山下 広美 丸田 ひとみ 荒木 彩 荒岡 千尋
出版者
岡山県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

酢酸摂取はメタボリックシンドローム予防に効果的であり、ラットにおいて運動持久力を増加させ、骨格筋におけるミトコンドリア生合成の増加、筋線維の遅筋化を引き起こす。本研究ではL6筋管細胞を用い、骨格筋における酢酸の作用機序を明らかにすることを目的とした。酢酸添加による作用には、酢酸代謝に伴うAMP/ATP比の上昇を介したAMPK活性化と、短鎖脂肪酸受容体GPR43およびカルシウムシグナル伝達を介したAMPK活性化が関与することが本研究において明らかとなった。酢酸摂取は、運動と同様の効果(AMPK遅筋線維の増加)を骨格筋にもたらし、新たなサルコぺニアの予防・治療法に繋がる可能性がある。
著者
川本 哲也 遠藤 利彦
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.144-157, 2015 (Released:2017-06-20)
参考文献数
48
被引用文献数
1

本研究の目的は,東京大学教育学部附属中等教育学校で収集されたアーカイブデータを縦断的研究の観点から二次分析し,青年期の非言語性知能の発達とそれに対するコホートの効果を検討することであった。分析対象者は3,841名(男性1,921名,女性1,920名)であり,一時点目の調査時点での平均年齢は12.21歳(SDage=0.49;range 12–17)であった。分析の対象とされた尺度は,新制田中B式知能検査(田中,1953)であった。青年の知能の構造の変化とスコアの相対的な安定性,平均値の変化について別個に検討を行った。その結果,知能の構造に関しては青年期を通じて強く一貫していること,相対的な安定性は先行研究と同様の中程度以上の安定性を保つことが示された。また平均値の変化については,知能は青年期を通じて線形的に上昇していくが,コホートもまた知能の平均値に対して有意な効果を示し,かつその変化の傾きに対してもコホートが効果を持つことが示唆された。ただしその効果の向きについては一貫しておらず,生まれ年が新しいほど,新制田中B式知能検査のうちの知覚に関連する領域では得点が上昇し,その上昇の割合も大きなものであった。その一方で事物の関連性などを把握する能力では,生まれ年が新しいほど得点が低下してきており,加齢に伴う得点の上昇の割合も緩やかになってきていることが示唆された。
著者
佐藤 宗諄
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.631-665, 1964-09

公民の分解もすすみ、律令的な土地制度も負担体系も根本的に動揺していたにも拘らず、とにかく九世紀を通じて、まがりなりにも律令政治が展開しえたことは事実である。それが基本的には律令的支配階級にとってかわるべき階級的勢力の未熟さによっていたこともまた周知のことである。だが直接政治の局面について考えると、それは当時、国家によって "良吏" として把握された官人-とくに国司-逹を分析することによって理解できるようである。彼ら "良吏" はまぎれもない律令官人でありながら、従来にはみられない現実性をもっている。本稿ではそれを論証するために、六国史の史料性を検討することからはじめ、その登場の要因等を考察し、その歴史的性格にまで論及したつもりである。本稿でその分析の中核として、わざわざ数的には例外とも考えられそうな "良吏" に注目したのは、従来のように彼らを例外としてのみ理解することによっては、この律令政治の多様な可能性を含む崩壊過程を正しく把握できないと考えたからに外ならない。 まだ九世紀には "良吏" のもとで公民の大多数が基本的には国家に対抗するよりも依存する動きを示さざるをえなかったことが、この政治の一応の成功の原因であったし、それが次に律令国家を変形させた古代国家としての摂関政治体制の出現を保障する一つの前提的役割を果したと考えられるのである。In spite of the dissolving public 公民 and the tumultuous landholding and tax-bearing systems, it is the fact that Ritsuryo 律令 government could develop at any rate; and it is also established that the fact was substantially due to the immaturity of the class power to take the place of the ruling class in Ritsuryo government. A study on the aspect of direct governing enables us to understand it by analysing the then officials……especially Kokushi 国司……taken for "Ryori" 良吏 by the state. They, "Ryori", had, in spite of the very officials of Ritsuryo government, the reality that had never been seen before. To demonstrate it, this article, starting from the judgement of the importance of Rikkokushi 六国史 as a source book, traces to its cause of entrance on the stage and is to reach for its historical character. The opinion that the dissolving process of Ritsuryo government with verious possibility cannot be properly understood by the traditional treatment of "Ryori" only as a exceptional case is the reason why "Ryori" was taken as a subject for consideration. The fact that most of the public 公民 under the "Ryori" in the nineth century still had substantial trend for the movement depending on the state rather than against the state caused a temporary success of this government, and in turn played an assuming part to secure the establishment of the Sekkan 摂関 political system as an ancient state which transformed the Ritsuryo state.
著者
外村 彰
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.449-451, 1999

高温超伝導体中の磁束量子は, いろいろ不思議な振舞をすることが予測されているが, その実体ははっきりわかっていない. 今回, ローレンツ顕微法の改良により, まがりなりにも磁束量子をリアルタイムで観察できるようになり, 高温超伝導体ならではの動きを捉えることができた.