著者
竹本 弘幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<b>はじめに</b> 昨今の論文に見られるオリジナルデータと新発見史料の無断使用は,多くの不利益を発生させている.本発表では,演者が体験中の被害事例(科学者の行動規範に抵触)を紹介し,この積み重ねがジオパーク運営においても大きな支障となるこの問題にどう向き合うべきか考えたい.<br><br><b>新発見史料の被害実態と再発防止の警告文例</b><br><br>■下記機関・関係者は,演者が2002年日本火山学会で発表,公開講座限定で協力した「新発見の画像と内容」を無断で転載したものを今も頒布・販売を継続中.提供目的外で流用解析して論文を公表するなど不正行為を続けています.今後の発表を含め,この関係者には2次使用も一切お断り致します.会員各位には,不正排除と再発防止に御協力をお願い致します<br><br>① 内閣府中央防災会議(2005)1888磐梯山噴火報告書184p.<b>N</b><b>氏</b>執筆 p12-15.<br><br>②<b> S氏・Ch氏・N氏</b>(2005)磐梯山に強くなる本(福島県火山学習会)28p.磐梯山噴火記念館.【うつくしま基金助成 有償】p12に無断掲載<br><br>③ 福島県立博物館(2008)会津磐梯山 p48-49,T氏(2009)同紀要23号p13-34.<br><br><b>繰り返される3つの不正行為の実態とまとめ</b><br>2008年地元研究者の通報により被害を知り内閣府へ通報➡内閣府は<b>N</b><b>氏</b>を厳重注意➡<b>N</b><b>氏</b>は,事実を認め2度と無断使用や私の研究に支障を来すことをしないと確約する謝罪書面を提出することで決着.しかし,この報告書はネット閲覧可能となり拡散されていた.2016年<b>N</b><b>氏</b>査読で学会誌「火山」に画像を無断掲載した論文が公表されたことで被害が拡大.1年以上内閣府・学会に被害報告をし,画像と関係文書が削除された.<b>N</b><b>氏</b>は学会の聞き取りに,竹本(2013)の発表と警告文の存在を2017年まで知らなかったと証言したが,2013年大会実行委員長・発表プログラム編集委員に加え,有力2紙に3日間報道されていたことから主張は退けられ,公開講座資料・学会誌・J-Stage上からも掲載画像は全て削除された.①同様,<b>N</b><b>氏</b>が流用した画像を掲載,他の個人や機関も同様の被害.奥付に氏名・機関名まで無断掲載され,著作権まで主張.この行為を止めるよう<b>3学会要旨集に警告文を掲載(~2015).</b>2016年時点でも販売していたことから訴訟通告.その後,和解の申入れがあり,合意文書の作成とHP上でお詫び掲載, 配布先へ合意文の添付を確約したので和解.しかし,履行確認のため県立図書館等で検証すると,全文掲載が基本である文書は改ざんされ,一部の隠蔽が判明.2008年会津磐梯山展で噴火画像を展示・解説したいと<b>T</b><b>氏</b>より依頼を受け,画像と解説文を提供.図録は届くが掲載なし, 翌年刊行の紀要にも謝辞・引用もなく全て<b>T</b><b>氏</b>の研究成果となっていた.2016年,画像を無断使用した「火山」論文執筆者が自説裏付に当該紀要を引用しており,再発防止のため博物館へ厳重抗議と引用不要を火山学会に申し入れることを和解条件とした<b>(音声データ有)</b>.その際,提供条件すら守っていなかったことが判明.一方,和解条件である図録と紀要の一部制限は,館側に拒否され被害は拡大中であり,<b>T</b><b>氏からの謝罪はただ一度もない.</b>また,<b>S</b><b>氏</b>は<b>磐梯山噴火写真帳の寄託者A氏</b>に無断で複製を作成所持するなど「科学者の行動規範」に抵触する人物であり,彼らが関与する限り当該ジオパークはリセットすべきものと考える.
著者
渡部 瑞希
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.78-94, 2018

<p>ネパールの首都カトマンズの観光市場タメルで宝飾品を買い求めるツーリストは、小売商人の売る宝飾品の品質や価格の妥当性に懐疑を抱いたり、小売商人のホスピタリティに溢れたサービスに詐欺行為を感得したとしても消費欲を抱き続けることがある。本稿の目的は、小売商人とツーリストの取引過程を事例に「なぜ人は商品の価値やサービスの内容に疑いをもった場合でも消費欲を維持し続けるのか」という問いを人類学的に考察することである。この問いを考察するために本稿では、小売商人がツーリストとの取引に持ち込む親密さの表現、フレンド(友人)に着目する。</p><p>友人は、互恵的な利他性によって特徴づけられるものと歴史的に捉えられてきた。そうした利他主義的な性質が疑われたり否定されることで、そのつど理想化された「本当の友人」が友人を意味するものとして形づくられてきた。この懐疑と否定により、友人が利他的か利己的か、本物か偽物かについて決定不可能な仮面(face)と化していること、詐欺の疑いを抱きつつも特定の売り手から買うことにこだわる消費が友人の仮面に向けられることを主張する。具体的には、タメルの宝飾店で働く小売商人の見せるフレンドの仮面がツーリストによって疑われ否定されることで、ツーリストが騙されている可能性を知りつつも消費欲を抱き続ける状況を民族誌的に記述していく。</p>
著者
川名 好裕
出版者
立正大学心理学研究所
雑誌
立正大学心理学研究所紀要
巻号頁・発行日
no.14, pp.3-12, 2016-03-31

愛情関係にある男女における心理的魅力の変化を分析研究するためにインターネット調査を行った。調査参加者は、日本全国からのサンプルで968名の男性と967名の女性であった。年齢は、20歳~49歳であった。調査サンプルは、異性の相手が友人、片思い、精神的恋人、性的恋人、婚約者、配偶者の6つの交際進展段階に分類された。親密性、情熱性、性欲性、コミットメントという4つの男女を結び付ける心理的魅力について分析がなされた。これらの心理的魅力因子が性別、関係進展段階、本人の年代について比較研究がなされた。 分析の結果、以下のような知見が得られた。男性は女性より、性欲性がすべての関係段階で上回っていた。女性は、相互の愛情的関係が形成された後では、男性以上に親密性が高いことが分かった。男性は片思い段階以後のすべての段階で女性より情熱性が高いことが分かった。女性は、片思い以後、結婚以前まで情熱性は男性と同じ程度に高かった。男性は男女の関係段階の初期から性的恋人になるまで、積極的に相手の女性にアプローチすることが分かった。女性は、男女の関係段階の最後の段階の婚約、結婚段階で相手へのコミットメントが大きくなることが分かった。最後に、相互作用的要因と心理的魅力要因との関連性について今後の分析が示唆された。
著者
森脇 俊尚 小林 牧人 会田 勝美 羽生 功
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.41-43, 1991-01-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
12
被引用文献数
8 9

Changes in plasma gonadotropin (GtH) and steroid hormone levels were investigated during ovulation induced by human chorionic gonadotropin (HCG) in female goldfish. Sexually mature female goldfish maintained at 20°C under 14L10D (lights on at 0430hr) were injected with HCG at a dose of 10IU/g BW at 2100hr. Twenty-one fish out of 28 ovulated between 9 and 18 hours (0600 to 1500hr) after injection. In ovulatory fish, there was neither a significant increase nor surge in plasma GtH levels after the injection, whereas plasma testosterone and 17α, 20β-dihydroxy-4-pregnen-3-one levels showed changes similar to those occurring in spontaneous ovulation. These results suggest that injected HCG acts directly on the ovary without accelerating endogenous GtH secretion, and therefore induces ovulation in a similar manner as does the ovulatory GtH surge in spontaneous ovulation.
著者
花木 宏直
出版者
沖縄地理学会
雑誌
沖縄地理 (ISSN:09166084)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.17-32, 2021-07-31 (Released:2021-08-02)

本稿は近代沖縄において海外移民の斡旋に従事した主体に注目し,外地への移民や国内出稼ぎの斡旋との関わりを踏まえながら,移民・出稼ぎ送出の仕組みの全体像を明らかにすることを目的した.方法として,沖縄県で最初の業務代理人が就任した1903年から,海外渡航手続きが海外移住組合へ一元化された1940年までを対象とし,外交史料館所蔵「移民会社業務関係雑件」や新聞広告,人名録,案内書などをもとに,送出地域で移住希望者に直接移民斡旋を行った業務代理人や斡旋業者,募集人の動向を検討した.その結果,業務代理人と斡旋業者の属性や,海外と外地への移民,国内出稼ぎの斡旋内容の相違に関わらず,沖縄県外出身の寄留商人や,沖縄県出身の海外・外地・本土への在住や移民関連業務の経験者が従事し,沖縄県も政策的な支援を行い,ハワイ移民から呼寄移民,南米移民,南洋移民,国内出稼ぎへと斡旋内容を変化させながら,近代を通じて存立し続けたことが明らかになった.
著者
劉 礫岩 細馬 宏通
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.46-62, 2017 (Released:2020-07-10)

スポーツのテレビ実況中継において,アナウンサーと解説者は絶えず変化する映像に現れる変化や出来事をことばで迅速に指し示す必要に迫られる。本研究はカーレースのテレビ実況中継をデータに,アナウンサーと解説者はどのようにことばによる指し示しを行い,映像と発話を結び付けるかについて分析を行った。その結果,アナウンサーと解説者は,「あっ」や「ほら」などの間投詞と,「こ」系指示表現を用いて,映像内の変化や出来事を異なる仕方で指し示すことがわかった。発話冒頭に置かれる指示表現「これ」は,現在映像内の状況にほかの参加者の注意を惹きつけるだけでなく,現在の状況について,話者はすでになんらかの仕方で把握していることを指標する。一方間投詞「ほら」は,映像に現れた話者がすでに述べた意見や予想と適合する出来事を指し示すために用いられる。これらのことばによる指し示しは,単に発話と映像を結び付けるだけでなく,実況におけるアナウンサーと解説者の職業的なアイデンティティの実現とも結びついていることがわかった。
著者
今井 智也 三上 貞芳
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.3C44, 2009

<p>本研究では多様に変化する環境においてマルチエージェントが行動選択の競合により生じる学習効率の低下を回避するシステムを提案する.具体的にはエージェントが他のエージェントの行動を単純な線形時系列予測を用いて大まかに予測し,予測された結果から強化学習を用いて行動選択を行うことで,エージェント全体を協調状態へと収束させる.検証のため,連続場での椅子取りゲーム問題を提案し,計算機実験で有効性を確認した.</p>
著者
水野 雅之 菅原 大地 谷 秀次郎 吹谷 和代 佐藤 純
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.20317, (Released:2021-07-31)
参考文献数
34
被引用文献数
4

The purpose of this study was to examine the direct and indirect associations of self-compassion, social support in the workplace, and job stressors with the tendency to burnout among early career physical and occupational therapists. A total of 124 physical therapists and 63 occupational therapists, who were all within their first five years of employment, participated in a web-based survey. Covariance structure analysis was used to examine the associations between the variables controlled by type of occupation. The following findings were revealed: (a) self-compassion was negatively associated with the tendency to burnout, both directly and mediated by job stressors, (b) supervisory support showed a direct negative association with depersonalization and a negative association with the tendency to burnout mediated by job stressors, and (c) support from colleagues showed a negative association with diminished personal accomplishment. We discuss that the potential for self-compassion and social support in the workplace can work effectively in preventing burnout among early career physical and occupational therapists.
著者
保昌 正夫
出版者
関西大学国文学会
雑誌
國文學 (ISSN:03898628)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.99-102, 1965-12-20
著者
牧下 寛 松永 勝也
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.324-332, 2002-12-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
9
被引用文献数
6 5

公道において走行実験を行い, 自動車運転中の危険発生に対し制動で回避するための反応時間を調べるとともに, 視線移動の頻度を計測した. 被験者は, 20代, 40~50代, 60代の3グループの一般運転者である. 単独走行と追従走行の2通りの形態で被験者車両を走行させ, 物陰から人が飛び出して来た場合と, 前を走る車両が制動した場合の2通りの危険を発生させた. 人が飛び出してきた場合の反応時間は高齢者と他の年齢層で有意差が見られたが, 前を走る車両の制動灯に対する反応では, 年齢層による差は見出されなかった. しかし, どちらの危険に対しても, 60歳代の被験者の大部分は, 異常に長い反応時間を示す遅れ反応になる場合が見られた. 運転中の視線移動の頻度は, 加齢とともに低下することが示されたが, 60歳代の被験者に遅れ反応を示す人が多いのは, 視線移動の頻度が低いためであると考えられた.
著者
浜口 友一
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュ-タ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.633, pp.56-59, 2005-08-22

官公庁のIT調達方針見直しなど逆風を受けるNTTデータ。浜口友一社長は、コスト削減要求は当然としながらも、絶対額だけが話題になることに疑問を投げかける。業務遂行のためのコストと、成長のための投資は分けて考えるべきだと訴える。当然、ITベンダーには、価格の算定基準など透明性を高めていく責任があるという。
著者
吉田 智彦 Anas 小林 俊一
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.395-398, 2009-07-05
参考文献数
5
被引用文献数
1

生物種あるいは品種間の相互関係を表示するために,通常はコンピュータソフトを利用したクラスター分析により樹状図を作成しているが,教育的効果を目的としてコンピュータを用いず手動でクラスター分析をすることを試みた.オオムギ品種間のRAPD分析によるDNA多型データを用いて,品種間で異なるバンドを示したDNAマーカー数(異なるマーカー数)をその品種間での距離とした.まず,異なるマーカー数の最も少ない組合せを選び,それを最初のクラスターとした.次にそのクラスターの平均値からの距離と残りの品種との間の値を計算し直して,第2のクラスターを決定し,順次同様に行っていった.育成地の異なるオオムギの二条,六条種を含む品種間で試みたところ,ほぼ満足すべき結果が得られた.コンピュータソフトを利用した結果とも一致した.本方法では,クラスター分析を手計算で行うことにより,理解が容易であり,教育的効果が大きい.