著者
東村 純子
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.87, no.5, pp.603-641, 2004-09

律令制成立期の紡織体制について、特に平織の布や絹の生産の仕組みは史料の制約からほとんど明らかでない。本稿では、七世紀後葉以降に宮都や地方の官衙遺跡から多く出土する綛かけ・糸枠について、機能上必要な加工と装飾を目的とした加工を識別し、形態上の特徴を整理した。さらに、製糸具の[カセ]、製織具の綛かけ・糸枠の組成を検討した結果、紡織工程が製糸と製織とに分かれ、糸が綛の形で流通することを明らかにした。平城宮・京では、製糸は行わず、高級絹織物を含む絹の製織を行った。地方では、七世紀後葉に郡衙工房で布や絹の製織、周辺の集落で麻の製糸を分担する伊場遺跡型が成立する。その一方、七世紀中葉から有力豪族の本拠地で製糸から製織までを一連に行う屋代遺跡型が認められる。前者は生産の効率化を図ったもので、後者は、調庸制成立の素地ともなったと評価した。
著者
千葉 逸人
出版者
九州大学
雑誌
戦略的な研究開発の推進 戦略的創造研究推進事業 さきがけ
巻号頁・発行日
2016

電力網、コンピュータの回路、ニューラルネットワーク、心筋細胞など、無数の素子が結びついて構成される大規模ネットワークは、我々の身の回りに溢れています。特に、個々の素子が協調した状態である同期現象の研究とその応用は今後ますます重要になります。本研究の目標は、ネットワーク上の力学系の研究、特に同期現象を解明するための数学理論を構築すること、およびその様々な社会的問題への応用です。

1 0 0 0 狂犬病

著者
高山 直秀
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.11, pp.2382-2387, 2004-11-10
参考文献数
6
被引用文献数
1

狂犬病はラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルスによって引き起こされる代表的な人獣共通感染症であり,独特の臨床像とほぼ100%の致命率のために昔から恐れられてきた.日本では1957年以降狂犬病の発生はないが,今なお多くの国々で多数の狂犬病犠牲者が発生している.狂犬病危険動物に咬まれたなら,ただちに狂犬病ワクチン接種による狂犬病曝露後発病予防を受けることが狂犬病死を免れる唯一の方法である.
著者
佐々木 周作 河村 悠太 渡邉 文隆 岡田 彩
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.14, no.Special_issue, pp.S9-S12, 2021 (Released:2022-03-18)
参考文献数
5

個人寄付の促進施策は,寄付金控除やマッチング寄付などの金銭的インセンティブを用いる施策から,過去の寄付者や有名企業・著名人の寄付情報といった提供情報の内容や表現を工夫する施策まで多岐に渡る.行動経済学研究を含む学術研究によって施策の有効性が実験で確認されているものも多いが,非営利組織の実務で活用されるかどうかは資金調達業務を担当するファンドレイザーが施策を効果的と評価しているかどうかに依存すると考えられる.本研究では,282名の現役ファンドレイザーにアンケート調査を独自実施して,12種類の施策の,寄付を促進する効果と寄付者満足度を高める効果に対する主観的評価を測定した.ファンドレイザーの回答傾向を相対化する目的で,497名の寄付者にも同様の調査を実施した.結果として,いくつかの施策に対する評価が二者間で大きく異なることが分かった.例えば,ファンドレイザーは「間接経費無し・振込み手数料の負担無し」の施策を12種類の施策の中で相対的に寄付を促進せず,寄付者満足度を高めないと評価したのに対して,寄付者は,寄付を促進し寄付者満足度も高めると真逆の評価をしていた.
著者
Satoru YAJIMA Yuichi TAKASE Akira EJIRI Naoto TSUJII Hibiki YAMAZAKI Charles P. MOELLER Takahiro SHINYA Yuki TAKEI Yoshiyuki TAJIRI Yusuke YOSHIDA Akito SATO Akichika KITAYAMA Naoki MATSUMOTO
出版者
The Japan Society of Plasma Science and Nuclear Fusion Research
雑誌
Plasma and Fusion Research (ISSN:18806821)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.3402114, 2018-09-25 (Released:2018-10-17)
参考文献数
9
被引用文献数
3 9

In the TST-2 spherical tokamak device, we carried out a fully non-inductive current startup experiment by Landau damping of the Lower Hybrid Wave (LHW). Capacitively Coupled Combline Antennas (CCCAs) were used for wave injection. The antennas are located on the outboard side and the top side of the vacuum vessel, and by reversing the toroidal magnetic field, it is possible to simulate the case of wave injection from the bottom side. The highest plasma current of 26.7 kA was achieved by top injection with the reversed toroidal magnetic field. According to numerical calculation using ray tracing and Fokker-Planck codes (GENRAY/CQL3D), the downshift of the parallel wavenumber helped the tail of the electron velocity distribution extend to higher energy than the other cases. Additionally, in order to evaluate the directionality of the wavenumber spectrum which is also important for efficient current drive, a finite element solver (COMSOL) was used. In order to avoid deterioration of the wavenumber spectrum, one limiter of the outboard antenna should be moved away toroidally by 70 mm from the current position, and the preferred distance between the antenna and the cutoff density layer is about 2 cm.
著者
松平 拓也 笠原 禎也 高田 良宏 濵 貴幸 蟹屋敷 祐介
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.486-492, 2021-12-18 (Released:2022-02-19)
参考文献数
16

金沢大学は,令和2年度「先端研究基盤共用促進事業(コアファシリティ構築支援プログラム)」の採択を受けた.本事業の柱の一つとして,本学研究者に対する研究データマネジメント(RDM)基盤のインフラ提供を掲げており,我々は本学研究者に対するRDM基盤のシステム構築を進めてきた.本学におけるRDM基盤は,国立情報学研究所が提供する研究データ管理サービスであるGakuNin RDMを利用することとし,データを保管するストレージは外部クラウドサービスと学内ストレージのハイブリッド形式とした.本報告では,我々が構築したRDM基盤について説明するとともに,今後の展望についても述べる.
著者
安田 初雄
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.90-101, 1956-02-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
32
著者
岡村 寿代 杉山 雅彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.75-87, 2007-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究では、働きかけの促進と逸脱行動の低減を目的とした引っ込み思案幼児への社会的スキル訓練(social skills training;以下、 SST)を行った。ターゲットスキルは、対象児と仲間や保育士との相互作用を行動分析することによって選定し、ターゲットスキルが対象児の仲間への働きかけを促すかどうかを検討した。2つのターゲットスキル(話を聞くスキル、質問スキル)が選定され、7セッションからなる個別SSTが行われた。その結果、対象児はSST場面において質問スキルを増加させ、 SST期の自由遊び場面においても仲間への働きかけを増加させた。また、対象児は集団活動場面からの逸脱行動を減少させ、集団活動に参加する際は、仲間をモデルとして活動に参加するようになっていた。SSTによる効果は、教師評定によっても示され、SST後は、教師評定得点がポジティブに変化していた。
著者
中尾 英俊 稲葉 考洋 森藤 武 内原 由佳子 渡邉 萌 金子 元春 木下 和昭 橋本 雅至 大槻 伸吾
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.275-279, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
19

〔目的〕腰椎変性疾患患者に対し,体幹伸筋持久力トレーニングを実施しVASと JOABPEQへ及ぼす影響を検討した.〔対象〕腰椎変性疾患患者27名(平均年齢72.2 ± 8.3歳)とした.〔方法〕体幹伸展持久力トレーニングを実施する15名(T群)と,通院での運動療法のみ実施する12名(C群)との間で,1ヵ月毎に3回計測された体幹伸筋持久力とVAS,JOABPEQの経時変化を比較した.〔結果〕T群の体幹伸筋持久力は3ヵ月目に,JOABPEQは腰椎機能障害のみ2ヵ月目に有意に高値を,VASは2,3ヵ月目に有意に低値を示した.〔結語〕腰椎変性疾患患者に対する体幹伸筋持久力トレーニングは,疼痛およびADLの改善に効果的であることが示唆される.
著者
愛場 庸雅
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.135-140, 2011 (Released:2011-09-14)
参考文献数
8
被引用文献数
4

味覚障害患者の長期的動向を探るため, 1992年~2009年に大阪市立大学付属病院および大阪市立総合医療センターで診療した味覚障害患者1,594名 (男565名, 女1,029名) について, 患者数, 年齢性別構成, 血清亜鉛値の変動, 原因別頻度を調査した.患者数は徐々に増加しており, 特に高齢者の割合が増加する傾向が見られた. 原因別の頻度は, 特発性が半数を占めていたが, 亜鉛欠乏や薬剤が大きな影響を及ぼしていると考えられた. また血清亜鉛値の低い患者が増加する傾向にあった. これは, 高齢者人口の増加や, 食生活の変化による国民の亜鉛摂取の減少, 薬剤の濫用などの社会問題を反映しているものと思われた.
著者
村上 正祥
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.39-40, 2001 (Released:2013-02-19)
参考文献数
4
著者
國崎 貴嗣 白旗 学 松木 佐和子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.401-404, 2021-12-01 (Released:2022-04-08)
参考文献数
26

過密なスギ若齢,壮齢林計5林分を対象に,樹冠長と直近5年間の平均胸高直径成長量との対応関係を調べた。林木の胸高直径成長がほぼ停止する胸高直径の閾値は林分で異なるのに対し,樹冠長の閾値はいずれの林分でも4.0 mとなり,樹冠長4.0 m未満の平均胸高直径成長量は0~0.04 cm/年と,全く,あるいはほとんど成長していなかった。樹冠長が4.0 m以上の林木を対象に,樹冠長から4.0 mを減じた差引き樹冠長と直近5年間の平均胸高直径成長量との関係を共分散分析で解析し,胸高直径を共変量とした共分散分析モデルと比較した。その結果,後者の自由度調整済み決定係数は前者のそれより明らかに高かった。スギ過密林での間伐木選定にあたっては,樹冠長4.0 m未満の林木を胸高直径成長停止木,樹冠長4.0 m以上の林木については胸高直径が大きいほど活力のある林木として判断すれば良いと考えられる。
著者
千葉 翔
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.391-394, 2021-12-01 (Released:2022-04-08)
参考文献数
30

オオシラビソ種子の発芽に対する乾燥の影響を調べ,4℃および-20℃で貯蔵した種子の発芽率の推移を観察した。種子の含水率を4段階(無処理,9.9%;弱乾燥,7.1%;中乾燥,6.3%;強乾燥,5.1%)に調整して発芽実験を行ったところ,乾燥強度に応じて発芽率が低下する傾向はなく,どの処理でも7割以上の種子が発芽した。4℃で冷蔵貯蔵した種子の発芽率は,処理の違いに関わらず3年後に10%未満となった。一方,-20℃で冷凍した場合は貯蔵から3年が経過しても48.3~77.4%の種子が発芽した。以上の結果から,同種の種子は含水率を調節しての冷凍貯蔵が可能であり,2~3年とされる結実周期のカバーには氷点下での保存が有効と考えられる。
著者
井貝 紀幸
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.395-400, 2021-12-01 (Released:2022-04-08)
参考文献数
25
被引用文献数
2

森林内におけるRTK-GNSS測量の水平誤差およびその誤差の低減に受信機の設定が及ぼす影響を明らかにすることを目的として,愛知県にある豊田市市有林2カ所にて調査を行った。その結果,RTK-GNSS測量の水平誤差は中央値が0.878 m,最大値が4.011 mであり, DGNSS測量よりも小さかった。この誤差の低減に,SNRと測位時間はほとんど貢献しなかった。また,仰角25°未満の衛星を測位演算から除外した場合,誤差はわずかに小さくなったが,最大で4 mを超えることもあった。森林内の所有界の境界測量において,許容誤差は0.9 m以内と考えられることから,森林内におけるRTK-GNSS測量では,この精度を満たさない場合があると考えられた。
著者
菊川 和彦 奥平 信義 福永 由美子
出版者
中国・四国整形外科学会
雑誌
中国・四国整形外科学会雑誌 (ISSN:09152695)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.377-382, 1994-09-28 (Released:2009-03-31)
参考文献数
14

We reported a case of ossification at the insertion of both Achilles tendons which is reportedly rare condition.The patient, forty-seven years old, suffered from severe pain at the insertion of bilateral Achilles tendons. He had no systemic, metabolic, or inflammatory disease and there was no history of trauma or surgery. He was successfully treated by excision of ossified mass in both Achilles tendons.In this case, the etiology of ossification may be secondary to minor trauma at the insertion of Achilles tendon. The ossified mass is usually asymptomatic and needs no treatment, but if it becomes painful, the excision of it should be considered. The recurrence of ossification is rare, but the careful course observation of this condition should be required.