著者
冨山 毅 重田 利拓
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

二枚貝の水管はカレイ類の稚魚にとって再生可能な食物として利用されることから、カレイ類による水管の利用実態および二枚貝水管の再生力を評価した。広島湾周辺の干潟域においては二枚貝の分布密度が低く、水管はわずかに利用されるだけであったが、仙台湾周辺の干潟域では高い割合で利用されていた。また、水管の短いアサリも量的に水管を再生させることが初めて証明されたが、その再生力は水管の長い二枚貝に比べて低いことが明らかとなった。
著者
矢後 勝也 平井 規央 小沢 英之 佐々木 公隆 谷尾 崇 伊藤 勇人 遠藤 秀紀 中村 康弘 永幡 嘉之 水落 渚 関根 雅史 神宮 周作 久壽米木 大五郎 伊藤 雅男 清水 聡司 川口 誠 境 良朗 山本 以智人 松木 崇司
出版者
公益財団法人 自然保護助成基金
雑誌
自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.233-246, 2020-01-10 (Released:2020-01-10)
参考文献数
11

シカの急増に伴う林床植生の食害により国内で最も絶滅が危惧されるチョウと化したツシマウラボシシジミの保全を目的として,a)保全エリアでの実践的な保護増殖活動,b)保全エリア候補地の探索に関する活動,c)希少種保全と農林業との連携に関する活動,の大きく3つの課題に取り組んだ.保護増殖活動では,環境整備やシカ防護柵の増設により保全エリアの改善を試みた他,現状の環境を把握するためにエリア内の林床植生および日照・温度・湿度を調査した.今後の系統保存と再導入のために越冬・非越冬幼虫を制御する光周性に関する実験も行った結果,1齢幼虫から日長を感知する個体が現れることが判明した.保全エリア候補地の探索では,本種の好む環境を備える椎茸のホダ場30ヶ所を調査し,良好な環境を保持した11ヶ所のホダ場を見出した.保全と農林業との連携では,アンケート調査から多くの地権者や椎茸農家の方々は本種の保全に好意的なことや,本種を育むホダ場で生産された椎茸のブランド化に賛成で,協力可能であることなども明らかとなった.
著者
佐藤 和夫
出版者
弘前大学國史研究会
雑誌
弘前大学國史研究 (ISSN:02874318)
巻号頁・発行日
no.84, pp.22-37, 1988-03-30
著者
池本 賢一 村山 浩一郎
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.45-58, 2019-02-28

今日のわが国における社会福祉制度の動向を鑑みると、各福祉分野で地域支援が重要視されていると考えられる。しかしながら、これまで地域支援の方法論とされてきたコミュニティワークは、概念や展開プロセス、用いる技術等が必ずしも明確化されていないという課題がある。 本稿は、これまでのコミュニティワークに関する研究から、特に定義及び範囲に着目して整理を行い、それらを踏まえた上で、理論の再構築に向けた試論を提示するものである。先行研究の検討から、「ニーズ・資源調整」、「インター・グループ・ワーク」、「統合」、「組織化」、「計画・政策」、「ソーシャル・アクション」、「アドミニストレーション」、「個別課題を踏まえた地域支援」、「主体形成とプログラム開発とその循環」がコミュニティワーク理論のキー概念として明らかになり、これらを基にコミュニティワークの体系図の提示を行った。
著者
久保田 由美子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.447-449, 2003-04-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
2
被引用文献数
3
著者
大村 敬一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.247-270, 2005-09-30 (Released:2017-09-25)

今日、カナダ極北圏では、イヌイトの伝統的な生態学的知識に大きな関心が集まっている。近代科学とは異なったパラダイムに基づいてはいるが、極北の環境について近代科学に勝るとも劣らない精確な情報を蓄積しているその知識に、環境管理に貢献する可能性が期待されているからである。本稿の目的は、この伝統的な生態学的知識の基本原理を探るために、狩猟・漁労・採集というイヌイトの生業活動で展開される実践知に焦点を絞り、その実践知において記憶と身体が果たしている役割について分析することである。本稿ではまず、第II章でイヌイトの生業活動においては実践知が中核的な役割を担っていることを確認するとともに、それを解明するためには、時間の流れの中で機能する記憶のメカニズムに注目する必要があることを示す。さらに第III章では、「差異の反復」という考え方をイヌイト社会の社会・文化的コンテキストに位置づけ、この考え方がイヌイト社会に広く浸透していることを論証する。これらの準備作業をふまえて、第IV章と第V章では、イヌイトの伝統的な生態学的知識において記憶が機能するメカニズムを探るために、生業活動の実践と狩猟の物語という伝統的な生態学的知識の2つの側面を分析し、生業活動の中核をなしている実践知において記憶が機能するメカニズムの仮説的なモデルを提示する。そして最後に、本稿で提示したモデルに基づいて、イヌイトの生業活動においては、身体と一体化した記憶が過去を資源化する場となっているのではないかという仮説を提示する。
著者
佐々木 恵理
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.36-53, 2019-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
9

1980年代にセクシュアルハラスメントの概念が日本に導入され、短縮語の「セクハラ」はハラスメントの実態を一気に広めることに貢献した。その後、セクシュアルハラスメントの「ハラスメント」が切り取られて、多くの造語(ハラスメント語)が作られてきた。ハラスメント語には、セクシュアルハラスメントの中心的な概念である人権や差別の告発をすることばがある。また、不快感や配慮不足を表すことばや本来のハラスメントの意味を持たない記号化したことばも作られて、「ハラスメント」は乱用されている。今後もハラスメント語は増殖し続けるかもしれないが、さまざまな事象を「ハラスメント」という用語で表現するべきではない。作り出したことばは力(権力)を持つことを意識しながら、告発する新たなことばを探したい。
著者
金居 督之 井澤 和大 久保 宏紀 野添 匡史 間瀬 教史 島田 真一
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.91-103, 2019-09-30 (Released:2019-12-21)
参考文献数
73

本稿では,先ず海外の脳卒中患者における身体活動量研究の動向を病期別に紹介した。次に,我が国における身体活動量研究について現状と今後の課題について概説した。 脳卒中を発症しやすい集団は,発症前から不活動になりやすい。また,発症後のあらゆる病期においても同様に不活動に陥りやすい。更に,身体活動量や活動強度の目標値が示されているものの,脳卒中患者の多くはこれらを満たしていない。これらの対策として,身体活動促進や座位行動減少に焦点を当てたさまざまな介入研究が実施されている。主な介入方策としては,セルフ・モニタリングの指導,目標設定,言語的説得・奨励などの行動変容技法が用いられている。また,近年では,ウェアラブル端末等を利用した遠隔指導も注目されている。 我が国における脳卒中患者の身体活動量研究は,増加傾向にある。しかし,介入研究や長期的なフォローアップに関する研究は極めて少ない。したがって,今後は,脳卒中治療ガイドラインにおいても身体活動の重要性が提示されるべく,より質の高い介入研究が待たれる。
著者
坂井 信之
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.431-436, 2006 (Released:2007-09-06)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本稿では,まず,においを溶かした溶液の色やにおい源をイメージさせる写真などの視覚情報が,嗅覚情報処理にどのような影響を与えるかということを調べた研究を紹介した.さらに,これらの影響について,視覚と嗅覚の連合学習,視覚による事物の認知と嗅覚に対するトップダウン処理,視覚による認知の誘導とそれと一致するにおいの側面の強調という3つの考え方から解釈した.最後に,視覚以外の感覚がにおいの知覚や認知に与える影響を調べた研究を紹介し,人間のにおい認知が非常に複雑に行われている過程を理解することによって,におい世界の個人差の理解へつながる可能性を示した.
著者
AONO Kenji IWASAKI Toshiki SASAI Takahiro
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
pp.2020-017, (Released:2019-12-24)
被引用文献数
1

This study examined the roles of wind-evaporation feedback in the tropical cyclone (TC) intensification, with special attention devoted to the feedback in weak wind areas (domains where the 10-m wind speed is smaller than 5, 10 and 15 m s−1). This was done by setting lower limits of the 10-m wind speed in the calculation of water vapor exchange between the atmosphere and the underlying ocean in a nonhydrostatic cloud-resolving model. As a result, the surface evaporation is enhanced in outer regions of a TC where the actual wind speed is smaller than the prescribed lower limit(s). Results show that increasing the lower limit reduces the radial water vapor contrast in the lower troposphere (below 100 m) and suppresses the TC size and intensity at the mature stage by 30-33 % and 5-14 %, respectively, compared to the control run with all standard model settings. The increased evaporation enhances the outer convective activity and reduces the radial pressure gradient in the lower troposphere. As a result, the inflow and thus the inward advection of angular momentum were reduced and the enhanced convection in the outer region suppressed eyewall updraft, and thus reduced the secondary circulation and finally the TC intensity. Moreover, the outer region convection suppresses the rainband activity (within a radius of 300 km from the TC center). The contribution of the wind-evaporation feedback to the enhancement of the radial contrast of water vapor in the lower troposphere is a fundamentally important element for TC intensification, suggesting that the TC development process can be revealed more accurately by elucidating the role of the weak wind area.
著者
竹本 浩典
出版者
千葉工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

通常の発話における声の高さは、主に輪状甲状筋と甲状披裂筋によって制御されており、輪状甲状筋は声を高く、甲状披裂筋は声を低くすると考えられている。ビブラートも同じメカニズムで制御されているかどうかを検討するために、歌唱中のオペラ歌手の声道をリアルタイムMRIで撮像して声道壁の振動を分析した。その結果、舌、咽頭、喉頭が大きく振動していた。これは、通常の発話では活動が小さい下咽頭収縮筋が活動したためと考えられる。そして、筋の走行によれば、ビブラートは輪状甲状筋と下咽頭収縮筋の甲状咽頭部(甲状咽頭筋)によって制御されている可能性があることが明らかになった。
著者
福井 美貴 松村 幸子
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.22-32, 2003-05-15 (Released:2017-07-01)
参考文献数
23

本研究の目的は、心的外傷後ストレス障害に罹患した犯罪被害者が、回復過程で体験している「思い」の特徴を明らかにし、さらに回復に影響を与える「思い」の傾向を明らかにすることである。倫理的な配慮の上同意を得た10名の患者に非構成的な面接を実施し、質的帰納的に分析し、さらにIES=R値(Impact of Event Scale-Revised)の変化を基に患者を回復群と非回復群に分けて比較した。その結果、以下の知見が得られ、地域精神看護への示唆を得た。1. (1)被害への思い、(2)警察への思い、(3)裁判への思い、(4)被害後の苦痛な思い、(5)回復への思い、(6)家族との関わりへの思い、(7)友人との関わりへの思い、(8)社会との関わりへの思いの8つのカテゴリーが抽出され、対象理解を目的としだ犯罪被害者の回復過程のおける思いの全体像"が明らかになった。2.回復群に特徴的な思いとして『加害者への怒り』、非回復群に特徴的な思いとして『安全感が脅かされる恐怖』であることが明らかになった。
著者
鈴木 智之
出版者
日本労務学会
雑誌
日本労務学会誌 (ISSN:18813828)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.69-91, 2016-06-01 (Released:2018-01-24)
参考文献数
44

This report examines inter-rater reliability of recruiting interviews for new graduates based on existing data of the Japanese software development company A. Data of five components are used in this analysis.Inter-rater reliability of Spearman's correlation coefficient ranged from 0.04 to 0.41, revealing that reliability differs between components. Analysis through other coefficients demonstrates differing results according to the selected correlation coefficient. Construct of each component does not be seemed dependent.
著者
今井 志保 川中 洋平 土屋 悦輝 尹 順子
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.57-64, 2012 (Released:2012-03-10)
参考文献数
37
被引用文献数
3 4

東京都内の水道水について,有機フッ素化合物(PFCs)である11種のペルフルオロアルキルカルボン酸類および5種のペルフルオロアルキルスルホン酸類を測定した。40地点のPFCsの総濃度は0.72~95 ng・L-1の範囲で,平均値は19 ng・L-1であった。最多検出地点では12種のPFCsが検出され,PFCs組成比を用いたクラスター分析の結果,都内の水道水は多摩地域と区部の二種類にほぼ大別できた。区部の水道水のPFCs組成比および濃度は類似しているのに対して,多摩地域の水道水の組成比および濃度にはばらつきがみられた。これは区部の水道水が表流水を原水としているのに対して,多摩地域では各浄水所において表流水に地下水を混合して原水としていることによるものと考えられた。諸外国のPFCsの指針値等と測定値を比較した結果,都内の水道水中の個々のPFC濃度は指針値等を下回った。