著者
新山王 政和
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.1-12, 2004 (Released:2017-08-08)
参考文献数
22

筆者はこれまでタッピングやマーチングステップを対象にした先行研究を通じて, 音と身体動作の関係を拍点と動作ポイントの二つの要素に分離して分析してきた。本研究では小・中学校の教師に必要性とされる基礎的な指揮法を対象にして, 指揮者が示した打点 (beat-point) を動作ポイントとし, これと拍点との間に生じたずれをどのように処理するのかを手掛かりにして指揮熟達者と指揮初心者の違いを分析した。具体的にはメトロノーム音で代替した拍点に指揮者がどのような反応を見せるのか, 打点タイミングの捉え方の違いを整理して主に次の2点を確認した。1. 熟達者の指揮動作タイミングは拍点よりも指揮の打点が先行する/初心者の指揮動作タイミングは拍点と指揮の打点がほぼ一致する。2. 熟達者の指揮動作加速度は上げ動作の方が大きい/初心者の指揮動作加速度は下げ動作の方が大きい。しかしこの初心者の特徴とは, 拍点に指揮の打点を一致させるというこれまで一般的に言われてきた基礎指揮法の基本原則に近い。この結果に基づき新たな研究課題を次の2点に整理した。1. 拍点を動作の確認点や終止点とする考え方を改め, 拍点を指揮動作の開始点と意識する。2. 拍点めざして指揮棒を振り下ろすのではなく, 拍点で指揮動作が始まるようにする。
著者
室本 光貴 三上 修
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.S7-S11, 2018 (Released:2018-04-16)
参考文献数
14

ドバト Columba livia var. domestica は羽色に表現型多型が見られ,世界的に多くの研究が行なわれている.しかし日本では,ここ約40年ほど調査が行なわれていない.そこで本研究では,東京と大阪でドバトの羽色の割合を調査した.その結果,東京のドバトは灰二引と言われるタイプが少なかった.また東京については,過去の新聞記事の画像より,ドバトの羽色を年代ごとに解析すると,現代へ近づくにつれて灰二引が減っていることが明らかになった.
著者
中島 憲一郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.783-799, 2008 (Released:2008-11-17)
参考文献数
106
被引用文献数
5 6

薬物の乱用は世界中で大きな社会問題を引き起こしている.乱用によるリスクから人々の健康を予防し,守るためには乱用薬物の分析法の開発と応用が重要である.一方,薬物の摂取を証明するには,血液や尿などの生体試料の分析が不可欠であるが,その中で,毛髪は長期にわたる摂取情報を知ることのできる貴重な試料といえる.毛髪分析の歴史は比較的新しいが,分析機器の発展に伴って,実用的で有用な分析法が開発されるようになり,現在では法中毒学あるいは臨床化学などの分野で大いに利用されるようになっている.本総説では,毛髪分析の歴史,意義などを解説するとともに,最近の分析例を紹介する.
著者
山﨑 将文
出版者
日本法政学会
雑誌
法政論叢 (ISSN:03865266)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.21, 2018 (Released:2018-09-27)
著者
十河 宏行
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.154-160, 2019-09-30 (Released:2019-12-10)
参考文献数
11

PsychoPy is an open-source software for creating experiments in behavior science. It is written in Python for the most part and has been actively developed for years. Resent releases of PsychoPy add support for Python3, creating browser-based experiments and sharing experiments on the web. In addition, a new online service named Pavlovia was launched to support browser-based experiment and experiment sharing. This article introduces current status of these new features. PsychoPy now works with Python3 though some hardware incompatibility and bugs remain. Experiments composed of basic components of PsychoPy Builder can be performed on web browsers. Users can search and share experiments registered on Pavlovia if allowed by the owner.
著者
原田 誠一
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.47-51, 2019-11-30 (Released:2020-01-04)
参考文献数
13

筆者は,複雑性PTSDの病態理解や治療法に関する臨床研究を行う中で,貝谷が独自に臨床研究を進めている不安・抑うつ発作は複雑性PTSDとの共通性が高い病態ではないか,という印象を抱いてきた。本稿では,複雑性PTSDと不安・抑うつ発作に認められる本質的な重なりを示した上で,複雑性PTSDと不安・抑うつ発作の臨床研究が交流する必要性と有効性について述べる。その中で,複雑性PTSDにおける治療論(神田橋による漢方処方,整体~気功,原田による心理教育・認知行動療法)と,不安・抑うつ発作における治療論(貝谷による精神薬理学・薬物療法)が異なる基盤に立っており,我が国独自の治療的アプローチである3者が互いに補完し合うことによって相乗効果を期待しうる点を指摘した。
著者
浅井了意
巻号頁・発行日
1667

衣裳雛形本。浅井了意編。寛文7年(1667)刊。中本(16.8×12cm)。上巻50丁、下巻50丁に、丁の表と裏に各一図、計200の衣裳の図案を描き、それぞれに模様の名称と染色の簡単な注記を付したもので、その内、上巻18図、下巻23図、全体の五分の一は薄青・薄朱・薄黄緑の色刷りが施される。(2色以上の板を重ねた多色刷りではなく、本来墨摺りであるところを単色の色刷りにしただけのものである。)本書の初版は寛文6年(1666)山田市郎兵衛版で、この初版は色刷りではない。序に「その往昔の模様を加えず」とあり、寛文期の衣裳模様を描いたもので、その水準の高さを示す資料である。名古屋の貸本屋大野屋惣八の印を捺す。(岡雅彦)(2018.2)
著者
竹内 泰 牧 紀男
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.84, no.766, pp.2573-2583, 2019 (Released:2019-12-30)
参考文献数
17

The purpose of this study is to clarify the characteristics of the positions of Jizo in Kyoto through analyzing the newspaper articles and photos especially about Jizo and Jizo-bon festival from early modern period to today. In this paper, we clarified the transformation of the social position of Jizo that had been emerged by the social problems through Jizo. The results of this study are as follows.  After the order in 1871 to remove Jizo on the street, there were 4 periods the number of articles of Jizo increases as follows. ①The first period from 1887 to 1892 that the revival of Jizo-bon festival was paid attention as the curious affair. After this period Jizo and Jizo-bon festival became to be general as the usual situation before the order. ②The second period from 1929 to 1941 that Jizo and Jizo-bon festival had been the object of deeper and various interests, and after the outbreak of the Shino-Japanese War and the Pacific War, had been influenced strongly and utilized enhancing national prestige. ③The third period from 1952 to 1958 that Jizo-bon festival was appealed for the purpose of the democratic education after the war as the festival mainly for and by the children. ④The fourth period from 1971 to 1984 that the most interest was drawn, and the Jizo-bon festival was recognized to be necessary for the community work or the community formation, and such the recognition became established.  The revival of Jizo-bon festival was reported from 1881, and it became established again as the urban festival in Kyoto city in around 1899. And the changes of the road environment influenced to remove the location of the Jizo-bon festival in the 30’s of Showa period.  Through this study the process of the Jizo’s re-position facing to the street has been clarified that the position of the Jizo in usual situation was seen in some of Cho in around 1892, and they began to be positioned under the eaves of the shop house facing to the street in around 1900. Before early Showa period such the positions became general.  Analyzing through the newspaper photos, the outside location of Jizo-bon festival had been changed from the road into the other outside space like the alley, the rooftop, the temple, the park or the primary school, or into the inside space of the house or the temple. And the elements of the festival became to be composed from the long-term setting materials into the short-term ones. These changing terms were from the 30’s to the 50’s centering the 40’s of Showa period, and these periods overlap with the changing periods of the road environment.
著者
山田 賢 及川 大地 友永 省三 古瀬 充宏
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-12, 2011-04-09 (Released:2011-05-27)
参考文献数
33

グルコース由来のエネルギー合成経路において、チアミン (ビタミンB1) は重要な働きを有する。チアミン欠乏は、認知機能障害などの中枢神経障害を引き起こすが、これは脳内におけるエネルギー合成障害が主要因であると推測されている。しかしながら、その詳細な作用機構は未解明なままである。本研究では、この中枢神経障害発症の作用機構の解明を試みた。マウスにチアミン欠乏飼料を給餌し、更にグルコースを腹腔内に投与した。その後、マウスの慣れ学習および短期記憶への影響を観察し、脳内のモノアミンおよびアミノ酸含量を測定した。 行動試験の結果、チアミン欠乏によって慣れ学習が阻害され、過剰なグルコースの投与によって短期記憶障害が引き起こされた。しかしながら各学習阻害は、もう一方の処理による影響は受けなかった。また、チアミン欠乏は海馬内におけるL-リジン含量を変化させ、過剰なグルコースの投与は大脳皮質内のドーパミンおよびノルアドレナリン含量に影響を与えた。以上の結果から、チアミン欠乏による中枢神経系の障害は、エネルギー代謝障害のみに起因するものではなく、他のメカニズムも関与する可能性が示された。
著者
遠藤 匡俊
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.19-37, 2009 (Released:2011-12-08)
参考文献数
55
被引用文献数
2 1

集団の空間的流動性は,おもに移動性の高い狩猟採集社会で確認されてきたが,移動性の程度と集団の空間的流動性の程度の関係が必ずしも明確ではなかった。本研究では,定住性が高いアイヌを事例に,定住性の程度と流動性の程度の関係を分析した。1856∼1869年の東蝦夷地三石場所におけるアイヌの27集落を対象として集落の存続期間を求めた結果,最低1年間,最高14年間,平均4.4年間であった。全期間中に消滅した集落は18,新たに形成された集落は14,そして14年間ずっと存続し続けた集落は3であった。分裂の流動性が高い集落(S<0.82)および結合の流動性が高い集落(J<0.79)は,いずれも集落の存続期間の長さには関わりなく多くみられた。このように,集落の空間的流動性の程度は集落の存続期間の長さとは関係しなかった。消滅した集落の分裂の流動性は存続し続けた集落よりも低く,新たに形成された集落の結合の流動性も存続し続けた集落よりも流動性が高いという傾向はとくに認められなかった。この結果は,アイヌのように移動性の低い狩猟採集社会だけでなく,移動性の高い狩猟採集社会においても,移動性の程度と流動性の程度はあまり関係がなかったことを示唆する。
著者
水野 雅之 関口 雄一 臼倉 瞳
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.125-134, 2018-10-31 (Released:2020-01-05)
参考文献数
49

海外で実施された2つの場面緘黙のランダム化比較試験では,(1)段階的エクスポージャー法,(2)家庭や学校など生活場面での支援,(3)家族および教師との連携,の3つが有効である可能性が示されている。そこで,本研究では,日本における場面緘黙児への支援として,(1)段階的エクスポージャー法,(2)家庭や学校などの生活場面での支援,(3)家族および教師との連携,の3点に注目し,これらの支援がどの程度実施されているかを明らかにすることを目的とした。まず,系統的な文献収集を行い,38事例が収集された。文献を精査した結果,(1)段階的エクスポージャー法は18.4%のケースでしか実施されていないこと,(2)家庭や学校など生活場面での支援は31.6%のケースで実施されていること,(3)家族および教師との連携については,家族および幼稚園・学校関係者のいずれとも連携しているケースは28.9%であることが明らかにされた。今後,これら3つの支援方法を広めていくことが必要であるといえる。
著者
黒岩 義之 平井 利明 横田 俊平 鈴木 可奈子 中村 郁朗 西岡 久寿樹
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.185-202, 2019 (Released:2019-12-27)
参考文献数
50

脳室周囲器官と視床下部は恒常性維持器官であり,自律神経,概日リズム,神経内分泌(ストレス反応),情動・記憶・認知,感覚閾値・疼痛抑制,歩行・運動,神経代謝・神経免疫(熱エネルギー代謝,老廃物排出,自然免疫・腫瘍免疫)を制御する.血液脳関門を欠く有窓性毛細血管が密集する感覚性脳室周囲器官が感知した信号(光,匂い,音,電磁波,レプチン,グレリン)は視索前野,背内側視床下部を経て,休息型視床下部(摂食行動抑制中枢)と活動型視床下部(摂食行動促進中枢)に伝達される.心理ストレス情報は扁桃体から,概日リズム情報は視交叉上核から視床下部に入り,視床下部からオレキシン,バゾプレシン,オキシトシンが分泌される.視床下部症候群(脳室周囲器官制御破綻症候群)の背景疾患として,ヒトパピローマウィルスワクチン接種関連神経免疫症候群,慢性疲労症候群,脳脊髄液減少症,メトロニダゾール脳症,化学物質過敏症,電磁過敏症などがある.
著者
阿久津 誠 後藤 一貴 柏木 隆志 今野 渉 中島 逸男 深美 悟 平林 秀樹 春名 眞一
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.41-46, 2019 (Released:2019-09-28)
参考文献数
10

食道異物は摘出が容易な症例や自然排泄が期待できる症例が多いが,時として消化管穿孔や皮下・縦隔気腫などの合併症を引き起こす事がある。今回われわれは過去11年間で経験した,食道異物の症例を若干の文献的考察を加え報告する。症例は全98例,10代と60〜70代の二峰性分布を認めた。種類別ではPTPが最多であった。30例が入院加療を要したが軽快退院していた。一般的な耳鼻咽喉科診察では食道内の異物を見落としてしまう恐れがあり,上部消化管内視鏡検査や頸部CT検査は重要である。また鋭的異物の誤飲を積極的に疑う場合,後に下部消化管穿孔や穿通をきたす恐れがあるため他科との連携を図り,下部消化管精査も検討すべきである。
著者
佐藤 宏志 渡辺 仁 品部 耕二郎 小泉 淳
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.756, pp.21-31, 2004-03-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
11

ダクタイルセグメントは使用期間が最も長いものでは約37年あまりが経過したが, 二次覆工が行われない場合も多いため, その耐食性, 耐久性が問題になると考えられるが, その実態は従来ほとんど明らかにされていなかった. 本論文は, 供用中のダクタイルセグメントの腐食に関する継続的な調査結果を分析し, ダクタイルセグメントの耐久性を考察するものである. まず, セグメントの肉厚測定の方法およびその信頼性について述べ, 次に調査の内容およびその結果を述べる. この調査結果から, ダクタイルセグメントの主要肉厚は少なくとも24年間においてほとんど減少していないことがわかり, ダクタイルセグメントは現在のところ健全性を維持しており, 今後も長期間使用できると考えられる.
著者
柴田 重信 古谷 彰子
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.151, no.1, pp.34-40, 2018 (Released:2018-01-10)
参考文献数
37
被引用文献数
1 1

哺乳類において1997年に初めて体内時計遺伝子Clock,Periodが見出され,体内時計の分子基盤を追及する研究が盛んに行われ続けている.全ての生物のリズム現象を調べる学問として「時間生物学」が生まれるとともに,薬物の吸収,分布,代謝,排泄に体内時計が関わることから「時間薬理学」という学問領域が台頭してきた.薬と同様に,栄養の吸収,代謝などには体内時計が深く関わる可能性があるため,「薬」を「食品・栄養」に置き換え,体内時計との関係を研究する「時間栄養学」の領域が確立されている.ヒトを含む動物では,体内時計を24時間に合わせるために外界の光刺激に合わせて体内時計を同調させるリセット機構をもつ.最近の研究において,繰り返しの給餌刺激で形成される末梢臓器の体内時計のリセット効果は,光刺激による視交叉上核を介さないことも明らかになってきており,時間栄養学の研究の発展は著しい.肝臓の体内時計の位相変動作用は食餌内容の血糖上昇指数が高く,インシュリンを分泌しやすいほどリセットしやすいことがわかっている.一方,近年様々な疾患予防の観点から脂質の摂取が見直されている.その中でもn-3系脂肪酸は抗肥満をはじめとする様々な疾患に関わり,体内時計が関与する疾患との相関がみられている.筆者らはn-3系脂肪酸を豊富に含む魚油が,肝臓時計に位相変動作用を引き起こすことを明らかにした.魚油は大腸でGPR120レセプターを介するGLP-1分泌を通してグルコース濃度が上昇,さらにインシュリン分泌を強化することで体内時計の同調機構が確立することもわかっている.また,飽和脂肪酸で見られた体内時計の乱れや肥満に関わる炎症反応がDHAで予防されるほか,魚油の摂取時刻違いにより血中EPA・DHA濃度が変わるなどの知見も明らかとなり,今後さらなる発展が期待されている.
著者
荒牧 草平
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.85-97, 2018-04-30 (Released:2019-04-30)
参考文献数
25

子どもに対する親の教育期待は,親の社会経済的地位と子どもの学歴を媒介する,重要な要因とみなされてきた.一方,近年の研究は,子どもの学歴に対し,親だけでなく,祖父母やオジオバといった拡大家族の学歴も関連することを報告している.こうした分析結果は,回答者にとっての重要な他者である親キョウダイの学歴や態度が,回答者の教育態度の形成に関与していることを反映していると考えられる.また,これと同様の影響は,家族以外の重要な他者である,友人・知人からも受けていると予想できる.したがって,本稿では,拡大家族や友人・知人を含めた家族内外のパーソナルネットワークが,回答者の高学歴志向の形成に与える影響を明らかにすることを目的とした.小中学生の母親を対象とした質問紙調査データの分析から,1)キョウダイ,夫の親,友人・知人の学歴が本人の高学歴志向に独自の正の効果を持つこと,2)ネットワークメンバーの持つ高学歴志向が本人の高学歴志向に独自の正の効果を持つこと,3)本人や夫の階層要因は直接的な効果を持たないことなどが明らかとなった.最後に分析結果の意味について階層論とネットワーク論の観点から考察を行った.