著者
野中 茂紀
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

深部観察性能と低光毒性を特徴とする光シート型顕微鏡DSLM(Digital Scanned Light-sheet Microscope)に分光機能を追加した新しい顕微鏡システム(λ-DSLM)を作製した。蛍光ビーズや輝線光源を用いたシステム評価を行い、蛍光アンミキシング解析やラマンイメージングが十分可能な波長分解能であることを確認した。実際の蛍光蛋白質を発現する生体試料を用いた評価実験、およびシステム制御と画像構築・解析まで一括して行うためのプログラムの開発は進行中である。
著者
黒田 壽郎 前田 成文 竹下 政孝 霜垣 和雄 沢井 義次 大塚 和夫
出版者
国際大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

前年度は、イスラ-ムの都市性、とりわけイスラ-ム的宗教意識と都市形成原理の相関関係を明らかにするため、タウヒ-ド、ウンマ、シャリ-アが構成する三極構造の本性と、それが帰結するイスラ-ム世界固有の社会形成原理について研究を行ってきた。この基礎研究の成果をふまえ、今年度は、共同体形成原理の法的側面から研究を進めた(第6回研究会)。またマスジドがイスラ-ムに固有の聖俗関係を保持しつつ、共同体形成に密接に関わっている点に着目し、キリスト教社会、仏教社会との比較研究も行った(第9回研究会)。以上の基礎的、理論的研究ではそれなりの成果を上げ得たが、イスラ-ム的宗教意識と都市形成原理の相関関係は、現実のイスラ-ム都市に引き当ててその理論的妥当性を検証しなくてはならない。H班ではシリアのアッポを研究対象とし、対象研究の方法について討議、検討を重ね、またイスラ-ム社会と都市における異教徒の調和的共存とイスラ-ム共同体の形成原理に関する討議を行った。(第5、8回研究会)第7回研究会では、上記とは異なる視点からイスラ-ム的ネットワ-クと都市、イスラ-ム経済と都市の問題などについて討議を行った。これらの問題も単独で存在するものではなく、上記三極構造と密接な関係をもつことが確認された。具体的成果としては、第6回研究会報告書を出版、同時に都市性と深く関わるイスラ-ム経済活動の基本構造に触れたシャイバ-ニ-の『利得の書』を訳出、刊行した。他の研究会成果も発表予定である。また以上の研究に伴い、イスラ-ム共同体論、共同体形成論、都市形成論などの基礎的文献を収集するとともに、シリア,アレッポ関係の文献、地図などの収集にも務めた。
著者
西村 直子
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

古代インドでは牛を中心とする牧畜生活が行われており, 多彩な乳製品が基本食物とされていた。仏典にも多くの乳製品が登場し, 醍醐を最上とする重要な比喩表現も散見する。しかし, それらの具体的な製品について, 加工法の解明と同定は課題として残されたままであった。本研究ではヴェーダの祭式文献(中心となるものはB. C. 800-600年頃)から知られる以下の発酵乳製品について, 加工法の解明と同定を行い, その神話的宗教的意義と共に言語的側面からも精査した:ダディ(dadhi= 酸発酵乳), サーンナーィヤ(samnayya= 酸発酵乳と加熱乳の混合物), アーミクシャー(amiksa=カッテージチーズ様凝固発酵乳), パヤスヤー(payasya=amiksaに同じ), アータンチャナ(atancana=発酵または酸化促進剤), ヴァージナ(vajina=ホエイ)。
著者
大石 和欣
出版者
放送大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本科研2年目そして最終年度にあたる本年は、それまでの研究成果を公表していくことが目標であり、一応その目標達成することはできたと判断する。女性が十八世紀末において福音主義を受容していく過程で、宗教的な要素ばかりではなく、感受性文化の中で受容し、さらに慈善活動や消費活動といった社会行動へと応用し、さらには日記や詩、小説といった文学においても宗教的感性を発露させていったことは重要な意義を持つことを確認した。文学において宗教的要素は軽視される傾向が強いが、とくに十八世紀後半からのイギリスにおいて福音主義の及ぼした影響は広範囲かつ甚大であり、それが行動様式のみならず言説上にもはっきりとした痕跡を残しているのは当然といえば当然なのだが、クエーカーの女性はもちろんのこと、ユニタリアン派の女性の言説においても露骨に政治的な意味をもってその痕跡が残っているのは学術上新しい発見であったと言ってよい。また、ハナ・モアのような国教会福音主義者たちの言説には、福音主義が単に慈善や政治イデオロギーと結びついているのではなく、女性たちを「公共圏」へと参画させる推進力を保持していることが証明できた。一年のほとんどを国内における資料調査を行いながら、学会発表は論文執筆に費やした。ノリッジの女性たちの文学作品と福音主義の影響、およびフランシス・バーニーの小説における慈善と福音主義の関係については、12月末から調査・研究をはじめ、2月に3週間にわたる海外資料調査を行って国内にない資料調査を行った。それらについての論考は現在投稿中であり、来年度に公表される予定である。
著者
松島 雅人
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

糖尿病患者における下肢切断は,糖尿病や足の管理が適切になされれば予防可能な合併症である.本研究では下肢切断の危険因子を検討する目的で症例対照研究を行った.症例は1993年1月から1998年6月に慈恵医大附属病院,第三病院,柏病院の整形外科,形成外科で初回の下肢切断を行った患者のうち,切断時の糖尿病合併例の全例(42例)とした.対照は三病院の外来糖尿病患者一覧から年次毎に症例対照の比を1:4となるよう無作為抽出した(168例).足の状態とフットケアに関し郵送にて質問票調査を行い,症例には下肢切断の1年前の状況を,対照にはそれに対応する時点の状況を質問した,各質問項目に関しステップワイズ変数選択により多変量ロジスティック回帰分析を行った.下肢切断のリスクを有意に増大させたのは(カッコ内はオッズ比).歩行時疼痛(59.8,95%信頼区間4.5-793.2),皮膚の乾燥,ひび割れ(42.6,同1.3-243.4),創傷治癒遅延(7.6,同1.4-41.6),深爪(30.2,同2.6-354.3),爪にヤスリを使う(33.0,同2.0-554.1),および爪をはさみで切る(26.2,同2.1-319.5)がモデルに取り込まれた.足の状態の分析では,歩行時疼痛や創傷治癒遅延など循環障害を示唆する症状ならびに皮膚の乾燥・ひび割れなどがリスクとして挙げられた.臨床的に見出しやすい徴候であり充分な注意を要する.また,フットケアに関しては,爪の日常的なケアについての項目がリスクとして見出され,患者指導の上で参考にすべきと思われる.
著者
山田 誠二 小野田 崇 高間 康史 岡部 正幸
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

人間と知的システムが協調しながら問題解決を行う知的インタラクティブシステムの実現のために,ユーザからのフィードバックを最小限に抑えてパフォーマンスを向上させる最少ユーザフィードバックの枠組みの提案し,その様々な要素技術を開発した.最小ユーザフィードバック実現のためには,少ないユーザフィードバックを最大限に利用する技術が必要であるが,より効率的な制約クラスタリングアルゴリズム,類似度判定に適したGUI(Graphical User Interface)の基礎調査研究,人間の能動学習を促進するGUI,独立成分分析による非階層的クラスタリングの初期値決定法などを開発し,その有効性を実験的に検証した.
著者
出渕 卓
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本年度は 新たに導入された BlueGene/Q (3.5 rack 700 TFLOPS peak)上で、自然界のクォーク質量に等しい物理点上の アップ、ダウン、ストレンジ の軽いクォークの関わる物理量の計算を、効率良く行うための研究を行った結果、5倍から40倍もの計算効率化を果たすことが出来た。 目的とする正確な物理量(高コスト)とその近似計算(低コスト)の両方を、後者の近似計算をより頻繁(正確な計算の~100倍程度の頻度)行うことによって統計誤差を下げ、なおかつ格子理論の対称性を使うことに計算結果にバイアスを入れない All-Mode Averaging (AMA) という 方法を提案した。物理量の骨組みとなるクォークの伝搬関数を計算する際に、長距離の伝搬を支配するクォークの低エネルギーモードを固有ベクトルを求めることにより正確に扱い、短距離伝搬を担う 高エネルギーモードは多項式近似を行う。新しい計算資源である BlueGene/Q や GPU 上で、それぞれの資源の特長を生かした固有ベクトル計算を高効率で行うためのアルゴリズム implicitly restarting Lanczos with Chebyshev acceleration を開発・実装した。BlueGene/Q 上での計算コードは 理論絶対ピークの 30%の速度を超えており、この世代のメニコア環境下では満足のいく効率だと思われる。現在の方法では、より大体積の格子計算では、より大きなメモリ容量が必要 (体積の2乗に比例)であり、ドメイン分割法などの方法で必要メモリを減らすことが現在の課題であるが、これに関しても今現在進展を得つつある。
著者
栗山 浩一 竹内 憲司 庄子 康 柘植 隆宏
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,世界自然遺産知床を対象として,環境政策が自然環境の保全と観光利用とのバランスを取るために有効に機能しているのか,経済学的な視点から分析を行った。2011年から知床五湖で運用が開始された利用調整地区制度が利用動態に及ぼした影響を分析するため,導入前後の利用動向を比較した。これを実験経済学におけるフィールド実験(自然実験)と位置付けることで,利用動態の変化から本制度の経済学的な評価を行った。
著者
細田 亜津子 左海 冬彦 左海 冬彦 細田 亜津子 高橋 彰夫
出版者
長崎国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

研究成果の概要(和文):「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の一つである五島列島は、美しい景観と文化的景観を有している。しかし島の過疎化と高齢化は進んでいる。今後世界遺産登録後に予想される交流人口の増加は、この問題の解決になる一方、保全については島の人たちが将来担っていく必要がある。そのため島の異分野の老若男女の人々が交流しネットワークを作ることができた。島の景観と世界遺産を保護しながら自分たちで島の将来と町づくりを担っていく基礎を、島と島の地域間、人と人が協力してつくることができた。
著者
宮島 昌克 池本 敏和 幸左 賢二 清野 純史 吉田 雅穂 山口 謙太郎 鶴来 雅人 村田 晶
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

イラン・タブリーズ市において世界遺産の登録を目指しているバザール(市場)を対象として、北タブリーズ断層を想定地震断層とした強震動予測を行った。その際、各種地盤調査を行って、建設地点の地盤動特性を明らかにした。強震動予測結果を用いて耐震診断を行うとともに、耐震補強法について具体的に提案した。また、2010年10月10日~11日にイラン・タブリーズ市において歴史的組積増構造物の地震および地震工学に関するイラン・日本二国間セミナーを開催した。
著者
西永 頌 HUO C. GE P. NIE Y. 成塚 重弥 田中 雅明 NIE Yuxin GE Peiwen HUO Chongru HUO C GE P NIE Y
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

平成7年度から平成9年度の3年間にわたり、中国科学院物理研究所と東京大学工学系研究科との共同研究により、微小重力下で化合物半導体GaSbの融液成長に関する研究を行った。本研究においては、平成4年において、中国の回収型衛星を用いて融液成長法により成長させた結晶を評価する研究より開始した。評価法としては、化学エッチングによる転位の評価および、空間分解フォトルミネッセンス法によるTe不純物分布の測定を行った。前者の結果から、転位は種結晶から宇宙で成長した結晶部分に移る所で一度は増加するが、次第に減少し、ついには0になることがわかった。宇宙では融液柱および成長結晶は浮遊しており、管壁に接しないので歪みが発生しない。このため非常に高品質の結晶が成長したことが判明した。次に空間分解フォトルミネッセンス法によりTeの分布を調べた所、宇宙で融液が浮遊し、自由表面が出ていたにもかかわらず、不純物分布は拡散支配となっていることが判明した。このことは、宇宙ではマランゴニ対流が発生しなかったことを意味しており、非常に興味深い結果が得られた。次に同じく日中の共同研究によりNASAのGASプログラムを利用し、スペースシャトルにおいてGaSbの融液成長を行う計画を立てた。そのため中国側では電気炉を作製し、日本側はGaSbの結晶を加工整形し石英アンプル管に封入する作業を行った。中国側では、6分割電気炉を設計試作し、これに一定の温度勾配をつけ、この分布を上下に変化させることによりGaSbの結晶を融解・固化するようプログラムを作製した。日本側ではTeをドープした直径10mm長さ10cmのGaSbを石英管に真空封入し中国側に渡し、中国側でこれ等をGAS容器にセットしNASAに送った。実験は二度程延期となったが、平成10年1月末スペースシャトルSTS-89号で行われ、現在GAS容器は中国に搬送中である。この間、実験を行う上での打ち合わせを中国、日本と各3回行い準備を進めるとともに、中国回収衛星で行った融液成長実験の解析および討論を行った。
著者
前田 晴良
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

北海道・上部白亜系中の菱鉄鉱ノジュールを産する貧酸素環境の層準等から, Sphenoceramus naumanniのセンサス群集を発見した.これらは合弁で,非常に薄く壊れやすい後耳が保存されており,当時の個体群がそのまま埋没・固定された可能性が高い.底生生物の活動に不適な環境下で,逆に生態情報を保ったままの化石群が保存されるという逆説的な結果は,今後のイノセラムス類の古生態復元の上で重要なヒントとなる.
著者
川島 洋人
出版者
秋田県立大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は,粒子状物質に含まれるアンモニウムイオン,硝酸イオン中の窒素安定同位体比と元素状炭素中の炭素安定同位体比を高精度に測定し,浮遊粒子状物質の起源推定を行うことを目的としている。特に2次生成粒子であるアンモニウムイオンや硝酸イオンにおいては,それらの前駆ガスから粒子への同位体分別係数を実験室もしくは野外でのサンプリングより算出し,発生源解析に応用することを目指している。平成24年度は,ガスから粒子化のメカニズム解明のために,グローブボックス内にてアンモニアガスから粒子化(アンモニウムイオン)の窒素安定同位体比の分別係数を測定した。その結果,冬季と夏季の温度の違いによる分別係数の変化量は5‰以内と非常に小さく,アンモニアの発生源による違いが大きいことが推察された(これらの結果は25年度に国際学術雑誌に報告予定)。また,実験室だけでなく,いくつかの発生源の前駆物質であるガス状成分も野外にて同時測定を行った。これらの結果は,実験室における結果をほぼ再現していることがわかった。さらに,窒素酸化物と硝酸イオンの同位体分別係数も推定することが出来た。また,昨年行ってきた石炭中の炭素安定同位体比の結果は,浮遊粒子状物質の起源推定のために測定を行ったが,炭素安定同位体比の結果から,数億年前の石炭生成時期を予測することが可能であるということが推察された。
著者
武若 耕司 上田 多門 丸屋 剛 山口 明伸
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、海洋コンクリート構造物の完全非破壊型塩害予知システムの構築を目的とし、ハードおよびソフトの両面から実験的ならびに解析的検討を実施した。主な研究成果は以下の通り。(1)構造物の劣化進行を予測する塩害劣化シミュレーションモデルを構築した。(2)供用構造物中の塩害劣化進行をモニタリングし,構造物の劣化予知が出来るシステムを確立した。(3)劣化予知にあたって既定値とすべきパラメータ(腐食発生限界塩化物イオン濃度やひび割れ発生限界鉄筋腐食量)を定量化した。
著者
佐竹 正夫 大東 一郎 東田 啓作 柳瀬 明彦 斉藤 崇 松八重 一代
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本年度は最終年度であるので、各自の研究成果の公開とこの課題に関心を持っている若手研究者との交流を目的として、以下のような活動を行った。1. 公開シンポジウム平成20年9月16日(東北大学)発表者東田啓作"The Determinants of International Trade in Recyclable Materials and the Effects on Welfare-Theory and Evidence-"斉藤崇「国際資源循環と国内廃棄物処理・リサイクル制度」中谷隼*「使用済ペットボトルの国内リサイクルと日中間リサイクルの比較分析」*東京大学工学研究科助教2. 研究会平成21年2月2日(明治大学)この課題に関心を有している若手研究者*を招いて、特に理論の面での研究会を開催した。*栗田郁真(京都大学大学院生)、赤石秀之(法政大学大学院生)、南部和音(明治大学非常勤講師)、菊地徹(神戸大学准教授)、山重芳子(成城大学准教授)3. 成果発表会平成21年3月13日(東北大学)新熊隆嘉関西大学教授を招いて、公開の研究会を中に入れて、最終の成果報告会を開いた。研究成果は5月に報告書を発刊する予定である。4. 研究会、シンポジウムなどへの参加この課題はまだ結論が出るような問題ではないので、引き続き他の研究機関が開催する研究会などに積極的に参加すると同時に自治体や企業への聴き取りを行った。参加したシンポジウムは次のようなものである。・廃棄物処理等科研費研究班主催「PETボトルのリサイクル効果に関する公開セミナー」・国立環境研究所研究会主催「適正な国際資源循環を構築するための枠組みについて」・廃棄物学会主催「資源確保競争下での国際資源循環のあり方を考える」
著者
平野 薫
出版者
昭和大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

嚥下運動(飲み込むこと)時の大脳皮質の脳血流変化について、嚥下障害の改善に有効とされる嚥下法施行時および嚥下誘発手技施行時の大脳皮質の脳血流変化について調査を行い、それぞれの脳活動部位の傾向が明らかとなった。また、側頭筋の受動的・能動的筋活動が近赤外線分光法データへ与える影響について検討し、いくつかの知見を得た。
著者
八田 達夫 海蔵寺 大成 竹澤 伸哉 唐渡 広志
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

八田:東京のオフィスビルの容積率緩和がもたらす発生交通量の増大が引き起こす東京主要道路の混雑率の増加を測定し、その金銭換算を行った。さらに、これを容積率緩和のもたらす便益の増大と比較した。海蔵寺:「土地市場におけるバブル崩壊のメカニズム」を研究した。次ぎのことがわかった。(i)バブルは、限られた地域の土地(丸の内周辺など)に投資資金が集中し、地価分布の歪みが拡大してゆく現象であること、(ii)少数地点の地価が極度に高騰してゆく結果、利用可能な投資資金の大半が限られた土地に吸収されてしまい、高値を維持できなくなることからバブル崩壊が起きること、(iii)バブルの崩壊は、土地価格分布のジニ係数の時間的変化をモニターすることで予測可能であることがわかった。竹澤:2005年から2006年は、スポーツ設備における不動産開発とJREITに関する予備的研究を行い、学会で発表した。また、不動産開発プロジェクト等のデータベース(Bloomberg,PACAP,Deloitte-Touche,等のデータベースを使用)の構築を完成させた。さらにJREITに関する分析が完了し、論文"Beneficiary Rights in the Japanese REIT Market"(Nobuya Takezawaと共著)日本ファイナンス学会の2007年度大会で発表した。また、同論文のアップデート版が、アジアファイナンス学会で2008年7月横浜にて発表することになった。さらに、ウエスタン経済学会から、論文"Default Analysis of Golf Courses in Japan"の研究発表の許可を得た。唐渡:1991年から2001年の期間を対象にしてGISのポリゴンデータより土地利用変遷をデータ化した。これを利用して、事務所および住宅家賃関数の推定を通じて都心部の土地利用の非効率性の費用を計測した。また、用途変更パターンを観察しWheatonらの再開発定理を検証した。マンション価格のrepeat sales dataを開発し、品質変化の調整をおこなった不動産価格指数を測定した。代表的な価格指数Case&Shiller型の問題点である、住宅の経年変化による指数推定値のバイアスを取り除くための計量経済学的手法を提案した。不動産価格のマイクロな構造を分析するためのヘドニック・アプローチの理論と応用についてとりまとめた。さらに空間計量経済分析により地価関数の空間相互依存性を検証するための検定手法を提案した。
著者
小林 雅之
出版者
日本歯科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

【被験者】日本歯科大学新潟歯学部附属病院小児歯科に来院した,年齢5歳3か月から11歳9か月の小児小児患者19名。【実験方法】治療椅子を中心とした時計式表示法の位置で12時に歯科医師,3時に歯科衛生士,7時半に母親を配置した。そして,歯科医師が「おくちをあいて」,母親が「いいこにしてね」,歯科衛生士が「がんばったね」と話しかけ,被験児の眼球運動を両眼眼球運動測定装置で測定した。分析の結果,三者が話しかけたとき,話しかけた人の顔を視線が走査した被験児(走査群)と,走査しなかった被験児(非走査群)とに二分することができた。そして,両者間に性格特性があるか検討するため,被験児の眼球運動の結果と高木・坂本幼児児童性格診断検査との関連を,林式数量化理論II類により比較検討した。【結果および考察】1.数量化II類の結果は,相関比が0.701,判別的中率が94.7%,判別的中点が-0.127であった。2.高木・坂本幼児児童性格診断検査の性格特性で,走査群と非走査群の判別に大きな影響を与えるアイテムは,自制力,顕示性,神経質そして学校への適応であった。走査群に判別できるカテゴリーは,自制力なし,顕示性なし,神経質傾向,学校へ適応で,非走査群に判別できるカテゴリーは,自制力あり,顕示性あり,神経質でない,学校へ不適応であった。3.性格特性で,アイテム間相互の偏相関係数が0.700以上の強い相関を示すアイテムは,顕示性と神経質,神経質と自主性,不安傾向と社会性,自制力と個人的安定性であった。以上より,走査群と非走査群の被験児間に性格特性があることがわかった。
著者
山田 明
出版者
共栄学園短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

身体障害者療護施設における介護ー被介護場面の観察調査をした結果以下のような諸点が研究成果として確認された。1)身体介護場面における精神的(心理的)側面の重要性介護を要する重度障害者に対して起床、摂食、排泄、入浴、その他の介護が行なわれているが、身体的介護としてだけで実行されている場合が少なからずある。食事介助場面を例にとると、食事をただ口に運ぶだけになっていて、楽しい食事の雰囲気づくりなどに留意されていない場合が過半であった。介護福祉士の養成教育でも事故防止などのための技術は学ぶが、被介護者との介護場面におけるあたたかい精神的関係づくりの方法などを学ばせていない。介護技術の最重要点のひとつがここにあるだけにないがしろにできない問題であろう。2)言語活動過程における指示・抑圧的特徴介護職員が介護場面で発する言葉は「早くしなさい」「がんばって食べて」などの指示的言語であったり、「〜しないで」などの禁止、抑止言語である場合が多い。その反対に「そうね,いたいんだよね」などの共感語は少ない。言葉を出す声のト-ンも冷たくて固いものが多く、やわらかくてあたたかいものが少ない。これは被介護者の心理的活力を減少させるものとなっている。3)非言語活動としての身体表情の非共感的特徴介護者の被介護者を見るまなざしも指示・抑圧的であったり非共感的である場合が多い。身体の表情、動作の表情も全体に固く、非受容的、非共感的である場合が多い。パ-ソナルスペ-スは大きくなりがちで、意識的なアダチメントやアイコンタクトも少ない。パ-ソナルな近親性に乏しい。これが被介護者の孤立感、無力感をつよめていることが考えられる。
著者
中村 伸枝 林 有香 伊庭 久江 武田 淳子 石川 紀子 遠藤 巴子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は,日常生活習慣上の問題の程度に関わらず、より健康な生活をするためのアプローチが可能である学校の場を利用して,養護教諭とともに学童と親を対象とした日常生活習慣改善のために楽しく、親子で、段階的に行うプログラムの試作と検討を行うことを目的としている。研究の対象校は,平成10年度に実施した学童とその親に対する日常生活習慣と健康状態に関する調査で協力が得られた岩手県内の2つの小学校であった。小学校3年生1クラスと小学校5年生1学年(3クラス)で実施の協力が得られ,平成12年度には前回の調査結果と,学校内の協力体制,身体計測や学級活動等のスケジュール,体育や理科,家庭科の学習内容などを考慮して「学童と親の日常生活習慣改善プログラム」を試作した。平成13年度にプログラムを実施し,平成14年度にプログラム前後で行った生活習慣の変化,プログラムの満足度や家族の参加と反応,プログラムで学童が学んだことを視点に評価を行った。その結果,食習慣についてのプログラムを中心に実施した小学校5年生では,「好き嫌い」「野菜の摂取」「夕食時間」「排便習慣」と,「近くに出かけるときには歩く」項目でプログラム前後に有意な改善がみられた。また,学童はブレーン・ストーミングやグループワークを取り入れた学習に積極的に参加していた。運動習慣についてのプログラムを中心に行った小学校3年生では万歩計を用いた学習に学童は強い興味を示し,生活目標や,がんばったこととして運動に関することを最も多くあげていた。また,いずれの学年も,1年間通して使用した「健康ファイル」を家庭に持ち帰り,家族と共に健康目標を立てたり,学校での学びを家族にも伝えていた。健康ファイルは,肥満学童の保護者面談の資料としても用いることが出来た。看護職者と養護教諭の連携による学童と親への健康教育の有効性が示唆された。