著者
小池 三奈子 粕谷 英樹 菊地 義信 堀口 利之
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

韻律制御可能な電気式人工喉頭(Pitch controllable electrolarynx ; PC-EL)の訓練プログラム開発とPC-ELによる発話(PC-EL音声)の評価を行った.訓練は,平板型4モーラ単語から始め,アクセント句,イントネーション句,文と進め,ピッチ操作に慣れた段階で,抑揚型アクセントの語を訓練した.2週間の訓練で,7名中5名が自発話で訓練目標を達成した.訓練後のPC-EL音声はピッチ固定型電気喉頭(PF-EL)の音声と比較して,より肉声に近いと評価された.
著者
但馬 亨
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度の主たる研究の目的は、以下2つの課題の実行であった。すなわち、国際的にこれまでの研究内容を発表することと、前年度から継続して貴重資料群のデータベース作成に一定の目途を立てることである。第一の課題については、2009年7月から8月にかけてハンガリーの首都ブダペストで行われた、科学史関連では最大である国際学会において18世紀半ばの弾道学的諸問題の理論的および実験的側面についての分析結果を発表し、2010年1月には京都大学理学部において同大学の名誉教授である上野健爾氏主催の数学史国際シンポジュームで曲線概念と関数概念の混交する17世紀末から18世紀前半における無限小解析学について、国際的な近代数学史研究の権威である、ベルリン工科大学のEberhard Knobloch教授と議論を行った。また、第二の課題の画像データベースの作成については、本年もパリのフランス国立図書館を中心として、貴重書の収集に努めた。その結果、パリ王立科学アカデミーの構成員である数学者Etienne Bezoutによる応用力学についての教育的著作やBenjamin Robins, Leonhard Eulerの砲術書の新フランス語訳等のデジタルデータ化を行った。ハードウェアレベルからの画像処理専用のコンピューターの構築についても前年から継続し、諸図形の形状をデジタル人力する専用ソフトを導入しデータベースを作成した。
著者
大津 定美 田畑 理一 堀江 典生 雲 和広 石川 健 アンドレイ ベロフ 武田 友加
出版者
大阪産業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ロシアの経済成長の中長期的な制約として、人口減少・人手不足があげられているが、行政や企業現場での調査によって、労働力需給関係は質と量の両面で、ロシア特有の問題を抱え、複雑な構造になっていることが判明した。近年の経済成長の結果、貧困が減少したとは言えず、他方外国からの「安価な移民労働」への依存が大きくなる。他方、雇用や社会政策面での地域格差が拡大するメカニズムが明らかにされたが、労働市場の制度不備や機能・効率の面でもロシアが抱えている問題は大きい。
著者
西谷 隆夫 岩田 誠 酒居 敬一
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

携帯端末で映像から情報入力を行う際の前処理演算の効率化として多重解像度処理とそれを実現するTOPS(テラ・オペレーションズ・パー・セコンド)までスケーラブルに拡張できるマルチプロセッサのアーキテクチャについて検討した。映像からのデータを活用する前処理は従来の空間的な相関に加え、画素単位の時間的な処理に重点が移りつつある。空間的な処理としてカラー画像強調アルゴリズムの演算量削減を、また、時間的な処理に空間的な要素を加え、安定性と低演算処理を狙った混合ガウス背景モデルによる前景分離を対象に検討を行った結果、双方とも従来例に比べ大幅な演算量削減を実現できた。カラー画像強調と前景モデルを組み合わせることで逆光などの劣悪状況でも追跡が可能なことも示せた。どちらの応用もローカル処理や画素ごとの判定が多く、超並列プロセッサ向きである。また、判定処理が多く、プロセッサ自体をパイプライン化すると条件判定で無駄命令が多発することも明確になった。このため、昨年度提案した超並列DSPを発展させ、その利点を明らかにした。その結果、アルゴリズムは超並列で論じ、ハードウェアはパイプライン化しない範囲の高い周波数で動作させ、超並列アルゴリズムの一部を多重化させる方式が良いとの結論になった。また、昨年度導入したセグメントバスを有効に使うと動き補償などの空間処理で最も効率が良いとされていたシストリックアレーを凌駕するアルゴリズムを導出でることも明らかになった。このアーキテクチャを1985年ごろのパイプライン処理を行わないDSPをベースにFPGAで作ると1チップに約300個実装できることを実験的に確かめた。
著者
神岡 太郎 八幡 和彦 山本 秀男
出版者
一橋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究では次の2つの方法によってCIO(Chief Information Officer)の役割に関するデータを収集し、それらに基づいて仮説検証とモデル化を行った。一つは大手企業に所属する22名のCIOに対するインタビューを行った。もう一つはCIOを評価できる立場にある情報システム部門及びユーザ部門に所属する主に大手企業に所属する社員、それぞれ309人を対象としたアンケートを行った。主な結果として(大手日本企業に属し、ジネスイノベーションに関心のあるCIOについて)次の3つが得られた。・CIOは企業において、i)ITの目的をビジネスイノベーションに仕向けること、ii)ITによるビジネスの変革、それに iii)ビジネスイノベーションを企業の成長に貢献させることにポジティブなインパクトを与えている。特にCIOが単に役員としてのポジションにあるだけでなく実際にCIOとして機能している場合にその傾向が強い・ビジネスイノベーションにおけるCIOの役割は、情報システム領域においてのみ変革を担うEnablerから、情報システム領域とビジネス領域の両方で変革を担うDriver、戦略に携わるStrategistへと移行する傾向が見られる・その中で当該CIOはStrategistの役割に属するというCIOが最も多いまた新たに、CIOは個々のビジネスイノベーションだけに責任を持つのではなく、そのイノベーションの基盤にまで関わるChief Innovation Officerの役割にも関わろうとしているという仮説が提示されている。これらの結果は、11.研究発表の項に記載した"CIO Roles in Business Innovation“(APCIM2009)等において発表されている。
著者
正田 彬 舟田 正之 高橋 岩和 土田 和博 山部 俊文 柴田 潤子 江口 公典 石岡 克俊 金井 貴嗣
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究組織(「東京経済法研究会」)による本研究は、市場支配的地位にある企業が存在する市場の実態と、それに対する独禁法及び各産業分野の事業法による規制のあり方を、同様な状況が認められる諸外国との比較研究を含めて調査研究することを目的とする。本年度は、以下の研究成果をあげることができた。第一に,IT革命が多様な形で、市場競争を国際的規模で、かつ質的にも変化させつつあるという状況の下で、特に競争を制限するような市場支配的地位にある企業の出現、あるいは大企業による市場支配地位の濫用をどのように抑止し、公正かつ自由な競争を維持・促進していくかを検討した。特に、独禁法による規制を検討対象とし、一般的な理論的・解釈論的研究を行い、具体的素材としては、日米のマイクロソフト事件,インテル事件などIT関連産業を主に取り上げた。そこでは、私的独占による規制の可能性を検討し、日本の私的独占の要件では、市場支配力の濫用を規制することが不十分であることが明らかとなった。第二に、個別規制法による規制としては、電力産業を取り上げ、そこにおける市場支配力の規制の現状と実態を明らかにすることに務めた。そこでは、米国、ドイツ、英国、及びEUによる電力規制をも研究対象とした。どの国でも、既存の電力会社の市場支配力の規制として、構造規制(アンバンドリンク)、そして、行為規制(卸・小売の取引条件の規制、及び、託送などについての規制)が行われている。日本は「部分的自由化」という特殊な状況にあるので、自由化部門と規制部門の問の内部相互補助が極めて重要な課題になっていることが明らかになった。小売のすべてについて自由化するかが今日の政策課題であるが、その際に、整備すべき各種の条件があることを明らかにした。
著者
四日市 章 河内 清彦 園山 繁樹 長崎 勤 中村 満紀男 岩崎 信明 宮本 信也 安藤 隆男 安藤 隆男 前川 久男 宮本 信也 竹田 一則 柿澤 敏文 藤田 晃之 結城 俊哉 野呂 文行 大六 一志 米田 宏樹 岡崎 慎治 東原 文子 坂尻 千恵
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

研究成果の概要 : インクルーシブ教育を理論的・実践的両側面から捉え、国内外の障害に関する理念・教育制度の展開等について歴史的に解明するとともに、特定地域の幼児・親・教師を対象として、障害のある子どもたちのスクリーニング評価の方法の開発とその後の支援について、長期的な研究による成果を得た。
著者
鈴木 祥之 鎌田 輝男 小松 幸平 林 康裕 後藤 正美 斎藤 幸雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、伝統構法木造建物に高い耐震性能を与える耐震設計法、耐震補強法および新しい耐震補強用の構造部材の開発を行い、また京町家や社寺建築など文化財的木造建築物の保全・補強に役立てることを目的として、以下の研究を実施した。(1)伝統構法木造建物の耐震性能評価法の開発:E-ディフェンスで実施した京町家ならびに伝統構法木造住宅の実大振動台実験で耐震性能評価法の検証を行った。また、2007年の能登半島地震、新潟県中越沖地震の被害調査を実施し、民家、社寺建築物の構造詳細により耐震性能評価を行った。(2)木材の構造的劣化診断:木造部材の構造的劣化特性を調査し、耐久性の検査方法を確立し、構造劣化の診断法を開発した。2007年能登半島地震被害調査から腐朽・蟻害などの被害が顕著であった民家を対象に構造部材の劣化程度を調べるとともに軸組の耐震性能に及ぼす影響を調べた。(3)耐震性能設計法の開発:伝統構法木造建築物の耐震性能設計法として、限界耐力計算に基づく設計法の開発を行った。また、2007年6月に建築基準法が改正され、伝統構法の設計において非常に大きな社会問題になった。これに伴い、限界耐力計算による耐震設計法の検討を行うともに、伝統構法木造建築物の設計法の課題となっていた柱脚の滑りや水平構面の変形などの研究を進め、設計法の実用化を図ってきた。(4)既存建物の耐震補強法の開発:伝統構法木造建物に適用可能な耐震補強用の構造部材として乾式土壁を用いた小壁や袖壁やはしご型フレームの開発を行った。振動台実験などで補強効果を検証するとともに、住宅用と社寺など大型木造建築物用として実用化を図った。(5)文化財・歴史的木造建築物の保全・補強への応用:実在の寺院建築物の耐震性能を評価し、耐震補強法の開発を行い、実用化した。この耐震補強法は、有用な方法であり、多くの社寺建築物などの文化財・歴史的木造建築物に応用可能である。
著者
長江 美代子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

この研究では、質的記述的研究方法を用いて、日本の社会にみられる夫婦間暴力について、夫から妻への暴力という行動の背景を調査し、社会文化的にこの暴力行動を規定しているとおもわれる筋書きをみつけ、描写説明した。3つのエコロジカルモデルを統合して「日本文化における夫婦間暴力(IPV)のスクリプト」の概念枠組みを作成した。4つの主要概念(状況要因、夫婦行動、夫婦間コミュニケーション、IPV維持継続要因)と3つの側面(個人、対人、社会文化)に基づく面接ガイドにより、11名の女性IPV被害経験者に半構成的個人面接を実施した。1.男性加害者の参加者がまだ得られていないが、女性被害者11名のデータを、夫婦間の関わりに焦点をあてて分析した。分析はイリノイ大学研究者との共同作業ですすめ、論文として完成させた。内容分析により、IPV行動に影響している日本文化に共通する3つのビリーフ(信念):1)妻は夫に付随する、2)女性のする仕事(役割)は男性の仕事(役割)ほど価値がない3)IPVは妻が原因、が抽出された。2.日本社会における夫婦間暴力に関して、女性の視点を反映した包括的な文化的スクリプトを提供した。また、以下が今後の効果的な夫婦間暴力介入プログラムの考案にむけての課題である。・男女平等の文化的ビリーフを養うためには、地域に根ざした学童年齢からの教育介入が必要である。・より包括的なスクリプトを描くには、将来の研究では、男性の視点や家族の視点を入れ込むことが必要である。・継続して男性加害者の視点を取り込めるように研究デザインを考慮し今後の研究課題としたい。
著者
西田 公昭 山浦 一保 渡辺 浪二 角山 剛
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

人権擁護の側面から、集団活動の健康度を心理学的に明らかにし、その集団虐待的な経験実態を探ること、また現在、不健康な集団活動への対策が大学においていかになされているかを実証的に明らかにした。その結果、一般にカルト経験者は、テロリスト同様の明らかに逸脱した不健康な活動を多く行っており、また約4 割の大学でカルト事例があるがその予防対策は十分ではない。
著者
渡邊 晃
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

移動透過性とアドレス空間透過性の機能を統合し実装を完了した. FreeBSDで開発済みのGSCIPの基本部分をWindowsへ移植し, 安定動作することを確認した. 管理装置の実装を行い基本部分の動作を検証した. CVS(Concurrent Versions System)を用いて管理を実施中であり, ソースコード公開に向けての準備をほぼ完了した. 国内学会の口頭発表13件, 国際会議口頭発表2件, 論文誌掲載2件を達成した.
著者
渡辺 義明 只木 進一 渡辺 健次 江藤 博文 大谷 誠
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、佐賀大学で開発しキャンパス全域で運用しているネットワーク利用者認証システムOpengateを基に、改良を行った。1.IPアドレスに基づいてネットワークの開放と閉鎖を行っているため、IPv6通信に対応するには、利用端末のIPv4とIPv6との両アドレスを検知する必要があったが、これを実現する仕組みを工夫してIPv4/IPv6両対応とした。2.利便性と安定性の向上のために数多くの改訂を行った。例えば、XML形式の設定ファイルで統一的に制御できるようにした。また特別な設定を必要とする利用者に対する別設定ができるようにした。さらに汎用な及びセキュアな認証プロトコルも利用できるようにした。3.従来は利用終了の即時検知を実現するためにJavaAppletを利用していた。しかしJavaVMが標準実装から外れるようになったため、JavaScriptがAjax処理を繰り返してサーバとの間にTCPコネクションを維持する方式を考案し実装した。4.Java Servlet環境を利用してOpengateと同様な基本機能を実装した。結果として充分に代替できるシステムとなりうることが分かった。実運用システムの実現は今後の課題である。5.開発システムをオープンソースプログラムとして公開した。また導入利用者や開発協力者の利便性を図るため、プロジェクトをSourceForge.netに登録した。国内外に導入事例が広がっている。
著者
本橋 令子
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

網羅的タンパク質解技術(プロテオミックス)を利用し、葉緑体からクロモプラストへの分化に関与するタンパク質を同定することを目的に実験を行った。まず、成熟段階の異なるマイクロトム果実(緑、黄、オレンジ、赤)よりプラスチドを単離し、各ステージのプラスチドタンパク質をLC-MS/MSを用いたショットガンプロテオーム解析により約440を同定した。2番目に、白、黒やオレンジ色の果実を持つ変異体や栽培系統を集めた。2次元電気泳動法により、それら果実のクロモプラストのプロテオームデータを野生型のマイクロトムの4つのステージのプロテオームデータと比較し、クロモプラスト分化や成熟、果実色に関与するタンパク質を同定中である。
著者
南里 豪志
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

IPv6対応インターネットとMyrinetで構成された階層型クラスタ向けにRMA機構を開発するとともに、通信最適化技術を開発した。また、ソフトウェアで制御されたキャッシュメモリシステムをRMA機構上に構築して、有効性を確認した。
著者
相原 玲二 岸場 清悟 近堂 徹 西村 浩二 田島 浩一
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

移動するコンピュータから複数の相手端末に対し同報通信を行うことができる移動透過マルチキャストとして、IPモビリティ通信方式から得られるIPアドレスなどのネットワーク情報を積極的に活用する移動透過アプリケーションレイヤマルチキャスト通信方式を提案した。研究代表者らが過去に提案している移動透過通信方式を、マルチキャスト通信が可能となるよう拡張し、その具体的な実装設計、プロトタイプ作成および性能評価を実施した。
著者
サーラ スヴェン 川喜田 敦子 工藤 章 田嶋 信雄 ヴィッピヒ ロルフハラルド 加藤 陽子 石田 勇治 萩谷 順
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、近代日本とドイツの関係史において、両国の相互イメージの形成とその形成要因、そして、このような相互イメージが二国間関係に与えた影響を明らかにしようとするものであった。2010・11年の日独修好150周年の催し物として、この研究をまとめる国際会議が2010年12月に行われ、20人の研究者が日独相互イメージを分析し、そのイメージを表象する視覚的資料を紹介した。なお、日独関係史の研究者のネットワークが深化された。日本とドイツは現在では、強い友好関係で結ばれているとはいえ、過去には、両国のメディアにおいて歪曲された他国のイメージが浮かび、そして、現在でも浮かぶことが明らかになり、多様な啓蒙活動の必要性が指摘された。
著者
西村 博明
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

高速点火核融合プラズマを対象とし、爆縮コアプラズマの形成過程、密度半径積の計測、ならびに超短パルスレーザーによる追加熱過程の観測を目的として、超高速単色X線X線分光診断法の研究を実施した。爆縮コアプラズマの電子温度プロファイルを計測するため,塩素トレーサーガス封入ターゲットを開発し、爆縮実験に用いた。昨年開発した単色X線サンプリングストリークカメラで塩素の共鳴線であるHea線とLya線を単ショットベースで取得し、二次元電子温度の時間履歴が500~820eVの間で変化することなどが分かった。さらに,流体シミュレーションと比較した結果,爆縮過程の減速相でシェルと内部ガスの混合が発生し、その現象が電子温度を低下させていることを明らかにした。プラズマの初期密度を駆動レーザーに対する臨界密度より低い低密度ターゲットを使用すると、加熱膨張が起こるまでに速やかに一様加熱でき、固体平板と比べ一桁以上高いX線の変換効率を得ることを定量的に示した。爆縮コアプラズマの密度計測に最適なチタンのK殻X線(4.5-6.0keV)に着目し、チタンドープエアロジェル(密度3.2mg/cc,チタン含有量が3%原子数)をシリンダーに詰めたターゲットを用いて加熱波の観測実験を行った。実験結果と二次元放射流体シミュレーションとを比較し、シリンダー壁面からのプラズマ膨張がシリンダー軸上で衝突しプラズマ温度を上昇させていることが確認された。さらに,チタンの含有率を上げ、更なる変換効率の向上を目的に,新規ターゲット材料の二酸化チタンナノファイバーコットン(密度27mg/cc)を用いたX線発生実験を行い、従来のX線発生方式と比較して一桁以上高いX線変換効率の向上に成功した。
著者
長友 克広
出版者
弘前大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

中脳黒質網様部GABAニューロンは、高頻度に自発発火をしている細胞の1つであるが、その持続的な自発発火を支える制御機構は明らかではない。本研究では、「代謝」という観点から、急性単離ニューロンを用いて、細胞外グルコース濃度および温度を変化させた時、自発発火頻度がどのように変動するのか解析した。以前報告した脳スライスの結果と異なる結果などが得られ、ニューロンの自発発火はニューロン周辺環境の何らかの因子によって調節されていると示唆された。
著者
山本 正治 渡辺 厳一 中平 浩人 遠藤 和男
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

胆道癌死亡率の高い下越地域の新潟市と死亡率の低い上越地域の上越市で採取した水道水の突然変異原性の差を年間を通して比較検討を行った。水道水の採取は両市の各1給水栓にて行い、夜7時に勢い良く約10秒間排水した後、1日10lずつ採取し、各1サンプルとした。採水日は毎月第4週の水、木、金曜日の3日間とし、これを1年間実施した。更に溶出溶液を濃縮乾固後、DMSOに溶解して突然変異原性試験に供した。突然変異原性試験はAmes法(TA100,TA98)のプレ・インキュベ-ト法を用い、代謝活性化は実施しなかった。これまでに、3〜7月の試料と8〜10月の試料について分析を行った。その結果、フレ-ムシフト型のTA98株に対する突然変異原活性はほとんど試料で確認されなかった。一方、塩基対置換型のTA100株に対しては、新潟市の全試料が1l当たりの復帰コロニ-数が自然復帰コロニ-数の2倍を越えたのに対し、上越市では3月を除くほとんどの試料で2倍に達しなかった。新潟市と上越市の水道水1l当たりの復帰コロニ-数の平均は3月がそれぞれ392【plus-minus】75、253【plus-minus】91、7月が253【plus-minus】50、71【plus-minus】29といずれも新潟市の方が高い結果が得られた。また、その差は3月より7月の方が若干大きくなった。ただし、7月の上越市の試料は自然復帰コロニ-数の2倍に達しなかった。また、すべての月で突然変異原活性が確認された新潟市の水道水の変異原活性の大きさは3月から7月まで暖かくなるにつれて除々に低下していく胆道癌の死亡が多い新潟市の水道水の突然変異原性が、死亡の少ない上越市の突然変異原性より強かった。そこで、原因物質の同定など、胆道癌発生との関わりを、より分析的方法で進める必要がある。
著者
渡邉 信久
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

多剤排出系タンパク質の結晶構造解析を目指し,2年間で合計29種類のMFS,SMR,MATEタンパク質について大量発現系の構築を行った.単独発現系では黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来の多剤排出系QacAとNorA,コリネ菌(Corynebacterium glutamicum)由来CGL2611の3つについて発現,精製系を確立した.また本研究では単独発現の困難なものに対してMistic融合発現系の適用を試み,膜貫通ヘリックスが少ない小型のEbrA,EbrBの他に,13本のTetB,14本のLmrBについても発現を確認することが出来た.大量発現系を確立したQacA,NorA,CGL2611の3つについて詳細な条件検討を行なった.QacAの場合,透過電子顕微鏡観察からは,基質であるローダミン6G(R6G)の存在下で抽出・精製を行うとアグリゲーションを避けることが出来ることが分った.また,CD測定および示差走査熱量分析(DSC)の結果からはR6Gによって立体構造も安定化される傾向があることが示唆された.しかし,CGL2611に関しては,有意に構造を安定化する基質の情報が得られず,さらに,試料濃縮の際に界面活性剤DDMが問題となることが判明したため中断した.結晶化条件スクーニング実験はQacAとNorAに絞って実施し,これらの立体構造を壊さない5種類の界面活性剤と2種類の結晶化剤PEG400およびPEG3350の相分離点を決定し,初期スクリーニングの実施条件を決定した.蒸気拡散法の温度条件の変更やリピディックキュービックフェイズ法による結晶化を試みた結果,結晶様の析出物は得られたが,X線回折能を示す結晶を得ることは出来なかった.