著者
木本 哲也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

海馬で低用量ビスフェノールA(BPA)の作用を検討した。(1)成熟ラット海馬スライスに10nMBPAを2時間作用させると樹状突起スパイン(特にmiddle-head:頭部直径0.4-0.5μm)が増加した。BPA作用は膜受容体ERRγが媒介していた。MAPキナーゼ・NMDA受容体阻害もBPA作用を抑制した。(2)周産期に母体経由で低用量BPA(30μg/kgBW/day)に曝露されたラットのスパインは成長後のオスで減少した。メスでは性周期依存性変動が消失しオスに近づいた。(3)質量分析法でオスラット海馬に約64nMのBPA蓄積が判明した。
著者
小田 利勝
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では、少子高齢・人口減少社会への対応策として学部教育の修業年限を1年短縮することによって期待される効果をシステムダイナミックスモデルで推計するとともに学部教育の修業年限短縮という着想に関わる諸側面に関する大学長への質問紙調査(医歯薬獣医系の単科大学、2年以内の新設大学、廃止予定の大学等を除く国立79,公立70、私立533の計682大学の学長/総長宛に調査票を郵送し、国立50(回収率63%)、公立37(同53%)、私立200(同38%)の計287大学(同42%)から回答があった)から得られたデータを分析した。18歳人口は減少し続けるが、進学率の上昇が見込まれるので、学部入学者数は2023年頃までは増加し続ける。修業年限を1年短縮することによって、2030年頃までは毎年40万~50万人の労働力人口が1年早く補充されることになる。その結果、所得税と年金保険料の増収が2025年には2,500億円から3,200億円になる。しかし、進学率が上昇しても2035年頃からは大学入学者数も卒業者数も確実に減少していき、補充労働力人口も減少し続けることになり、毎年の税収や年金保険料収入も減少していく。奨学金に関しては、修業年限を1年短縮することによって貸与学生を大幅に増やすことができると同時に奨学金貸与事業費をかなり軽減させることができる。学部の修業年限を1年短縮することによって1年前倒しして労働力人口の補充や税、年金保険料の増収を図ることができることは少子高齢・人口減少社会が抱える課題への確実な対応策になり得ると考えられる。大学長の多くは現行の4年制を支持しているが、工夫次第では教育の量と質を落とさずに3年制にすることも可能とする意見や3年制にすることに関して検討する余地があるとする回答も3割あった。そのほか多くの貴重な意見が寄せられ、本研究を進める上で、学部教育の目的や多様性をいかにして考察の枠組や分析モデルに組み入れていくかが課題であることが示唆された。
著者
高橋 勉
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

フィルムやペットボトルの成形加工に用いられる平面伸張流動場における高分子流体の挙動を調べるために,シース流を利用して試料を急速に加速しフィルム状に引き延ばすフローフォーカッシングを用いて安定した高伸張速度の流れ場を形成した.伸張速度をさらに増加させるために流体駆動と試験部を一体化した装置を作り効果を確認した.さらに,定常伸張流動中に180旋回する流路を用いて伸張応力の評価も行った.
著者
井土 愼二
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究計画に示した通り、論文では明代の資料『回回館雑字』、ヘブライ語表記のブハラタジク語資料、そして録音から得られる音響データを組み合わせてタジク語とウズベク語の母音体系を分析した。その結果、タジク語の母音体系の成立過程については、これまでに知られていなかった幾つかの事実が明らかになった。15世紀のサマルカンドでの母音体系の『回回館雑字』に基づいた再構や、タジク語母音推移の過程や時期のヘブライ語表記のタジク語資料と音響分析に基づいた推定などがそれにあたる。研究の主目的であるウズベク語母音体系の成立過程の解明については、上述の論文のうちの1本がその嚆矢となっている。今後発表を続けていきたい。
著者
永田 智 清水 俊明 大塚 宜一
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

肥満群の便では健常児と比較してビフィズス菌の有意な減少と便中酢酸濃度の明らかな低下が認められた。肥満群は、観察期間の前半6ヶ月を食事・運動療法のみ、後半6ヶ月は乳酸菌シロタ株含有飲料を飲用させたところ、飲用1ヶ月後に有意な体重減少が得られた。また、飲用3カ月後に中性脂肪値の有意な低下、1カ月後にHDLコレステロール値の上昇傾向、飲用3カ月後に便中ビフィズス菌の有意な増加と酢酸濃度の有意な上昇が認められた。以上より、シロタ株には肥満抑制効果があることが示唆され、その効果は、シロタ株が腸内のビフィズス菌の増殖を促進して、その代謝産物である酢酸などが脂質代謝に影響している可能性が考えられた。
著者
丸山 浩明 宮岡 邦任 仁平 尊明 吉田 圭一郎
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ブラジルの南パンタナールを研究対象に,住民が世代を越えて継承してきた湿地管理のワイズユース(wise use,賢明な利用)を発掘し,その有効性を検証した。パンタナールでは,雨季にアロンバード(自然堤防の破堤部)から内陸部へと水を引き込み,水位が低下する乾季にはアロンバードを閉鎖して浸水域を消失させることで,木本種の侵入による草地の森林化に向かう植物遷移を抑制し,良質な天然草地の維持・形成を実現してきたことが明らかになった。
著者
平沢 信康
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

1921(大正10)年4月から、卓越した教養教育を少数の女子生徒に施し始めた文化学院の設立に至る経緯と趣旨、および自身の資財を投じて創立を敢行し初代校長に就任した西村伊作(1884-1963)の人間形成と経歴について詳細に調べた。あわせて大正自由教育を代表する文化学院の学監、教授、講師たちの経歴および同校との関わりを精査し、カリキュラムを含め、芸術教育に主眼を置いた同校のリベラルな教育の歴史と特質を、社会背景と共に明らかにした。
著者
村上 興匡
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

明治30年代以降、告別式や神前結婚式に代表される宗教式結婚式など、近代的な人生儀礼の様式が次々考案された。これらは日本を文明するという機運、簡素化・合理化の主張としての風俗改良運動、社会教育における宗教の役割といった時代の問題と関係していた。その一方で日本の伝統的宗教習俗の多くは、文明に反する迷信として排除の対象となったが、「家」に関連する部分(たとえば「祖先教」など)は天皇制との関係で残された。近代的な人生儀礼は、都市的な生活様式に適合するものであるとともに、「家」的なイデオロギーと密接に結びついていたといえる。当初一部インテリ階級のみによって実行されてきた告別式や神前結婚式は、昭和になってから都市市民、特に戦後の高度経済成長期以後には、地方全国に広がった。1970年には、それまで大会社しかおこなっていなかった「社葬」を、創業者の葬儀のために中小企業においてもおこなうようになり、「村」-「家」に擬制したような企業間の贈答関係が成立し、葬儀は華美なものとなった。その一方で少子高齢化、核家族化によって「家」制度は徐々に壊れ、1990年代には継承者いらない墓地、散骨(自然葬)等々の運動が起こった。これらの運動の主題は「どう葬るか」ではなく「どう葬られるか」にあり、従来の葬儀慣習が強制力をなくし、葬儀のあり方が多様化していることを示している。それによって人々の葬儀や死に対する考え方は個人化し、葬儀の社会儀礼としての意味づけが弱められてきている。
著者
冨田 智彦 安成 哲三 斉藤 和之 吉兼 隆生 日下 博幸 安成 哲三 斉藤 和之 吉兼 隆生 日下 博幸 山浦 剛 橋本 哲宏 坂元 勇一
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究計画では、我が国の夏季水資源管理にとって重要な梅雨降水の年々変動特性、関連する大規模大気循環場、そして西太平洋における大気海洋相互作用の役割を議論する。主な研究成果は、(1)黒潮域の大気海洋相互作用が10 年規模の梅雨前線活動に及ぼす影響を明らかにした点、(2)エルニーニョ/南方振動現象が梅雨前線の北進中にその活動度をいかに変質させるか、を解明した点、そして(3)梅雨前線活動に2-3 年周期、3-4 年周期、そして新たに6 年周期変動の卓越を見出し、各時空間変動特性を明らかにした点、の3 点である。
著者
王 恵楽
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

近日、上海でH7N9新型の鳥インフルエンザが多くの関心が集まった。本研究は、H5N1型鳥インフルエンザという当時数百人の命を奪った鳥インフルエンザにインスパアされ、公衆衛生と国家権力との関連において考察を行って来た。新型インフルエンザの学名は、携帯電話やパソコンの機種名のように変化していくが、国家権力との繋がりの中で、こうした疫病の流行に対する公衆衛生的な対応に、変わらない本質的な問題が潜んでいる。近年の新型インフルエンザによる実際的な人命の被害は、疫病の歴史の中で見れば、大した数字ではないことがわかる。しかし、それによってもたらした社会全体的な恐怖、そして国家権力の拡張(メディア・衛生機関の動員、学校や市民の日常的生活に浸透する管理など)は、大規模しかも速やかに動かされている。この力によって、古い慣習や風景が抵抗なく排除され、管理しやすい新たな社会が建設されるような現象が見られる。本研究は、この問題を出発点とし、後藤新平の近代化プロジェクトをその中に位置つけようとしてきた。ミシェル・フーコーやマイケル・ハートやアントニオ・ネグリなどの生政治(Bio-politics)の理論を手かがりにした。「後藤が出版された『処世訓』、『日本膨張論』、『区画整理早わかり:帝国復興の基礎』などの出版物や、『後藤新平文書』にある「我観宗教」、"The Japanese Questionin America"(アメリカにおける日本の問題)などの原稿を取り上げ、アジア医学史の学術大会で発表を行った。当学術大会のコメントや質問を踏まえた上、アジアとの比較、そして、宗教と衛生との対話に重点をおくべきだと考えている。そのために、後藤の原稿である「現代医学」、「霊肉一如の教育」、「学俗一致」、「自治ニ関スル吾人ノ自覚」、「自治生活における宗教との関係」などに現れた言説についての考察を行っている。
著者
桑原 牧子
出版者
金城学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究はタヒチのイレズミの施術における物質性(道具と染料)と衣服の物質性(素材やスタイル)を分析し、タヒチ社会の人々がイレズミと衣服を通して階級、性、年齢、職業、エスニシティ、住居地域などの違いごとにいかに自らを差異化してきたか、西欧との接触期から現代にいたるまでの変化を検証した。植民地支配、近代化およびグローバル化による社会変化を受け、イレズミと衣服の物質性も大きく変化し、イレズミの施術と衣服の生産・着用にも影響を及ぼした。その結果、タヒチ社会の個々人の身体性構築もより多様化していった。
著者
西成 活裕 岡田 雅之 Bandini S. Schadschneider A.
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、車、および人の流れ等に発生する渋滞の緩和方法について、理論とシミュレーション、および実測データを用いて考察した。高速道路における車の渋滞緩和のため、渋滞吸収走行を提案し、渋滞が緩和される条件を数学的に示した。そして理論をもとに実際の高速道路での実験を行い、その効果を確認することができた。そして人の流れの研究では、実際の駅の狭い通路での対向流を分析し、デッドロックが起こる条件を明らかにした。さらに現実への応用として空港における入国審査場における待ち時間短縮システムを構築し、社会実験によりその有用性が確かめられた。
著者
野家 啓一 座小田 豊 直江 清隆 戸島 貴代志 荻原 理 長谷川 公一 原 塑 北村 正晴 村上 祐子 小林 傳司 八木 絵香 日暮 雅夫 山本 啓
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

討議倫理学に基づく科学技術の対話モデルを作るために、科学技術的問題をテーマとする対話を実践し、そこから理論的帰結を引き出す研究を行った。その結果、以下の成果がえられた。1. 高レベル放射性廃棄物の地層処理に関する推進派と反対派の対話では、合意にいたることは困難だが、対話を通じて、理にかなった不一致に至ることは重要性を持つ。2. 推進派専門家と反対派専門家が論争を公開で行った場合、その対話を一般市民が聴いて、めいめい自分の見解を形成することがあり、このことが対話を有意義にする。3. 対話を成功させるためには、信頼や聴く力、共感のような習慣や徳を対話参加者がもつことが重要であり、このような要素を討議倫理学の中に取り込んでいくことが必要である。4. 対話では、価値に対するコミットメントを含む公正さが重要で、追求されるべきであり、それは、価値に対する実質的コミットメントを持たない中立性とは区別される。
著者
尾関 一将 水藤 弘吏 桜井 伸二 浦田 達也
出版者
大阪体育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

競泳スタート時におけるスタート台に作用する力を手部,足部それぞれ独立して測定し,評価する方法を確立することができた.大学生以上の男子および女子競泳選手において新しいスタート台を用いたキックスタートを用いることの優位性が明らかとなった.また,女子一流競泳短距離選手のキックスタートの特徴として,高い跳び出し水平速度の獲得よりもブロックタイムを短縮するためにスタート姿勢の身体重心位置を前方向にして構えていることを報告した.これらのスタート開始時の構えにおいて,スタート構え時の前方向の脚における等尺性最大脚筋力が大きいほど,跳び出し水平速度が高く,5m通過時間が有意に短かったことが明らかとなった.
著者
三浦 篤
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

マネの主要作品について19世紀当時の批評を調査し、その受容の様相を分析した。取り上げたのは《草上の昼食》、《オランピア》、《エミール・ゾラの肖像》《フォリー・ベルジェールのバー》、《鉄道》の5点で、その批判的な反応から、マネの作品が主題の扱い方、様式・技法のレベルにおいて、いかに当時の美的な基準を逸脱していたかが明らかになった。本質的には、マネの絵の曖昧さや多義性が観者の読解を混乱させたのである。
著者
山田 昭広
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本課題の第2目的である本文批評については特記すべき事項はない。第1目的である古版本に見える書き込みの収集と整理が第2年目の研究の中核となった。その研究実績を以下に報告する。(1) 学会発表(a)平成10年8月に英国ストラットフォードで開催の第28回InternationalShakespeare Conferenceにおいて、“A Seventeenth-century Reader of King Lear,with SpecialReference to the Marginalia in a First Folio at Meisei University"を発表、英・米・加・伊・日・西などの研究者約30名からなる分科会で討議。討議内容は下に述べる図書の刊行に役立った。(b)日本シェイクスピア協会の依頼で、会報Shakespeare News(38巻2号、平成11年3月発行予定)のために「1630年頃のシェイクスピアの読者」を執筆、寄稿した。(c)名古屋大学英文学会第38回大会(平成11年4月24日)で「17世紀のシェイクスピア読者-1623年の戯曲集の欄外メモを中心にして」と題して講演の予定。(2) 図書刊行 平成10年12月、明星大学図書館所蔵のシェイクスピア本の書き込みについての研究The First Folio of Shakespeare:A Transcrjpt of Contemporary Marginalia in a Copy of theKodama Memorial Library of Meisei Universityを公刊した。お詫びと謝辞 本年度限りで明星大学を退職するので、本課題はここで打ち切らざるを得ない。申し訳ない。顧みれば、課題16件、延べ33年度分の科研費を受けて今日まで研究。心から感謝したい。
著者
太田 照美 村上 武則 シェラー アンドレアス
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ドイツの社会法上の回復請求権の法的性質について損害賠償請求権との違いを明確にした。その学問的意義は大きい。また日本の景観権につき、ドイツの公法上の結果除去請求権の対象とされる絶対権と比較し、わが国の民法学で論争されている「権利論」との関わりで、わが国で初めて考察した。さらに日本の地方公共団体の租税過誤納金返還問題につき、日本で初めて、ドイツの公法上の原状回復請求権により救済を求めることができるとする理論を呈示した。
著者
家森 信善
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、近年、金融市場との融合が進んでいる商品先物市場の現状を分析し、投資家が安心して投資対象にできる商品先物市場を構築するための基礎的な研究を行った。具体的には、(1)商品先物市場の価格変動の特徴に関する研究、(2)商品先物を活用した個人投資の可能性に関する研究、(3)商品先物取扱業者の経営破綻に関する研究、の3つの研究を行った。制度的な整備は進んでいるものの、実際の利用は進んでいないし、また、金融化の行き過ぎが新たな問題を生み出している。
著者
渡辺 学 岡本 能里子 甲賀 正彦 岡本 能里子 甲賀 正彦
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ビジュアル・グラマー、タイポグラフィーなどに注目しながら、日本語とドイツ語を中心とする言語社会での言語記号(文字)と視覚的記号(図像)の分布や使用法を観察し、文字と視覚的要素との相互行為によって生み出される意味創出と意味伝達の動的な諸相を調査分析・考察し、テクストデザインの問題性とのリンケージを試みたうえでポライトネス研究へと視野を拡大することにより、爾来の社会言語学のテーマ領域的・方法論的進展への貢献を行った。
著者
畑 克明 権藤 誠剛 高岡 信也 山下 政俊 清國 祐二 高旗 浩志
出版者
島根大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

15年度は本研究の最終年度にあたり、大学生のボランティア学習の評価の妥当性を実習報告の分析及びヒアリング調査によって明らかにした。「授業」で「ボランティア」を課すことに対する学生の戸惑いもあったようだが、実際に彼らは体験することによって成長したと振り返る。また授業として設定されていなければ自らボランティアとして活動をしていなかっただろうとも語っている。彼らの学びに共通する点は、社会教育施設等で実際に子どもと関わり、施設の専門職員と関わったことにある。中学、高校時代の部活動などを除き、異年齢での活動体験が極めて少ない彼らにとって、子どもと活動をともにするのは新鮮に映っていたようだ。おぼろげな子どものイメージから、多様な子どもの実態把握へと認識が高まった。施設職員の多くは義務教育学校の教員であるため、子どもとの関わりや子ども対象の事業に慣れている。それら職員との関わりは学生たちの進路を考える上でも重要であったようだ。現在、「学習ボランテイア基礎」及び「学習ボランテイア実習」はボランテイア体験レポートをもとに評価を行っているが、体験相互の関連性や経験の蓄積を重視した評価システムとしては十分ではなかった。その点で、経験のファイリングをしながら学生の自己主導的な学習を支援するポートフォリオ評価は参考となる。今後、島根大学教育学部では4年間の学部教育の中に1,000時間体験を位置づけることになるが、その基礎としても本研究の意義は大きかった。