著者
岸 靖亮
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.21-39, 2011-12-27

高度な社会的行動である欺きを遂行するには,高い知性に基づく複雑な情報処理が要求される。本論文では,欺きとは何か,どのような精神活動や脳機能が必要とされるのかについて検討した。霊長類研究や発達心理学研究の知見を基に,欺きに必要とされる高い知性とは何か,進化論的ないし認知発達論的な観点からこれを解説した。さらに,欺きの手法の1 つである嘘について,その神経基盤を研究した知見から,嘘と前頭前野の関わり,欺こうとする意図と「心の理論」との密接な繋がりに関する報告をまとめた。これらの知見に基づき,ポリグラフ検査の研究から,嘘をつくときの自律神経系活動と脳活動の関係性について,事象関連脳電位を用いた実験を行なった。また,ポリグラフ検査における実験パラダイムを応用し,自身がついた嘘に対する認知活動についての検討を行った。結果として,嘘をつくときの脳活動は,欺きを成功させるための生体制御を担うこと,自身がついた嘘を重要な情報として処理する可能性が示唆された。
著者
揚 海英
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.455-468, 1991-03-30
被引用文献数
2
著者
保苅 実
出版者
オーストラリア学会
雑誌
オーストラリア研究 (ISSN:09198911)
巻号頁・発行日
no.8, pp.14-28, 1996-12-25

Today it is well known that there is disagreement between the 'oppositionalists' and the 'accommodationists' concerning viewpoints of Aboriginal history. This thesis aims to integrate these different standpoints. In 1966, the Gurindji people, who had been working at Wave Hill Station in north-western NT, walked off the station and initiated a strike for better working conditions. Even though the world human rights movement was an external condition, Gurindji's internal factors that led to the decision to strike can't be understood without studying their social and economic history. Examining this is the aim of this paper. Investigating the continuance, transition and crisis of Gurindji tribal autonomy after contact with the European cattle industry, I will suggest a new perspective on Aboriginal history. Although facing cultural and economic difficulties caused by white intrusion, the Gurindji people were successful in sustaining their tribal life, with the help of the natural cycle, even though they received partial white economic assistance while living on the stations. They preserved their traditional socioeconomic system even under terrible labour conditions. The final strategy adopted, to get out of tribal economic difficulties and to preserve their traditional culture by separating it from that of the whites, was the strike movement at Daguragu and the independence of Daguragu Station.
著者
吉田 浩一 大中 逸雄
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.342-349, 1997 (Released:2008-04-04)
参考文献数
20
被引用文献数
2

An algorithm has been developed for simulating the solidification in copper billet continuous casting based on the direct finite difference method by assuming a flow field in the melt. The simulation model considers the temperature dependent thermo-physical properties, convection heat transfer due to the movement of liquid and solid phases, latent heat of solidification and heat transfer among carbon and copper molds, billet and cooling water. The simulation results were compared with a measured sump shape, cooling curves and dendrite-arm-spacing (DAS). The sump shape was estimated from the solidification structure obtained by adding molten Sn during casting. An experimentally determined relationship between DAS and cooling rate was used in the estimation of the DAS distribution in the billet. The comparison between calculated and measured results showed a good agreement and it was found that neglecting the heat transfer into the casting direction results in a maximum error of 16.4%. It was also found that a more accurate estimation of the thickness of the solidified layer and temperature near meniscus requires more accurate information on the velocity field.
著者
山﨑 麻由子 木村 容子 佐藤 弘 許田 瑞樹 神山 貴弘 能木場 宏彦 雨宮 伸幸 杉浦 秀和 荒川 洋 細川 俊彦 岩谷 周一 伊藤 隆
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.677-682, 2016 (Released:2016-10-28)
参考文献数
26

胃もたれ, むかつきなどの上部消化管症状を伴う体重維持の困難な血液透析患者に六君子湯を投与したところ上部消化管症状, 食欲が改善しドライウエイト (DW) が増加した2症例を経験した. 症例1 : 79歳男性. 5か月前より胃もたれ, 食欲不振が出現しDW減量が必要であった. 胃酸分泌抑制薬内服にても症状は持続していた. 六君子湯の投与にて胃もたれや食欲は徐々に改善し1年間でDWは約7kg増加した. 症例2 : 54歳女性. 透析導入前は毎年夏に胃もたれ, むかつきを伴う食思不振が生じ体重が約3kg減少した. 透析導入後DWは27kgと低体重で胃酸分泌抑制薬を内服するも胃もたれを訴えた. 六君子湯の投与にて胃もたれやむかつきのほか, 食欲も改善した. 夏場の体重減少も消失しDWは2年間で約5kg増加した. 血液透析患者の上部消化管症状, 食欲不振を伴う体重減少に対して六君子湯は有用な治療であると考えられる.
著者
岸野 元彰 古谷 研 田口 哲 平譯 享 鈴木 光次 田中 昭彦
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.10, no.6, pp.537-559, 2001-11-01 (Released:2008-04-14)
参考文献数
28
被引用文献数
1

海水の光吸収係数は, 海洋の基礎生産や海色リモートセンシングの研究において重要なパラメータの1つである。今まで, その測定法について多くの提案がなされてきた。本稿は, まず吸収係数の定義を明確に定義し, その海洋学における意義を述べた。引き続き, オパールグラス法, グラスファイバー法, 光音響法, 積分球法の原理を述べると共に問題点を挙げた。また, 採水処理しなくて済む現場法についてその原理と問題点をまとめた。引き続き吸収係数の組成分離法について直接分離法と実測値から求めた半理論的分離法を紹介した。最後に人工衛星によるリモートセンシングによる推定法に言及した。
著者
Dicko Seydou
出版者
北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院 = Graduate School of International Media, Communication, and Tourism Studies, Hokkaido University
雑誌
国際広報メディア・観光学ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.23, pp.21-34, 2016-09-30

本論文は、ブルキナファソでのフィールド調査のための構成概念検討を目的としたフレームワーク論文であり、ブルキナファソ周辺地域における衛生的行動適用と維持に影響を与える決定因子を探る社会学的アプローチのための論考である。衛生学と衛生的行動は社会の中で複合的な役割を果たしている。その役割には、病気(疫病)を防ぐことや、秩序や美容の要求を満たすこと等がある。ブルキナファソ周辺地域における衛生学と衛生的行動の変化を構造的因果モデルで表すため、本研究ではいくつかの理論や手法をもとにフレームワークが構築されている。具体的には、タブー理論(社会人類学)、ダイナミック理論(政治人類学、社会学、社会人類学)や健康行動変化理論(公衆衛生学や行動科学)である。
著者
松岡 義秋
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
實驗消化器病學 (ISSN:21851166)
巻号頁・発行日
vol.10, no.7, pp.997-1003, 1935

家兎ニ就テ、「<i>l</i>-アスパラギン」酸ノ一定量ヲ耳靜脈内ニ注射シ、肝臟色素排泄機能、膽汁分泌並ニ肝糖原質量及ビ肝脂肪量ニ及ボス影響ヲ檢索セシニ、膽汁分泌及ビ肝色素排泄機能ハ著明ニ亢進セラレ、一定期間連續耳靜脈内注射ニヨリテ肝糖原質量ハ増加、肝脂肪量ハ減少セラル、ヲ認メタリ。
著者
村尾 和哉 寺田 努 矢野 愛 松倉 隆一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.2175-2185, 2016-10-15

建物内にセンサを配置したスマートホームやスマートオフィスにおいて,人の存在あるいは人の移動を検出することで入退室情報の取得や位置推定を行い,ログの生成や室内灯の制御などを実現している.従来研究における人の移動検出方法として,RFIDなどのタグを用いる手法が提案されているが,家庭などで移動推定のために部屋間を移動するたびにタグをかざす作業はユーザの負担になる.人がデバイスを保持しない例として,環境設置型カメラによる画像認識処理を用いる方法が存在するが,人の移動を追うには環境内に至るところにカメラを設置しなければならず設置コストが高く,また必要以上の情報を取得してしまうためプライバシの面で適さない.本論文では照明制御などを目的としてすでに多くの環境で設置されている赤外線人感センサを利用して,家庭内における住人の移動推定を行う.本論文で想定している赤外線センサの密度は一般的な天井照明と同程度(5m2/sensor)で,センシング領域に死角がある疎な環境である.4人家族を想定して2階建て戸建て住宅で行った評価実験の結果,被験者に指示したシナリオの移動および人物を再現率0.93の精度で推定できた.提案手法で得られる住人の移動情報を利用することで,家電の効率的な制御や予測制御が実現できる.
著者
鈴木 純一
出版者
北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院 = Graduate School of International Media, Communication, and Tourism Studies, Hokkaido University
雑誌
国際広報メディア・観光学ジャーナル
巻号頁・発行日
no.20, pp.3-15, 2015

The purpose of this paper is to consider the relation between public sphere and social functional systems in modern society from a viewpoint of Luhmann's social theory. In the 1960s Habermas thought that a public sphere is the place where citizens argue freely and public opinion is formed. But since the place of social determination is specialized, the function of a political public sphere is reduced in modern society. Moreover, the ideal combination of a political public sphere and a rational public sphere also becomes less realistic. It has been diversified and decentralized. Considering such a situation, it is more conformable to think that a public sphere is the environment of social functional systems.
著者
後藤 清志
出版者
岡山県立大学短期大学部
雑誌
岡山県立大学短期大学部研究紀要 (ISSN:13404687)
巻号頁・発行日
no.3, pp.112-139, 1996

日本の体操競技における競技力向上や強化対策としてのトレーニング方法からスポーツタレント発掘にまつわる具体的なジュニア指導法の実践において,一環指導体制の確立が全国的に定まらず,文化的,社会的な側面からも厳しい環墳での試行錯誤の経験的指導法中心型によってトレーニングされてきたことが考えられる。 そこで,新たな手段として,最近では,旧ソ連の崩壊によって優秀なコーチが海外(各国)に出稼ぎ指導を行い競枝力向上に貢献しており,世界的に注目を浴びている。日本体操界でも,こうしたシステムをうまく活用し採用している。 そして,旧ソ連は世界のトップでもあることから,幾分日本の視点も旧ソ連式トレーニングに傾きかけてはいるものの具体的な段階の基準は明白ではなく,体系的なものや基礎技術,姿勢の重要性を強調する程度である。 しかし,現場の指導者として望んでいることは,どのような段階的過程を経てトップアスリートヘ導き出されたかということの重要性であり,発掘に当たっての具体的なプログラムを提示されないまま個々の指導者用基準に成り立っており,情報不足をものがたっている。そうしたことの解消と旧ソ連崩壊後のロシア国スポーツ・体操競技の現状,さらに40年以上もの培われた基準プログラムを例にこの調査研究は提示した。
著者
深海 菊絵
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.134-134, 2010

「ポリアモリー(polyamory)」とは、複数の者を同時に「誠実」に愛する恋愛実践、とその実践者たちを指す。本発表の目的は、ポリアモリー実践者たちの葛藤の語りに注目し、偶発的で予測不可能な日常の中で、彼/彼女たちがいかに他者との関係を築いているのか、という問いを探究することである。具体的には、(1)ポリアモリー理念を共有する仲間たちの関係性、(2)ポリアモリー関係にある者同士の関係性、の二方向から検討を試みる。
著者
佐藤 源貞 野口 泰一郎
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン (ISSN:03743470)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.155-163, 1964-03-01

筆者らはわが国におけるVHF帯テレビ放送の受像用空中線として, ch.1よりch.12までの全チャネルをカバーする, いわゆる複合オールウェーブ空中線を開発した.本稿はこの空中線開発の経緯, ならびにその諸特性について記したものである.
著者
大谷 武史
出版者
北海道地理学会
雑誌
北海道地理 (ISSN:02852071)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.73, pp.57-68, 1999-04-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
26