著者
磯山 恭子
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,市民のための法教育のあり方を考える基礎的研究である。本研究は,市民の紛争解決の意識・能力の育成を目指した法教育の理論と実践を多面的に分析し,小・中学校の法教育のカリキュラムを構想するために必要な視点の提出を試みた。その際,アメリカの「法教育」(Law-Related Education)を先行モデルとして取り上げた。さらに,小・中学校における紛争解決の意識・能力の育成を目指した法教育の授業を開発し,考察を行った。
著者
田中 孝也
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目的はin vitro,in vivoの実験系を用いて,TNF-a,TNF-a+actinomycin D,LPSなどにて誘導されるapoptosisがFAS/CD95系を介さないで発生する可能性、apoptosis発生にNOがどの程度関与しているのか、その際、poly(ADP-ribose)polymeraseはいかなる動態を示すのか、などである。本研究のin vitroにおいて、TNF-a+actinomycin Dにより誘導されるapoptosis発生はNO誘導物質であるSNAPにより、mitochondria呼吸鎖で産生されるROI発生の抑制を介して抑制された。このapoptosis抑制はNOによる直接的なROIのscavenge作用ではなく、cytochrome oxidase 活性の抑制によると考えられた。TNF-a+actinomycin D投与後のdihydrorhodamine123やhydroethidineの酸化がNOにより抑制される機序に関してはNOが直接的にTNF-a+actinomycin Dにより産生されたROIと結合してROIを中和する、NOが酸素と競合することによりcytochrome oxidaseによる呼吸を抑制するなどが考えられた。しかも、ONOO^-の障害作用が何らかの形で抑制されたことが考えられるが、その作用機序に関しては不明である。いずれにしても、NOがmitochondriaにおける呼吸鎖のcomplexI,II,IIIの抑制を制御したことから、NOによるapoptosis発生の抑制がmitochondriaにおける呼吸鎖でのROI抑制によると推察できる。In vivoにおいても、LPS誘発apoptosisを確認した。DNA fragmentationは肝細胞死の数時間前にALTの上昇と同じように出現したことから、LPSによる肝障害の初期はapoptosisが主体である可能性が考えられる。Fas/CD95は正常の肝細胞でも誘導され、apoptosis発生の必要性に応じてapoptosisを誘導することが知られている。しかし本研究において、Fas/CD95の誘導とは無関係にapoptosisが発生した。本研究においてTNF-a,LPSにてmitochondria内膜障害、NAD^1の減少、ATP減少などに続くpoly(ADP-ribose)polymerase活性の賦活などを認めた。NOの障害性に関して、peroxynitriteはDNAの断片化、poly(ADP-ribose)polymerase活性化を促進し、細胞内エネルギー量の低下をもたらすが、NO自体にはその作用が極めて低いと考えられている。DNAはあらゆる障害物質にてたやすく傷害され、poly(ADP-ribose)polymeraseが活性化される。poly(AP-ribose)polymeraseの活性化は細胞内エネルギーを消費し、NAD^+の低下などが発生するため、その程度が高じると細胞障害を増長すると考えれる。
著者
末松 芳法 OROZCOSUAREZ DAVID OROZCO SUAREZ David OROZCO SUAREZ David
出版者
国立天文台
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

太陽表面で見られる活動現象の大部分は太陽に存在する磁場に関係して起こっている。黒点は強い磁場が存在する場所として良く知られており(活動領域)、フレアなどの爆発現象が起こる場所に対応している。一方、黒点以外の場所(静穏領域)にも強い磁場は存在し、機械的エネルギーがこの磁場を介して外部のコロナに輸送されコロナが一般に100万度以上の高温になる原因と考えられている。但し、どのような機構でエネルギーが外部に運ばれているかは未解明の大問題である。また、対流と磁場の相互作用としての未解明のダイナモ機構に関連する極めて重要な電磁流体現象を提供している。本研究は太陽磁場、特に地上では観測の難しい静穏領域の磁場の性質を詳細に調べることでこの謎解明に迫るものである。太陽静穏領域の磁場はネットワーク構造をしており、超粒状斑と呼ばれる直径約3万kmの対流セルの境界に集中して存在することが知られている。個々の磁気要素は激しく変化しており、数時間の時間スケールで入れ替わっていることが予想される。超粒状斑内の浮上磁場、その対流運動による超粒状斑境界への輸送、境界磁場との融合消滅過程を経て、更新が行われていると考えられる。これらの静穏領域の磁場の性質の研究が進んできたが、まだ統一的な見解は得られていない。このため、太陽観測衛星「ひので」の高精度磁場観測を実施し、静穏領域で太陽中心角の異なる4つのフォトンノイズの小さいデータを用いて磁場の傾きを調べた。視線方向磁場に対応する円偏光成分と、視線に直角方向の成分に対応する直線偏光成分には、太陽中心角の大きな依存性があり、水平成分が卓越していることを示した。この結果は、磁場は等方的ではなく、小さなループ構造で多く存在していることを示唆している。太陽中心角に依らず、磁場強度は平均で180ガウスとなり、以前のハンレ効果を用いた結果と同様の強い磁場が得られた。更に、積算により非常にフォトンノイズを小さくした「ひので」の偏光データを解析した結果、直線偏光のみからなる磁場が70%近くを占めることが示され、磁場の傾きが水平方向に卓越していることを強く支持する結果を得た。
著者
樋口 貴広
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,視覚情報が利用できない条件でも,より正確に空間を移動できる歩行方略を検討するため,視覚情報を一時的に遮断した状況下での歩行中の空間認識,および歩行動作特性について検討した.歩行中に視覚情報が利用できず,記憶を頼りに障害物をまたぐ課題(回避課題),および障害物があると思う位置で立ち止まる課題(到達課題)の2つの課題において,障害物位置の認識の正確性を比較検討した.その結果,その結果,課題間で僅かな違いが見られたものの,いずれの課題においても実際よりも手前の位置に障害物があると認識していることがわかった.
著者
福岡 義之
出版者
熊本県立大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、50歳代の中年11名を対象に、運動トレーニング(スタンダード・トレーニング)を90日間実施し、そのトレーニング効果についてエネルギー代謝系の応答動態(kinetics)から検討した。以下が本研究で得られた新たな所見である。1.スタンダード・トレーニングによって最大下運動での酸素摂取量(VO_2)kineticsの改善は、トレーニング初期(7日目)に出現し、トレーニング30日以降ほとんど変化しなかった。VO_2kineticsは若年者のそれとほぼ一致し、50歳代の中年者のエネルギー代謝能力はトレーニングによって若年者のレベルまで回復することが明らかとなった。2.スタンダード・トレーニングに伴うVO_2の応答速度の変化は、最大運動時の最大酸素摂取量(VO_2peak)のそれよりも先行して出現した。しかし、最大運動でもトレーニング後期にはトレーニング前よりも有意な改善が、運動強度、換気量、酸素摂取量、および乳酸の最大値でみられた。3.心拍応答(HR kinetics)はトレーニングに伴って短縮し、中心循環機能の改善はみられ、トレーニング初期にはHR kineticsがVO_2kineticsに反映されたと考えら得る。しかし、トレーニング終了時のT90においてHR kineticsは若年者のレベルまで回復するには至らなかった。以上のことから、中高年者の運動トレーニングによってトレーニング初期にエネルギー代謝能はすでに変化がみられ、この変化は最大運動時の最高値あるいは最大下運動での定常値よりもむしろエネルギー代謝系等の非定常状態の動特性によって鮮明に定量化できた。動的な生理学的な応答は非常に感度のよい指標であることが明らかとなった。
著者
中村 哲也 丸山 敦史
出版者
共栄大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題では、わが国における生鮮果実・果実加工品の海外販路拡大に関して、計量的かつ実証的に分析した。分析の結果、下記の諸点が明らかにされた。第1章では、栃木産にっこりととちおとめが、香港やバンコクの如何なる購買層に評価されるのか、プロビットモデルを推計し、考察した。まず、香港・バンコクにおける国産ナシ品種と国産イチゴ品種の認知度は非常に低かった。今後、栃木産にっこりととちおとめ輸田する際は、輸田専用パッケージ等による品種のイメージアップを図る必要があるだろう。そして、とちおとめは香港では大きさが、バンコクでは香りが評価された。そして、にっこりは中高年層に、とちおとめは女性に評価が高かった。最後に、香港でのにっこりの価格は中国産ナシの4倍、バンコクでのとちおとめの価格はタイ産イチゴの7倍の価格差があった。そして、香港ではにっこりは8割弱が、とちおとめも7割弱が、調査当日の小売価格または若干高くても購入するという回答が得られた。ただし、バンコクでは8割弱が、調査当日の店頭小売価格ならば購入しないという結果となった。そして、プロビットモデルの推計結果から判断するならば、今後の香港でのとちおとめ輸田は、中高年層をターゲットとし、食味評価の高い女性を如何に購買層に取り入れるかが輸出拡大のカギとなるだろう。第2章では、伊勢丹スコッツ店における栃木産巨峰の輸出動向とその来客の消費意識について考察した。同店において、日本産ブドウの評価自体は非常に高いが、栃木産巨峰の低価格性が求められた。ただし、日本人客の多い同店のようなケースでは、高価な日本産巨峰は安価なオーストラリア産と棲み分けられていた。シンガポール人の味覚や安全性の拘りも日本人とは異なっているのだが、シンガポール人による日本産巨峰の評価は非常に高い。そのため、今後の輸出は、早急に価格改定するというよりは、脱粒(巨峰の粒が茎から落ちること)・茎枯れ(鮮度が落ちて茎が枯れる)しないといった鮮度の向上や種なし巨峰販売といった手法で、ターゲットとする販売層(消費者層)を明確に意識したマーケティング活動が不可欠となるだろう。そして、同店の栃木産巨峰の販売拡大のカギとなるのは、日本人以外の巨峰購入のリピーターを如何にして拡大するかにかかっている。同店は、日本人客も比較的に多いのであるが、実際に購入回数が多い客は日本人が圧倒的に多く、大
著者
飯島 幸人 浜田 悦之 鈴木 裕 荒井 郁男 鈴木 務 林 尚吾 大津 皓平
出版者
東京商船大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

船舶の知能化に関連する分野は極めて広く, ただ単に船舶自身が知能を持つだけでは安全なる運航はできず, 陸上からの支援や, 海図データ, 海気象データなど数多くのデータの収集と伝送などが必要となる. 本研究ではまず船舶自身の知能化に関する基本的問題を研究し, 大よその指針を得ることができた. 本研究は1988年オーストラリアで開催されて国際航法学会で発表され, 世界中から注目されるところとなった. また航海, 特に知能化無人航行に必要であるディジタル海図, いわゆる電子海図については, 海岸線や等深線までの距離計算の高速処理のためには海図データのフォーマットを緯度経度表示ではなくラジアン表示の方が良い. また, レーダ映像との比較には大圏図法で行うべきだが高速処理には特に高精度を必要としないなら漸長緯度図法の方が良い. 高度知能化船では, 海象気象情報は正確で高精度であることが要求されるが, 海洋観測衛星(MOS-1)の現状の性能では不充分である. MSRアンテナパターンと偏波回転によるひずみ補正の基礎的研究を行った. その結果偏波回転の影響を補正した上で逆フィルタをかければ, 沿岸部や島などにおいてメインローブのみの画像を上回る分解能が得られ, しかも海域の輝度温度もメインローブのみの画像に近いものとなった. これらを総合した実験は, 実験規模の制約から一部の実験にとどめたが初期の目的は達成できた. 今後, 海運界と造船界では現状の改革の面から知能化少人数船の建造要求は強くなり, 研究が盛んになると思われるが, その際本研究がその基礎をなすものとして大いに参照されることと思われる. しかし研究は完成したものではないので, かえって残された問題や今後鋭意研究しなければならない事項が数多く浮上してきているので, さらに一層の研究を続けていく予定でいる.
著者
山田 誠二 小松 孝徳
出版者
国立情報学研究所
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

主に家庭内での利用を想定して設計されたロボットエージェントは,人間との協調作業において,自分の状態を人間に簡潔かつ明確に伝える必要がある.そのようなロボットの態度表出において,ロボットの「外見」と表出される「表現」の関係を実験的に解明することが,本研究の目的であった.この関係に対する我々の仮説は,最も有益で基本的な態度のプリミティブである,正・負・中立のような基本的な態度の表出では,動物や人間に類似した外見と行動による表出は不要で,動物や人間の外見とはかけはなれたエージェントによる,単純かつ直観的でささいな表出(subtleexpressions)の方が効果的であるというものである.この仮説が成り立てば,ある種の態度表出においては,エージェントの外見を動物や人間に近づけるために無駄に多大なコストをかけることなく態度をユーザに理解させることが可能となり,エージェントと人間との自然なインタラクションを効率的かつ容易に実現できる.この仮説を広く一般的に成り立つことを理論的,あるいは実験的に示すのは現実には難しいが,我々は,ロロボットらしい外見のMindStromsが単純なビープ音を表出した場合とより複雑な犬に近い外見のAIBOが体の動きやLEDの点滅を組み合わせた複雑な表出をした場合について,どちらが基本的態度を人間により正確に伝えるかを比較する実験を計画,実行し,その結果その仮説が成り立つことを示した.
著者
濱 裕光 鳥生 隆
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、夜間における歩行者を巻き込んだ重大事故の防止と運転支援を最終目的として、可視光を用いたナイトビジョンの実用化に向けて必要な要素技術の開発を目指す。主な課題はロバストな歩行者検知であり、そのためには消失線の利用が非常に効果的なことが分かっている。従来は、消失線は画像処理により求めていたが、ここでは傾斜計から得られる傾斜角を用いて高速・高精度に求め、マルチスリット法により歩行者検知を行う手法を開発する。
著者
西川 勝
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

認知症高齢者をめぐる医療的ディスコミュニケーションの実態については、いまだ明らかでない部分が多い。そもそも医療に関するコミュニケーションには正確無比な指標があるわけではなく、医療的判断や意思決定にも文脈依存的な性格が強く存在しているので、唯一の基準でディスコミュニケーションと決定できない側面がある。患者本人の自己決定に基づくことを最優先するリビング・ウィルや事前指示(advance directives)の思想は、合理的判断能力を有する自立的個人を前提しており、「判断能力には問題があるが、意識がないわけではなく、深刻な認知症のために自己の意思や考えを十分には他者に伝えられない」状況にあって他者の介護を必要とする認知症患者には適当しない。本研究では、認知症高齢者をめぐる医療的ディスコミュニケーションの発生以前に、広く社会に存在する認知症高齢者とのディスコミュニケーションを、さまざまな場面で検討した。主なものをあげると、介護職員を参加者にした定期的な哲学カフェを開催し「認知症ケアと安楽」を議論したものや、保育園児や小学生を対象とした認知症サポーター講座を実施して、「老いの意味」を考える教育のあり方について検討した。これらの研究活動から明らかになったことは、認知症高齢者の医療的ディスコミュニケーションの背後に、認知症ケアの文化的意味が未開拓であり、老いの生き方そのものが問われている現状があるということである。
著者
加藤 久美
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、海洋資源利用を例に、持続性観念の普遍性・多様性を分析、持続性理論の発展を試みた。特に捕鯨、反捕鯨国である日豪間の政治・社会的対立の本質を現地調査、メディア検証により探った。両国の本質的な相違は、捕鯨の目的、国際関係(豪州と英国・英語圏との繋がり、敗戦後の日本と世界)、環境観(種によって象徴される自然界における)にあることが明らかだった。人為的環境変化への責任を持続性の普遍的価値とすれば、その社会、文化的考察がそこに内包される多様性であり、その相互性が持続性理論の発展に繋がるという結論に達した。
著者
渡邉 裕美 村嶋 幸代 後藤 隆 田口 敦子 浅野 いずみ 辻 泰代
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

研究目的は24時間ケア医療と介護の包括支援体制の方向性を探ることである。実態を把握するために、大都市圏で夜間ケアに先駆的にとりくんでいるA自治体において全域調査を行なった。結果、要介護認定者数に対する夜間対応型訪問介護利用者の比率は圏域によって異なるものの、その割合は、0.25%~0.73%と1%にも満たなかった。定期訪問実人数は0人の事業所もあれば、28人に639回の事業所もあった。随時訪問利用回数は、4回の事業所もあれば、104回の事業所もあった。定期より随時が多く行われていた。コールを押しても訪問せずに電話対応のみという事業実態もあった。別のB自治体では、介護施設を拠点に24時間訪問介護と夜間対応型訪問介護が一体運営でとりくまれており事業所ヒアリングを行なった。24時間包括ケアの潜在利用者を病院から地域にもどすための退院支援のヒントをまとめた。2012年4月創設される「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を読み解き、研究成果をふまえた、医療と介護の包括支援体制をすすめるための方法論を示した。
著者
平田 憲司郎
出版者
立命館大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

選好パラメータについて,一卵性双生児間,二卵性双生児間それぞれに相関係数を求め,その相関係数の差異から選好パラメータの遺伝寄与度を推定している.その結果,近い将来に対する時間選好率の相加的遺伝要因の寄与度は24%であり,遠い将来に対する時間選好率の相加的遺伝要因の寄与度は23%であることがわかった.さらに, 2日先から9日先にかけての時間選好率では,共通環境要因の寄与度が年齢とともに上昇することがわかった.また,近い将来に対する時間選好率と遠い将来に対する時間選好率との間の相加的遺伝要因の寄与度の違いを検定した結果,統計的に有意な差異は認められなかった.
著者
品田 裕
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1990年代の総選挙における政治家の選挙公約をデータ化し、公約の構成比をもとに各政党の政策位置を検討した。(1)90年代の三回の総選挙における選挙公約データから、「全体-個別」および「左(再分配)-右(分配)」の二軸を抽出し、四つの領域を設定した。個別の利益を作り出す(例えば地元のために)ことを重視するもの、個別の問題に対し再配分を求めるもの、全体的な問題に異議を申し立てるもの、全体的な問題に関し新しい提案を行うものである。(2)90年においては、地域向けに訴えることの多い個別利益を担う自民党と現状を修正しようとする野党の対置が見られた。さらに野党内には、より一般的全国的な、あるいは体制に関わることを述べる勢力(社会党)と福祉など個別要求を好む勢力(公明党・共産党)が存在していた。(3)93年には改革が最大の話題となった。全国的かつ新しい政策領域が突如、出現し、すべての政党がそこへ向けて移動した。この動きをもっとも代表するのが新党勢力であった。比較的に動きの少なかったのが社会党で、もともと近い位置にいたにもかかわらず、位置変更ができなかった。自民党もかなり動いたが、なお個別利益から脱却できない。(4)96年は全般にわたる諸改革が主要な話題であった。もっとも明確に改革姿勢を示したのが民主党であり、逆に自民党は前回の位置に留まった。自民・民主両党の中間に新進党が位置した。これに対し社民・共産などの政党が再び、革新イデオロギー的な姿勢を明確に示した。96年は主要三党間の競争(改革か地元利益か)と、これらに対抗する中小革新政党群という二つの次元での競争が見られた。(5)連立内閣については、93年の非自民8党政権は政策面からの説明が、その成立についても崩壊についても可能であった。しかし、その後の自社さ政権については、96年の閣外協力によるものも含め、政策を主とした議論で説明するのは難しい。
著者
前島 正義
出版者
名古屋大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

気孔開閉調節に関わるタンパク質PCaP1およびCO_2透過性アクアポリンPIP1に焦点を当て、生理機能の作動機構を明らかにし、高濃度CO_2下での両分子のCO_2供給システムにおける役割とそれに関わる量的・機能的調節を解明する。新規のCa結合タンパク質であるPCaP1は細胞膜に局在し、情報伝達にかかわるカルモジュリンとホスファチジルイノシトールリン酸(PtdInsPs)と結合する。PCaP1は孔辺細胞にも発現し、その遺伝子欠失株の葉では気孔の閉口ができないという表現型を観察してきた。本年度、PCaP1が孔辺細胞に発現していることを確認し、PCaP1のタンパク質化学的な特性として、CDスペクトル解析により、Ca結合による構造変化、ITC法によるCa結合のキネティクスを明らかにすることができた。なお、気孔以外での役割の一つとして、PCaP1は病理応答にも関わっていることを明らかにすることができた。さらに、PCaP1のT-DNA挿入遺伝子破壊株では、暗所での気孔閉口が不完全となること、野生株と比べて、暗所下および高濃度CO_2条件での生育が良いことを見出した。これらの結果は、生育環境が悪いときPCaP1は生育を抑制するブレーキ役を果たしている可能性を示唆している。多様なアクアポリン分子種の中でも細胞膜局在性のPIP1は複数の植物でCO_2透過性が認められており、申請者らはPIP1の量の減少がCO_2固定能の低下をもたらすことを見出した。高濃度CO_2に対するPIP1の応答を解析し、組織内CO_2供給システムの解明とモデルの提案を目指し、CO_2濃度の影響が高温環境で変化するか否かも解析の準備を進めた
著者
仲田 栄子 有賀 久哲 半田 康延 小倉 隆英 関 和則 高井 良尋
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究課題提案型)
巻号頁・発行日
2009

今日のがん治療において、腫瘍内低酸素領域の克服が重要な課題となっている。そこで我々は電気刺激を用いることで腫瘍内低酸素領域を改善できるのではないかと考えた。C3H マウスの右大腿部に Squamous Cell Carcinoma-VII腫瘍(SCC-VII)を移植し、仙骨部後仙骨孔直上の皮膚表面に電気刺激を行った結果、刺激中に腫瘍表面の血流値で 22%の増加、電気刺激終了から約 50分後に腫瘍内部の酸素分圧で 28%の増加が確認された。低酸素マーカーであるピモニダゾールを使用した結果、電気刺激終了後 40 分で低酸素領域は 20%有意に減少した。X 線を腫瘍移植部に局所照射したところ、一回照射(総線量 5Gy)・分割照射(総線量 7.5Gy)のいずれにおいても放射線単独群より放射線+電気刺激併用群で腫瘍の成長に遅延が認められた。
著者
荒木 肇 中野 和弘 福山 利範
出版者
新潟大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

農業では土地を利用して動植物の生産がなされるため、地球へのインパクトをゼロにするのではなく、いかに低減するかが課題となる。本研究では除草作業を取り上げ、インパクト低減のための生動的除草(雑草抑制)方法のひとつとして、「生産対象作物の畦間に秋まき性のムギ類をグランドカバー植物として栽培し、地表面を遮光して雑草生長を抑制する」方式を課題として設定し、ムギ類を秋まきと春まきした場合の雑草抑制について検討した。1.秋まき間作ムギの敷ワラマルチによる雑草抑制1993年10月にオオムギ(品種ミノリムギ)と緑肥用コムギをスイカの畦間に播種し、1994年6月8日に出穂した麦稈を刈り倒して敷ワラマルチとして、地表面での遮光程度を麦稈下の光量子密度を測定して評価した。麦稈による地表面の遮光はコムギの方が持続し、穂発芽した新葉による遮光程度はオオムギで大きかった。雑草量は無被覆に比べ、オオムギ麦稈マルチで約1/4に減少し、緑肥用コムギ麦稈マルチで1/10以下に減少した。麦稈の量やその分解の早晩、発生した新葉の大きさ等がムギ種により異なることが明らかとなった。2.ムギ類の春播きによる雑草抑制1994年4月7日に緑肥用コムギを春まきしたところ、播種量8kg/10a以上で雑草量は低下したが、前述の麦稈マルチ程の効果は認められず、雑草抑制率は無被覆の約60%であった。緑肥用コムギの茎葉による土壌被覆能力を光透過や画像を利用して測定すると、地表面への光透過が25%に減衰するのに播種後2か月を要し、雑草抑制能力が小さいのは初期生長が遅いためであった。20系統のオオムギを春まきすると、緑肥用コムギより栄養生長が旺盛な系統も存在し、生物マルチとしての可能性、すなわち、土壌攪拌や防除の削減の可能性が示された。
著者
伊藤 一
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

バイヤーの歴史的形成過程を考察すると、機能分割の流れが読み取れる。つまり、権限分散化と専門職的性格である。元来、購買と販売は同一人物が行い売れ行き状況が購買に反映していた。しかし販売時点のセルフサービス化と総合小売商業として取り扱い品目の増大にともない、バイヤー業務が独立した形態を有することになる。販売面を担当するスーパーバイザーと購買面を担当するバイヤーに2分割されていく。その後,バイヤー業務が煩雑になり、本来持っていた商品開発の役割が失われるにしたがって、通常の再購買、修正購買と新規購買の業務を分割し前二者を担当する、ディストリビューターと後者を担当するバイヤーとの3分割制度へ移行している企業が見られる。また企業間での戦略の違いが組織形態を変化させている。現状小売業は以下の2つのタイプに別れると想定される。まずイトーヨーカ堂(IY型)がとる購買戦略は、新規商品開発・発掘戦略であり、これに対応して上記のような3分割の機能分割型的組織を採用している。これに対してダイエーなどほとんどの小売企業が採用している購買部門がほとんどの関連機能を包括するタイプで、総合的組織がある。購買に関する戦略、規模、権限、機能と組織に関して比較考察し、類型化を行った購買戦略では、イトーヨーカ堂は、消費者のニーズを重視し、高品質商品をバイイングする点に戦略を資源を傾注している。つまり新規商品を探索することにバイヤー業務を傾注させている。そこで商品開発型購買と表現できる。これに対してダイエー、その他の多くの大手小売企業は、価格を重視し、仕入先から安い価格条件で商品を仕入れる努力に資源を傾注している。したがって、取引条件重視型購買と表現できる。
著者
鳥塚 通弘
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究に対して同意能力がある統合失調症患者11名、および本研究の趣旨に賛同する健常対照者12名から参加の同意を得た。同意を得た全例の上腕内側部から皮膚生検を行い、皮膚線維芽細胞を培養し、保存した。このうち4名の線維芽細胞にエピソーマルプラスミドベクターを用いた方法でiPS細胞を樹立し、保存した。そのうち、患者・健常者各1名のサンプルを用いて解析した。iPS細胞の多能性細胞マーカーの発現や、神経幹細胞への分化誘導性に差は認めなかった。いずれのサンプルから誘導したニューロンも、数カ月の培養の後に電気生理学的解析を行うと、活動電位を連発する成熟したニューロンが得られた。
著者
宮崎 佳子
出版者
筑波大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

【研究目的】耳や目などから入る情報が皆無に等しい盲聾二重障害生徒は、指導内容および、周囲の状況説明を含む授業内容のすべての伝達を、通訳介助者の『視覚及び聴覚に頼らない様々な手段』(例えば、触手話、指文字、指点字、身体への接触による合図)によって行っている。通訳介助者は授業者と連携し、盲聾生徒と授業者、生徒同士のコミュニケーションを補償しながら、指導内容と言葉をピタリと呼応させるという重要な使命を持つこととなる。「家庭科教育」を例として、効果的な通訳方法、指導方法の検討をすることによって盲聾二重障害生徒の社会生活スキルを高め、社会生活の自立支援を図ることを目的とする。【研究方法】(1) 家庭科の授業内容が理解できているかについて、生徒と通訳介助者両方の聞き取り調査を行い指導内容、通訳内容を検討する。(2) 授業の内容を生活の中に実践的に反映させている、またはしようと試みているか生徒と通訳介助者両方の聞き取り調査を行う。(3) 授業の内容を生活の中に実践的に反映さるために通訳介助者にどんな援助依頼をしたか、またはできるようになったかの変化を生徒と通訳介助者両方の聞き取り調査をおこなう。【研究成果】(1) -1授業者と通訳介助者の打ち合わせを行うことにより授業中に生徒が理解していなかった言葉や概念をその都度ピックアップできそれを後日指導し強化することができた。(1) -2生徒の理解度を知ることは聞き取り調査だけでは困難である。授業内容を応用した実践的課題(例 親子丼の調理をする、地域の消費者センターのについて調べてくる、など)を出しそのレポートから理解度を得ることが有効である。(2) 授業内容を実践した事例(家庭での食品の購入、調理、陸上大会の身支度、海外旅行時の荷物のパッキング、など)を介助者または生徒から調査できた。(3) 授業内容を応用した実践的課題をこなすために通訳介助を依頼する際に以下の変化、成長があった。1. 通訳介助者の依頼内容のコーディネートを生徒自信でメールなどを通じて行うようになってきた。2. 課題に適する通訳介助者を複数の中からを選ぶようになってきた。3. 援助依頼の内容を適切に伝えることが出来るようになってきた。