著者
井形 昭弘 園田 俊郎 佐藤 栄一 長瀧 重信 秋山 伸一 納 光弘
出版者
鹿児島大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

ヒト・レトロウイルスHTLV-Iによって脊髄症HAM(HTLV-I-associated myelopathy)がおこることが井形、納らにより報告され、この分野に大きな進展をもたらした。2か年にわたる本研究により、多くの貴重な成果を上げることが出来た。すなわち、このHAMの病態が大きく解明されると同時に、HTLV-Iに関連した他の臓器障害の可能性が浮かび上がってきた。HAMウイルスの分子生物学的検索により、HAMとATLのウイルスは変異株ではなく全く同一のウイルスであることが明かとなった。しかしHAMではキャリアに比較してはるかに多量のプロウイルスゲノムを末梢リンパ球中に保有しているという特徴が明かとなった。またHAMリンパ球はHTLV-I抗原刺激に対し高応答を示す。これらのことは、ホスト側の体質に関連しており、HAMとATLにはそれぞれ特有のハプロタイプを有することがわかった。HAMの病態機序に関連して、本邦で既に13例の剖検が行われ、この分析により更に詳細な病理像が明らかにされた。また、HAM患者髄液、末梢血リンパ球由来T細胞株が樹立された。一方、HAM患者の臨床像の分析の結果、肺胞炎、関節症、筋炎、シェグレン症候群、ブドウ膜炎の合併率が異常に多いことが明かとなった。これがはたして、HTLV-Iウイルスが直接おこしているのか、それともHAMに於て自己免疫疾患をおこしやすい状況があるのか、今後に課題を残したままであるが、重大な進展といえよう。治療に関しても、リンパ球除去術プラズマフェレ-シス、エリスロマイシン、ミゾリビン、α-インタ-フェロンなど有効な薬剤が明らかにされた。
著者
梅原 三貴久
出版者
東洋大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ストリゴラクトン(SL)は、植物の根から土壌中に放出され、アーバスキュラー菌根菌の菌糸分岐や根寄生植物の種子発芽を刺激する根圏におけるシグナル物質である。また、SLは植物の枝分かれを抑制するホルモンとして働く。SL関連突然変異体は、野生型に比べ過剰な枝分かれを示すだけでなく、葉の老化が遅延する。このことは、SLが枝分かれだけでなく、葉の老化制御にも関わっていることを示唆している。そこで、イネのSL関連突然変異体の葉にSL合成アナログGR24を処理したところ、SL生合成欠損変異体では葉の老化遅延が回復したが、SL情報伝達欠損変異体では変化が認められなかった。また、リン酸欠乏条件下で栽培したイネの葉は、SLに対する応答性が増加した。これらの応答性は、枝分かれにおける応答性と同様であることから、SLが葉の老化も制御していることが明らかになった。さらに、イネの収量に対するSLの影響を調査したところ、野生型とd10では水耕液中のリン酸濃度を減らすと収量が減少したが、d3ではリン酸濃度を減らすとむしろ収量が増加した。CE-MS解析の結果から、d3ではアスパラギンやグルタミンなどのアミノ酸含量が著しく低下していた。これらの結果は、D3遺伝子の下流にアミノ酸の生産制御機構が存在することを示唆している。今後は、d3依存的な窒素代謝機構の存在を探索するとともに、d3変異体での特異的な応答の原因を明らかしたいと考えている。
著者
出口 清孝 陣内 秀信 高村 雅彦 森田 喬 安藤 直見 古川 修文 朴 賛弼
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,気候風土や歴史的背景・民族的背景・宗教など,世界各国,とりわけ東南アジアおよび中近東を中心に,ヴァナキュラー建築(風土建築)について,その温熱・空気環境に関して実測やシミュレーション手法を用いての解明し,さらには関連分野との連携により幅広く検討を進めることにあり,次の地域や多様な住居を対象に実地調査を進めた。1.東南アジアの伝統的「高床式」住居の温熱・風環境2.イランの採風塔のある伝統的住居の温熱・風環境ならびに採風塔の通風効果3.モンゴルにおける移動型テント住居「ゲル」の温熱・風環境と換気特性4.チュニジアの砂漠地域マトマタにおける地下住居の温熱・空気環境5.トルコ・カッパドキアの岩窟型住居の温熱・空気環境6.南イタリアの港町ガリッポリにおける住居の温熱・風環境および屋外の温熱・風環境これらの研究成果により,これまで主に歴史学的・民俗学的に調べられてきた風土建築が自然の建材を適切に利用した住居であると言え,気候風土に適応するような住まい方の工夫を行い,さらには,自然エネルギーを高度に利用した環境に低負荷,省エネルギーを実践する住居であると,環境工学的な検証を行ったことに意確がある。そして,その手法を現代に応用すれば,地球環境保全を意図し,持続可能な建築・都市環境の創造に寄与するものと期待できる。
著者
田代 順孝 木下 剛 赤坂 信 小林 達明 柳井 重人 古谷 勝則
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

最終年度である平成18年度は,地区スケールの緑の配置計画の可能性について検討を行うとともに,これまでの研究成果をとりまとめて研究の総括とした。住宅地と街路空間を対象として放射エネルギー分布図を作成することにより,夏季の高温化を促進する土地被覆と冷却効果を持つ土地被覆を特定し,その効果を定量的に把握することができた。さらに,放射エネルギー分布図を利用して,温熱環境(または温熱景)制御のために,緑の配置によって蓄熱する景観要素をコントロールすることの可能性についての知見が得られた。中高木を植栽して緑陰を確保するとともに,土地被覆を芝生や裸地とすることで,地中への蓄熱を軽減することが予測された。また,表面温度と周囲の気温との温度差が大きく,放射熱伝達が大きい場合は発生源(各要素)から出る放射エネルギーに対して,適切な緑を配することで軽減できることが明らかとなった。さらに,熱帯地方における日影変化・樹木形態(樹種や植栽密度の違いによる)・緑陰効果からみた緑陰地の特性について検証し,温熱景制御に資する緑の配置パターン(植栽デザイン)について明らかにした。具体的には,緑陰エリアは日中,樹冠と同程度の最小限の日影をつくり出すことから,人々の活動をサポートするための緑陰空間は日中において特に考慮されるべきである。緑陰地の空間形態は樹木のサイズ(樹高と樹冠により中規模,大規模,極大規模)によって規定される。全緑陰(Full Shade)は密植(暗い緑陰と樹冠の重層)により形成され,非全緑陰(Not Full Shade)は疎林(やや暗い緑陰と樹冠の接触)によって形成される。また,分離植栽は緑陰を形成しない(樹冠が離れており地表は明るい)。葉と枝張りの密度の濃い緑陰樹は緑陰地のデザインにおいて特に適している。緑陰空間の特性は,熱帯地方の特に日中,太陽が南中した際に重要な役割を果たす日影に重要な影響を及ぼす。日影の継続は人々の活動に高い快適性をもたらすことができた。以上の結果から,温熱景制御に資する地区スケールでの緑の計画の在り方について有用な知見を得た。
著者
伊藤 正敏 田代 学 藤本 敏彦 井戸 達雄
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

中等度強度の運動によって脳内ドーパミン分泌が生じているか否かを明らかにする目的で[^<11>C】Raclopride-PETを用いて脳内ドーパミンD2濃度の定量を行った。8人の健康な男性(年齢は21.4±2.0歳)の協力を得て、一回は安静状態で、もう一回はエルゴメータ運動を行いながらPET撮影を行った.エルゴメータ運動は強度VO2Max35〜60%で50分間行い、運動開始後20分で[^<11>C]racloprideを静脈投与した.運動に随伴する頭の位置のずれを最小にするために、Plastic face maskによって強固に頭を固定すると共に、数学的動き補正を行った.ソフトウエアは、Welcome Institute開発のSPM5を使用した.次に、この加算画像を用いて脳標準画像に対して形態的標準化を行った.この画像に対して関心領域(ROI)を左右の尾状核、被殻および小脳にとって[^<11>C]raclopride集積の時間変化曲線(TAC)を得、小脳を参照領域として、D_2受容体結合能(BP)、をSimplified Reference Tissue Model(SRTM)、Logan NonInvasive Method(Logan)、Ichise Multilinear Reference Tissue Model(MRTM2)を使って計算した.解析ソフトはPMODを使用した.解析の結果、左右の尾状核および被殻における[^<11>C]racloprideのドーパミンD_2受容体への結合が運動中、一様に減少し手いるのが判明した.その減少の程度は-12.9〜17.0%(P<0.01)であった.運動に際しての[^<11>C]racloprideのD_2受容体への結合の減少は、脳内ドーパミンが分泌されたことを強く示唆するもので、運動に際しての爽快感などの情動感覚と関係すると考えられる。
著者
與倉 弘子
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は環境問題に配慮した衣生活様式を支援、推進するための環境学習プログラムの開発を目標とする。ここでは環境学習の具体的題材として「繊維製品のマテリアルリサイクル」「吸水性衛生材料の消費とリサイクル」「紫外線遮蔽繊維製品の有効利用と健康な衣生活」を取り上げ、以下の成果が得られた。1)繊維製品のマテリアルリサイクル:寝具の廃棄と再利用に関する実態調査を行った。廃棄寝具の回収方法は自治体によって異なり、回収方法に関する啓蒙活動の必要性が示唆された。寝具の性能としては、枕の熱移動特性と温熱的快適性の関係、再生わたの繰り返し圧縮による厚さ変化を評価して、リサイクルわたの性能設計に関する指針を得た。また、大学生を対象として衣服の廃棄と再利用に関する意識調査を行なった結果、リサイクルに関する知識が不足しており、環境教育の必要性が示唆された。小学生を対象に、繊維製品のリサイクルに関する教材開発と授業実践を行なった。2)吸水性衛生材料の消費とリサイクル:ペーパータオルや婦人用衛生用品の素材特性と使用感の関係を評価した。繰り返し使用できる布製パッドとの併用や、再生紙を用いた使い捨て不織布の設計に資する知見を得た。3)紫外線遮蔽繊維製品の有効利用と健康な衣生活:幅広い年齢層について紫外線に関する意識調査を行った。有害紫外線の人体への影響は知っているが、それを軽視して対策を行ない傾向が男性に多くみられ、環境学習の必要性が示唆された。また、中学生、高校生、一般市民を対象に、簡易型紫外線強度計を用いた学習プログラムによる授業実践を行ない、その有用性を確認した。
著者
桑原 浩平
出版者
名古屋工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

平成15年度は,まず屋外環境において,人体の体感温に影響を及ぼす環境要素を探るために,修正湿り作用温度を用いた屋外温熱環境の評価を行った。修正湿り作用温度は,気温・湿度・放射・風速が人体に及ぼす影響を個別に表示することが出来るという利点がある。その結果,夏や秋においては,日射を含む放射の影響を強く受け,冬においては,風速の影響を強く受けていることが明らかとなった。次に,日射を考慮したSET^*や予想温冷感ETSが暑熱環境において有効であるか否かを検討するために,名古屋の屋外空間において被験者実験を行った。実験結果から,SET^*は名古屋のような暑熱地域においても温冷感の評価に有効であったが,ETSは札幌の被験者実験を基に作られた指標であるため,名古屋においては,特に寒いと申告する側において計算値と申告値に差が見られた。また,これまでは屋外温熱環境の評価に関しては主に温熱指標と温冷感との対応を見るのが主であったが,今年度は温熱指標と快適感に関する検討も行った。これまでに行われた,札幌と名古屋の屋外空間における被験者実験データから,SET^*と中立温冷感,快適感との関係を明らかにした。分析結果から,屋外環境におけるSET^*に対する中立温冷感域として15.7〜25℃が,快適側申告域として17.8〜24℃が得られた。さらに,ETSと快適感の関係を実験データから回帰したところ,80%以上の人が快適であるというETSの範囲は見られなかったものの,-1.0(少し涼しい)<ETS<+1.0(少し暖かい)の範囲内で70%弱の人が快適と感じるとの結果を得た。最後に,人体のどの部位が全身の温冷感に影響を及ぼすかを検討したところ,頭部は季節に関係なく全身の温冷感とよく一致し,他の部位においては,季節を通じて露出部位の影響を受けやすいことが確認された。
著者
ボルジギン ブレンサイン
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、清朝という一つの帝国の崩壊から中華人民共和国というもう一つの多民族国家の枠組みが形成されるまでの間に、それまで満族の形成に加わったと思われていた旗人集団(満洲旗人、蒙古旗人、漢軍旗人)が、モンゴル族や漢族、ダウール族など多くの民族の形成に分散していったということを明確にした。
著者
楠田 剛士
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

報告者は、長崎原爆の文学/表象に関して、二つの側面から資料調査と分析を行った。ひとつは、前年度から引き続き、非被爆者の作家たちが、原爆の事実と虚構を織り交ぜて小説を書くという方法に関するものである。具体的には、1「井上光晴『明日-一九四五年八月八日・長崎』における「再現」の方法」という論考を発表した。そこで明らかにしたことは、原爆投下前日を再現するという井上の試みが、同時代的な被災地復元運動の成果を取り込んでいること、引用された資料が小説の下敷きの意味に留まらず作品内で独自の機能を果たすことである。それを踏まえ、虚構の登場人物たちそれぞれの経歴を繰り返し描き、原爆で失われた無数の過去を物語の形で取り戻そうとする小説『明日』を、原爆の表象不可能性の問題に対する井上の真摯な応答として評価した。もうひとつは、被爆者自身による表現活動への注目であり、やはり前年度から調査を進めていた一九五〇年代の長崎原爆の表現である。それは、2「山田かんとサークル誌」としてまとめ、さらに資料編として3「長崎戦後サークル誌「芽だち」総目次」を作成した。長崎における戦後文化運動の一例としてサークル誌「芽だち」を取り上げ、先行資料をまとめた上で、詩人・批評家として活躍した山田かんの出発点に「芽だち」があること、長崎の被爆者・労働者による原爆表現・運動として資料性・重要性があること、長崎における他のサークルや以後の平和運動とのつながりを考える上で「芽だち」が重要な結節点であることなどを指摘した。2を補足する3の総目次は、記事情報の共有化によって今後の研究を促進するものとして意義があると考える。以上が本年度の主な研究成果である。
著者
春木 奈美子
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

人類学の多くの資料や、文学的天才の作品が教えるように、贈与について考えるとき、セクシュアリティの問題をそこから切り離すことはできない。贈与に解き難く付随するこの問題系は、レヴィ=ストロースが記述する女性の交換にはじまり、ピエール・クロソウスキーの『歓待の掟』における倒錯的な贈与に至るまで、例に事欠かない。ところで、フランスの精神分析家ジャック・ラカンは晩年のセミネール20巻『アンコール』のなかで、セクシュアリティについて独特な議論を展開している。彼はそこで、性別の公式と呼ばれる論理式を提示し、さらに「女なるものは存在しない」と定式化した。このテーゼは、ラカンの男性中心主義と曲解され、多くのフェミニストから批判を受けることになる。しかし詳細にセミネール20巻を読み進めれば、これを男性中心主義と解することがほとんど不可能であることが分かる。贈与という概念をひとつの手がかりとして、心理臨床を再考察する研究の最終年は、セクシュアリティをめぐるラカンの言説を導きの糸として、絶対的な「贈与」に関わる神話の分析を行い、更にそこで得られた知見から新たな治療論を展望した。フロイトが『終わりある分析と終わりなき分析』で記したように、心理臨床において、治療の終わりは議論の絶えない主題である。フロイトは分析治療がどうしてもそこから先には進まない「岩盤」=去勢コンプレクスを前に、ある種のためらいをみせるが(生物学への傾斜)、ラカンはそこに留まることなく、「幻想の横断」、後には「症状への同一化」という考えを前面に打ち出す。本研究は後者の概念を贈与そしてセクシュアリティの問題と併せて再考することで、そこに含まれる治療的意義を示した。
著者
平野 高司 文字 信貴 鱧谷 憲 町村 尚 高木 健太郎 岡田 啓嗣
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

北海道苫小牧市のカラマツ林を対象とし,現地での連続観測およびデータの解析を行なった。2001〜2003年の3年間の結果をまとめた結果,CO_2交換量の年積算値の平均(±標準偏差)は,純生態系生産量(NEP),総生態系生産量(GEP),生態系呼吸量(RE)でそれぞれ499±26,1595±65,1095±52gCm^<-2>y^<-1>と推定された。また,REがGEPに占める割合は67〜70%であった。このように,CO_2交換量の年積算値における年次差は比較的小さかったが,季節変化には大きな違いが認められた。特徴的なのは,2002年のGEPであった。この年は冬から春にかけて気温が高かったため,融雪と開葉が他の年より2週間ほど早く,光合成も早く始まった。しかし,2002年の夏期はP_<max>が小さく,PPFDも低かったため,GEPが他の年より小さくなった。結果として,成長期間が長いにもかかわらず,2002年のGEPは他の年より小さくなった。2002年におけるP_<max>低下の原因として,多雨による光合成酵素(Rubisco)の損失や早期の開葉による窒素利用効率の低下が考えられた。なお,2003年7月の気温は他の年より2〜3℃低かったが,GEPが減少することはなかった。低温は大気飽差を低下させ,結果としてGEPを増大させた。成長期間の土壌水分は0.2〜0.4m^3m^<-3>で推移したが,土壌水分の変化がGEPやREに大きな影響を与えることはなかった。カラマツ人工林は,北海道や世界の他の森林と比べて高い炭素固定能力を示した。これは,冷温・湿潤・多雨な気候により,カラマツの持つ高い生産能力が維持されるためであることが示唆された。
著者
柏木 敦
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は(1)太平洋戦前期における地方長官会議関係資料の収集・分析を行う、(2)中央と地方との相互作用による政策(徳に教育政策)決定のプロセスを解明する、という2点を主な目的として進めた。その結果3年間の研究により、アジア太平洋戦前・戦後にかけて、のべ112(113)回開催された地方長官会議の関係資料を、帝国憲法体制が発足した1890(明治23)年以降分(およそ96回分)に関して、全体の7割以上にあたる74回分の史料収集ならびに所在確認を行うことが出来た。
著者
黒瀬 智之
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

炎症性サイトカインの発現と関係のあるNF-κBや、HIF-1α、酸化ストレスを起こすNOS(nNOS、iNOS、nNOS)の発現をリアルタイムPCRで調べたところ、iNOSのみ著しく増加した。INOSを阻害することで酸化ストレスを抑制すれば、褥瘡の発生を抑えるかもしれない。圧迫を繰り返した臨床的な褥瘡モデルでは、1回の圧迫よりも炎症性サイトカインが増加していた。炎症性サイトカインの重要性のさらなる裏付けとなると考える。
著者
覚幸 典弘
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

今年度において,ヘルムホルツ分解定理に基づく動画像のフロー推定法を実現した.従来手法では,過去に推定された動きの推定誤差が現時刻の動きの推定精度を低下させる問題が存在した.そこで提案手法では,ヘルムホルツ分解定理に基づくパーティクルフィルタを新たに導出することで,従来手法の問題を解決し,高精度な動き推定を可能とした.その成果を,信号処理の分野において世界最大規模の国際会議であるICASSP 2009(IEEE International Conference on Acoustics, Speech, and Signal Processing)で発表した.さらに,本手法の気象データへの適用を行い,北海道大学およびソウル大学共催のジョイントシンポジウムで報告した.また,本研究課題とは別の研究ではあるが,グローバルCOE異分野共同「新種探索プロジェクト」に参加し,SVDDに基づく顕微鏡画像解析法を実現した.画像処理を用いて顕微鏡画像の解析を行うことは,これまで実現されておらず,それを可能とした提案手法は,独創的であるといえる.そして,その成果をGCOEのシンポジウムおよびワークショップで報告した.最後に,これまで実現してきた自己相似性および回転・発散に基づく画像モデルを博士論文にまとめ,北海道大学情報科学研究科における論文審査において発表を行うとともに,博士(情報工学)の学位を与えるに相応しい成果であるという評価を頂いた.
著者
田隈 泰信 荒川 俊哉 設楽 彰子 岡山 三紀
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、当初、仙台ウイルス(HVJ)・エンベロープ・ベクターを用い、分泌マーカーcDNAと分泌関連タンパク質のsiRNAをラット顎下腺に導入し、唾液分泌機構のin vivo解析を計画した。しかし、予期に反し、このエンベロープ・ベクターには遺伝子導入活性がなかったため、計画変更を迫られた。そこで、培養細胞に、分泌マーカーとSNAREタンパク質を別の色の蛍光タンパク質として発現し、二波長全反射蛍光顕微鏡観察法により、構成的分泌を調節する分泌関連タンパク質の同定を試みており、現在、siRNAの効果から対象が徐々にしぼられてきている。
著者
野村 靖幸 大熊 康修 高橋 良輔 金子 雅幸 友部 浩二 篠塚 達雄 出雲 信夫 殿岡 啓子 浜名 洋
出版者
横浜薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

HRD1は小胞体の変性タンパク質の分解を促進し、アルツハイマー病の原因タンパク質アミロイドβの前駆体APPを基質とする。本研究では、アルツハイマー病患者脳においてHRD1が酸化ストレスにより不溶化することで減少する可能性を示した。また、HRD1と類似した新規の酵素について、Aβの産生に関与するものを新たに見出した。さらに、タンパク質の凝集を阻害することで、パーキンソン病に関連したタンパク質の蓄積を防ぐ薬物を作成した。
著者
大向 吉景
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

水処理用中空糸膜の製造において、膜の固化速度は製造コストに直結する重要な検討項目である。本研究では、代表的な製膜法である熱誘起相分離(TIPS)法と非溶媒誘起相分離(NIPS)法について、膜の固化速度に影響を及ぼす因子の探索とその制御を試みた。TIPS法では、結晶化温度が固化速度と相関を持つことを明らかにした。同じ高分子/溶液系であっても、非溶媒を添加して相図を変化させることで固化速度の向上が可能であった。NIPS法では、接触式強度測定装置を用いて膜強度の経時変化を実測し、溶液組成の影響を検討した。その結果、溶液粘度はあまり影響を示さず、溶液の親水性が非常に重要な因子であることを明らかにした。
著者
松本 紘 BOUGERET Jea ANDERSON Rog 小嶋 浩嗣 GURNETT Dona 村田 健史 笠原 禎也 八木谷 聡 臼井 英之 大村 善治 岡田 敏美 筒井 稔 橋本 弘蔵 長野 勇 木村 磐根 BOUGRET Jean-Louis ANDERSON Roger r. GURNETT D.A. BOUGERET J.L ANDERSON R.R
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

平成7年度には、GEOTAIL衛星は、地球から30Re付近の近地球軌道にあり、WIND衛星も主に、昼間側の太陽風の定常観測状態にあった。一方、同年度8月には、ロシアの衛星INTERBALLが、3月には、米国の衛星POLARが打ち上げられ、ISTP衛星による磁気圏の総合観測体制がほぼ整ったといえる。これらの衛星のうち、INTERBALL、POLAR衛星は、打ち上げ後、まもないということで、具体的な共同観測については、来年度に行われる予定であり、本年度は、主に、WIND衛星との共同観測を昨年度までのAKEBONO、Freja,ULYSSES衛星との共同観測に加えて重点的に行った。以下に、交付申請書の調査研究実施計画の項目に従って研究成果を列挙する。1.まず、惑星間衝撃波の観測でGEOTAILとWIND衛星で同時に観測を行った例において、WIND衛星で観測された磁場やプラズマの変化とそのGEOTAILでのある時間遅れでの観測、そしてそれに対応するプラズマ波動の強度の変化について解析を行った。その中には、衝撃波の到来とともにGEOTAILがバウショックを何度もよぎる現象がみられるものがあり、惑星間衝撃波の影響によりバウショックの位置が変化している様子を観測することができた。2.磁気圏昼間側のショック領域全面で発生しているといわれている2fpエミッションの観測をWIND、GEOTAIL両衛星を用いて行い、その発生時間や周波数変化の時間差から、その発生領域がやはりショック全面にあることが確認された。現在その位置的な偏りについても、より多くのデータを集めて解析を行っている。3.GEOTAILによって磁気圏内部で観測された「振幅変調をうけた電子プラズマ波」と同様な波形がWIND衛星によって太陽風中でも観測されていることがわかった。GEOTAILでの観測では、その波動の伝搬方向は外部磁場に対して平行、垂直の両者があることがわかっていたが、現在までのところWINDの方では平行伝搬のみがみつかっている。4.POLAR衛星の打ち上げに伴う共同観測体制を整えるための情報交換をアイオワ大学と行っている。5.POLAR衛星の打ち上げが遅れて本年度の3月になったため、具体的な共同観測は来年に執り行われることになる。6.本研究課題に関連して投稿された論文リストは、本報告書の研究発表欄に列挙する。以上が、交付申請書に書かれていた計画に対応する報告であるが、上述の他に、以下の項目についても共同研究を行った。1.極域で観測されるイオンサイクロトロン波とイオンコニックス分布との相関をAKEBONO衛星とFreja衛星の共同観測で明らかにした。2.極域で観測されるAKRの観測をGEOTAIL、WIND衛星で共同して行い、その観測が衛星の位置によってどのように変化してみられるかの評価をを行い、AKRの伝搬特性についての解析をおこなっている。3.太陽バースト伝搬をGEOTAIL、WIND衛星で同時に観測し、その強度を比較することにより、両者の受信機の較正を行った。
著者
伊藤 大雄 石田 祐宣 松島 大 石田 祐宣 松島 大
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

リンゴ園で微気象観測ならびに乱流計測を長期間実施し、複数の解析手法により蒸発散量を明らかにした。また、群落内貯熱量や融雪潜熱量の推定手法を考案するとともに、渦相関法における熱収支インバランス問題を追究し、得られた成果を蒸発散量の計算プロセスに反映させた。その結果、土壌水分推定法の開発には至らなかったが、月別の作物係数をもとにした蒸発散量の高精度推定を可能にした。更に衛星画像を利用した日射量推定法や、これを利用した蒸発散量推定法を考案し、蒸発散速度の広域的推定に展望を開いた。