著者
鈴木 隆史
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

勾配を持つポテンシャル中に閉じ込めたボーズ粒子系で現れる有限温度下の秩序状態について調べた。まず調和ポテンシャル中の擬2次元希薄ボーズ気体の有限温度特性についてProjectedグロスピタエフスキー方程式を数値的に解いて調べた。その結果、位相相関関数の減衰冪がポテンシャル中心付近で現れるコヒーレント(凝縮)領域とその周囲に現れるインコヒーレント(非凝縮)領域の境界でコスタリッツ-サウレス型の臨界特性を示すことがわかった。続いて一軸方向にのみポテンシャル勾配を持つハードコア2次元拡張ボーズハバードモデルで現れる秩序状態の空間分布について量子モンテカルロ法を用いて調べた。この系は一様ポテンシャル下で化学ポテンシャルを変化させた場合に固体状態から超流動状態へ一次転移を示す。ポテンシャルの勾配を変えた場合に固体状態と超流動状態の境界付近で現れる秩序状態に注目した。その結果ポテンシャル勾配の形を変化させても両者は相分離し、局所密度近似の結果、すなわち一様系で観測される一次転移の振る舞いが相境界で見られることが分かった。
著者
木村 圭志
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

コンデンジジは、SMC2/SMC4の二つのSMC ATPaseサブユニットと三つのnon-SMCサブユニットからなるタンパク質複合体で、M期の染色体凝縮に必須の因子である。最近になって、修復、チェックポイントの活性化、転写制御などの間期におけるDNA代謝にもこの酵素が関与することが報告されている。コンデンシンは、in vitroでATP依存的にDNAに正のスーパーコイルを導入する活性(スーパーコイリング活性)を持つ。我々は、コンデンシンの細胞周期における制御機構を解析した。コンデンシンのタンパク量、及びタンパク質の安定性は細胞周期を通じて一定だった。細胞周期におけるリン酸化を調べたところ、コンデンシンは間期においてCK2で、M期ではCdc2でリン酸化されていた。M期でのリン化がコンデンシンのスーパーコイリング活性を促進するのに対して、CK2による間期リン酸化は著しく抑制した。このCK2による抑制的なリン酸化レベルの細胞周期における変動を調べたところ、M期に染色体上で著しく低下していた。さらに、ツメガエルのM期卵抽出液中で、コンデンシンのCK2部位のリン酸化レベルを上昇させると、染色体の凝縮は阻害された。これらの結果から、コンデンシンの機能は、従来から考えられていたM期キナーゼCdc2だけでなく、CK2によっても制御されていることが示唆された。一方、精製したコンデンシンをin vitro転写系に加えると、転写レベルは抑制された。また、その抑制はCK2によるコンデンシンのリン酸化により解除された。これらの結果から、コンデンシンは、間期においてもクロマチン構造をコンパクトな構造に転換するのに寄与し、CK2リン酸化によるコンデンシン活性の抑制は、クロマチン構造の弛緩と、その結果としての転写活性化に関与している可能性が示唆された。
著者
仲川 秀樹
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、「情報の受信・発信による若者の地方都市定着へ向けての社会学的研究」である。平成8年から9年度の2年間にわたり本研究テーマに沿った研究を別紙報告書記載の通り論じてきた。特に、社会学的研究という性格をふまえ学説研究としてのアプローチ、実証研究としてのアプローチをバランスよく取り入れることにした。学説研究としては、情報の受信・発信をメディアに求めた。それは映像による若者への影響を映画を媒体に考えた。それにはH・ブルーマ-の社会理論が適切であると考え、本研究の理論背景はブルーマ-の理論に負った。次にそれを実証するために、地方都市として国内と海外2つの都市を取り上げた。国内は、山形県北山形高瀬集落、海外はカナダ、プリンス・エドワード州をその対象地とした。この都市はいずれも映画の舞台となり多数の若者が集う場所でもあった。そこには女性分化としての性格が存在してそり、その視点も含めたヒアリングを実施することになった。その結果は、単なる流行りとする影響ではなく、生活様式まで取り入れた情報受容のスタイルがあった。学説研究、理論研究の2つのアプローチから若者の地方都市定着へ向けて、社会学が何をすべきかという課題にひとつの問題提起をなす結果として、情報の受信・発信がリアルに実施され、それが若者へ1次情報として認知される環境形成が不可欠なこと。これに応えられるべき環境の整理こそが若者を地方都市に定着させる処方箋に成り得ることなどが明らかにされた。その包括的な環境こそ若者がもっとも望んでいることであると考えられる。
著者
A Cardenas 加藤 隆浩
出版者
南山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究の課題は、メキシコの多文化主義的教育を教条的になぞることではなく、その実践のなかに見え隠れする「綻び」の原因を明らかにすることであった。そこで、研究代表者らは初年度には、教育現場で使われる教科書の分析を多文化主義、多文化共生に注目して行い、2年目には先住民文化と国民文化とがどのように関係づけられ、それがインディヘニスモに裏づけられたメキシコ版多文化主義を基盤とする国民国家の形成にどのような形でかかわるかを公立小中学校の教員からの聞き取り調査をもとに見てきた。その結果、生徒と最も接触の多い教員に注目すると、彼らの語る多文化教育の理念と実践との問に大きな乖離があり、それは教育環境を整えるための財政支援不足ゆえのことであるという認識があることが分かった。研究期間のうちの2年を教育現場を中心に調査研究を進めてきたが、最終年度の今年は、その問題を国がどのように認識しているかを教育行政に直接携わり、自ら政策を立案し実践していく国民教育省(SEP)の官僚からの聞き取りにより調査した。そこで明らかになったのは、これまでに幾度となく多文化教育の理念を練り直され、それが啓蒙活動に利用できるような形で冊子、著作として纏められ教員や保護者に無料配布されてきたこと、またその理念に合わせたさまざまな副教材が作成され、教育現場で使用されていること、しかし、そうした実践のための膨大な人的・財政負担(近年、減少傾向にはあるが)にもかかわらず、期待されるような結果が出ていないという厳しい現状があること、その原因は、然るべき教授法を身につけた教員がほとんどいないという点を教育省の官僚らが認めていることなどであった。要するに、「綻び」は教育現場でも官庁でも共通に認識されているが、前者では予算不足を原因とし、後者では現場の教員に責任を転嫁しているように見える。もちろん「綻び」の責任の所在がどこにあるかが問題ではなく、それにどのように対処すべきかが重要である。そのためには、立場を超え、多文化教育の「綻び」に真摯に向き合う必要と思われる。本研究を実施する中で研究代表者らにとって驚きであったのは、多文化教育の理念に関する研究は膨大にあるのに、その「綻び」に関してはほとんどなかった、という点である。この問題の分析は、まだ始まったばかりということである。なお本研究では、家庭教育にも注目し、家庭学習用として安価で売り出されているモノグラフィアにも注目した。
著者
松田 博幸 大森 豊裕 難波 義郎 井原 辰彦 毛谷村 英治
出版者
近畿大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本調査研究は、欧米型のハワイとアジア型のプーケットの事例から、歴史の中で海洋リゾートが成熟してきた過程とその手法を明らかにし、日本との比較(沖縄県)を通して、差異の要因を検討し、我が国の海洋リゾート整備の方向を検討することを目的としている。本年度は、観察調査を中心に行った。調査は、(1)ハワイのホノルル・ワイキキのリゾート整備、(2)沖縄本島・東シナ海側のリゾート整備、(3)タイ・プーケットのリゾートホテルの3つを対象に行った。(1)ハワイのホノルルについては、リゾートとして整備された歴史・問題点などを検討した。トロリー電車はモアナ・ホテルの前のカラカウア通りを走り、ワイキキ中心にハレクラニ・ホテル、ロイヤル・ハワイアン・ホテルが開業した。トロリーの開通をきっかけに、今までダウンタウンに宿泊していた観光客がワイキキへと宿泊するようになった。商業施設はインターナショナル・マーケット・プレイスが1957年に開業して、観光客の増加と共にホテルや商業施設がワイキキ中心に円状にホテル・商業施設の開業ラッシュが始まった。ショッピングスポットがワイキキ中心に開業したことでワイキキの魅力として、ショッピングがあげられる。ワイキキには、高層ビルのホテルが建ち並びワイキキだけでも多くの観光客が定住できるようになり、ワイキキのビーチやワイキキの中心に集まっている商業施設を利用しやすくした。(2)沖縄本島・東シナ海側のリゾート整備については、欧米型に近い遊地を目的とした開発がなされてきた。近年では、温泉ブームのようにくつろぎや安らぎのアジア型が求められており、今後、アジア型を取り入れた癒しやくつろぎを追求したリゾート開発が求められている。(3)パトンビーチを中心にリゾート開発をしてきたプーケットは、プーケットならではの産業を利用してきた。ビーチ沿いには、エビ、カニをメインとしたシーフードレストランや露店などが建ち並んでいる。観光客の脚となる交通はスボローで、軽トラックの荷台を客席用に改造していおり、交渉次第で料金は変化する。くつろぎを目的としているアジア型のリゾート開発は、ホテルは、低層の造りでホテルの敷地は広くくつろぎを与える。
著者
高橋 亮
出版者
岡山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

1.剰余体のシジジーの直和因子IS.P.Duttaは,ホモロジー予想の研究を通して「剰余体のあるシジジーが射影次元有限な直和因子を持つような局所環は正則である」という定理を与えた。このことから,剰余体のあるシジジーがG次元有限な直和因子を持つような局所環はGorensteinだろうと自然に予想される。私はこの予想が第2シジジーまでなら正しいことを証明した。さらに第2シジジーが直可約なGorenstein環に焦点を絞り,その環の構造を本質的に一通りに決定した。2.剰余体のシジジーの直和因子II半双対化加群は階数1の自由加群とCohen-Macaulay環の標準加群の共通の一般化にあたる加群である。上記1で述べたDuttaの定理は「剰余体のあるシジジーが自由因子を持つ局所環は正則である」と言い換えられるが,これに関連して,剰余体のあるシジジーが準双対化加群を直和因子に持つ局所環は何なのかを考え,それもまた正則になることを証明した。(従ってこれはDuttaの定理を含む。)さらに上記1で述べた(ものと同値な)問題「剰余体のあるシジジーがG次元0の直和因子を持つ局所環はGorensteinか?」が,[環の深さ+2]番目までのシジジーについては正しいことを示した。3.G入射次元有限な有限生成加群「入射次元有限な有限生成加群を持つ環はCohen-Macaulay環である」という定理はかつてBass予想と呼ばれ,1980年代に完全解決したPeskine-Szpiroの交差定理の系として得られる。私は,入射次元が有限な加群はG入射次元も有限であることに着目して,G入射次元有限な有限生成加群を持つ環がCohen-Macaulay環かどうかという問題を考えた。まずFoxby同値と呼ばれる圏同値に留意し,入射次元とKrull次元の間のよく知られた不等式のG入射次元版を与えた。そしてその不等式を用いて,もとの問題が多少の仮定のもとに成り立つことを証明した。
著者
三枝 正彦 南條 正巳 鳥山 欽哉 木村 和彦 渡辺 肇
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

肥効調節型肥料の発明は肥料を種子や根と接触施用することを可能にした。この方法では土の介在なしに目的とした肥料成分を直接植物根に供給することが可能であり、肥料の利用効率を飛躍的に向上させ、作物の収量と品質を飛躍的に改善することを明らかにした。またこの方法で、不耕起移植栽培や、不耕起直播栽培、接触施肥シードテープ栽培、スティック肥料茶栽培など収量、品質を低下させることなく、環境負荷を低減する画期的農業システムを開発した。
著者
清水 知子
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

現代英国における多文化主義の可能性と限界について以下の知見を得ることができた。1)新自由主義社会においていかに移民が分断され、「国民」が再編されたか、その構造の変化について明らかにした、2)多文化主義の根底にあるリベラリズム、世俗主義の暴力性がどのように主流の見解として社会のなかで機能しているのかをメディアの表象から明らかにした、3)上記1)、2)のなかから高まった他者への不信感と監視社 ・ュ策への傾倒を考察し、現代社会におけるコミュニティの実態がどのように変化しているのかを明らかにした。
著者
熊澤 栄二 堀内 美緒
出版者
石川工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、潜在的に潜む地域特有の場所構造を基として修景・保存および地域景観形成の指針を明らかにし(基礎研究)、その研究成果を基として実際の景観整備手法の開発する(応用研究)ことを目的とする。申請研究では、基礎研究の第一段階として石川県能登半島最北端に位置する珠洲を事例とした場所構造の解明を目的とする研究を行った。第二段階として地域の祭礼の存続の可能性を明らかにするため各地区公民館でのヒアリング調査を行った。
著者
岡村 尚昌
出版者
久留米大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

大学生を対象に健康関連行動調査やGHQ-28を実施すると同時に、唾液を採取し日常生活場面での精神神経免疫学(PNI)反応を測定することで、睡眠時間がPNEI反応に与える影響を検討した結果、最適睡眠時間者(6~7時間睡眠)に比較して、短時間(5時間以下睡眠)あるいは長時間(9時間以上睡眠)睡眠者よって主観的健康観が低下し、ノルアドレナリン神経系の過活動や免疫機能低下などの慢性ストレス状態に至る可能性も示された。
著者
津田 彰 森田 喜一郎 高橋 裕子 磯 博行 矢島 潤平 辻丸 秀策 津田 茂子 福山 祐夫 稲谷 ふみ枝 森田 徹 岡村 尚昌子
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では,多理論統合モデル(TTM)をストレスマネジメント行動(1日20分以上健康的な活動を行う)の変容に適用して,大学生集団を対象とする介入を行うことを目的とした。TTMをストレスマネジメント行動に適用するために,まず日本語版TTM尺度を開発した。次いで,ワークブックとエキスパート・システム(アセスメントに応じてストレスマネジメント行動を獲得維持するためのアドバイスを与える)を開発して,その効果をランダム化比較試験により比較検討したところ,個別最適化アプローチによりストレスの自覚が緩和し,ストレスマネジメント行動の実行者の割合が増加することが示された。
著者
松井 永子
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

アレルギーの遺伝的要因として、アレルギー疾患で高値となることが多い血清IgE産生に関わるサイトカインシグナル伝達系の中で、特にIgE産生の抑制系に関与する蛋白質の遺伝子に着目し、アレルギー疾患発症の原因遺伝子について検討した。1、IgE産生抑制系に関与する遺伝子変異の同定アレルギー患者においてPHA刺激によるPBMCsから産生されるIFN-γ産生量を検討したところ、IFN-γ産生量は血清IgE値と負の相関関係を示すことが明らかになった。さらに、PHA刺激によるIFN-γ産生量とIL-12やIL-18などのサイトカインで刺激した場合のIFN-γ産生量を比較すると、IFN-γ産生量に解離がみられるアレルギー患者が存在した。そこで、Th1サイトカインのシグナル伝達系のなかでIL-12Rβ1鎖、β2鎖、IL-18Rα鎖、IFN-γR1鎖遺伝子の遺伝子配列を検討したところ、9つの変異が検出された。2、インベーダーアッセイ法による各変異遺伝子の検出検出されたIL-12Rβ1鎖、IL-12Rβ2鎖、IL-18Rα鎖、およびIFN-γR1鎖遺伝子における変異の出現頻度を検討した。IL-12Rβ1鎖遺伝子における3つのミスセンス変異において、M365T変異、およびG378R変異の出現頻度はアレルギー群に有意(p=0.023)に高く、R361W変異はアレルギー群にのみ変異が検出された。IL-12Rβ2鎖遺伝子の4つの変異において、A604V変異の出現頻度はコントロール群に比較して、アレルギー群において有意(p<0.002)に高く、R313G変異、1856 del 91変異、およびH720R変異はアレルギー群のみに検出された。Il-18Rα鎖遺伝子950 del 3変異においてはアレルギー群に有意(p=0.035)に高く変異が出現していた。IFN-γR1鎖遺伝子L467P変異はアレルギー群のみに変異が検出された(p=0.007)。今後、アレルギー素因となる遺伝子変異をパネル化し、組み合わせることにより、同定された遺伝子異常に対応した治療方法を選択することができる。このことにより、より効果的なアレルギー疾患の治療を行うことが可能であると思われる。さらには原因遺伝子異常がアレルギー疾患を惹起するメカニズムを明らかにすることにより、かかるメカニズムに対応した、アレルギーの治療薬の開発することも可能であると考える。
著者
津田 彰 津田 茂子 山田 茂人
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、実験的-フィールド研究の方法論に基づいて、ストレスの状態と心理生物学的ストレス反応との関連性について検討を加えたものである.3年間の研究を通じて、以下に列挙するような知見を最終的に得ることができた。1.唾液中MHPGの測定と不安の指標としての妥当性について男女大学生221名を対象に、唾液3-mthoxy-4-hydroxyphenylglycol(MHPG)(ノルアドレナリンの代謝産物)濃度と気分(STAIならびにPOMSによって測定)、精神的健康度(GHQ-28で評価)との関連性を検討したところ、男子学生の場合、不安、緊張、抑うつ、怒り、敵意の気分ならびに特性不安とMHPG濃度との間に有意な相関が認められた。しかしながら、女子学生では、このような関係がまったく認められなかった。女子の場合、性周期がMHPG濃度の交絡要因になったためと思われる。2.唾液中MHPG濃度の減少と抗不安薬によるストレス症状改善との相関不安障害患者25名を対象に、抗不安薬(alprazolam 0.8-1.2mgまたはtandospirone 30mg)を投与し、ストレス症状の改善と唾液中MHPG濃度の減少が相関するかどうか検討を加えた。ストレス症状はいずれの薬物においても有意に減少したが、その程度はalprazolamの方で著明であった。Alprazoiam投与を受けた患者のMHGP濃度は投与1適間後に有意に低下したが、tandospirone投与では、とくに関連性を認めなかった。これらの知見より、唾液MHPG濃度はストレス状態を敏感に反映する指標であること、また抗不安薬の効力を臨床的に評価するための客観的な指標になり得ることが明らかとなった。
著者
田中 芳幸 外川 あゆみ
出版者
東京福祉大学短期大学部
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

いきいき度尺度を大学生に適用できることを実証するとともに、この尺度により測定される主観的ウェルビーイングが高ければ、ストレス刺激が多くてもストレス反応には繋がらないという主観的ウェルビーイングのストレス緩衝モデルをデータに基づき提示した。さらに、このモデルに基づいた実験的研究により、個人の主観的ウェルビーイングが急性ストレッサーに対処する為の準備状態を整えたり、反応後の回復を促進したりといった役割を有することを示唆した。
著者
野村 忍 中尾 睦宏
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

今回の研究目的は、本態性高血圧症に対する血圧バイオフィードバック(以下BFと略す)の降圧効果を検討することである。また、ストレス負荷テストによる昇圧反応をどのくらい抑制できるかの検討を行った。本態性高血圧症を対象にした血圧BFの治療効果の検討では、30人の外来患者(男性10名、女性20名)を無作為に2群に分けて比較試験を行った。A群ではBF治療を4回行い、B群ではコントロール期間は血圧自己モニターのみ行いその後BF治療を4回施行した。その結果、A群では治療期間前後の比較で平均して収縮期血圧は17mmHg、拡張期血圧は8mmHgの有意な低下が認められた。B群では、コントロール期間では血圧の変化は認められず、治療期間前後で平均して収縮期血圧は20mmHg,拡張期血圧は9mmHgの有意な低下が認められた。また、治療期間前後に施行したストレス負荷テスト(暗算負荷法)による昇圧反応は、A,B両群において顕著な抑制効果が認められた。本態性高血圧症を対象にした暗算負荷法(以下MATと略す)と鏡映描写試験(以下MDTと略す)の循環動態ならびに内分泌的反応性の比較試験を10人の外来患者に施行した。MATおよびMDTにより平均収縮期血圧はそれぞれ37.8mmHg,41.0mmHg、平均拡張期血圧はそれそれ17.5mmHg,21.2mmHg、平均心拍数はそれそれ17.1拍/分,12.5拍/分と顕著な増加が認められた。血中ノルエピネフリン濃度は、MATおよびMDTで同様な反応性を示したが、エピネフリンはMATでより増加する傾向が認められた。その結果、MATはより交感神経-副腎髄質系を賦活するメンタルテストであることが示唆された。
著者
郡 千寿子
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

従来、発掘整理や資料価値など、研究が十分にすすんでいなかった、往来物資料について、調査を実施し、その分類整理を行った。特に北東北地域所蔵の往来物資料について、書誌的文献学的な紹介とともに、その分布や偏在状況を提示した。近世期における秋田、岩手、青森の諸地域の教育環境や文化的背景を考察検討するうえで、それらの資料群が重要な示唆を与えてくれるものであることが判明した。今後、近世庶民生活や教育の実態について、発展的応用的な研究基盤となることが期待される。
著者
宮村 浩子
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,1枚の画像を観察するだけで,3次元時系列医用画像データの情報を確認することができる情報提示法を提案した.大量のデータを診断する必要がある医療の場において,少ない枚数で精度良く診断できることは大変有意義である.本研究成果を用いることで,複数方向から観察したときに得られる情報や,時間変化を伴う情報を1枚の静止画から得られるので,少ない枚数で精度良い診断を実現する.また,この静止画像を「ボリュームナビゲーションシステム」として利用することで,適切な可視化結果を得て,診断できるフレームワークも提案した.
著者
高橋 実 小海 節海 藤脇 千洋 平沼 博将 上田 順子
出版者
福山市立女子短期大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

7月に短期大学保育科の学生約100人に対し、90分のダンスセラピーを実施し、その前後の血圧、脈拍、身体イメージアンケート、ストレスの自覚症状アンケート、身体、精神状態、仲間との交流に対する気づきの記入を依頼した。そして、9月には、子育て中の母親に対してガイダンスの後3回のダンスセラピーを実施し、今年度からは、保育ボランティアによる別の場所での保育を行い、母親の身体が十分ほぐれた後に最後の後半のみに親子のセッションをおこなった。その際、研究分担者、藤脇教授によるピアノの即興演奏によるBGMをいれて実施した。すべてのダンスセラピーのセッションの前後で、血圧、脈拍、七夕の歌をブレスなしで歌っての持続フレーズ、発声時間を測定した。その結果、血圧については、学生のセッションのみで、セッション後に有意な低下がみられ、脈拍については、学生でも母親グループでも有意な低下がみられた。また身体イメージの調査では、芙二式ダンスセラピーの実施することで「評価性」「活動性」「快活性」という三つの尺度で身体イメージに変化(改善)が見られた。特に「活動性」については、静的で落ち着く方向に身体イメージが変化した。また自覚症状においても有意な軽減がみられた。また母親グループの歌の持続時間については、セッション後に伸びる方向で傾向差が、発声時間については、5%水準で有意に伸長することが見いだされた。気づき記入においては、両グループとも「身体が軽い感じ」「頭がすっきりした」「やる気がおきた」「気分的に明るくなった」「相手を感じることで1つになれた」など多様な効果が記述された。芙二式ダンスセラピーは、生理学的にも精神的にも、交流関係においても静的で落ち着き、気分が前向きになり、他者との一体感が得られるという効果がみられることが実証された。
著者
鍋山 祥子
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

今年は、「遠距離介護とコミュニティの関連」を明らかにする研究計画の最終年次にあたり、特に山口市内に居住し、別居子を持つ高齢者に対する聞き取り調査をおこなった。そのなかから、地域の人的資源(近隣住民とのつながり)に生きがいを見いだしながらも、別居家族(特に子ども)に精神的な拠り所を求めている老親の姿が明らかになった。これまで、遠距離介護に関するインタビュー調査の傾向として、遠距離介護をおこなっている別居子に対する調査が中心であった。そこで、本研究において、別居子を持ちながら、地域で生活を続ける高齢者へのインタビュー調査が実施できたことは、遠距離介護を多角的に考えるうえで、非常に意義のあるものとなった。そして、初年度の別居子に対する質問紙調査と、次年度の遠距離介護を実践している別居子へのインタビュー調査、さらに今年度の老親へのインタビュー調査の結果から、老親の住む地域が遠距離介護支援のためにできることと、望ましいサービス体制、並びに地域が遠距離介護支援に取り組むことのメリットなどを明らかにした。本研究によって達成した、老親の住む地域における遠距離介護支援の望ましいあり方とその必要性についての認識を基盤として、今後は、別居子のワーク・ライフ・バランスと遠距離介護との関係に焦点をあてる。そして、地域における遠距離介護支援が別居子のワーク・ライフ・バランスにどう影響するのかという分析をおこない、超高齢社会における労働政策と地域福祉政策を考察していきたい。
著者
石原 謙 立石 憲彦 木村 映善
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

現在、産婦人科専門医の確保が厳しく、遠隔診断やオピニオンが求められるようになっている。医師との迅速な連携の為に愛媛大学では携帯電話を用いたCTG(胎児心拍陣痛図)の伝送や、安全な医療情報ネットワークを介した伝送による遠隔医療期間の連携の試みを行ってきた。それらは一定の成果を挙げたが、CTG伝送をする為にはサーバの設置やネットワークの整備、設定を要求されるなど、利用までの敷居が高く、普及する要素が低かった。翻って一般家庭におけるブロードバンド環境の普及は進み、現在ではADSLやFTTHの引き込みを前提環境として想定することが容易になった。そこで、一般家庭で利用されているブロードバンド環境下に設定の必要がないCTG伝送システムを実現することによって容易に胎児心拍陣痛図の監視システムの導入が出来ることを目指した。この事によって高リスク因子の妊婦を自宅にて静養させることが実現出来る。具体的には一般家庭で導入されているブロードバンドルータのDHCPもしくはUPnP機能からホームネットワークの環境を自動的に検出し、インターネットへの接続を確立する。どのような環境でも胎児心拍陣痛図のモニタリング・センターへデータを伝送出来るようにHTTPプロトコル上に暗号化されたSOAPメッセージを使って胎児心拍陣痛図を伝送する。RS232Cで接続された胎児心拍陣痛図のプローブからデータを採取し、SOAPメッセージに載せるXML形式の連続データに変換を行い、あらかじめ指定されているモニタリング・センターのWebサービスサーバと公開鍵認証を行って送信する。センターでは各地から取得されたメッセージをXML形式で保存し、データベース参照や地域医療システムとの連携を実現している。設定が不要で場所、時を選ばずに誰でも容易に胎児心拍陣痛図の確認を依頼出来るようになる為、周産期医療の充実化が期待される。本研究を進めるにあたって、医療機関毎に導入している医療機器によって扱われる胎児心拍陣痛図や各種医用波形データが異なる為、MFERの利用を着想し、MFERデータを扱う為のパーサを開発した。現在、医用波形をMFER形式に変換し、それをSOAPメッセージにエンコーディングした上で、リライアブル・マルチキャスト技術を利用したメッセージングシステムでSOAPメッセージを配布する実装の開発中である。