著者
近藤 勝直 西井 和夫 衣笠 達夫 長峰 太郎
出版者
流通科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1.各種公益サービス事業の価格・組織制度の理論的整理:事業形態およびサービスの質,公共財と私的財の性格,そして事業展開エリア(国,文化)等の違いにより価格制度が異なる.また事業の目的関数(利益最大か収支均等か)によっても違いがある.本研究ではこれら各種の道路料金理論について総括的にレビューした.日本の高速道路の場合は基本的には公設公営であり,償還制度の元で価格(料金)が設定されるが,国際的にはバライエティがある.ただ,償還に用地費や建設費や資本費を含めると,償還後に矛盾が露呈する.これらを償還からはずしたとき料金水準はいくらになるか,またいくらにすればよいのかについて慎重な検討が必要である.本研究では,建設主体,資金提供者,運営主体,さらに建設後あるいは供用開始後一定期間後の移管,等々の形態についても考察した.2.新しい理念下での価格づけ:料金改定がままならない現在,かといって価格が低いと潜在需要が顕在化し「高速道路」はなくなる.では高速サービスを維持してゆくための水準を求めるために混雑料金や環境税の概念も導入する必要がある.そして,その理念が公共的であれば公的助成が正当化される.しかし高速サービスはあくまでも私的財であるので受益者負担原則が適用される.ここではTDMの観点からいくつかのプライシングについて理論的検討と計算による効果について検証した.(計算例については機会を見て公表の予定である.)
著者
宗澤 岳史
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題は、睡眠薬の相補・代替治療として注目されている不眠症に対する認知行動療法(以下CBT-I)に関する研究として(1)CBT-Iの睡眠薬の減薬・離脱効果の検証、(2)不眠症に対する集団認知行動療法の開発と効果の検証を実施したものである。本研究結果から、CBT-Iは(1)睡眠薬の減薬・離脱の効果を有する,(2)集団療法においても不眠症状の改善効果が期待できることがそれぞれ確認された。
著者
本間 研一 棚橋 祐典 西出 真也 仲村 朋子 山田 淑子 安田 円 首藤 美和子 山仲 勇二郎 橋本 聡子 徳丸 信子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

生物時計の中枢である視交叉上核には多数の振動ニューロンが存在し、それらが相互同調して性質の異なる複数の領域振動体を形成している。領域振動体は視交叉上核の部位により役割が異なり、それらの相互作用によって活動期の長さが決まり、行動リズムの季節変動を作っている。一方、周期的制限給餌や覚醒剤の慢性投与で生じる生物時計の障害は、中枢時計と末梢時計との解離により生じ、行動リズムを駆動する末梢時計は中脳にあることが示唆された。
著者
安藤 広子 塚原 正人 溝口 満子 市川 尚 飯野 英親 浅沼 優子 横山 寛子 HEATHER Skirton KAREN E. Greco CYNTHIA A. Prows
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

わが国の看護基礎教育において遺伝遺護教育を導入・発展させていくために、看護教員のための教育プログラムの開発にあたり、国内・外の遺伝看護教育の実態調査を行った。それによると、基礎教育全体に遺伝看護の要素が盛り込まれる傾向にあること、看護学以外のコースに「遺伝カンセラー養成」等の大学院修士レベルのコースが設置されつつあった。しかし、「遺伝看護教育」とはどのようなものであり、その教育展開はどうあったらよいかを知りたいというニーズが多かった教育プログラムの内容および展開方法については、海外の研究協力者と共に国際的な視野から検討を行い、実施した。そして、臨床遺伝学の基礎と主な疾病の事例展開を中心に、E-ラーニングと対面授業を行い、websiteでの調査とフォーカスグループ・インタビューによる評価を行った。学習モニターは、全国を8ブロックに分けて募集をした看護学教員30名であった。対面授業による学習者の情報交換および交流は、遺伝看護教育のあり方を検討する上で、有意義な反応がみられた。また、学習者の要請により、本研究において作成したE-ラーニング教育内容および「国際遺伝看護教育セミナー2007&2008」の講義内容を冊子体に編集をした
著者
野村 亜由美 本田 純久
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は, 2004年スマトラ島沖地震によって津波の被害を受けたスリランカ南部地区において, 60歳以上の被災住民25人を対象に,認知症を主眼とした津波被災後の日常生活の変化,健康状態などに関する聞き取り調査を行った.また被災地区に住む医師,担当政府官らから,津波被災前後の住民の精神被害の状況,経済状況や人口変動などに関する情報を収集するとともに,高齢者を対象とした地区活動に参加しながら,当該地区が抱えている問題と課題について分析を行った.分析の結果,被災地区の60歳以上の認知症発症率は1パーセントから2パーセント程度,認知症有病率については,津波後の人口流出などもあり数値にばらつきがあるが, 70歳以上の認知症テストMMSE(Mini-Mental State Examination)では,軽度の認知症疑いが15パーセントから17パーセントであった. MMSEの検査項目の内,特に得点が低かったのが月日や計算式の問いであったが,これらには文化的背景(教育歴,経済状況等)がバイアスとなって影響を及ぼしていると考えられるため,総得点だけから認知症疑いと結論付けるには注意が必要であり,更なる研究が必要であると思われる.津波被災前後の認知症の発症率・有病率の変化については,被災前のデータがないため明らかではないが,被災後の発症率については津波被災による心的外傷が原因となる明らかな増加は認められず,自然増加内に留まっていると考えられた.また本調査を開始した2006年以降,津波被害を要因とした住民の精神的健康度や身体的健康度には顕著な影響は認められず,心的外傷と認知症との間には関連がないと現段階では推測している.
著者
北本 朝史 服部 俊幸 鈴木 正昭 赤塚 洋
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1991

本研究は《固相分子法による高選択レーザー分離法》(『固相レーザー分子法』)を確立するために、分子衝突が無視できる反応場で量子反応を選択的に制御し、レーザーによる高選択性、高収率をもたらす《新分離方法論》を構築する。固相マトリックスの創成条件を測定するためクライオスタットを製作した。クライオスタットを含むマトリックス創成装置を用いて、光学的に透明で凝縮相の成長速度が大きい条件に関して、基板温度一定の条件で測定した。またその結果を理論解析によって推定し、成長のメカニズムを検討した。液体窒素温度(-195.8℃)で固相マトリックスの創成実験を行ない、凝縮可能なキセノンガスを凝縮させた。またキセノンの透明な凝縮相を多層化する機能条件を確立した。キセノンガスの固相マトリックスは不活性分子の凝縮体であるため、光学的な吸収帯は認められず、光学特性は良好であった。またSF_6分子の単分子相をマトリックス中に層状に吸着させ、キセノンガスでコートする多層化法を検討する。レーザーにより反応性分子(SF_6)を励起、解離させる方法を実験的に検討する。次に反応分子の励起エネルギーがキセノン分子によって緩和されるので、解離分子の寿命を光学的に測定し、解離分子の平均寿命を延長するための方法論を研究する。数値解析によると、結晶表面の適応係数αおよび結晶の熱伝導度(結晶密度)がこれらの環境にとって重要な因子であることが分かった。『ラジカルライフタイム測定システム』を用いて透明結晶層の光透過度を測定し、波長依存性を測定した。その結果、結晶の透明度は表面温度と密接に関係していた。また結晶の成長速度は結晶の透明度を決定する要因ではなかった。
著者
久保田 実 鰭崎 有 柄木 良友 稲田 ルミ子 信貴 豊一郎
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1988

本研究は、絶対温度0.01K以下までの低温を容易に室温から数時間で作り出し、また急速に室温まで戻すことができる、しかも必要とあれば長時日に及ぶ連続運転が可能な"運搬が容易にできる新しい型式の希釈冷凍機"を試作開発するものである。第2年度末までに、開発の第1段階である'室温に ^3He回路のみを持つ ^3He JーT希釈冷凍機'で32mKを安定に作ることに成功し、第2段階の' ^3Heを室温部のポンプや圧縮機を使わずに循環する低温 ^3He回路の開発'をスタ-トさせた。今年度はこれを更に推進するために(1)4.2K〜30Kで働く活性炭吸着ポンプー圧縮機の試作とその基本特性の測定、(2)低温 ^3He加圧回路に欠かせない低温バルブの試作と、性能試験を行い、所期の目的の100μmole/s程度の循環を可能とする条件を見いだした。この結果は1990年4月の低温工学国際会議ICEC13(北京)、および低温物理学国際会議LTー19(1990年8月Brighton)に於て発表した。しかしながら複数の低温バルブと複数の吸着ポンプとを組み合わせて低温 ^3He回路を自動運転するには未だ至っていない。我々は低温バルブにはインコネル製の"Cーリング"と呼ばれるシ-ルを用いているが繰り返し使用するバルブの閉りと信頼性を改善するために"Cーリング"の表面をみずからインジュウムメッキして使用している。信頼性の向上にはシ-ル面の工作精度も問題でありその試験に長時間を要する。一方分溜室の温度を下げ冷凍機の性能向上を計るために吸着ポンプも3*10ー2mb程度の圧力まで十分機能する必要がある。ポンプ内のコンダクタンスの改善が望まれる。これらの問題点を解決して総括報告が1年以内にできるものと考えている。
著者
宮下 規久朗
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、1600年前後に初期キリスト教文化がいかに再評価されたかをあきらかにし、それが聖堂装飾をはじめとする当時のローマの美術活動に主題上・様式上いかに反映されたか、そしてそれが聖年における教皇庁や宗教団体の教義や政策、プロパガンダとどう関係したかを考察し、主要な画家の動向を追いながら、新たなバロック美術の誕生を促したメカニズムを総合的に解明しようとするものである。こうした調査によって、後期マニエリスムから初期バロックにいたる、イタリア美術史上もっともダイナミックな転換点の美術に、従来と異なる角度から光を当てることができ、また筆者が継続して行ってきたカラヴァッジョ研究にも、裏付けと深みを与えることができた。平成14年度は主として教皇庁における反宗教改革期の美術政策について研究を行った。反宗教改革期には、教皇庁の美術が当時の公的な美術様式と認定され、各教団の美術政策や個人の美術嗜好に強く影響していたからである。具体的には、16世紀から17世紀にかけての教皇権が、当時の欧米の歴史情勢の中でどのような政治的・社会的位置をしめていたのか、またそれが公的な聖庁であるヴァチカン宮殿と一族の居城であるパラッツォの美術装飾にどのように反映しているかについて調査した。平成15年度は、反宗教改革の国際的広がりという視点から、イタリア以外に普及した反宗教改革期の美術様式に注目した。また、わが国の禁教下から今日にいたるまでのいわゆる「隠れキリシタン」の美術については、その聖像(イコン)が存在するにもかかわらず、美術史上の研究対象となったことはほとんどなかった。しかし、キリスト教主題を持つ原図が閉ざされた社会でいかに変容し、異種の図像にいたるかというきわめて興味深い問題を提示しており、長崎県生月島で今も信仰されている聖画(納戸神・御前様)について若干の調査研究を行い、小論文を執筆した。平成16年度は著書『カラヴァッジョ 聖性とヴィジョン』をまとめるため、今までに書いた諸論文を点検して書き直す作業に従事した。とくに第二章「1600年前後のローマ画壇とカラヴァッジョ」は、かつて書いた論文をほぼ全画的に書き直し、大幅に加筆してほとんど新しい論文にしてしまった。このように、1600年前後の混沌とした美術の状況と、反宗教改革とキリスト教考古学の流行に鼓舞されて起こった新たな潮流を、カラヴァッジョの革新という座標軸を設定することであきらかにすることができた。
著者
杉山 三郎 佐藤 悦夫 植田 信太郎 谷口 智子 渡部 森哉 伊藤 信幸 嘉幡 茂
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は新大陸の古代都市の成立とその変容・盛衰の諸問題を、斬新な技術や方法論を用いながら学際的視点から考察することを目的とする3年計画のプロジェクトである。最初の2年間は古代モニュメントと表象に関する資料を収集し、考古学、歴史学、民族史学、宗教学、人類学また生物化学的視点を織り交ぜ、コンピューター解析、空間分析、統計処理を行った。特にメキシコ政府研究所とテオティワカン「太陽のピラミッド」の発掘調査を行い、貴重な都市形成期の資料を得た。
著者
尼岡 邦夫 矢部 衛
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

南半球のダルマガレイ科魚類の種の多様性とその分散の経路を明らかにする目的で、サンゴ海、オーストラリアやニュージーランド周辺海域から集められた約3,000個体の本科魚類を雌雄差、老幼差などを考慮して、コンピューターで分析し、分類学的研究を行い、次のような結果を得た。本海域には本科魚類はイトヒキガンゾウビラメTaeniopsetta属1種、ミツメダルマガレイGrammatobothus属1種、ホシダルマガレイBothus属2種、コウベダルマガレイGrossorhombus属1種、ヤリガレイLaeops属1種、ヒナダルマガレイJaponolaeops属1種、ヤツメダルマガレイTosarhombus属3種、ダルマガレイEngyprosopon属10種、イイジマダルマガレイPsettina属3種、ナガダルマガレイArnoglossus属10種、スミレガレイParabothus属3種およびセイテンビラメAsterorhombus属3種の12属39種分布している。そのうち、14種が未記載種であり、次の10種、Engyprosopon bellonaensis, E.septempes,E.rostratum,E.longipterum,E.raoulensis,Tosarhombus necaledonicus,T.longimanus,T.brevis,Parabothus filipesおよびArnoglossus micrommatusは新種として記載し公表された。他の未記載種は投稿中または投稿準備中である。Arnoglossus bleekeriおよびPsettina variegatusは原記載以後初めて記録され、T.ocellata,Bothus myriaster, C.kanekonis,L.kitaharae,J.dentatus,E.grandisquamus,E.xystrias,E.maldivensis,E.hureaui,Parabothus kiensis,P.coactatus,Psettina iijimae, P.variegatus,Arnoglossus macrolophusおよびA.tenuisの15種は南半球から初記録である。本研究で南半球の本科魚類相を初めて明らかにしたが、属レベルでは北半球のものと100%、種レベルでは約50%が共通し、本科魚類に関しては両半球間に明瞭な障壁は認められない。本科魚類は底生魚であるが、浮遊性仔魚によって分散することと関係している。
著者
亀谷 乃里
出版者
女子栄養大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

バルバラの生涯と未発見作品並びに彼に関する批評の発堀作業の結果報告。1.Soci【e!´】t【e!´】 des gens de lettres所有の古文書から(1)1846年12月8日付、協会長宛のバルバラの手紙(入会願い)(2)1847年1月6日付、バルバラの入会確認書、(3)1872年12月2日付、墓石商未亡人の協会宛の手紙(バルバラの基地使用期限切れの件)(4)1882年12月2日付、バルバラの弟、ジョルジュの協会長宛の手紙(シャルル・バルバラの遺児のため奨学金依頼の件)、以上を発見。(1)にはそれまでに発表されたバルバラの作品リスト及び寄稿したp【e!´】riodiguesの記載があり、中には未発見作品も含まれp【e!´】riodiguesに実際当って次の作品と事実が発見、判明した。・"Un Chiffonnier,"Almanach populaire de la France,Paris,1845,pp.95-100;・"O【u!`】est le drame? O【u!`】est la farce? Un Paillasse",Le Tam-Tam,11 sept,1836;・Le Conteur Orl【e!´】anais(recueil),Orl【e!´】ans,1845に寄稿;・Le Corsaire,Le Corsaire Satanに寄稿し始めた年が1845年又は1846年と判明。・1846年にバルバラがN゜2 M.le Princeに居住した事実が判り、シャンフルリの『回想』の中で語られている諸事件の年代が判り、以後の調査のための大きな手懸りを得た。(2)よりバルバラの文芸家協会入会年月日が判明。2.バルバラの友人ナダールの寄稿を手懸りに、・"Le Tems la Vie et la Nourriture 【d!´】unHomme,Le Commerce,24nov.1843を発見。3.バルバラの二児の出生証明書を発見しその名前と出生年月日が判明、(Marie Charles Eug【e!`】ne Antoine,1862年10月22日;Pierre Gabriel,1864年12月3日)、4.義母とGabrielの死亡証明書を発見し、バルバラとその妻、息子の一人、義母が5日間で相次いで死亡したことが判明。5.Arthur Pouginによるバルバラの記事、"Charles Barbara",La France musicale,7 oct.1866を発見。この中で未だ知られていないバルバラの作品の題"Organiste"があげられていて、以後の作品発見の手懸りを得た。
著者
佐伯 聰夫 仲澤 眞 矢島 ますみ 鈴木 守 間宮 聰夫
出版者
筑波大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

競技スポーツ大会の開催には、地域経済への波及効果を含め、地域住民のアイデンティティやロイヤリティ醸成等の地域活性化に対する効果が期待されている。しかし、一次的な競技大会の開催では、その効果も一過的なものに過ぎない。そこで本研究は、継続的・定期的な開催によって地域社会における社会制度にまで発展した競技スポーツ大会が、当該地域のコミュニティ形成にどのような意味を持ち、どのような機能を果たしているかを競技大会と地域社会の関連分析から調査した。具体的には、それぞれの競技大会開催地域に赴き、大会運営機構、関連組織、地域行政、地域住民組織、一般市民、学識経験者等にインタビユー調査を、また、合わせて関連資料の収集と分析を行うことによって明らかにしようとした。平成8年度調査は、単一種目の競技大会では至高の権威を有するウインブルドン・ローンテニスチャンピオンシップスとオーガスタ・マスターズトーナメントを事例に調査した。平成9年度調査では、伝統や歴史を担う民族文化的性格を持つ競技大会として、中世サッカーを再興させているフィレンツェ・カルチョストリコとバスク・ルーラルスポーツを事例として調査した。平成10年度調査は、グローナリゼーションの中にある地域形成の問題を焦点にして、英国スカイ島のハイランドゲームズとドイツ・バイヤー04レーバークーゼンのブンデスリーガ・ホームゲームを事例に調査した。こうした調査で得られたデータ分析の結果、競技大会が地域社会における社会制度として発展し、豊かなコミュニティ形成の機能を発揮するためには、競技大会が当該地域住民のコミュニティ・アイデンティティやローカル・ロイヤリティのシンボルとなることが重要であり、そのシンボル化作用は、長い開催の歴史に支えられた競技大会の権威、伝統文化やエスニシティと関わる文化的固有性、そして住民の生活と密着しながら社会変化に対応する柔軟な運営システムが必要なことが分析された。
著者
沢田 知子 丸茂 みゆき 曽根 里子 谷口 久美子 渡邊 裕子 山下 哲郎 南 一誠 高井 宏之 西野 亜希子
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008-04-08

本研究は、近年の長寿命住宅への要請を踏まえ、官民の供給事例を対象に、体系的・経年的調査を実施し、「長寿命住宅(ハード)に対応する住まい方像(ソフト)」を明らかにすることを目的とした。調査(3種)として、「フリープラン賃貸住宅」の居住過程調査、「公的賃貸住宅(KSI含む)のライフスタイル調査、「住まいのリフォームコンクール」入賞作に関する調査を実施。その成果物として、日本建築学会査読論文3編、「長寿命住宅に対応する住まい方事例集」報告書等を作成した。また、100年超を視野に入れた長寿命化を図る「リフォーム計画論」として、現存住宅の所有者更新に力点をおいた「計画技術」を蓄積する必要性を示唆した。
著者
丸本 浩
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

研究目的:平成22年度の先行研究に続いて,「たたら製鉄法(けら押し法)」の基礎的な実験データの積み重ねを行い,(1)「たたら製鉄法」の操作方法の改善と収率の向上,(2)「たたら製鉄法」によって作った「けら(鋼)」の加工方法の開発と工夫,(3)「鉄」や「鋼」に関する情報収集および教材開発の3つの柱を立てて研究に取り組んだ。研究方法:(1),(2)は,実際に「たたら」を操業して,さまざまなデータを計測し,得られた「けら(鋼)」の中に含まれる不純物を「電気炉」を用いて加熱・加工して取り除く実験を行った。(3)は,「たたら製鉄法」や「鉄」に関する博物館等へ行き、資料や情報を収集して教材開発を行った。研究成果:(1)平成22年度の先行研究で得られた成果をさらに発展・充実させ、鋼の収率の改善や操作時間の短縮,炭の種類の違いによる影響を緩和する操作方法の開発,収率の向上などの成果を得ることができた。(2)「たたら製鉄法」によって得られた「けら(鋼)」に含まれる不純物を,電気炉を用いて加熱・除去する操作は非常に困難な作業で,何度か試みたが納得のいくような加工ができているとはいいがたい。今後,さらに研究を継続し,教材として完成させたい。(3)「たたら製鉄法」を中心にして「鉄」や「鋼」を題材とした授業を構築するめどをたてることができた。今後、授業実践を行い,教材の完成度を高める取り組みを継続していきたい。
著者
鮎京 正訓 宇田川 幸則 姜 東局
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

「郷約(きょうやく。村のおきて)」とは、中国に起源をもち、朝鮮半島、ベトナムに伝播した、村落共同体における冠婚葬祭、近隣紛争、軽微な犯罪の処罰などに関する成文化された規範を指します。本研究は、1980年代末以降のベトナムにおける郷約(きょうやく。村のおきて)の復活という現象に注目し、それを、東アジア、特に中国と韓国との比較によって、法治と村のおきて(郷約)という二元化状況を視野の中心に据え、アジアにおける伝統法の再生のプロセスを明らかにすることを目標としました。
著者
吉田 治典 上谷 芳明 梅宮 典子 王 福林
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

都市のヒートアイランドなどに代表される熱的環境悪化の改善と都市の省エネルギーを、都市街区と建築をリンクした熱環境評価をベースにして研究し、次の5つのサブテーマに分けてまとめた。1.都市街区の熱的環境分析と環境改善種々の街区構成や地表面状態の異なる都市上空で顕熱・潜熱流を計測し、その特性を分析するとともに、街区の3次元CFDシミュレーションを建物や道路の表面温度と緑化の蒸散モデルを与えることにより行って熱環境の改善や開発の指針を示した。2.都市と建築のインターフェイス空間としての街路における熱的快適性評価自然の影響を受けて形成される内外空間の体感評価を、申告調査と物理的温熱環境要素の測定結果の両方を基にして行った。また、町家の多様な住まい方や工夫を,環境の物理測定、主観申告調査、行動様式調査などの総合的な視点から調査分析し、住み手が主観的に快適な環境と感じるのはどういう環境かを明らかにした。3.樹木からの蒸散量推定のためのモデル化樹木の蒸散現象を気孔コンダクタンスによってモデル化し、そのパラメーターを推定する手法と実在の樹木の葉面積を算定する手法を確立して、街区の熱環境予測に利用できる樹木の蒸散量を見出す手法を開発した。4.全天空輝度分布の推定法と応用天空放射分布をモデル化し熱負荷への影響を一様分布の場合と比較し、その差を分析した。また、人工衛星で得られるリモートセンシングデータを用いて特定の室の照度をシミュレーションで推定し照明設備を制御する手法を確立した。5.都市への熱負荷を減少するための季間蓄熱システム季間蓄熱システムを備えたビルの蓄熱エネルギー最適制御法を開発し、このシステムの性能をシミュレーションで再現して検証を行った。また、このモデルを用い最適な運転制御方法を開発し、それを実システムで確認した。以上の成果を、33編の査読付き論文と、99編の口頭発表論文に報告した。
著者
大住 晃 大瀬 長門 澤田 祐一 井嶋 博
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,超高層ビルの不規則外乱(地震動や風など)による振動の抑制に対するアクティブ制御問題について,高層ビルに加えた入力とその出力である振動データに基づいてアクティブ制御方式を確立することを目的としている.制御対象となる構造物のダイナミクスのモデリングは本研究代表者がすでに確立している連続時間部分空間システム同定法を用い,また制御法としては,すでに確立している地震動と風外乱それぞれを分離して制御する機能分担(Functionally Assigned Control)方式を用いた.縮尺1/200の実験模型を製作し,実験を実施してモデリングと制御が理論どおりに行なわれていることを確認した.(i)平成16年度:入出力データを用いてモデリングを行う部分空間システム同定アルゴリズムの構築と,アクティブ制御方式(FAC制御方式)のコンピュータアルゴリズムの確立およびコンピュータシミュレーションによる確認を行なった.またスケールモデルとして地上200m,50階建て,一辺が40mの高層ビルを想定し,その1/200の模型を製作し実験を実施した.(ii)平成17年度:カルマンゲインを含めたシステムの部分空間同定アルゴリズムを構築し,初年度に製作した実験モデルを用いて制御実験を実施した.(iii)平成18年度:FAC制御方式を予測制御アルゴリズムに組み込み,構造物の縮尺モデルでは偏心によるねじりを考慮し,x, y-2軸のアクチュエータにより制御が可能であることを確認した.
著者
塩野 正明
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

1.LDE法によりリボヌクレアーゼAp1の直接構造決定を試みた。分解能8Aの反射にランダムな位相を与え、実測データの上限である分解能1.17A(23853反射)まで位相を拡張及び精密化を行ったところ、平均位相誤差81.7°、規格化構造因子と修正後の電子密度から得られた構造因子の大きさにより重みを付けた平均位相誤差76.5°が得られた。この位相により計算された電子密度から主なピークを拾ってみると、大きなものから順に、1、4、5、8番目のピークがS原子のものであることが判明した。ちなみにリボヌクレアーゼAp1の分子は5つのS原子を含む。2.リボヌクレアーゼAp1の空間群はP2_1であり、b軸に垂直にハーカーセクションが現れる。ハーカーセクションが現れるピークがすべて自己ベクトルに起因するものと仮定し、電子密度にフィルターをかけてみた。これを用い、全反射にランダムな位相を与えて初期値とし、位相精密化を行ったところ、20回の試行のうち18回、1.で得られた位相と同等のものが得られた。3.リボヌクレアーゼAp1の5つのS原子の位置より計算した位相を初期値として精密化を行ったところ正しい構造が得られた。LDE法は部分構造から全体構造を導出する能力に優れており、1.と2.で得られた電子密度から正しい構造が得られる可能性は十分にある。これについては現在計算中である。4.LDE法とヒストグラムマッチング法の比較検討を行った。ヒストグラムマッチング法は低分解能から高分解能のデータまで適用出来、ある程度は位相精密化可能である。LDE法は、低分解能領域においてはヒストグラムマッチング法に劣るものの、高分解能領域では位相拡張及び精密化の能力は非常に優れていることが判明した。5.LDE法を、実測データが手元にある2‐Zn‐pig‐insulinとリボヌクレアーゼSaに適用した結果、どちらの構造でも平均位相誤差70°からはじめて、重み付き位相誤差55°程度まで精密化することに成功した。
著者
安岡 則武 安岡 則武
出版者
姫路工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

硫酸還元菌Desulfovibrio vulgaris Miyazaki F 株のヒドロゲナ-ゼは膜結合性の酵素で、2個あるいは3個の鉄ーイオウ・クラスタ-のみを活性部位としている。このヒドロゲナ-ゼ結晶(分子量89000)の鉄原子の異常分散を利用して、その活性部位の位置を決定するため5波長のX線を用いて回折実験を行い、活性中心を同定することができた。X線の光源には高エネルギ-物理学研究所のSR光を使い、測定装置は坂部らの開発した巨大分子用ワイセンベルグカメラを利用した。反射デ-タは富士フィルム社のイメ-ジングプレ-トに記録させ、BA100で読み取った。回折強度の結晶間のスケ-リング時に導入される誤差を除くため、5波長の回折デ-タを1個の結晶から収集した。X線の波長は1.75(Δf'=5.34,Δf''=0.47)、1.74(Δf'=ー6.1,Δf''=3.94)、1.73(Δf'=ー4.49,Δf''=3.89)、1.49(Δf'=0.89,Δf''=3.03)、1.00A(Δf'=0.236,Δf''=1.56)を用いた。測定した回析強度パタ-ンを指数づけした後、ロ-カルスケ-リングなどを施し一連のデ-タセットとした。スケ-リングのR値(Rscale)は全てのデ-タセットについて4〜5%前後であり、測定時に大きな系統的誤差が導入されていないことがわかった。各波長のデ-タ間のRmergeに着目すると、Δf'やΔf''の差が大きい波長において、Rmergeの値が大きくなっている。これは予想通り異常散乱効果が観測されたことを示している。得られたFーデ-タについて、(F(1.74)ーF(1.00))^2,(F(1.75)ーF(1.00))^2,(F^+(1.74)ーF^ー(1.73))^2などを係数とするパタ-ソン関数を計算した。それぞれのハ-カ-セクションにおいてつじつまの合うピ-クが現れている。しかもこのピ-クが異なったパタ-ソン関数に共通して見られる。このようにして 2つの鉄ーイオウ・クラスタ-の位置を同定することができた。
著者
桐畑 哲也
出版者
甲南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本の大学発ベンチャーの知的財産マネジメントにおける外部資源活用実態として,(1)事業計画策定にあたって外部資源から助言を受入れていない割合がイギリスの2倍以上に上る,(2)経営人材獲得において個人的ネットワークが中心となっている,(3)資金調達において自己資本,公的補助が中心となっている,(4)大学への依存が高いこと等が明らかとなった.日本の大学発ベンチャーは,個人的ネットワーク,自己資本への高い依存等,外部資源の活用が十分ではない.また,大学への依存が高く,他の外部資源との連携が十分ではないことが課題である.