著者
石井 仁
出版者
人間‐生活環境系学会
雑誌
人間‐生活環境系シンポジウム報告集 第44回人間-生活環境系シンポジウム報告集 (ISSN:24348007)
巻号頁・発行日
pp.127-128, 2020 (Released:2021-04-23)
参考文献数
3

大便器ブースの内装色と寸法の違いが感覚時間ならびに大便器ブースの印象評価に及ぼす影響について, ヘッドマウントディスプレイを用いた仮想空間により検討した。その結果,大便器ブースの寸法は感覚時間に, 内装色と寸法は大便器ブースの印象評価に影響を及ぼすことを明らかにした。
著者
川島 啓嗣 諏訪 太朗 村井 俊哉 吉岡 隆一
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.168-174, 2014-04-15 (Released:2017-06-03)
参考文献数
24

電気けいれん療法の刺激を構成する個々のパラメータは,それぞれ固有の神経生物学的効果を有し,有効性や認知機能障害に大きく影響するが,本邦においてそれらのパラメータについて十分な注意が払われているとは言い難い。本稿ではパルス波治療器で調節可能なパラメータである刺激時間,パルス周波数,パルス幅に焦点を当ててこれまでの議論を概観し,刺激時間が長いこと,周波数が低いこと,そしてパルス幅が短いことが効率的な発作誘発に有利であることを確認した。最後にパルス波治療器の最大出力で適切な発作が誘発できない場合に,刺激パラメータ調節が有効な場合があることを特にパルス幅に注目して論じ,その理論的な手がかりについて考察した。
著者
鈴木 幹男
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.6, pp.862-867, 2019-06-20 (Released:2019-07-01)
参考文献数
29

ヒト乳頭腫ウイルス (HPV) 関連中咽頭癌が欧米諸国では年々増加している. 本邦でも中咽頭癌の約50%が HPV 関連癌と推定されている. HPV 関連中咽頭癌の診断にはウイルスそのものではなく, p16 免疫染色が用いられる. 中咽頭癌検体を用いた解析では p16 過剰発現例は HPV 感染を伴っている. ただし, p16 が過剰発現しているが, HPV 感染がみられない例も報告されている. これらの症例では HPV 関連中咽頭癌よりも予後が悪いことが示されており, 慎重に取り扱う必要がある. 中咽頭以外の頭頸部癌では, 中咽頭癌と同様に p16 過剰発現を HPV 関連癌の診断基準としてよいか結論がでておらずさらに検討が必要である. 同時に中咽頭癌以外の HPV 関連癌の予後や臓器温存率について今後明らかにしていく必要がある.
著者
Kaho Ohta Yuna Motohira Yuki Maruishi Ikuko Minami Hiroshi Kobayashi Hiroya Ishikawa
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
Food Science and Technology Research (ISSN:13446606)
巻号頁・発行日
pp.FSTR-D-23-00071, (Released:2023-07-31)
被引用文献数
1

Lipid oxidation in food can result in the generation of off-odor compounds. We investigated the combined effects of α-tocopherol with rosmarinic acid and various antioxidants on the prevention and inhibition of off-odor formation. We added these combined compounds in a linoleic acid emulsion, followed by an oxidation reaction with 2'2-Azobis (2-methylpropionamidine) Dihydrochloride at 37 ℃ for 5 h. The hydroperoxide was measured by the ferric thiocyanate method, and the off-odor components were measured by gas chromatography. Median effect analysis was used to assess the combined effects. The results showed that the combinations of α-tocopherol with rosmarinic acid and caffeic acid exhibited a synergistic effect on inhibition of lipid peroxidation and some off-odor components, likely attributable to the catechol structure in these compounds. Interestingly, the combination of α-tocopherol and rosmarinic acid showed a potent synergistic effect on (E)-2-nonenal and (E)-2-octenal, indicating that the formation process of off-odor components may influence the combined effect.
著者
中川 俊輔 岡本 康裕 児玉 祐一 西川 拓朗 田邊 貴幸 河野 嘉文
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.33-36, 2018 (Released:2018-06-19)
参考文献数
10

再発髄芽腫に対するtemozolomide(TMZ)の報告は本邦ではまだない.症例は6歳の男児で,小脳原発の高リスク髄芽腫(desmoplastic type,術後の脊髄MRIで播種病変あり)と診断された.脳腫瘍摘出術と放射線照射後に寛解を確認した.術後化学療法(ifosfamide, cisplatin, etoposide)と自家末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法(busulfan, melphalan)を行った.術後24か月後のMRIで右側脳室,右側頭葉,左小脳半球に腫瘤性病変を認め再発と診断した.欧米からの有効性があるという既報を参考に,TMZ(150 mg/m2/日×5,4週間毎)の内服で治療を開始した.腫瘍は残存しているが縮小傾向で,再発後28か月が経過し,TMZを30サイクル行った.副作用もほとんど認めず,良好なQOLを維持できている.TMZは髄芽腫の再発に対する化学療法として有用な可能性がある.
著者
髙橋 忠志 尾花 正義
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.204-209, 2022-07-01 (Released:2023-07-15)
参考文献数
35

脳卒中歩行障害に対するリハビリテーション(以下,リハ)は脳卒中発症直後から開始し,急性期,回復期,生活期と途切れることなく行うことが必要であり,そのスタートとなる急性期でのリハは歩行再建の源になる.重度運動麻痺を呈する脳卒中患者の積極的な立位,歩行練習には長下肢装具が不可欠である.長下肢装具の仕様としては油圧制動式足継手を使用し,運動麻痺の改善に応じて装具の設定を変更できることが望ましく,また実際の使用には装具に関する知識と技術が求められる.脳卒中急性期からの長下肢装具使用はエビデンスが蓄積されつつあり,脳卒中歩行障害への歩行再建・装具療法はパラダイムシフトを迎えている.
著者
三好 圭 大平 雅美 GOH Ah-Cheng 神應 裕
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.829-833, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

〔目的〕仰臥位用(SE)と自転車(BE)エルゴメーターを用いて姿勢の違いによる筋活動量への影響を検討すること.〔対象と方法〕男子学生11名とした.負荷量は10 W,20 W,30 W,43 W(BEは44 W),75 W(BEは76 W)とした.筋電図より得られる内側広筋,大腿直筋,大腿二頭筋,前脛骨筋,腓腹筋外側頭,ヒラメ筋,脊柱起立筋,腹直筋の最大等尺性随意収縮(MVC)を用いて%MVCを求めた.〔結果〕BE,SEともに負荷量が上がると%MVCも上がる傾向にあった.BEと比較すると前脛骨筋,内側広筋,脊柱起立筋でSEの%MVCの平均が有意に低かった.〔結語〕SEは下肢の筋力増強トレーニングとして利用できる可能性はあるが,筋力低下のある透析患者での検討が必要である.
著者
船橋 泰博
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.136, no.4, pp.204-209, 2010 (Released:2010-10-08)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

アメリカ食品医薬局(FDA)によりがんの治療薬として承認されている14のキナーゼ阻害薬(抗体および低分子化合物)のうち,4つの薬剤が血管内皮細胞増殖因子(VEGF)シグナル経路を標的とするVEGF標的治療薬である.がん細胞により誘導された腫瘍血管の新生を阻害することで抗腫瘍効果を示す,血管新生阻害薬の概念は古く,1970年代初期には提案されていた.概念の臨床研究における証明までの道のりは長く,険しく,その概念の実現性が疑問視された時代もあったが,抗VEGF阻害抗体であるベバシズマブの臨床試験における治療効果の確認は,血管新生阻害薬によるがん治療の時代の幕を開け,VEGF標的治療薬のがん治療における役割の重要性は拡大している.また基礎研究においても血管新生研究は大きく発展しており,VEGFシグナル経路以外で血管新生を誘導するシグナル経路が数多く判明している.VEGF標的治療薬を用いたがん治療の拡大により,血管新生阻害薬に対するがん細胞の薬剤耐性化の問題が明らかとなってきており,VEGFとは異なるシグナル経路を阻害する血管新生阻害薬の開発とVEGF標的治療薬耐性がんに対する治療効果の改善が期待されている.
著者
加藤 克
出版者
札幌博物場研究
雑誌
札幌博物場研究会誌
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.1-23, 2020-03-26

『大正日日新聞』は、大正デモクラシー期に活躍したジャーナリスト鳥居赫雄(素川)が1918(大正7)年8月末に発生した大阪朝日新聞筆禍事件(白虹事件)で朝日新聞社を引責退社したのち、翌年11月に創刊した新聞である。新聞社設立に際して社長となった貴族院議員藤村義朗男爵、出資者である大阪の銅鉄商勝本忠兵衛と鳥居の協力によって創刊された『大正日日新聞』であったが、経営者間の不和、放漫経営、対立する朝日新聞社、毎日新聞社による圧力もあり、創刊の翌年7月には経営が破綻した。新聞社が短命であったために社史などは全く残されておらず、その設立から解散に至るまでの経緯は鳥居の下に集まっていた新聞記者たちによる鳥居の評伝や回顧録[伊豆 1952, 1962, 1965; 新妻 1969; 日本新聞協会 1976, 1977; 冨田 2017など]や当時の朝日新聞社社長村山龍平の伝記[朝日新聞社大阪本社社史編集室 1953、以下『村山伝』と表記]、『朝日新聞社史』[朝日新聞百年史編集委員会 1991、以下『朝日社史』と表記]などに基づいている。ただし、評伝の大部分は新聞社設立から30年以上経過した時点での記憶に頼っているため内容には異同があり、個々の事象の前後関係も明確ではない部分がある。朝日新聞社の社内用資料として清水[1964]が『大正日日新聞』についてまとめた資料も、その多くは鳥居の評伝を執筆した記者からの聞き取りに基づいており、『朝日社史』の記述も同様の傾向があると考えられる。また、主要な出資者である勝本忠兵衛の「人となりがわからない」[冨田 2017]とされることや、「編集局の陣容は、まさに超一流だったが、残念ながら経営陣に人を得ず」[内川 1967]と評価されたり、鳥居の「理想的な新聞」を勝本が「一つの企業と考えていたに過ぎ」なかった[伊豆 1965]と評価されていることなど、新聞社経営に理解、能力を持たない勝本の存在が経営者間の対立の理由の一つとされていることも、残された情報が鳥居や新聞社視点からのものに偏っており、かつその記述の目的がジャーナリスト鳥居素川を顕彰するためであることに由来していると考えられる。これらの点から考えて、『大正日日新聞』に関する従来の歴史的経緯の理解は、新聞社設立に関わった当事者全員の実際の考えや行動に基づくものではない可能性がある。 本稿は上記の課題に対して、白虹事件から『大正日日新聞』創刊前後までの期間における、これまでその存在が知られていなかった鳥居と勝本を中心とする関係者の書簡群(1)を利用して、新聞社設立に至る経緯、鳥居と勝本の考えや行動の実態を把握する。そして、従来とは異なる観点からその経緯をみたときに、これまでの理解が十分であったのか否かを確認したい。これにあわせて、『大正日日新聞』に関係してこれまで全く名前が挙がることがなかった、書簡の宛先である北海道帝国大学教授八田三郎のキーパーソンとしての役割についても示すこととしたい。