著者
山田 久就
出版者
小樽商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

アバール語(標準語およびホトダ方言)の不定詞従属節に関して(1)代名詞(再帰代名詞、相互代名詞、人称代名詞)の振る舞いという観点、(2)不定詞従属節の動詞と上位節の名詞句との一致という観点を中心として研究を行った。・国際シンポジウムLENCA-2: The Typology of Argument Structure and Grammatical Relations(ロシア連邦カザン市、5月11日〜5月14日)で標準アバール語における不定詞従属節と相互代名詞の振る舞いの関係について発表を行った。・8月26日〜9月14日の期間にロシア連邦マハチカラ市およびホトダ村でアバール語母語話者に対して質問形式の調査を行った。・標準アバール語において、不定詞従属節にある人称代名詞は上位節にある自動詞のSや他動詞のAとは同一指示になりにくいことやなる場合の条件を明らかにした。また、不定詞従属節にある再帰代名詞zhi-AMとzhi-AM-goが上位節のどのような名詞句を先行詞にすることができるのかを明らかにした。不定詞節における代名詞の分布には話者の出身地によってかなり揺れがあることも明らかになった。・標準アバール語で不定詞と結びつく動詞、とくに不定詞節のSやOを上位節のSやOがコントロールしない動詞をさらに探し出し、それぞれの動詞に関して従属節にある絶対格名詞句と上位にある動詞との一致がどのようになるのかについて明らかにした。・標準アバール語の不定詞従属節において、代名詞の分布は不定詞従属節の動詞と上位節の名詞句との一致に基本的に影響を受けないことを明らかにした。・ホトダ方言の電子化テキスト(約30,000語)を母語話者の協力を得て作成した。・電子化テキストとインフォーマント調査からホトダ方言で不定詞従属節と結びつく動詞をリストアップした。
著者
松本 恭治
出版者
国立公衆衛生院
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

初期の分譲集合住宅団地では、増加しつつある高齢者が永く安心して住み続けられるためのストック改善と管理の対策が早急に必要となってきた。従って本研究は長期経過した分譲集合住宅における住まい方の変化と個人努力や管理組合による改善や工夫等を分析し、対策に資する資料を得ることを目的とした。平成8年度は居住者対象のアンケート調査と高齢者対策を実施した管理組合へのヒヤリングを行った。居住者を対象に行ったアンケート調査は、(1)団地内・近隣住替えの実態、(2)複数住宅所有と使用変化の実態、(3)親子同居・近居形成・分解の実態、(4)住戸内改善の実態、(5)近隣関係の実態等である。当然ながらこれらは一定程度の期間を経た分譲集合住宅地で見られるものであり、これらを左右する条件として、立地環境、価格、団地戸数規模、団地内の住宅型種類と配分、管理形態、維持保全状況等が上げられた。これら条件を勘案し、調査対象団地は前年度行った4団地(昭和40年代初期分譲団地、東京高島平、横浜ガ-デン山、千葉高洲、花見川団地)を踏まえ、同じく40年代に分譲した2団地(東京亀戸、千葉稲毛ファミール)を選定した。有効回収アンケート票数は合計956票で6団地合計で2539票となった。主な調査結果は以下の通りである。(1)郊外団地、都内団地いずれも最近入居者の所得低下・小規模世帯化が見られるが、特に郊外団地で著しく現れている。(2)近隣住み替え者と遠方からの転入者を比較すると、前者の方が後者より高齢者で通院率が低く、また世帯主・配偶者とも友人が多い。所得は都内では配偶者の常勤率が近隣住み替え者の方が高く従って世帯収入も多くなるが、郊外では近隣・遠方転入者も無職またはパートが多いため、前住地による差はない。(3)複数住宅使用世帯比率は、少数住宅型計画団地で多く、多数住宅型計画団地では少なかった。これは複数住宅型計画団地では内部住み替えが容易なためであった。(4)住宅内リフォーム実施額は世帯収入、世帯主・配偶者の友人数、中古価格、管理組合役員経験有無、住宅面積等と関連が深かった。
著者
花見 仁史
出版者
岩手大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

ソフトガンマ線リピーターについては、X線観測衛星'あすか'などによる対応天体の同定がなされた。それらの観測から明らかになったガンマ線リピーターの性質は次の4点にまとめられる。1)バースト源は、およそ数年おきに活動的になる。2)バースト源にはコンパクトな定常X線源が付随している。この定常X線源はパルサーに励起されていると思われる。3)この2つのコンパクト天体は、10^4年以下の年齢の超新星残骸中に存在している。4)このコンパクト天体の位置は残骸の中心からずれていることから、1000km/s程度の高速度で移動していると示唆される。我々は、この天体系が中性子星-(C+O)星の連星系のなれの果てであると考えた。我々のモデルでは、2)、3)は、(C+O)星が超新星爆発が起こし、新しい中性子星=パルサーになることにより、4)は、超新星爆発に伴う質量放出が、残骸と星との間に、この前駆連星系の高速度軌道運動に相当する相対運動を引き起こすことにより、1)は、爆発で放出された物体の一部が古い中性子星の周囲に捉えられ、小惑星形成などの過程を経て、突発的に古い中性子星に落下することにより、統一的に説明できた。しかし、ソフトガンマ線リピーターからのガンマ線は、普通の大他数のガンマ線バーストのものよりエネルギーが低いので、両者は起源が異なる可能性があり、上のモデルの適応範囲をガンマ線バースト全般に広げることに疑問が出てくる。さらに、ガンマ線リピーターはその光度がエディントン限界を越える活動を起こし、これは普通の降着過程などでは説明ができない。したがって、ガンマ線バーストの問題にも関わる物理過程として磁気波動砲モデルを提案して調べた。
著者
堀内 孝
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では,「自伝想起の生成・再認モデル(堀内,2004a)」における再認プロセスを精緻化するために,自伝想起の意識的成分と自動的成分の性質の相違に関して実験的な検証が行われた。実験1,2では,想起時間を操作した検討が行われた。実験1では,実験参加者にはあらかじめ想起時間(2秒,6秒)を告知した上で自伝的記憶を想起させた。実験2では想起時間を告げず,想起開始から2秒あるいは6秒で強制的に打ち切った。いずれの実験においても,意識的成分は6秒条件と比較して2秒条件の方が少なかったが,自動的成分では有意な差が認められなかった。この結果は,自動的成分は意識的成分と比較して,想起開始後の早い段階から惹起し,2秒後には十分に機能していることを示している。実験3では想起する自伝的記憶の新旧の違いを操作した検討が行われた。大学3年生を実験参加者として,想起する自伝的記憶が古い条件(中学の3年間)と新しい条件(大学の3年間)における意識的成分と自動的成分を比較した結果,いずれの成分に関しても古い条件の方が新しい条件よりも少なかった。一般的に自動的成分は時間耐性があるが,6年もの歳月が経過するとさすがに減少すると考えられる。実験4では事象関連電位を使用した検討が行われた。Czにおける1600msから2000msの平均電位を比較した結果,"思い出せる(Remember)"判断の方が"わかるだけ(Know)"判断よりも有意に高かった。1600ms以降の両判断の波形の違いは,意識的成分と自動的成分の生起速度の違いを反映しているものと解釈された。これらの実験結果は,自伝想起の意識的成分と自動的成分が基本的に異なる特性を有しており,独立したプロセスであることを示すものである。本研究の知見にもとづき「自伝想起の生成・再認モデル2008」が提唱され,その応用可能性と評価に関する議論が行われた。
著者
野田 哲生 田矢 洋一 石川 冬木 花岡 文雄 山本 雅之 下遠野 邦忠 中村 卓郎 石川 冬木 花岡 文雄 山本 雅之 畠山 昌則 中村 卓郎 高井 義美 丹羽 太貫 廣橋 説雄 下遠野 邦忠 佐谷 秀行
出版者
財団法人癌研究会
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

本総括班は、特定領域研究「遺伝情報システムと発がん」において、計画班と公募班からなる研究組織の立ち上げから、各研究班の研究成果の評価までを行い、さらに研究代表者会議の開催などを通じて情報交換の促進を図るなど、本領域の研究活動の効果的な推進のため、各種の支援活動を行った。その結果、がんの発生と進展の過程の分子機構に関し、がんの予防法の確立と治療法の開発に貢献する多くの新たな知見が得られた。
著者
玉川 安騎男 CADORET Anna Gwenaelle-Lu CADORET Anna Gwenaelle-Lucile
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

与えられた有限群と素数の組に対し、その普遍フラティニ被覆の標準的な商群の系に付随してフルヴィッツ空間(=射影直線の分岐ガロア被覆のモジュライ空間)の射影系が定まるが、その有理点に関するM. Friedのモジュラータワー予想は基本的である。この予想へのアプローチの一環として掲げた研究目的の内、本年度は、「1、モジュラータワー予想とアーベル多様体のねじれ点の普遍的限界の関係の精密化」に関して、特別研究員と研究代表者の共同研究が大きく進展した。特に、元のモジュラータワー予想で分岐点の数が4以下の場合を肯定的に解決することができた。この証明の鍵となったのは、次の幾何的命題である。Sを標数0の体上の代数曲線、AをS上のアーベルスキームとし、Aの生成ファイバーは0でないアイソトリビアルな部分アーベル多様体を含まないものと仮定する。このとき、与えられた自然数gと素数pに対し、次の条件を満たす自然数N=N(A,g,p)が存在する:Aの位数p^nの点vに対し、n>Nならばvに付随するSの被覆の種数はgより大きい。以上の結果については、特別研究員と研究代表者の共著論文"Uniform boundedness of p-torsion of abelian schemes"の第一稿が既に完成している。なお、研究目的の内「2、フルヴィッツ空間の点の"base invariant"のモジュラータワー予想への応用」については、特別研究員と研究代表者の共著論文"Stratification of Hurwitz spaces by closed modular subvarieties"を平成18年8月に完成し投稿中である。
著者
田中 玲奈
出版者
昭和大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は,エナメル質初期脱灰病変に対して人工材料のみを添加するのではなく,潜在的な石灰化能を向上させることにより本来の歯質を回復することである.石灰化処理を行ったエナメル質は,その耐酸性と物理的強度が重要である.齲蝕や欠損のない健全な天然歯エナメル質試料に35%過酸化水素とハロゲンランプ照射によるIn-office Power Bleachを行い,人工唾液を作用させた後,脱灰液に2週間浸漬し,エナメル質の溶解性を評価した.溶解性は,デスクトップ型のマイクロCTを利用した非破壊検査により,1つの抜去歯から任意のボリュームで複数の仮想サンプルを抜き出すことができるため,エナメル質に物理化学的な変化を加えずに,ミネラル体積の変化や結晶度を経時的に測定することができる.また仮想サンプルは数値上全く同一形状であり,機械的に作成したものよりも精度が高く,データの信頼性や再現性も確保することができる.未処理のエナメル質(Control),人工唾液を作用させながらHome Bleach(HB)した後脱灰したエナメル質,In-Office Power Bleach(OB)した後脱灰したエナメル質をマイクロCTによって分析し,病変部のミネラル分布の変化を測定し比較した.HB試料とControlにおいて脱灰によるミネラル体積の減少が顕著であったのに対し,OB試料では脱灰後のミネラル体積が増加した.エナメル質の密度は,表面からエナメル象牙境に向かって傾斜的に低下する.高濃度の過酸化水素は硬組織に対しての浸透性が高く,エナメル深部の低密度層で相対的に濃度が上昇する.深部に貯留した過酸化水素はハロゲンランプ照射によりラジカルを発生し,深部から表層にかけて電気勾配が発生すると考えられる.低密度層で電荷が生じることにより,人工唾液中でエナメル深部の選択的石灰化が,はじめて可能になった.さらに本研究から,石灰化処理を行ったエナメル質の耐酸性が明らかになった.
著者
佐藤 尚弘
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

1.光硬化型ペースト陶材の開発本研究のスタートは,光硬化性のリキッド(マージンポーセレンPLC、(株)ジーシー)をペースト陶材に混和して用いる方法であったが,これではペーストの稠度が変化し、賦形性が悪くなった。また,この液を大量に用いた場合には焼成後の灰分残留が大きな問題となった。ペースト陶材は元々焼成時に有機成分の抜けが悪く、その分灰分残留に一層の拍車をかける結果となった。以上の理由から、新たに光硬化型ペースト陶材そのものを開発する方向に転換し,現在試作ペーストを作製して実験を行っているが、操作性の優れたペーストの完成にはいま少し時間が必要である。2.ペースト陶材とオールセラミックスを用いた審美修復法の開発金属焼付ポーセレン用に開発したペースト陶材を,オールセラミックスに応用できれば審美性に優れた修復物の簡便な作製が可能となる.そこで,2種類のオールセラミック試片(In-Ceram Alumina.In-Ceram Spinell)にペースト陶材をレヤリングし,その強度を粉末陶材でレヤリングしたものと比較検討した.ISO 6872:1995 Dental Ceramicsに準じて3点曲げ試験を行った結果,ペースト陶材は従来型の粉末陶材よりもわずかに高い値を示した.このことからペースト陶材がオールセラミックスのレヤリングに有効である事が示唆され,2003年6月にスウェーデン・イエテボリのIADRにおいて,Flexural Strength of All Ceramics Layered with Paste Porcelainの題名で発表した。現実的な審美修復法としてメタルフリーのオールセラミックスにペースト陶材をレヤリングするのが適切であると結論されたが、光硬化性ペースト陶材も開発の可能性が十分確認されたことから、引き続き本研究を継続する予定である。
著者
喜島 祐子 夏越 祥次 吉中 平次 石神 純也
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

基礎実験では,ラットを用いた大胸筋表面への FDFG 移植モデルを作成し,経時的な変化を観察できる FDFG 移植片を採取・固定・病理検索できることを明らかにした.このモデルを用いて経時的に IL-6, VEGF, CD31 発現を観測し,FDFG 生着には移植後早期の血管新生が関与し,より血流の多い部位からの血管新生によって FDFG のボリュームが維持されていることが推察された.
著者
斉藤 崇 長谷川 仁志 鬼平 聡 阿部 豊彦
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1)ラットintermediate conductance型Ca-activated K channel(lmK)の構造配列決定と機能解析:BKチャネルとともに内皮依存性血管過分極因子の標的分子とされるlmKチャネルの心血管病態における発現修飾を検討するため、種々の心血管病態モデルの作成が容易な実験動物であるラットのlmKチャネルのcloningを行った(GenBankへ登録:AF149250)。本遺伝子のcoding regionは1278塩基対で、翻訳蛋白産物は425アミノ酸からなり、ヒトおよびマウスと塩基配列で88%、95%、アミノ酸配列で各々ほぼ98%の相同性を示した。6個の膜貫通部位を有し、S5とS6間には本チャネルの特異的阻害物質とされるcharybdotoxin感受性aspartate residueが、またcarboxy-terminal側には細胞内Ca sensorの役割を担うcalmodulin-binding domainおよびtyrosin phosphorylation consensus sequenceがあり、またpromotor領域にはNFkB、heat shock protein、AP2などでregulationされる部位が存在した。これらの事実から本チャネルの発現調節とその活性化が細胞増殖刺激と密接に関連することが確実となった。さらに、本遺伝子をHEK細胞に発現させ、その細胞電気生理学的特性を解析し、本チャネルは細胞内Ca濃度上昇により活性化され、charybdotoxinにより抑制されるなど、これまで生理学的に予測されていたlmKの特性が再現された。2)心血管病態におけるKCaチャネル発現の変化:ラット心筋梗塞モデルを用いて、KCaチャネルの分子種5種類(BK、lmK、SK1、SK2、SK3)のmessenger RNAの発現をRT-PCR法、RNase Protection Assay法により経時的に追跡し、BKおよびlmKの発現は梗塞後1〜3日をピークとする初期増強と7日以降再度upregulationを示す後期増強相からなる2峰性ピークを形成することを見いだした。また、in situ hybridizationおよびラットlmKに対する特異抗体を用いた免疫組織染色の結果、lmKはmRNAレベルのみならず、翻訳蛋白発現のレベルでもその発現が亢進することが確認された。さらに組織内局在について検討すると、lmKは対照時には主として血管内皮細胞および血管平滑筋に局在するが、梗塞心では単核白血球、繊維芽細胞などの浸潤細胞にも著明な発現が見られ、初期上昇相はこれら細胞浸潤により特徴づけられる炎症反応に、後期上昇相は梗塞巣内の血管リモデリングに一致することが明らかとなった。この所見は、これまで生理学的、薬理学的に示されてきた病態での過分極-弛緩連関の代償性増強現象をKCa発現修飾の面から説明するはじめての所見と考えられる。また、以上のlmK発現の増強は、アンギオテンシンllのl型受容体拮抗薬の投与によりほぼ完全に抑制されることなどが明らかとなり、lmK発現調節の細胞内情報伝達系にMEK/ERK系の関与が示唆された。さらに、NO生合成長期抑制モデルにおいても同様なlmK発現の増強を見いだしており、lmKは心血管病態時における血管リモデリングの共通なkey moleculeである可能性が高まってきた。これらの成果は、平成13年3月31日よりアメリカ合衆国フロリダ州オーランドで開催されるExperimental Biology 2001におけるアメリカ生理学会主催の血管系カリウムチャネルに関するシンポジウムにおいて招待講演として発表するとともに、Journal of Clinical and Experimental Pharmacology and Physiologyに公表予定である。
著者
阿部 豊彦 鬼平 聡 斉藤 崇 三浦 傅
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

これまで冠動脈の短時間閉塞・再灌流後に心臓交感神経に一過性機能障害を生じ、これにはadenosineなど虚血性代謝因子が重要であること、神経成長因子(NGF)や副腎皮質ホルモンが保護作用を有することを報告してきた。中枢神経系においてはtumor necrosis factor-α(TNF-α)の神経保護作用が報告されているが、心臓交感神経においては不明であり、本研究ではこの点に関して検討をおこなった。成犬を麻酔、開胸、両側迷走神経を切断、propranorolを投与。suction-cup式のDoppler probe装着により左前下降枝(LAD)と回旋枝の冠動脈血流速度を測定し、両側胸部交感神経を電気刺激時の交感神経性冠動脈収縮反応を冠動脈抵抗の変化率(%ΔCVR)を算出することにより評価した。LAD内に生食(対照群1、n=5)ないし抗TNF-α250pg/kg/min(TNF-α群、n=6)を投与下に15分同枝閉塞・再灌流を行った。また、生食(対照群2、n=5)ないしTNF-α抗体60nl/kg/min(抗TNF-α抗体群,n=6)を投与下に7分同枝閉塞・再灌流を施行した。再灌流前後のSS及びNE時%ΔCVRの推移を評価した。1) 対照群1ではLADの15分閉塞・再灌流後、同枝の%ΔCVRが有意に減弱したが、TNF-α群では保持された。2) 対照群2ではLADの7分閉塞・再灌流前後に%ΔCVRの変化を認めなかったが、抗TNF-α抗体群では有意に低下した。各群ともNEに対する%ΔCVRは不変だった。3) 左室壁長変化率(%SL)は15分冠閉塞中、両群とも同等に低下したが、再灌流後、TNF-α群で速やかな回復を示した。また、7分冠閉塞にて低下した%SLは対照群2に比し、抗TNF-α抗体群で遷延した。以上より、TNF-αは虚血性の心臓交感神経および心筋の機能障害に対して保護作用を有することが示された。
著者
金田一 智規
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

広島湾底泥を植種源としたカラムリアクターにより海洋性アナモックス細菌を集積培養し、高い窒素除去速度を達成した。リアクター内の微生物相を解析した結果、二種類の"Candidatus Scalindua"に属する海洋性アナモックス細菌が存在した。さらに、それぞれを対象としたFISHプローブを設計し、可視化することができた。このうち一方の種に対して、回分試験により最適培養温度、塩分濃度、pHを明らかにした。
著者
堀 信行 岡 秀一 大山 修一 松尾 容孝 高岡 貞夫
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

最終年度として、研究代表者の堀は、霊山およびそれに関係する聖所にあたる広島湾内の厳島(宮島)の弥山など、自然植生に対する桜と紅葉の植生景観に関する人為的干渉の歴史や、その文化的背景について考察を加えた(この成果の一部は『風景の世界』(二宮書店:2004)に掲載された。このほか聖所を創出する樹としてのスギに注目し、自然植生としてのスギと植林としてのスギに分けて、その全国分布および神社の分布との関係について考察を進めた。このほか沖縄の代表的聖所である斎場御嶽の空間構成については、上述の『風景の世界』に公表した。このほか都市の中の聖所の事例として鎮守の森との関係についても考察を加え、上記出版物に公表した。なおこれまでに調査を行った各地の霊山および関連する聖所に関する全体的な考察は、本研究のおかげで更なる展開が期待され、そのまとめに向かって鋭意努力中である。また岡は、古代から古墳など歴史的なかかわりが深い隠岐諸島の森林植生について、土地利用との関連で人為的干渉の影響について現地調査を行うとともに、考察を行い報告書にまとめた。松尾は霊山の聖域の構造と自然植生の残り方に注目しまとめを行っている。高岡は、東日本を中心に霊山をはじめとする神社仏閣の分布と、GIS(地理情報システム)を活用して自然植生と人為植生との関係を追及し、論文としてまとめを行っている。大山は、琉球弧では食用に供されてきたソテツが、本州では神社仏閣に植栽されていることに注目し、ソテツの樹齢や歴史、逸話などの資料を収集し、日本人の自然観と人為的な営為との関係についてまとめを行っている。本研究が自然植生を見る視座に新たな観点を加えることができたと考えている。問題の深まりと新たな展開を取り入れて、さらなる研究成果を随時出して生きたい。
著者
榎森 進 七海 雅人 谷本 晃久 七海 雅人 谷本 晃久
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

江戸時代に「サンタン人」と呼ばれていたアムール川下流域の人々は、ウリチ民族だけでなくニヴフ民族他の民族で構成されていること。また、彼等は、15~19世紀にサハリンの諸民族と活発に交流していた。
著者
北澤 安紀 林 貴美 林 貴美 中西 康 横溝 大 北澤 安紀
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、同性婚や、生殖補助医療により生まれた子の親子関係など、最近の各国において導入されてきている新たな身分法制への対応が国際私法方法論に及ぼすインパクトについて検討した。その結果、国際私法の伝統的な双方主義的方法論がそれらの法制度を規律するのに最適な方法であるとは言い切れず、国際私法方法論自体の再検討が求められていることが明らかとなる。この点、EU法において最近拡大傾向にある、いわゆる相互承認原則が国際私法の分野に及ぼしつつある影響も看過しえない。法廷地国は、双方主義的な抵触規則、あるいは、外国判決承認ルールを通じて、渉外的法律関係を規律し尽くそうとしているが、新たな身分法制についての国際私法側の対応としては、たとえばEU法の相互承認原則のような従来とは異なる例外的な救済方法を用いる可能性についても、今後議論してゆく必要があろう。
著者
村本 名史
出版者
愛知淑徳大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

一般男女学生を対象としてベンチプレスにおける最大パワーの測定方法について検討した。バーベル挙上動作の平均パワーをLDT(Linear Displacement Transducer)法によって計測した。最大パワーと体重には男性では高い相関があったが、女性では低い相関しか認められなかった。加えて、一般男性のベンチプレスについて、LDT法および2次元DLT(Direct Linear Transformation)法を用いて計測したバーベル挙上動作パワーについて検討した。その結果、LDT法による計測値はDLT法に比べて有意に小さかった。
著者
澤田 敏 狩谷 秀治 谷川 昇 川口 あすか
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

2つの離れた管腔臓器をX線画像ガイド下の遠隔操作で切開せずバイパスする方法と器具を開発した。この技術は特定の臓器に限定されず汎用性のある低侵襲治療法である。本研究ではブタを用い異なった臓器に計10回の経皮的バイパス作成術を行いすべてに成功した。病気による血管や消化管などの管腔臓器の閉塞は主に外科手術によってバイパスされるが、本研究の方法は低侵襲治療法であり外科手術が難しい患者にも行える。
著者
佐藤 達生
出版者
大同大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

コーパス(根拠となる遺構の総体)をなす12世紀~13世紀初期のイール・ド・フランスの教会堂165遺構のうち、58遺構の複合柱と105遺構の円柱系支柱について実測調査をおこない、詳細な断面形状を把握した。これら断面形状の比較から、複合柱のシャフトは背後に必ずルソ(直角の突出部)をもつのに対して、円柱系支柱のシャフトは背後にルソをもたない点で、線条性が格段に進展している(よりゴシック的である)ことを明らかにした。