著者
工藤 洋
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.66-70, 2007-03-31 (Released:2016-09-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

ハビタットの環境が大きく変わると、適応度が大幅に低下する可能性がある。適応的な表現型可塑性は、環境変動に際して適応度の低下を防ぐ働きがある。本稿では、適応的な表現型可塑性の機能として、複数ハビタット利用とハビタット選択とがあることを指摘した。複数ハビタット利用では、それぞれのハビタットでの適応度を高めるような表現型を可塑性によって実現する。ハビタット選択では、不適な環境を回避し好適な環境を利用するような形質変化が可塑性によってもたらされる。複数ハビタット利用の例としては、両生類の対捕食者誘導防御・昆虫の季節多型・水生植物の陸生型形成などがある。また、ハビタット選択の例としては、昆虫の相変異に伴う飛翔多型・休眠による季節適応・植物の被陰回避反応・開花調節などがある。
著者
高橋 真美
出版者
独立行政法人国立がん研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ラット及びマウスの大腸化学発がんモデルとハムスター及びマウスの膵臓発がんモデルの腫瘍組織において、OPNaの顕著な発現上昇が認められた。OPN欠損が大腸発がんに及ぼす影響は明らかではなかったが、マウス膵臓発がんモデルにおいてはOPN欠損により発がん率及び発生個数の減少が認められたことから、OPNが一部のがんへの進展、浸潤等に関与しており、発がん抑制のターゲットとなりうることが示唆された。
著者
荒生 弘史 平尾 沙央里 諏訪園 秀吾 岩城 達也
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第10回大会
巻号頁・発行日
pp.72, 2012 (Released:2012-07-20)

相手の名前を呼ぶことは、相手の注意を引きつける働きを持つほか、感情的な意図を呼びかけに込めるなど、社会的関わりにおいて重要な役割を果たす。とりわけその感情伝達においては、伝達先(名前)の情報が同時に示されるという際立った特徴を持つ。本研究では、非注意の聴覚刺激として呈示される名前および同時に込められた感情に対する自動的反応について、事象関連電位を指標として検討した。実験参加者は、実験中、ビデオゲーム(音響効果なしのテトリス)に集中し、聴覚刺激は無視するよう教示された。事象関連電位のデータは、無視された名前刺激に対しても、200~300msの潜時において自他名の区別がなされていることを示した。さらにその後の潜時帯において、自己名において大きな感情効果が生じた。呼びかけにおける感情情報の独自性と、自他名の区別と感情の時系列処理に関して考察した。
著者
古家 和彦 北川 信 中村 俊一 鈴村 恵太 聖生 守雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.637, pp.103-114, 1999-12-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
27
被引用文献数
10 8

近年実施された因島大橋や大鳴門橋等の現地調査により, 吊橋ケーブルが腐食していることが発見された. そこで, ケーブル内部の腐食機構を推定するため, 模擬ケーブルおよび実橋ケーブルを用いた腐食環境の調査, 濡れ状態にある亜鉛めっき鋼線の腐食シミュレート試験, 劣化ペースト中の亜鉛めっき鋼線の腐食シミュレート試験を実施した. その結果, ケーブル内の滞留水がケーブル内部を高湿度化し温度変化の大きい表層部では結露による腐食環境を形成すること, 濡れ状態にある亜鉛めっき鋼線は腐食しやすいこと, 劣化した鉛酸カルシウム含有高分子有機鉛ペーストが亜鉛めっき鋼線の腐食を促進する可能性があることを見出した.
著者
松井 繁憲 寺西 功 三田 哲也 藤野 陽三
出版者
Japanese Society of Steel Construction
雑誌
鋼構造論文集 (ISSN:18809928)
巻号頁・発行日
vol.2, no.7, pp.63-71, 1995-09-30 (Released:2011-07-04)
参考文献数
10
被引用文献数
1

For reconsideration of the corrosion protect at the interior of a steel box girder we reserch a corrosion environment of the interior of a steel box girder at Hakucho Bridge (at Hokkaido). This bridge i s composed of two box girders of which the interior as well as the exterior was not painted on the basis of the local design specifications. In one of the two box girders, a dehumidification plant was installed and has been operated for one and half year. We report about the experiment, and measurements of a temperature and a humidity, a working condition of the dehumidifier, an example of ACM corrosion sensor's output.
著者
廖 金孫 松井 繁憲 串田 守可 篠原 正 藤野 陽三
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.749, pp.137-148, 2003-12-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
12
被引用文献数
4 2

鋼橋建設コストの低減を目的として, 塗装の代わりに除湿機を箱桁内部に設置し, 湿度を制御することにより, 箱桁内面の腐食を防止する工法が検討され, 実用化されている. しかし, この防食方法には電源が必要不可欠な上, 除湿機の設置・運転費用もかかる欠点がある. これらの欠点を解決するため, 取扱いが容易で安価な除湿剤に着目し, 除湿剤による箱桁内部の湿度制御効果について検討した. 本文では, 北海道および沖縄に架設された実橋を対象とした鋼製箱桁内部の環境腐食性の調査結果および, 腐食環境が厳しい沖縄の実橋鋼製箱桁内部における除湿剤の湿度制御効果を解析し, 鋼板の腐食発生挙動に及ぼす不純物付着量の影響を明らかにした上で, 除湿剤を使用する鋼製箱桁内部の防錆システムを提案した.
著者
飯野 秋成 近藤 拓也
出版者
新潟工科大学
雑誌
新潟工科大学研究紀要 (ISSN:1342792X)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.23-30, 2017-03

In this study an ability to improve thermal insulation properties of steel shutters installed at factories was considered.At the first stage heat transmission coefficient of a steel shutter with inward air layer constructed using thin vinyl sheet, were calculated with measured data of air temperatures in and around a steel storeroom and amount of heat flow.And also the effect of inward air layer to prevent the dew condensation on metal components’ surfaces in a factory was verified with measured data of winter thermal environment.
著者
近藤 拓也 飯野 秋成
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.23, no.54, pp.539-543, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
4

In this study an ability to improve thermal insulation properties of steel shutters installed at factories was considered. At the first stage heat transmission coefficient of a steel shutter with inward air layer constructed using thin vinyl sheet, were calculated with measured data of air temperatures in and around a steel storeroom and amount of heat flow. And also the effect of inward air layer to prevent the dew condensation on metal components’ surfaces in a factory was verified with measured data of winter thermal environment.
著者
小川 亮
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-1, 2022-12-10 (Released:2022-12-10)
参考文献数
51

In Japan, despite its popularity in natural science and philosophy, Inference to the Best Explanation is generally considered as an argument for scientific realism rather than as a method of philosophy. This paper aims to marshal some relevant topics in dispute and defend IBE against its critics. The distinct feature of IBE is that it considers simplicity and fruitfulness as theoretical virtues. This character makes IBE useful as a common method of philosophical inquiry. In conclusion, IBE is tenable as a heuristic to identify a working hypothesis, at least.
著者
竹下 祐二 衣川 優希 池田 結
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00215, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
7

時間雨量に基づいて算出される実効雨量の時系列を用いて,降雨浸透により河川堤防のり面内に生じる土中水分動態の簡便な推定方法を検討した.一級河川堤防裏のり面において計測された128の降雨事例に対して,堤防のり面上の位置や深度ごとに土中水分動態と実効雨量の時系列パターンとの相似性を評価し,両者の相関係数が最も高くなる実効雨量の半減期を最適半減期として算出した.最適半減期の短期的または長期的な極値として,対象堤防のり面に固有な短期最適半減期と長期最適半減期を提案した.これらの最適半減期を用いた実効雨量の時系列と土中水分動態との相似性を累加雨量や最大時間雨量の異なる降雨事例に対して確認し,堤防のり面内の土中水分動態を推定するための雨量指標として,実効雨量の有用性を検討した事例を報告した.
著者
霧生 拓也 枇々木 規雄
出版者
日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
雑誌
現代ファイナンス (ISSN:24334464)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.27-48, 2021-04-17 (Released:2021-04-17)
参考文献数
34

資産価格変動要因の特定はファイナンスにおける重要なトピックの一つである.その中でも日次など短期の変動要因を特定することは,経済イベントと紐づけて議論するために特に重要である.しかし,短期の変動要因の分析に適した方法は少なく,関連した研究はこれまでなされていない.本研究では,オプション価格情報を利用した変動要因の分解方法を提案し,米国株式指数の日次リターンの変動要因を分析する.具体的にはRecovery Theoremを用いてオプション価格から推定した実分布とSDFをもとに,リターンをキャッシュフロー要因と割引率要因に分解する.オプション価格は情報を迅速に織り込むため,短期の変動要因の分析に適すると考えられる.実証分析の結果から,キャッシュフロー要因が短期の価格変動の主要因であることが明らかになった.ただし,FOMCアナウンスメント日には割引率要因の影響がそれ以外の日と比べて大きくなることもわかった.