著者
竹中 晃二
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.45-52, 2022 (Released:2022-10-25)
参考文献数
18

メンタルヘルス・プロモーションは,人々の臨床的症状を治療するというよりもポジティブ・メンタルヘルスの強化に用いられるウェルビーイング活動の一つである.メンタルヘルス・プロモーションはまた,災害を遭遇した後に心理的回復を促進することにも役立つ.私たちは,我が国の地震のように,災害後のレジリエンスを強化する方法として,「こころのABC活動」と名づけたメンタルヘルス・プロモーション・キャンペーンを開発した.本稿では,一般成人を対象に,またCOVID-19を患う患者に関わる医療従事者を対象に,ポピュレーション・ワイド・アプローチによって実施したメンタルヘルス・プロモーション・キャンペーンの内容を紹介する.感染拡大が続く中,人々のメンタルヘルス問題の数が増加している.現在の流行状況では,人々の接触や交流が制限されているため,従来型のメンタルヘルス・サービスに限界がある.そのため,新しいタイプの介入の開発が望まれている.私たちは,「こころのABC活動」,感情調整技法としてのStop-Relax-Think,およびIf-Then Plansとして知られている実行意図手法をもとにしたメッセージ・ポスターを開発し,それらを情報メディアに流すようにした.1,020名の一般成人と607名の医療従事者を対象に,それぞれのメッセージ・ポスターをオンライン調査によって評価した.2種類の評価をリッカート尺度を用いて行った.そのうち,ポスターへの反応評価では,閲覧の程度,知識,社会規範,態度,動機づけ,自己効力,および意図について調べ,一方,ポスターの刺激評価では,受け入れ,有用性および記憶の程度が評価された.その結果,一般成人においては,社会的接触の程度によって有意に見積もり度が異なり,一方,医療従事者では,勤務するCOVID-19への関わりによって評価が異なることがわかった.要約すると,COVID-19の感染は現在も進行中ではあるものの,ポピュレーション・ワイド・メンタルヘルス・プロモーション・キャンペーンは,全体住民のウェルビーイングに肯定的な影響を与えることができる.
著者
森谷 卓也
出版者
特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.95-97, 2019 (Released:2019-10-01)
参考文献数
3

2018年5月に『乳癌取扱い規約(第18版)』が発刊された。今回の改訂では国内外の分類との整合性を図ることに重きが置かれ,WHO 分類(第4版,2012年)を強く意識し両者の読み替えが可能となるよう対応表が作成された。また,切除検体の病理学的記載事項チェックリストや索引を設け,使いやすさを重視した。病理組織学的分類では,上皮性腫瘍の良性腫瘍と悪性腫瘍の間に異型上皮内病変の説明が加わった。悪性腫瘍では微小浸潤癌が追加された。浸潤性乳管癌は腺管形成型・充実型・硬性型・その他の4型に分けるが,単なる用語の置き換えではなく,コンセプト自体が変化した。また,乳管内成分優位の浸潤性乳管癌も記載することを求めた。特殊型は,化生癌などで組み換えがなされ,篩状癌など新たな組織型が加わるとともに,混合型のカテゴリーも設けた。病理編第2部では,推奨固定法,センチネルリンパ節転移の表記法,断端評価法,病理学的グレード分類の記載について解説や変更がなされた。ホルモン受容体のAllred score,HER2に対するISH 法も新たに記載された。組織学的治療効果の判定基準については図譜が強化され,評価法の説明も詳しくなった。今後は新規約に準じた症例蓄積による分類法の検証や,次の改訂に向けた課題抽出が必要である。さらに,日本独自の概念・分類法については,本邦からの国際発信がなされることが望まれる。
著者
赤塚 俊隆 松浦 善治 神吉 泰三郎
出版者
埼玉医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

我々はC型肝炎ウイルス(HCV)の感染性RNAを接種して単一のウイルスによる感染実験に成功したチンパンジー、1535と1536のPBLをEBウイルス(EBV)でトランスフォームすることにより、HCV特異的IgG抗体産生B細胞クローンが感染後どの時点で出現するかを検討した。同時に血清のIgG抗体価も測定し比較した。その結果2頭のチンプともに、ALTの上昇がみられた20週には血中にC抗原に対するIgG抗体が出現したが、E1、E2抗体の出現は殆ど認められず、1536においてのみ45週以降になってE2抗体が出現、10週にわたる抗体価の上昇を認めた。しかしEBV-transformationの結果では、C、E1、E2いずれの抗原に対するIgG抗体産生B細胞も35週の時点で同頻度に認められた。これは54週になっても同じであった。EBV-transformationでは完全に成熟した抗体産生より分化段階の低い細胞が検出されると考えられるので、我々の結果はウイルス中和に関与すると思われるE1、E2抗体を産生するB細胞の分化が、何らかの機序により最終段階の一つ手前で押さえられていることを示していた。平成12年度は、1536において、感染後45週というかなり遅い時期に、ウイルスのE2タンパクの1つのアミノ酸に変異を生じたウイルスが出現し、その時期に一致して抗E2抗体の上昇が見られたので、そのアミノ酸変異を中心としたペプチドを合成し、ヘルパーT細胞の反応を検討した。変異アミノ酸配列のペプチドに対するヘルパーT細胞の反応が生じてE2抗体産生が引き起こされたという仮説を立てたが、結果は正常ペプチドも変異ペプチドも陰性でありその説明は成り立たなかった。更に検討を加えた結果、この45週という時期には,E2のみならず、C抗原に対してもIgM反応が急激に上昇していることが分かった。C抗体はIgGが感染初期にすでに出現上昇しており、これに遅れてIgMが出現するという、通常の免疫反応とは極めて異なる抗体反応パターンを示していた。この事は変異ウイルスが出現した時期に一致して宿主の免疫系にも新たな刺激が生じ、CとE2に対するIgM抗体産生が起こったことを示唆している。変異ウイルス自体には新たな抗原性はない可能性がので、変異ウイルスの挙動か何かにそれ以前のウイルスとは違うものがあって、それが免疫系の抗原認識に影響を与えたことが考えられる。その後我々は、この2頭のチンパンジーの感染後8週のB細胞がHCV抗原を発現していることをみいだした(未発表)。現在この抗原発現の詳細を検討しており、次に感染後期でのB細胞におけるそれと違いがないかを検討する予定である。
著者
松尾 涼 Suzushi Matsuo
出版者
学習院大学史学会
雑誌
学習院史学 = Gakushuin historical review (ISSN:02861658)
巻号頁・発行日
no.9, pp.1-24, 1972-11-30

論説(Article)
著者
平野 葉一 河村 勝久 中村 義作 秋山 仁 板井 昌典
出版者
東海大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は高校数学教育における数学史活用のための教員用マニュアルおよびCD-ROM作成であるが、平成11年度においては、研究最終年を迎えて具体的な実践を含めたまとめに向けての研究を行った。特に、東海大学付属高校の数学教員の協力もあり、作成資料(テキスト)の検討、実際の授業での活用を踏まえた共同授業なども試みた。研究活動および成果以下の通りである。1.数学史に関する教員用マニュアルに関しては、特に2003年からの高校数学教育改訂を念頭におき、授業での生徒たちの作業的・実践的活動が可能になる事例の収集を行った。特に新しい数学基礎との関連を考えた「黄金比」に関しての資料の充実、科学実験との関連をも考えた「指数・対数関数」が中心であった。また、ブールを中心とした集合・論理に関する研究、数学パズルに関する歴史的考察も行った。2.CD-ROM制作に関しては、Internetの普及を考慮してホームページ形式(htlm形式)とすることにした。特に、ピタゴラスからケプラーまでの数学と音楽の歴史展開を基礎とした内容の作品は、高校教員と担当の生徒たちの協力もあり、現場に即したものとなった。3.データベースの作成では、数学史関連項目を約100点選び、その歴史関連文献(約1500件)を収集した。現状では文献リストの形だが、今後内容を含めてデータベース化する予定である。具体的な成果に関する口頭発表は以下の通りである。平成11年12月3日・4日 数学史および数学教育に関するWorkshop開催(発表論文集作成中)論文報告:「数学史の通時と共時:本Workshopへの問題提起として」「ブールの『思考の法則』についての研究」など3件平成12年1月13日 韓国・ソウル、団体Mathlove主催のMath-Festivalでの招待講演「数学博物館と数学教育-数学史的視点からの考察を含めて」
著者
河西 奈緒 押野 友紀 土肥 真人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.816-823, 2022-10-25 (Released:2022-10-25)
参考文献数
18

狭いホームレスの定義を採用する日本では、不安定居住の全体像が把握されておらず、その対応は属性グループごとに異なる制度内に位置付けられている。これに対し、異なる不安定居住グループを支援する民間団体らが結集し、市民から資金を募って、緊急宿泊支援の費用を拠出する「東京アンブレラ基金」を設立した。本研究は、広範な不安定居住を横断的に支えるシステムの先駆けとして基金を捉え、基金を設立した各団体の活動実態および居住支援や基金設立に対する意識を明らかにし、システム創出の意義を考察することを目的としている。研究の結果、団体らの活動から不安定居住が様々な年代や性、国籍、世帯構成の人々に広がっている実態が確認された。また基金の利用実績から、公的制度が緊急あるいは一時的な宿泊支援ニーズに適合しづらく、協働団体が自費や民間助成金を用いて対応している状況がうかがえた。基金が初めて創出した不安定居住に対応する枠組みは、対象者を属性や事情で選別せず、居住の状態によって等しく捉え、行き場のない誰しもに対応する地域や都市の在り方を示している。
出版者
非凡閣
巻号頁・発行日
vol.第二十六卷, 1938
著者
横山 貴司 石川 博文 坂本 千尋 渡辺 明彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.2612-2617, 2008 (Released:2009-04-07)
参考文献数
14

S状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻を5例経験した.平均年齢68.4歳,男性3例女性2例で,5例中3例は他院にて大腸癌あるいは膀胱癌と診断され,1例は人工肛門を造設されていた.主訴は4例で糞尿あるいは気尿を認め,1例は腹痛,腹部膨満感のみであった.5例中3例において,注腸検査,膀胱鏡,MRIにより結腸膀胱瘻が描出可能であった.全例で大腸憩室症の既往があったこと,画像上,腫瘤形成を認めないことから,憩室炎に伴う瘻孔と診断し,S状結腸切除,膀胱部分切除術を施行した.術後経過は全例良好であった.結腸憩室炎による結腸膀胱瘻は比較的稀な疾患であり,自験例5例とともに15年間の報告例を集計し,以前の本邦報告例と比較し,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
田隈 広紀
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会誌 (ISSN:24320374)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.141-152, 2022-10-23 (Released:2022-10-23)
参考文献数
27

本研究では社会科学系の初年次学生における起業への意識傾向を、事業構想・実装・運営を司る人材に必須の素養である主体性の構成要素と関連させながら調査した。その結果、主体性の構成要素のうち「想像力」が「起業意欲」と強く関連しており、「自覚」と「自由意志」が「起業意欲」と「失敗への危惧」の両方に緩く関連していることが判った。これらを踏まえ、P2M理論を適用した社会的・公益的事業のケーススタディによる起業家精神の解説、ロジックモデルとSWOT分析を併用したキャリアプランニングの演習、卒業生の実践者からのゲストスピーチによる創業マネジメントの解説を教育方略として提言した。今後は起業に至り長期構想を実現させた人材を追跡調査し、修学意識・過程と育成方法を精緻化する予定である。
著者
Aya Sugiyama Fumie Okada Kanon Abe Hirohito Imada Serge Ouoba Bunthen E Md Razeen Ashraf Hussain Masayuki Ohisa Ko Ko Shintaro Nagashima Tomoyuki Akita Shinichi Yamazaki Michiya Yokozaki Eisaku Kishita Junko Tanaka
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
Environmental Health and Preventive Medicine (ISSN:1342078X)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.30, 2022 (Released:2022-07-07)
参考文献数
49
被引用文献数
3

Background: This longitudinal study aimed to determine chronological changes in the seroprevalence of prior SARS-CoV-2 infection, including asymptomatic infections in Hiroshima Prefecture, Japan.Methods: A stratified random sample of 7,500 residents from five cities of Hiroshima Prefecture was selected to participate in a three-round survey from late 2020 to early 2021, before the introduction of the COVID-19 vaccine. The seroprevalence of anti–SARS-CoV-2 antibodies was calculated if at least two of four commercially available immunoassays were positive. Then, the ratio between seroprevalence and the prevalence of confirmed COVID-19 cases in Hiroshima was calculated and compared to the results from other prefectures where the Ministry of Health, Labour and Welfare conducted a survey by using the same reagents at almost the same period.Results: The numbers of participants in the first, second, and third rounds of the survey were 3025, 2396, and 2351, respectively and their anti-SARS-CoV-2 antibodies seroprevalences were 0.03% (95% confidence interval: 0.00–0.10%), 0.08% (0.00–0.20%), and 0.30% (0.08–0.52%), respectively. The ratio between the seroprevalence and the prevalence of confirmed COVID-19 cases in Hiroshima was 1.2, which was smaller than that in similar studies in other prefectures.Conclusions: The seroprevalence of anti–SARS-CoV-2 antibodies in Hiroshima increased tenfold in a half year. The difference between seroprevalence and the prevalence of confirmed COVID-19 cases in Hiroshima was smaller than that in other prefectures, suggesting that asymptomatic patients were more actively detected in Hiroshima.
著者
井上 功 山本 砧三 武嶋 寛剛 中小 路澄子 貞岡 達也 坂哲 郎 垣鍔 典也 坂倉 淳 牧本 一男 高橋 宏明 和田 公平 大森 研史 林 伊吹 藤田 隆夫 渡辺 猛世 藤澤 俊二 宇野 功 野中 隆三郎
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.87, no.7, pp.985-995, 1994-07-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
5

The effectiveness, safety and usefulness of ketotifen nasal spray were investigated in 163 patients with allergic rhinitis. Ketotifen nasal spray (0.05mg/puff) was given four times daily for 4 weeks or more. “Slight to high” improvement was recorded in 92.4% of patients and “moderate to high” improvement in 61.0%.Overall usefulness was very high for both perennial and seasonal allergic rhinitis. Side effects were noted in six patients (3.7%). Drowsiness was noted in five patients and nasal mucosal pain in only one.The results of this study suggest that ketotifen nasal spray is very useful in the treatment of allergic rhinitis.
著者
長島 正明 蓮井 誠 山内 克哉 美津島 隆
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1626, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】ネフローゼ症候群は高度の尿蛋白により低蛋白血症を来す腎臓疾患群の総称である。腎臓病患者に対する運動療法は少なくとも嫌気性作業閾値(以下AT)であれば尿蛋白や腎機能へ影響を与えないことが報告されつつあり,ネフローゼ症候群診療ガイドライン2014においても安静や運動制限の有効性は明らかではなく推奨されていない。一方,ネフローゼ症候群の急性期治療として高用量(0.5>mg/kg/日)ステロイド治療が一般的であるが,ステロイド筋症による筋力低下によってADL制限が顕在化することがある。低用量ステロイド治療患者に対し運動療法が有効であることが報告されているが,高用量ステロイド治療における運動療法の有用性は不明である。本研究の目的は,高用量ステロイド治療中のネフローゼ症候群患者における運動療法の有効性を体組成・筋力・運動耐容能から検証することである。【方法】対象は高用量ステロイド治療目的で当院腎臓内科に入院したネフローゼ症候群患者で,運動療法の依頼でリハビリテーション科に紹介となったADL自立の60歳代一症例とした。運動療法は週5回実施した。有酸素運動としてATでの自転車駆動30分,筋力運動としてスクワット動作や上肢ダンベル体操をBorg Scale13の強度で実施した。測定は運動療法開始前と退院時に実施した。体組成は体組成計インボディを用い,筋量,脂肪量を測定した。筋力は筋機能評価運動装置BIODEXを用い,等尺性膝伸展最大筋力を膝屈曲90°位で測定した。運動耐容能は心肺運動負荷試験で評価した。心肺運動負荷試験は呼気ガス分析装置および自転車エルゴメータを用い,10wattランプ負荷とし,ATおよび最高酸素摂取量を測定した。ATはV-slope法にて決定した。最高酸素摂取量は症候限界時の酸素摂取量とした。また,体重,食事摂取カロリー,尿蛋白一日量,ステロイド服用量を診療録より記録した。【結果】入院3週目よりステロイド0.8 mg/kg/日で治療開始され,同時に運動療法開始となった。運動療法は8週間実施され,ステロイドは0.4mg/kg/日まで減量し退院となった。運動療法8週間前後で,体重(kg)は60.4→53.5に減少した。筋量(kg)は26.5→21.8に減少,体脂肪量(kg)は11.0→12.1に増加した。体重比筋力(Nm/kg)は右2.15→1.50,左1.85→1.51に低下した。AT(ml/kg/min)は12.7→15.6,最高酸素摂取量(ml/kg/min)は19.8→20.0に増加した。心肺運動負荷試験の終了理由はペダル50回転維持困難であった。また,入院中の食事は1800kcal全量摂取であり,間食はなかった。尿蛋白一日量(mg/日)の一週間平均値は4095→2159へ改善した。【結論】本症例において,運動療法によって筋力を維持することは困難であったが,運動耐容能を維持することができた。高用量ステロイド治療中のネフローゼ症候群患者における運動療法の強度の検証が必要である。
著者
越川 昭三
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
日本医科大学雑誌 (ISSN:00480444)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.114-117, 1980-02-15 (Released:2010-12-22)
参考文献数
4
著者
小泉 美緒 玉木 彰 永田 一真 名和 厳 富井 啓介
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.262-265, 2019-11-30 (Released:2020-01-28)
参考文献数
14

症例は73歳男性,特発性肺線維症に気胸を合併していた.公営住宅3階に独居で,ポータブルタイプの酸素濃縮器を使用し,同調式 3 L吸入下で歩行と階段昇降を行っていた.理学療法開始時には下肢筋力低下および運動耐容能の低下を認め,同調式吸入下での階段昇段時に低酸素血症と著しい呼吸困難,呼吸数増加を認めていた.3週間の介入によって下肢筋力,運動耐容能は改善したものの,同調式吸入下では階段昇降時の呼吸困難,低酸素血症は改善しなかったため,同調式から連続式に切り換え可能な呼吸同調器付きの酸素ボンベへ変更した.その結果,連続式吸入下で20段の階段昇段と1回の立位休憩で目標であった階段昇段40段を獲得し,本症例は自宅退院に至った.本症例のような階段昇段時に低酸素血症,呼吸困難,呼吸数増加を呈する患者に対しては,一時的に連続式を使用する指導の検討が必要と考えられた.