著者
増野 匡彦 中村 成夫 高橋 恭子 西澤 千穂
出版者
共立薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.フラーレン誘導体のがん細胞増殖抑制機構の解明ジメチルピロリジニウム置換基を有するフラーレン誘導体(1)ががん細胞増殖抑制効果を示すことをすでに明らかにしているが、その機構の解析を行った。ヒト白血病由来HL-60細胞を1で処理するとアポトーシスの特徴であるDNAのラダー化、クロマチンの凝集、細胞周期のSub G1期での停止が観察され、さらに、カスパーゼ3の活性化、カスパーゼ9の活性化、ミトコンドリアからのシトクロムc放出を引き起こすが、p53の誘導はおきないことを見出した。多くのがん細胞ではp53が欠損しているためp53以外の経路でアポトーシスを誘発する化合物は抗がん剤リード化合物として有利と考えられる。2.HIV逆転写酵素阻害活性の高いプロリン型フラーレン誘導体のデザインと合成フラーレン骨格に結合したピロール環に3つのカルボン酸を有する誘導体(2)をリード化合物としてコンピュータードッキングシミュレーションも用いて様々な誘導体をデザイン、合成した。その結果ピロール環2,5位の2カ所にカルボン酸を有する誘導体(3)の活性が2よりも高く、カルボン酸を1つにすると活性が低下することが明らかとなった。これらの誘導体の阻害活性は現在抗HIV薬として用いられているネビラピンの100倍以上活性が高かった。3.スルホニウム型フラーレン誘導体の抗C型肝炎ウィルス活性スルホニウム型フラーレン誘導体(4)はフラーレン誘導体1と同等のC型肝炎ウィルスRNAポリメラーゼ阻害活性ならびにC型肝炎ウィルス増殖抑制効果を示した。4は細胞毒性も低く抗C型肝炎薬のリード化合物として有望であることを明らかとした。3年間の研究で新規抗がん薬、抗HIV薬、抗HCV薬の有望なリード化合物を創製できた。
著者
森 菊子
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、安定期を維持できている慢性閉塞性肺疾患患者の呼吸器感染に関するセルフマネジメントの状況と、呼吸器感染症状・サインのモニタリング項目を明らかにし、慢性呼吸器疾患患者の呼吸器感染症状のアセスメントツールを検討することを目的とした。まず、1年以上呼吸器感染による急性増悪での入院経験のない慢性閉塞性肺疾患患者7名に、セルフマネジメントの状況について半構成的面接法によりインタビューを行った。その結果、協力者は風邪と思ったら早めに風邪薬を内服し、効かなかった場合は早期に受診する判断をしており、受診のタイミングの判断が重要であると考えられた。また、体温、酸素飽和度などを指標として客観的に自分の身体の変化をとらえたり、平常の範囲を知っていて何かおかしいと感じた時に、症状と数値を照らし合わせて判断しており、客観的に身体の状態を見ていくことが重要と考えられた。この結果をふまえ、慢性閉塞性肺疾患患者9名に、痰、身体の感覚の変化、咳、体温、鼻水、くしゃみ、咽頭痛、酸素飽和度、脈拍、気分・気力、食欲の状態に関する項目について、「0:ない」から「10:非常に多い」で1ヶ月間モニタリングをしてもらった。その結果、9名中6名において、症状・サインの悪化、回復の変化が見られた。症状の悪化が見られた人においては、咳の回数、痰の粘稠度、痰の量、鼻水、くしゃみの悪化が先行し、微熱出現より1日早めあるいは同時に気分の低下、気力の低下、食欲の低下が見られた。黄色痰については、発熱後に見られる傾向があった。以上より、慢性呼吸器疾患患者が早期に自分の状態をアセスメントするためのモニタリング項目として、咳の回数、痰の粘稠度、痰の量、鼻水、くしゃみ、体温、気分の低下、気力の低下、食欲の低下は有効であると考えられた。また、その変化をとらえることで急性増悪予防の対処につなげていくことができると考えられた。
著者
佐々木 三男 荻野 夏子
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

高照度光が深夜勤務中の看護婦の眠気や気分、さらに夜勤明けの日中睡眠へどのような影響を及ぼすかを検討した.対象は研究の主旨を説明して同意を得た3交替勤務に従事している健康な看護婦20名である.被験者の背景因子については、活動型をMorningness-Eveningness Scale(朝型-夜型スコア)で把握し、20日間の睡眠日誌をつけて睡眠持続時間と睡眠前後の自覚的評価を100mmアナログスケール(VAS)で記録した.さらに20日間の検査期間中に、20人中8名の被験者には1)深夜勤務中にナ-スステーションで12時から午前3時まで、2500ルックスの高照度光下で勤務をしてもらい、光照射前後の疲労度(労研式)、眠気、気分の変動を2時間おきに記録した.深夜勤務終了後、夜勤明けの睡眠を自宅で記録した(Bright light:以下BL条件とする).2)さらに同じ8人の被験者には光照射をしない光装置の前で同じように深夜勤をしてもらい、勤務中と明け睡眠記録を同様に行なった(Dim Light:DL条件とする).日中の睡眠検査は深夜勤務明けの自宅で行なった.記録装置は、加速度と光センサーを利用し体動と光の照度をを連続的に測定出来る、米国A.M.I.社製の光検知付きアクティラム(活動計)を使用した.なお昼間睡眠前後の自覚的睡眠評価も併せて行なった.「結果」BL条件では午前6時の眠気(41.50±28.34)は、DL条件(68.86±16.73)に比較して低く(p<0.05)、午前6時の疲労感もBL条件で低く、深夜勤務の高照度光照射は勤務中の眠気や疲労の軽減に有効であると推定された.
著者
石 汝杰 中里見 敬 西山 猛
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1.『呉語読本』音声データ作成の準備研究代表者の石汝杰が、7-8月に中国へ渡航し、『呉語読本』の一部について録音を行った。しかし、音声の著作権の問題の解決、および音声データの整理に、さらに時間を要するため、公開には至らなかった。2.『呉語読本』増訂本作成の準備『呉語読本』初版本に未収録で、呉語文献として重要なものを選定し、校訂のうえ電子テキスト化し、注釈作成の準備を行った。この増訂本については、平成16年度の出版をめざして、科学研究費研究成果公開費を申請した。また、これ以外にも、呉語資料を発掘・収集すべく、関連する資料の調査を行った。3.研究会の定期的開催本科研費メンバーを中心に、九州大学の大学院生等を含めて、呉語の研究会を毎週水曜日午後に、定期的に継続して開催した。研究会において上記2の作業を行うとともに、『呉語読本』初版本の一部を日本語に翻訳した。常時参加者は、平田直子(学術振興会特別研究員・北九州大学非常勤講師)、朴春麗(九州大学大学院生)。この研究会は、本研究課題を推進する母体であるとともに、若手の呉語研究者を育成する格好のトレーニングの場ともなった。4.研究成果報告書の作成以上の研究活動の成果として、論文・翻訳編と資料編の2冊からなる研究成果報告書を作成し、呉語研究者・研究機関に送付した。第一冊に収録した論文は、《江蘇新字母》同音字表、川沙方言同音字表(以上、石)、古代漢語文法研究における時期区分の再設定(西山)、呉語小説における内面引用(中里見)、『古今韻表新編』における中古上声全濁音字について(平田)ほかの各編。翻訳は『九尾亀』第163回(一部)、『九美図』第28回除夕、『鉢中蓮』第8出の各編、さらに石による呉語文献書目札記を収めた。第二冊は「蘇州評弾記言記譜」で、蘇州評弾を歌詞と楽譜によって再現するものであり、音声データの書面版ともいえる貴重な記録である。
著者
直田 健 今田 泰嗣 小宮 成義
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

クリーンで遠隔操作可能な有機流体の流動性制御や物質配列による機能発現を目的として、メカノストレスを外部刺激として用いる洗濯ばさみ型パラジウムおよび白金錯体の分子集合の精密制御法の開拓を行った。環状二核パラジウム錯体を用いる分子集合において、超音波感受性のコントロール方法を検討し、溶媒、超音波照射時間及び構造異性体の添加等の因子により、ゲル化速度や構造のモルフォロジーを制御できることを明らかにした。さらに、対応する白金錯体の超音波応答性分子集合による発光増大現象において、超音波照射時間に依存する発光強度制御に成功した。
著者
井上 正康 佐藤 英介
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本申請者は、不安定で短寿命の活性酸素やNOのクロストークが、循環エネルギー代謝、感染防御、発生分化、組織リモデリングなど、種を越えて生物の生存を保証する危機管理スーパーシステムを構築することを世界に先駆けて報告してきた。本研究は、本システムの全容解明とその特異的代謝制御法の開発により各種病態の予防治療法確立を目的として進められた。本研究により、短寿命の活性酸素やNOを個体レベルで組織特異的に代謝制御するシステムがが確立できた。例えば、虚血組織、血管内皮細胞、肝細胞、腎尿細管細胞、白血球や網内系細胞などをその特異的ターゲットとするSOD群、長時間循環型のアスコルビン酸オキシダーゼおよびチトクロムcなどの検出分子系の開発などがその例である。これらを利用し、活性酸素NO系のスーパーシステムが抵抗性血管と所属組織のミトコンドリアエネルギー代謝・活性酸素代謝系を総合的に制御している分子機構が判明し、高血圧やショック病態がその代謝の歪みである可能性も判明した。さらに、ミトコンドリア内膜分子群に対する本スーパーシステムの作用機構を明らかにし、その特異的制御によりアポトーシスのコントロールが可能となった。さらに、本スーパーシステムが細胞の増殖制御や昆虫の変態現象にも関与することが判明した。後者は、感染症との関係で変態時期を認知実行する機構を形成していることも明らかになった。これに関連し、NO代謝を主軸とする活性酸素スーパーシステムが両棲類(オタマジャクシ)、及び昆虫(クワガタ虫やカイコ)の変態(プログラム細胞死と組織リモデリング)、および神経筋疾患の発症の時期や進行速度を統御していることが明らかになった。また、ミトコンドリア依存性細胞死を抑制するカルニチンがミトコンドリア病態を介する神経・筋萎縮性病態の進行を抑制することが判明した。さらに、組織特異的な活性酸素代謝制御による抗ガン剤の副作用(特に腎と消化管上皮細胞のミトコンドリア依存性アポトーシス)の特異的抑制法が可能であることも判明した。
著者
木崎 昌弘
出版者
埼玉医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

白血病の治療は抗癌剤による化学療法が主体であるが、時として致命的な合併症や副作用が問題となる。近年、白血病に対す分子標的療法が注目されているが、本研究においてはより侵襲の少ない新たな白血病に対する分子標的療法の確立を目的とした研究を展開した。緑茶成分EGCG は活性酸素(ROS)を産生し、ミエロペロキシダーゼ(MPO)を介して最終的にはDNA 障害活性の強いヒドロキシラジカルを産生することでヒト骨髄性白血病細胞のアポトーシスを誘導した。そこで、白血病の治癒を目的として、CD34 陽性CD38 陰性分画より、ヒト白血病幹細胞(LSC)を単離し、EGCG によるヒトLSC に対する効果を検討し、白血病に対する新たな分子標的療法確立のための基礎的な検討を行った。
著者
板野 理 斎藤 淳一
出版者
慶応義塾大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

現在、胃癌に先行して、大腸癌の臨床検体を用いた研究を継続中である。大腸癌新鮮手術切除検体25例の癌部、非癌部のゲノムDNAを抽出し、RLGS法を用いて、各々のprofileを作成した。(板野、斎藤)二次元電気泳動により得られた各profile上でのスポットの変化を、癌部と非癌部間で比較したところ、いくつかの共通スポット変化をみとめた。その内訳は、非癌部のみに出現するスポットが4種、癌部のみに出現するスポットが2種であった。最も高頻度にみられたスポット変化は癌部のみに出現するスポットで、25例中19例(76%)にみとめた。そのDNA断片をゲルからクローニングするために、制限醇素Not I siteのみを描出するtrapper methodを用いた。クローニングはtrapper施行後のprofileから、目的とするスポットを直接打抜き、DNAを抽出した。DNA量の確保のため、プラスミドに押入し、大腸菌を用いて形質転換を行い、増幅させた。さらにダイデオキシ法にて、塩基配列を決定した。今回のクローニングで得られたDNA断片の塩基配列は、ヒト脂肪酸合成酵素遺伝子(FAS)と69%の相同性を認めるものであった。(板野)今後は,得られたDNA断片をprobeとし、該当する癌関連遺伝子の同定を試みる予定である。以上の手法にて、他の変化スポットも1種ずつクローニングしてゆくことで、未知の癌関連遺伝子同定が進んでゆくと考える。また、各profile間のスポット変化と臨床病理学的特徴を解析することで、特定の遺伝子変化に対応した病態が解明される可能性がある。
著者
斎藤 馨 岩岡 正博 藤原 章雄
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

(1)無電源地に太陽光発電システムを設置し、定時伝送システムに24時間電源供給を実現した。(2)無電源地でブナ林、2次林、人工林の森林景観と気象データを、携帯電話データカードを用いて、毎日定時に伝送するシステムを開発設置し、運用を続けている。(3)森林映像インターネット配信サーバの稼働を開始した。日々データカードで伝送蓄積している景観データについては、インターネットを使い、(a)PodcastによりPCとiPodに日々配信、(b)ブログによりPCと携帯電話への配信システムを開発し、運用を続けている。(4)過去13年間の高品質映像データから、紅葉期についてデジタル化し、配信サーバにデータベース化して組み込んだ。(5)環境学習教材開発と検証実験を行った。上記の(3)、(4)を用い、森林映像による過去13年間の紅葉期の季節変化と、定時伝送システムとインターネット配信により日々送られる紅葉期の映像データを用いた、環境学習プログラムを開発した。プログラムは、(a)映像による季節区分クイズ、(b)13年間の紅葉期映像パンフレットによる解説、(c)カエデ類の実物の葉の配布、(d)紅葉実験キットの説明と配布とした。(6)小学生とその家族を含む約100名による検証実験を行ない、アンケートを行った。(7)紅葉期が終わった後に、伝送映像と別に、高精細な映像を編集したDVDを制作し、郵送配布しアンケートを行った。(8)(5)でのプログラムでは、(a)が最も良かったと回答され、プログラム実施後に携帯電話やインターネットによる日々の配信映像を見てもらえることが分かった。また(7)では、ブログと携帯電話での視聴者が最も多く、森林景観の日々の様子を映像により観察する場合、重要なメディアであることが示された。
著者
平山 勉 後藤 明史 竹内 英人
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、初任者教師の授業実践能力育成支援のため、「ユビキタス映像記録視聴システム」を活用することを目指した。配信用の携帯ディバイスをiPod touchから大画面のiPadに改良した。SNSの非公開会議室を利用し、学生同士の意見交換に利用し成果があった。卒業生の授業を配信・活用し、教職課程履修生の授業実践能力育成に資することができた。愛知県総合教育センターと授業映像記録の活用について共同研究をスタートした。
著者
平田 成
出版者
会津大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

小惑星イトカワの探査データを, 不規則形状小天体の解析のための地理情報システム(GIS)で取り扱い可能なマッピングデータとして整理した, また, 本ソフトウェアを用いて小惑星イトカワ上に存在する衝突地形の抽出を行うとともに, 小惑星上でのクレーター形成過程についての研究を進めた.また, クレーター形成と連動して生じる表層の物質移動と宇宙風化の進行度との関係についての研究も進めた. これらの研究成果をもとに, 小惑星イトカワの進化履歴が明らかになったほか, 小惑星の地質学的プロセスについての理解が進展した.
著者
小野寺 淳 出田 和久 平井 松午 藤田 裕嗣 小田 匡保 礒永 和貴 大島 規江 川村 博忠 倉地 克直 杉本 史子 三好 唯義 小野田 一幸 種田 祐司 野積 正吉 青木 充子 尾崎 久美子 中尾 千明 橋本 暁子 横山 貴史
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

オランダ、ライデン大学図書館にはシーボルトが収集した21鋪の手書き彩色の国絵図が所蔵されている。21鋪の国絵図を高精細画像で撮影し、国内の類似の国絵図と詳細に比較分析した結果、21鋪の基図は慶長図1鋪、寛永図6鋪、正保図と寛文図14鋪であることが明らかになった。対となる国絵図がある一方で、基図の作成年代も個々に異なる例が多く、シーボルトの手書き彩色国絵図の入手先は複数あったと想定される。
著者
ウェルズ 恵子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、アメリカ黒人文学と音楽文化におけるイスラム教の影響を検討する目的であったが、イスラム教よりも黒人の民間宗教的世界観や口頭文化の伝統に根ざしつつ、アメリカ社会からの圧力に応じたり抵抗したりする形で変容を繰り返してきているということが明らかになった。そこで主に、(1)人種差別撤廃運動とイスラム教のヒップホップ世代との関連、(2)奴隷時代からの黒人音楽文化の特色とラップ文化の特色、(3)黒人口頭文化の諸様式、の3点を追求することとなった。細部について詳細の研究が課題として残った。
著者
瀬川 典久
出版者
岩手県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、過酷な気象環境下でも動作し、利用者が安全に利用できるセンサネットワークを構築する技術開発したことである。具体的には、(1)厳しい環境でも動作するセンサネットワークの設計手法の開発(2)発電量と消費電力を考慮したプロセススケジューリング手法の開発(3)安全に利用できるセンサネットワークプロトコルによる信頼性の向上(4)実証実験による、現実社会への適用である。この技術で、厳しい自然環境下での情報の収集が行えると考えられる。
著者
吉光 徹雄
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

大きさ数km以下の太陽系小天体表面での絶対自己位置同定として,小天体近傍に滞在する探査機からの電波を用いる手法の検討をシミュレーションとGPSによる模擬実験により実施した.
著者
大出 良知
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

わが国における刑事弁護は、明治初年に治罪法(1880年)によって近代的な刑事手続が導入されると同時に制度確立への第一歩を踏み出すことになった。とはいえ、公判段階(治罪法、旧々刑訴法)だけか、せいぜい予審段階になって(旧刑訴法)選任が認められていただけであり、官選弁護も限定されていた。これに対して、戦後改革は、日本国憲法34条、37条によって、被疑者段階からの弁護人依頼権を保障し、被告人に限定のない弁護士による国選弁護権を保障することになった。しかし、現行刑訴法が、被疑者段階からの弁護人「選任」権を保障したにとどまるかのような規定を置き、複疑者段階の国選弁護の規定を置かなかったこともあって、被疑者段階での弁護人選任率は、確たる統計数値はないものの低率にとどまっていたことは間違いない。そのことが、自白偏重捜査を消極的にであれ支えていた。それゆえ、学説は早くから当事者主義刑事訴訟法理論の体係化とともに、解釈論として被疑者段階の弁護権の伸張を主張してきた。自由接見交通の原則と取調立会権であり、その実効性を担保するための憲法の解釈可能性を前提とした被疑者国選弁護の導入である。これらの主張は、司法の危機といわれた司法状況の展開と弁護士の状況から生まれた「刑事弁護離れ」によって実践的には顧みられなかった。しかし、死刑確定囚4人までもが無罪であったというわが国の刑事手続の実情の打開に刑事弁護の充実・強化が不可欠であるとの認識の広がりが、日弁連刑事弁護センタ-を発足させ、当番弁護士制度を生むことになった。本研究は、このような状況変化までの経緯を総括し、その上で憲法34条、37条を基礎とした、刑事手続の全場面での弁護人の援助を可能にする解釈論を追求したものであり、その可能性を示している。
著者
高槻 成紀 吉田 邦夫 須田 知樹 佐藤 雅俊 佐藤 喜和
出版者
麻布大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

研究の目的は野生馬タヒを自然復帰した保護区におけるギルドの解析であった。草食獣については大型のタヒとアカシカの群落選択と食性比較をおこない、タヒは草原をアカシカは森林を利用し、食物もタヒはイネ科を主体とし、アカシカはイネ科と双子葉を半々程度食べていることがわかった。最終年には当初予定していなかったユキウサギとシベリアマーモットを含めた比較ができた。肉食動物については鳥類は営巣崖値の調査が危険であるためにサンプルの確保ができず、断念した。しかしオオカミとキツネの比較はできた。ただし糞分析法を採用したため、アカギツネとコサックギツネの区別はできず、「キツネ類」としてまとめた。この分析によりオオカミはもっぱら哺乳類を食すが、キツネは夏は昆虫をよく食すことがわかった。またオオカミは保護区外の家畜をよく採食していることがわかり、保全上の問題が浮上した。タヒ個体数の順調な増加は保護区の設立目的からして歓迎されているが、保護区を生態系保全という視点でみた場合、草食獣による影響が強くなりつつある。そこで森林群落での影響調査を実施したところ、構成樹木の非常に高い枯死率、ディア・ラインの形成、若木の生長阻害が認められた。資源利用とこれらの結果から、タヒ・草原系とアカシカ・森林系の関係において、タヒ・草原系には有利に葉たらしているが、アカシカ・森林系が縮小・退行していることが懸念される。全体としては初期の目的をほぼ達成することができたが、食肉鳥類が分析できなかったこと、肉食獣の同定に限界があった点は課題を残した。これらの成果は順次論文として公表する予定であり、資源利用の基礎となるバイオマス推定についてはすでに投稿中であり、食性などは論文準備中である。
著者
向井 正 中村 昭子 岡田 靖彦 平田 成
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

小惑星表面を模擬した物質の光散乱特性を明らかにするために、(1)室内での光散乱実験を実施し、不規則形状体の光散乱データベースの構築を目指すと共に、(2)不規則形状体の光散乱を理論的に検討する手法としての数値計算ツールの開発を実施した。それらの基礎過程の研究を基に、(3)小惑星表面画像の解析から、小惑星表面物質を演繹した。
著者
宮本 英昭
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

小惑星イトカワの岩塊上にある高輝度の点に着目し、岩塊が10~100万年という極めて若い年代を示すことを示した。これは岩塊が幾度となく小惑星表面において流動化したとする研究代表者らの説と調和的である。さらに、3次元の複雑形状の粒子の分布を計算する数値シミュレーションコードを開発し、イトカワの高解像度画像における岩屑は幾何学的に飽和していることを示した。また、岩塊粒子の移動に関する理論的な研究を進め、特に静電気力による微粒子の浮遊効果が重要な意味を持つ事をあきらかにした。そして土星の衛星アトラスでは、その表面更新に主要な役割をはたしていることを示し、この現象が、実は微小重力下においては極めて重要な地質プロセスの一つであることを明らかにした。
著者
山本 裕子 池田 由紀 松尾 ミヨ子 大鳥 富美代 林田 麗 土居 洋子
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

2型糖尿病と診断された患者の特徴を明らかにし、診断後3年以内の早期患者を対象とした学習支援プログラムについて検討した。その結果、糖尿病の受けとめに特徴がみられ、積極的受けとめと消極的受けとめがあり、受けとめがその後の自己管理に影響することが示唆された。学習支援プログラムは、患者が気持ちを表出しやすいように、グループアプローチをとりいれたが、早期の患者では糖尿病による経験が浅いことや、外来受診患者を対象としたためメンバーの関係を築きにくく、グループアプローチ機能の活用は困難であった。