著者
藤林 真美 神谷 智康 高垣 欣也 森谷 敏夫
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.129-133, 2008-06-10
被引用文献数
3 21

現代人の多忙な生活の中で,簡便で即効性のある栄養補助食品が求められている。本研究では,GABAを30 mg含有したカプセルの経口摂取によるリラクセーション効果を,自律神経活動の観点から評価することを試みた。12名の健康な若年男性(21.7±0.8歳)を対象に,GABAとプラセボカプセルを摂取させ,摂取前(安静時),摂取30分および60分後の心電図を胸部CM<SUB>5</SUB> 誘導より測定した。自律神経活動は,心拍のゆらぎ(心電図R-R間隔)をパワースペクトル解析し,非観血的に交感神経活動と副交感神経活動を弁別定量化した。その結果,GABA摂取前と比較して,総自律神経活動は摂取30分後 (<I>p</I><0.01) および 60分後 (<I>p</I><0.05)に,副交感神経活動も摂取30分後 (<I>p</I><0.05)に顕著な上昇を示した。これらの結果から,30 mgのGABA経口摂取は,自律神経系に作用しリラクセーション効果を有する可能性が示唆された。
著者
野坂 洋子
出版者
法政大学現代福祉学部現代福祉研究編集委員会
雑誌
現代福祉研究 (ISSN:13463349)
巻号頁・発行日
no.15, pp.141-151, 2015-03

本研究は、ドメスティック・バイオレンス(以下、DVとする。)とDV被害者支援現場にて発生している二次加害の類似性について整理することにより、二次加害防止に向けた方策を考察することを目的とする。DV被害者支援現場では、支援者が二次加害行動をして被害者にダメージを与え、支援を受ける動機付けを低下させる現象が発生しており、この防止策構築は喫緊の課題といえる。二次加害防止策構築の一環として、DVと二次加害の類似性に焦点を当てて分析・考察を行った結果、DVと二次加害には発生の仕組みと加害内容に類似性がみられた。この類似性が影響することにより、二次加害が発生するとDV被害者支援現場において支援者が被害者により深刻なダメージを及ぼすことにつながったり、被害者のアクセシビリティーを低下させる要因になり得ると考えられる。また、二次加害防止策の中でも支援者レベルの方策として、スーパービジョンの有効性も提言した。
著者
渋谷 和代 左官 愛野 江端 恵加 渡部 絵里香 数野 千恵子 西島 基弘
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.95, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 緑茶を水道水、アルカリ電解水、およびRO水(逆浸透膜で得られた水)で抽出し、カテキン類、メチルキサンチン類、L-アスコルビン酸およびテアニンの抽出率の比較検討を行った。また、市販緑茶(18種類)中のそれらの含有量について検討した。<BR><B>【方法】</B><BR> 緑茶の抽出は、茶葉を一定条件で抽出後、ろ液を試験溶液とした。カテキン類、メチルキサンチン類およびL-アスコルビン酸はHPLCを用いた。HPLC用カラム: J'sphere ODS – H80(4μm,4.6mmi.d.× 250mm)を用いた。L-アスコルビン酸はカラムは0.1Mリン酸一アンモニウムで置換したLiChrosorb-NH<SUB>2</SUB>(10μm,4mmi.d.× 250mm)を用いた。テアニンは、アミノ酸分析計で分析した。<BR><B>【結果】</B><BR> 緑茶抽出液のカテキン類では、特にEGC、EGCG、EC、ECGが多く検出されEGC、EGCG、EC共にRO水の抽出が最も良く、次いでアルカリ電解水、水道水の順であった。ECはRO水、水道水、アルカリ電解水の順となった。メチルキサンチン類については、カフェインが最も多く検出され、RO水での抽出が最も良く、アルカリ電解水、水道水の順であった。テアニンについては、いずれの試料水も同程度検出された。市販緑茶のカテキン類は30~75mg/100mlであるが、「特保」や商品名に「濃い」と表示されているものは、100 mg/100ml以上のものが多く見られた。カフェインについても同じ製品では多く検出されたが、テアニンは特に多くはなかった。市販緑茶のL-アスコルビン酸は、3~40mg/100mlと製品により大きな差が見られた。
著者
長谷川 丈 杉山 大介 熊坂 美紀子 菱沼 美和子 松尾 公美子 井出 壮一郎 田中 聡 鬼頭 剛
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
The journal of the Japan Society of Pain Clinicians = 日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.144-149, 2008-04-25
参考文献数
10
被引用文献数
7

「電流知覚閾値(患者が感じる最小電気刺激量)」と「痛み対応電流値(痛みと等価の電流量)」から「痛み度」を数値化する知覚・痛覚定量分析装置ペインビジョン<sup>TM</sup>が開発された.疼痛治療の評価におけるペインビジョンの有用性を,治療により疼痛が軽減した16症例(疼痛低下群)と疼痛が軽減しなかった9症例(疼痛不変群)の合計25症例で,視覚的アナログ疼痛スケール(VAS)で評価した痛みの程度(VAS値)との関係から検討した.疼痛低下群では,治療後にVAS値,痛み対応電流値,痛み度は有意に低下し,電流知覚閾値は有意に上昇した.疼痛不変群では,VAS値,痛み対応電流値,痛み度は有意に変化せず,電流知覚閾値は有意に低下した.VAS値と最も強い相関を示したのは痛み度であった.以上より,疼痛の治療前後にペインビジョンで評価することで,痛みという主観的な感覚の変化を,痛み度という数値の変化として表現できることが示された.
著者
名倉 秀子 渡辺 敦子 大越 ひろ 茂木 美智子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.146-156, 2003-05-20
被引用文献数
4

雑煮の構成内容から地域の特徴を知る目的で,全国を12地域に分割し,各地域に在住する学生の家庭を対象に,アンケートによる実態調査を行った。雑煮のもち,だし,調味料,具,盛り付けの器,伝承など雑煮の地域的な特徴について以下のような結果が得られた。1)もちの形態は角もちが北陸,東海以北,丸もちが近畿以西にそれぞれ80%以上出現した。もちの扱い方は「焼く」が関東以北4地域,「ゆでる」が北陸,中国,北九州の3地域,「そのまま汁へ」が東海,近畿1,近畿2,四国,南九州の5地域に分類できた。2)だしの種類は魚介類が東海および中国以西,肉類が東北,海藻類が北海道,北陸,九州,野菜・きのこ類が九州でやや高めの出現率を示した。3)調味料の種類から,すまし仕立て系が北海道,東北,関東1,関東2,北陸,東海,中国,北九州,南九州の9地域,味噌仕立て系が近畿1,近畿2,四国の3地域に分類できた。4)具の種類は人参,大根,鶏肉が全国的に高い割合で出現した。野菜類の緑色系において,北海道の三つ葉,東北のせり,関東1の小松菜,関東2と北陸の三つ葉,東海のもち菜,近畿1の水菜,近畿2と中国のほうれん草,北九州のかつお菜,南九州の京菜にみられるように地域に限られた野菜や正月の期間だけの野菜が出現していた。また,かまぼこやなるとの出現は地域の特徴を捉えていた。5)盛りつけの器の材質は全国的に椀の出現率が70%をしめ,母方系統の雑煮を20〜29年前から調理していることが明らかとなり,伝承について地域的な特徴は見出せなかった。
著者
下井 俊子 牛山 博文 観 公子 斉藤 和夫 鎌田 国広 広門 雅子
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 = Journal of the Food Hygienics Society of Japan (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.77-82, 2007-06-25
被引用文献数
5

ジャガイモ中のグリコアルカロイド(ポテトグリコアルカロイド,PGA)について,青果27品種および市販そう菜に含まれる皮付きジャガイモ31試料の含有量調査を行った.ジャガイモ青果27品種についてPGA含有量を調査した結果,品種間で差が見られた.高い値を示したのはメークインおよびシェリーであり,Mサイズ(100 g程度)のPGA含有量はそれぞれ180および320 mg/kgであった.低い値を示したのはインカレッドで,MサイズのPGA含有量は21 mg/kgであった.また,PGA含有量はどの品種でもサイズが小さいものほど高かった.市販そう菜に含まれる皮付きジャガイモについてPGA含有量を調査したところ,その値は48~350 mg/kgであった.
著者
宮川 豊美 川村 一男
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
no.29, pp.p13-19, 1989-03

「にんにく」「乾燥にんにく」「にら」「蕃辛」「乾燥蕃辛」「生姜」「青じそ」の細菌発育阻止作用を,食中毒細菌のサルモネラ菌,腸炎ビブリオ菌,病原大腸菌,カンピロバクター菌及び黄色ブドウ球菌について,発育阻止作用を吟味することから次の結果を得た。1. 「にんにく」と「にら」に細菌発育阻止作用を認めたが,その効力は,「にんにく」の方が強い。2. 細菌発育阻止作用を生じさせるには,そのままの状態で使用するのではなく,潰す,磨りおろす,細かく切る,液状にするなどの操作を行い細胞膜を破壊することが必要である。3. 発育阻止作用は,加熱処理,乾燥によって失われる。
著者
北川 大二 石戸 芳男 奥山 勇作 桜井 泰憲 稲田 伊史
出版者
東北区水産研究所
雑誌
東北区水産研究所研究報告 (ISSN:0049402X)
巻号頁・発行日
no.54, pp.p59-66, 1992-02

岩手県沿岸の大槌湾沖の人工魚礁,天然礁および砂泥域の3調査点において,1987年5月から1990年3月の間に合計18回,三枚網による調査を行った。採集されたエゾイソアイナメの胃内容物を調べた結果,マイワシとカタクチイワシの頭が摂餌されていた。これらの頭の切断面は,飼育下のスルメイカがマイワシやカタクチイワシを捕食する際に捨てた頭とよく似ており,エゾイソアイナメがスルメイカの捨てた餌を摂餌することが推定された。マイワシあるいはカタクチイワシの頭は主として7,9,11月に摂餌され,3調査点のうちでは人工魚礁において摂餌個体数,摂餌量ともに最も多かった。エゾイソアイナメが捕食していたマイワシとカタクチイワシの頭長からの逆算では,カタクチイワシの体長は101~129mm,マイワシは140~214mmであった。このことから,スルメイカが体長100mm以上の魚を捕食するときにはその頭を捨てる可能性があると考えられた。
著者
大河原 邦男
出版者
日経BP社
雑誌
日経ものづくり (ISSN:13492772)
巻号頁・発行日
no.673, pp.6-8, 2010-10

おおかわら・くにお:1947年東京生まれ。東京造形大学卒業後、大手アパレルメーカーを経て、1972年竜の子プロダクション入社。「科学忍者隊ガッチャマン」以後、メカデザイン専門に。1976年、中村光毅氏と「デザインオフィス・メカマン」設立。「タイムボカンシリーズ」を経て、1978年からフリー。
著者
高須 克弥
出版者
昭和大学
巻号頁・発行日
1973

博士論文
著者
神崎 隼人 Kanzaki Hayato
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.41, pp.129-144, 2020-03-31

人間学・人類学 : 研究ノート近年、いわゆる「存在論的転回」を巡って、日本語でも議論や情報共有が広がってきた。そうした「転回」の新たなアプローチとして、「ポリティカル・オントロジー(以下、PO)」が提案されている。本稿では、これらの論者の著作を検討し、POの分析方法を整理することを目的とする。これまで、天然資源開発や環境保全と先住民との間のコンフリクトの分析では、普遍の「環境」が大前提とされてきた。それに対しPOは、先住民にとって「環境」とは全く異なった実在が大前提にあることに注目する。この前提において、P Oは、コンフリクトに至るまでにどのような人間と非人間の関係性が作り上げられたか(歴史的コンテクスト)、その中で先住民は非人間についてどのような概念や実践を通じて関わっているのか(在来の概念)、そしてどのように西洋の存在論が、先住民の世界を「信仰」や「文化」に還元し、政治の領域から排除してきたのか(存在論の力関係)を、明らかにする。さらにP Oは、人類学者と人びとの間の「会話」というミクロな場を考察する。こうした場には、同じ語や概念を使って対話する両者が、異なる世界を跨いでいるために経験する根本的な「誤解」があり、異なる存在論の間の緊張を伴う交流が浮かび上がるのである。こうした分析からPOは、" われわれ" が「自然」と扱ってきたものの多数性や可能性、そして「多元世界」の政治に対する想像力を、喚起することを試みる。
著者
中村 羊一郎 Yoichiro NAKAMURA
出版者
静岡産業大学情報学部
雑誌
静岡産業大学情報学部研究紀要
巻号頁・発行日
no.10, pp.262-221, 2008

複雑に入り組んだ陸中海岸の入江では、回遊してくるイルカの群れを追い込んで文字通り一網打尽に捕獲する「イルカ追い込み漁」を、大正時代まで行っていたところが二ヵ所知られている。そのうちの岩手県下閉伊郡山田町大浦については、本紀要の前号において同タイトルの(上)として報告した。本稿はそれに続いて、もう一ヶ所のイルカ追い込み漁実施地区であった岩手県大船渡市赤崎の事例を報告する。赤崎におけるイルカ追い込み漁の開始時期は明確ではないが、漁の瀬主であった志田家に残る収益配分などを記載した勘定帳には享和二年(一八〇二)のものがあり、少なくともそれ以前から追い込み漁が行われていたことは確実である。本稿では、この志田家文書を基本史料とし、現地における聞き取り調査を加えて追い込み漁の実態と、それが村落生活と如何なる関係をもって実施されてきたかを考察する。なお、大船渡湾はイワシ漁に好適であっただけでなく、海草や貝類なども豊富であったため海面使用をめぐる争いが生じ、赤崎村は対岸の大船渡村との間で、いわゆる海論を繰り返してきた。その初めは元禄時代にさかのぼり、明治のいわゆる旧漁業法施行前まで三十回以上に及ぶ。注目すべきは、そのなかでイルカ漁は一貫して赤崎に独占権が認められていたと考えられるが、これは湾内に入ってくるイルカの回遊コースとも深い関連がある。つまり赤崎側は水深が深く、イルカの群れは湾の最奥に近い野島という小島の周りを三回まわって再び出て行くといわれているので、その間に赤崎側で網を張りかける時間があるということになる。なお、イルカは仲間の霊を弔うためにやってくるといわれているが、これは「海豚参詣」といわれる民俗に属し、類例が少ない東北地方太平洋側における貴重な事例である。さらに、追い込み漁の実施にあたっては、湾内で操業中のイワシ手繰り網(アラデ網)の仲間が重要な役割を果たしていたため、他地区で一般的な第一発見者に対する報償はなく、最初に網を張った「一番張り」に対して、水揚高の十五分一が与えられるという規約があった。また勘定帳には漁ごとに酒代が計上されており、さらに配分率に若干の差はあるものの、全戸に当り金が配られたこともわかる。イルカ漁が、単純な捕獲作業ではなく、集落運営全体に直結した特殊な意味をもっていたことを、この赤崎の事例でも確認できる。なお、赤崎より南の宮城県気仙沼市唐桑においては、江戸時代中ごろに積極的にイルカ漁を実施していた記録があるので、あわせて紹介し簡単な考察を加えることにする。唐桑のイルカ漁の始まりは紀州から北上してきたカツオ漁師ないし鰹節製造者との関連が想像されるが、この点は前号の山田湾大浦の事例と対照させて考えなければならない。
著者
清水 武 石川 幹人
出版者
国際生命情報科学会
雑誌
国際生命情報科学会誌 (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.17-29, 2013

フィールドRNG研究は、多数の人々が同一のイベントに注目するとき乱数生成器によるビット出力のカイ二乗統計量に特異な自己相関が生じることを示してきた。そこで本研究は、フィールド意識に特有のシグナル波長が存在する可能性を提起し、イベント時のカイ二乗値を計算する際の試行のインターバルの長さを拡張する分析方法を提案し、従属変数を単変量のスカラーからベクトルへと拡張することを方法論的に試みた。予想される結果として、複数のインターバル別に集計した平均ベクトルに対して、フィールド意識の波長により適したインターバル長で偏りが大きくなること、また観客数との相関が強くなることが挙げられた。本研究は、今後の実験計画に役立ちうる予備的検証段階のひとつとしてフィールド実験を実施し、アニメ映画「けいおん!」を上映した映画館で13回のくり返し測定の後、標準化したカイ二乗値ベクトルをMANOVAにより検定した。結果は、切片値、インターバル長、生成スピード、およびこれらの交互作用項のいずれの有意ではなかった。一方で、従来の1秒集計値において聴衆の人数との相関が最大化し(r=.57, N=13)、フィールド意識のシグナル波長が1秒近辺に存在する可能性が示唆された。最後に、今後の課題が議論された。
著者
喜馬 佳也乃 佐藤 壮太 渡辺 隼矢 川添 航 坂本 優紀 卯田 卓矢 石坂 愛 羽田 司 松井 圭介
雑誌
筑波大学人文地理学研究 = Tsukuba studies in human geography
巻号頁・発行日
vol.38, pp.45-58, 2018-04

本研究には平成28年度科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究:課題番号16K13297)の一部を利用した.
著者
城所 宏行 末廣 芳隆 ブルシュチッチ ドラジェン 神田 崇行
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.1203-1216, 2015-04-15

公共の場で活動するソーシャルロボットが期待されている.ソーシャルロボットは人々の興味を引き,かつ有意義なサービス提供ができる可能性がある.しかし,興味を引かれてロボットと相互作用を始めた子供たちの行動が,ときに行き過ぎ,ロボットに対して攻撃行動を起こすことが明らかになってきた.観察実験によって,ロボットに関心を示した子供のうち,合計で117回の執拗な攻撃行動を観測した.子供たちはロボットに暴言を吐き,蹴り,叩くなどの行動でロボットの活動を執拗に妨害していた.本論文では,ロボットに対する執拗な攻撃行動を「ロボットいじめ」と名付け,この現象の緩和を試みる.この目的のために,子供のロボットいじめ行動をモデル化し,ロボットがモデルを用いてロボットいじめ行動を事前にシミュレートし回避可能にさせる.モデルを歩行者シミュレーションへ導入することで,子供のロボットいじめ行動をシミュレーション上で再現できるようにした.また,本論文では,ロボットいじめ行動のシミュレーションをロボットの将来行動の計画に用いる,というシミュレーションに基づいた行動計画方法を提案する.ロボットは,センサシステムから現在の状況を取得し,自らの行動に対して子供たちがどのような行動をして,その結果,近い将来どのような状況が生じるのかをこのシミュレーション上で検討する.このシミュレーション結果を比較することで,ロボットいじめが起きにくい行動を選択する.この「ロボットいじめのシミュレーションに基づいた行動計画」システムを構築した.実際のショッピングモールでシステムを用いた実験を行ったところ,ロボットいじめの生起を抑制できたことを確認した.Social robots working in public space often stimulate children's curiosity. However, excess curiosity can sometimes result in aggressiveness towards the robots. In our case studies, we registered 117 cases of aggressive behavior and found that some children persistently obstructed the robot's activity. A number of children actually abused the robot verbally, and sometimes even kicked or hit the robot. In this paper, we define this persistent aggressive behavior as "robot bullying" and analyze ways how the occurrence of robot bullying can be reduced. For this purpose, we developed a statistical model of occurrence of children's bullying of the robot. With this model we want to make the robot able to anticipate and avoid potential bullying situations. We confirmed that the model is able to reproduce well the occurrence of bullying in simulations. While running in real world, a robot can then use pedestrian simulations to test its future behaviors for possible occurrence of bullying and choose the behavior which gives the lowest probability of bullying. We developed a system of simulation-based behavior planning which implements this behavior decision. Finally, in experiments in a real shopping mall we demonstrated that with the model the robot successfully decreased the number of occurrences of bullying.