著者
入江 さやか Sayaka Irie
出版者
同志社大学大学院日本語学研究会
雑誌
同志社日本語研究. 別刊 = Doshisha studies in Japanese linguistics. Special issue (ISSN:21885664)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-210, 2012-09-30

本研究は,特に音素分布および音素配列の定量的特徴に注目して,日本語の音韻の歴史を捉えようとするものである。第1章で論文の目的と背景について述べ,第2章で,各時代における音韻体系について整理し,第3章以下,上代から順に,中古,中世,現代の音韻構造について述べ,第7章で,日本語の音韻構造の歴史としてまとめ,結論と今後の課題を述べる。
著者
浜辺 隆二
出版者
福岡工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

交付期間内の研究の目的は、HBS(ホームバスシステム)情報ネットワークに関する以下の内容である。(1) 7層適合性試験法を完成させ3層と7層の試験法をISDNを介した遠隔試験システムに発展させる。(2) ホームバスを利用したマルチメディア伝送実験を行い、将来のマルチメディアバスとしての有効性を検証する。(3) 新たな無線HBS方式を提案する。[目的(1)について]7層の適合性試験システムを改善し、ほぼ完成した。また、HBS-ISDN間のゲートウエイを開発し、ISDNを介した3層と7層の遠隔適合性試験システムとしてほぼ完成した(達成度90%程度)。これらの研究成果は、平成11年4月中にIEEE学会へ論文として投稿する予定である。[目的(2)について]新たな画像圧縮法を提案し、MPEG1と比較しその有効性を検証した。HBSは低速(64kbps)なので高速なIEEE1394(400Mbps)を考慮したインターネット(TCP/IP)とのゲートウエイを開発した(完成度70%)。[目的(3)について]本研究は、まずISDN及びインターネットを介したホームネットワークとして実現し、その後無線化することである。ISDNとインターネットのゲートウエイの開発は完了したが無線化(PHS)までは至らなかった(完成度50%)。今後はIEEE1394による高速ホームネットワークを構築し、ディジタルビデオカメラ等を接続し、インターネットやCATV網を介して動画像データや在宅診療ケア項目データを伝送し、遠隔ホームヘルスケアシステムとして開発する予定である。平成10年度と11年度の研究成果は、論文2編、国際会議3編、研究会3編、学会発表6編として発表した。また、遠隔HBS適合性試験法をまとめ、査読論文として電気学会(5月28締切)およびIEEE学会に投稿準備中である。
著者
船津 孝行 近藤 倫明 佐藤 基治
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.181-184, 1987

本研究の目的は, 交通場面において不安全運転挙動を測定し, そのタイプを分類することである. 運転挙動に含まれる不安全挙動 (急加速, 急減速, 急旋回) を測定するためにセーフティー・カウンターが実験車内に設置された. 被験者として28名のプロのタクシードライバーが12カ月間にわたって本実験に参加した. 得られたデータを分析するために階層的クラスター分析法が採用された. 分析の結果から, 21名の安全群と7名の不安全群が分類された. 不安全群はさらに, その不安全挙動の特徴によって急加速型, 急減速型, 複合型に分類された.
著者
杉浦 勉
出版者
ASOCIACION JAPONESA DE HISPANISTAS
雑誌
HISPANICA / HISPÁNICA (ISSN:09107789)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.31, pp.101-115, 1987-12-31 (Released:2010-06-11)

En su famoso ensayo “La Deshumanización del Arte, ” afirma Ortega y Gasset que la obra de arte debe separarse de la realidad humana, y que, por tanto, el arte nuevo no debe preocuparse por la realidad concreta de la vida que es el mundo vivido, sino por el texto que es la obra de arte. Esta idea, que él expresaba como “deshumanización, ” aparece, simbólicamente encarnada, en la imagen del jardín y el vidrio: la mirada debe dirigirse al vidrio de la ventana más bien que al jardín. Esta imagen metafórica es importante por tres razones. En primer lugar, porque presupone la separación definitiva entre el jardín (realidad) y el vidrio (texto). El sujeto individual no debe tomar como objeto la realidad misma, sino la idea que formamos de la realidad. Segundo, porque la idea de que el punto de vista causa necesariamente la separación de dos objetos, y la de la perspectiva por la que se entiende la realidad, conducen a la subjetivización del punto de vista y a la autoreferencialidad del texto. Y, en tercer lugar, porque la imagen del jardín, tan preferida por Ortega, no es una mera metáfora sino la realidad, “puesta entre paréntesis, ” resultante de la “reducción fenomenológica” a que lleva la fenomenología de Husserl, filósofo que ejerció una poderosa influencia sobre el pensamiento de Ortega en aquel entonces.Aunque es cierto que la teoría estética, en general, de Ortega y la “Revista de Occidente” por él fundada, tuvieron una enorme influencia en los artistas jóvenes de España y la América Española, se limitó a las orientaciones culturales y artisticas. Si comparamos las obras contemporáneas del escritor espafiol, Benjamín Jarnés, que recibió una gran influencia de la teoría de Ortega, y las del escritor cubano, Alejo Carpentier, en su primera etapa, veremos que la obra de Jarnés posee caracteres de metaficción -ficción respecto a la ficcionalidad del texto-, como resultado de prácticas novelisticas bastante fieles a la teoría de la “deshumanización, ” mientras que Alejo Carpentier, en su obra, se propone la fusion entre el texto literario y la realidad histórica del Caribe, basándose en un concepto de cultura a partir del movimiento afrocubano y, por tanto, contradice, evidentemente, la “deshumanización. ” Además, Alejo Carpentier, manifesto un apoyo entusiasta y, al mosmo tiempo, cierta repulsión contra esa teoría.Al ser fruto de una operación fenomenológica, la idea del jardín es esencialmente antihistórica, y no podía ser compatible con la problemática artística del joven Carpentier. Pero el autor cubano aprendió de Ortega la importancia de las ideas en el aspecto de dirigir la cultura. Y es que el núcleo del pensamiento de Ortega no está en las ideas hacia las que se orientan sus discursos en torno a la cultura o el mundo, sino en el “para qué” servir y el “cómo” usarse esas ideas con el fin de dar una orientación cultural. Consciente del carácter orientador de las ideas senalado por Ortega, Carpentier reconoce el significado que encierran las ideas que propone su pensamiento en la orientación del quehacer cultural, como es obvio en el caso del planteamiento de su famosa aserción de “lo real maravilloso. ”
著者
田島 智徳 西田 圭介 會田 勝広 森本 忠嗣 北島 将 小河 賢司 馬渡 正明 佛淵 孝夫
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.626-629, 2007 (Released:2007-11-27)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

日常生活における前屈動作は股関節と脊椎の協調動作であり互いに密接に関わりあっている.変形性股関節症患者における股関節と脊椎の前屈時の動作関係を明らかにするために,立位中間位および座位前屈位の単純X線側面像を用いて股関節可動域と腰椎可動域を測定した.対象は初回人工股関節全置換術を受けた40~88歳(平均62歳)の変形性股関節症の女性患者164例であり,術前の単純X線で評価した.中間位からの前屈動作で股関節と腰椎と合計して80~120度屈曲していた.腰椎変性の強い高齢者ほど前屈時の腰椎可動域が小さく,変形性股関節症があるのにもかかわらず主に股関節で前屈していた.中高年者は腰椎変性が進行していないため,主に腰椎で前屈しており股関節可動域は小さかった.そのため変形性股関節症の罹病期間が長くなると腰椎へ過度の負荷がかかることとなり,腰痛や腰椎変性の原因となることが予想される.
著者
河村 善也
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.251-257, 1998-07-31
被引用文献数
8 39

第四紀における日本列島への哺乳類の移動を本州・四国・九州と北海道,琉球列島という3つの生物地理区に分けて考察した.本州・四国・九州地域では,長鼻類化石の生層序学的研究によって,次の3種のゾウが最初に出現した時期が明らかにされている.すなわち,シガゾウの出現は1.2~1.0Ma頃,トウヨウゾウの出現は0.5Ma頃,ナウマンゾウの出現は0.3Ma頃である.これらのゾウの出現は,それらが近隣の大陸地域から移入してきたことを示し,またそのような移入を可能にする陸橋の形成を示唆する.ナウマンゾウの移入期以後,本州・四国・九州地域は大陸や北海道からずっと隔離されてきたと考えられる.北海道では,化石の記録が本州・四国・九州よりはるかに少ない.北海道の後期更新世の哺乳類は,ナウマンゾウ,プリミゲニウスゾウ,ヤベオオツノジカといった3種の大型草食獣で代表される.そのうち,ナウマンゾウとヤベオオツノジカは,本州・四国・九州地域から0.3Ma頃に移入した可能性があり,プリミゲニウスゾウは後期更新世後半にシベリアからサハリン経由で移入したと考えられる.琉球列島では,更新世の化石記録は大部分が後期更新世のものである.琉球列島北部の後期更新世の動物相では固有の要素が卓越しているが,それらはおそらく更新世以前にこの地域に移入したものであろう.琉球列島南部の後期更新世の動物群は,中期あるいは後期更新世に移入した種類と,より早い時期に移入した種類から成り立っている.
著者
下川 浩
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.435, 1993-06-25

「言語明瞭,意味不明瞭」とは,よく政治家の発言を評して用いられる言葉です。しかし,私たちの周りを見渡すと,往々にして同様の発言があることに気がつきます。これは,ある特定の集団の中では意味明瞭かおおよそのニュアンスの一致をみている特定の言葉が,その集団以外の人々に向かって発せられた時におこる現象のようです。 医療の世界は,今でもかなり閉鎖された世界です。その医療の中に今,新しい風が吹いています。それは患者の知る権利,発言する権利を確立しようという風です。これは医療を受ける側からすればあたりまえのことです。この要求に医療の現場は積極的に対応していく必要があります。その方法の1つは,インフォームド・コンセントに対する理解と実践です。
著者
山形 陽一
出版者
三重県水産技術センター
雑誌
三重県水産技術センター研究報告 = Bulletin of the Fisheries Research Institute of Mie/ 三重県水産技術センター [編集] (ISSN:09130012)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-79, 1988-10

近年、ウナギ養殖の主体となっている温室での加温飼育、いわゆるハウス養鰻では、地下水資源の有効利用ならびに燃料費の節減が大きな課題となっており、用水使用量の節減をはかるとともに高密度飼育を可能にする養殖技術の開発が急がれている。このため循環濾過方式による飼育が注目されているが、ウナギの高密度飼育技術については体系的に研究された例がほとんど見当たらない。本研究は限られた水量で高密度かつ安全にウナギを飼育するための飼育技術の確立を目的として行われたものである。高密度飼育技術としての循環濾過方式の有効性を確認するために実際の養鰻池を実態調査した。さらに飼育の制限要因となりうる水質項目を明らかにし、また、ウナギの成長と収容密度との関係も求めた。さらに給餌による飼育水の汚濁についても詳細に研究した。これらの結果をふまえて、循環濾過式飼育に統一した基準を与えるため、まず濾材に砕石を用いた循環濾過式水槽の設計基準を明確にした。次に砕石より実用性の高いプラスチック濾材について心設計基準を求め、さらにこの基準が実際の養鰻池に適用できるかを実用規模で確めた結果生産性の向上が認められた。 1.養鰻における用水使用の現状 露地池および温室加温池を主体とした従来の飼育方式では、飼育池単位面積当たりの用水使用量によって収容密度が制限されるため、用水使用量が生産の制限要因になることがわかった。一方、循環濾過池ではこのような傾向はみられず、単位面積当たりの生産量は他の方式より著しく大きく、また、ウナギ1kg生産するに要した水量は著しく小さかった。これらの事実から、循環濾過方式は限られた水量で高密度にウナギを飼育するのに最も適した方法であると結論された。しかし、既存の循瑞濾過池はほとんど経験に基づいて設計されており、統一した基準は見当たらなかった。また、この飼育方式ではウナギの飼育量がある限度以上になると水質の急激な悪化が起こり、溶存酸素量、アンモニア、亜硝酸等の水質要因が飼育制限要因になることが判明した。 2.飼育制限要因 先に示した各水質要因のウナギの成長等を阻害しない限界値は、水温25℃において、溶存酸素量については4.5mg/-、アンモニアについては非解離アンモニア(NH3-N)濃度で0.1mg/-、亜硝酸についてはN02-NlO~30mg/-の間であることを確めた。硝酸についてはウナギの抵抗性が著しく高く、通常の飼育水中の濃度では慢性的な影響は少ないと推測された。 これらはいずれも単一要因について求めたものではあるが、水質を管理するうえでの有効な指標になり得ると考えられる。 収容密度の限界値は注水率(ウナギ1kg当たり単位時間当たりの注水量)によって異なった。すなわち、注水率を1.5/分/kgと十分に大きくし密度の影響のみを問題とした場合、100kg/m3の密度でも成長は十分可能であったものの、25kg/m3の密度で最も良好な飼育成績が得られたことから、適正収容密度は25kg/m3程度とみなせた。一方、通常の温室加温池での注水率(0.014/分/kg)では10kg/m3程度の密度が飼育成績を低下させない限界であった。循環濾過池では用水使用量によって収容密度が制限されることはなく、この飼育方式での収容密度の限界については密度の影響のみが問題となる。したがって、先の実験結果から、循環濾過池では25kg/m3程度の密度の飼育が望ましいといえる。 3.飼育水の汚濁 給餌に伴う飼育水の汚濁の程度は給餌24時間後のBOD、TOC、総窒素(T-N)、アンモニア態窒素(TA-N)の増加量から的確に求め得ることがわかった。約l00gのウナギに体重の2%を給餌した場合、これらの1日当たりの増加量は魚体重1kg当たり、BODで1.4g、TOCで1.6g、T-Nで0.8g、TA-Nで0.63gであった。これらの汚濁増加量の1/3は摂餌の際の散失飼料によるものであリ、散失飼料の除去は池水汚濁に対する負荷の軽減に有効である。汚濁の程度はウナギの大きさによっても異なり、約10gのウナギの飼育では有機物負荷が30g以上のウナギに比べ約2倍であった。また、給餌に伴う飼育水の汚濁はウナギの収容量よりもむしろ給餌量に左右されることから、汚濁の増加量は魚体重当たりよリ給餌量当たりで示すのが適切であると考えられた。 4.循環濾過方式による飼育水の浄化 濾過による単位時間当たりの溶存酸素の減少量(以下、濾過槽での酸素消費量と表現)が浄化量ならびに摂餌に伴う汚濁負荷をも示す有効な指標になりうることを確認した。そこで、濾材の粒径を実用上支障が生じないと考えられる3~5cmに限定し、濾過槽での酸素消費量を指標として濾過槽にかかる負荷と摂餌量との関係および単位濾材量当たりの最大浄化量を小規模水槽での飼育実験により求め、浄化に要する濾材量の算出基礎を導いた。 汚濁と浄化とが均衡している場合は、配合飼料の摂餌量F(g)と濾過槽での酸素消費量Y(g/時)( 濾過浄化量)との間にY=0.011F-0.164で示される直線関係が成立し、この式から摂餌量に応じた濾過槽にかかる負荷が算出される。一方、この粒径の濾材では飼育水の濾床内滞留時間が、3.5分程度の循環水量の時に最大浄化量が得られ、その値は濾材1m3当たり約14g/時となることがわかった。すなわち、濾材量V(m3)と濾過槽で期待される最大浄化量P(g/時)との関係はP=14Vと示される。なおこの濾過条件では最大浄化量は濾材の厚さや濾過速度には関係なく、濾材量にのみ規定されること、また、飼育水の井水による交換率が0.2回/日以下の場合には、最大浄化量は井水の注入により変動しないことはあらかじめ確かめておいた。また、飼育水および水槽壁での酸素消費量は濾過槽に比べて極めて小さく、濾過槽以外での浄化作用については、飼育水槽が濾過槽より極端に大きな場合を除き無視できると考えられた。したがって、これらの条件により設定した循環濾過式水槽でのウナギの飼育計画がP≧Y、14V≧0.O11F-0.164の関係が成立する範囲にあれば、その飼育は一応安全に行なわれると予測される。ここに示した濾材量の算出基礎に基づきウナギ100kgの飼育装置を設計し、長時間の飼育実験を行った結果、この基準が実用装置の設計にも十分安全度を見込んだものとして適用できることがわかった。 5.新しい濾材の検討 濾過槽の小型化と建設費の低減を図ることを目的にプラスチック濾材の応用を試みた それぞれ市販の4種類のプラスチック濾材と砕石とを濾材とした小規模飼育装置を作り、実際にウナギを飼育して安全に飼育可能な摂餌量を調査した結果、5cm角網目状濾材の浄化能力が最も大きく、砕石より優れた濾材になり得ることがわかった。ただし、濾材のアンモニア酸化作用は飼育水のpHが6以下になるとほとんど停止するため、プラスチック濾材を用いた場合には飼育水のpH調整が不可欠であった。アンモニア酸化作用を阻害しないためには、飼育水のpHを6.5~7.0の間に調整すれば実用上支障はなく、これに要する塩基量は飼育水の酸性化量とほぼ一致した。酸性化量A(当量)と摂餌量F(g)との間にはA=3.33F×10-3で示される関係式が成立する。したがって、中和に要する塩基量は摂餌量から推定可能であり、中和剤には水酸化カルシウムが最も有効であった。5cm角網目状濾材1m3の浄化可能な摂餌量は、大規模飼育装置での飼育実験の結果から約4kg/日と推定された。このプラスチック濾材の浄化能力は、粒径3~5cmの石灰石のそれの約3倍に相当した。したがって、本濾材を用いた場合の循環濾過式水槽の設計基準は、先に示した砕石濾材の式より、14V'×3≧0.O11F-0.164と示される。 6ウナギ養殖への循環濾過式飼育の応用と生産に及ぼす効果 養鰻業者の温室加温池(飼育水量100m3)に5cm角網目状濾材を用いた濾過槽を設置し、濾材の浄化能力を実験規模と比較するとともに、ここでの飼育成績を同一規模の温室加温池と比較した。実験した循環濾過池での最大浄化可能摂餌量は、濾材1m3当たり4~5kg/日の間にあると推定され、この値を4kg/日として求めた先の設計基準が実用規模でも十分安全度を考慮したうえでの基準になりうることが実証された。また循環濾過方式を採用することにより、飼育成績を低下させることなく、ウナギの収容量および給餌量を同_規模の温室加温池の終2倍に増加させることが可能となり、生産性の向上が認められた。今後、ここに得られた循環濾過式飼育のための設計基準を実際の養鰻に適用することにより、生産性の向上とともに用水の合理的な利用が期待できる。
著者
犬塚 潤一郎 イヌツカ ジュンイチロウ Jun-ichiro Inutsuka
雑誌
実践女子大学生活科学部紀要
巻号頁・発行日
vol.46, pp.43-59, 2009-03-01

Expression is the key feature of the post-modern model of culture today, not only in the field of industry but also the definition of man, comparing to Creation which is the key concept of the classic-western-modern model of the society and man. This essay is focused to the syntactic function of Narrator in classic Japanese literature text, as the tale of Genji, which is highly suggestive to study of post-modern expression technology. With referring to Vilem Flusser's philosophical approach to Tools and Chiyuki Kumakura's literary analysis to Genji, I tried to depict ontological structure of adjectival subject in Japanese language and cognition, as which would provide our ways of expressionist today.
著者
北井 克佳 吉澤 聡 マシエルフレデリコ 鍵政 豊彦 稲上 泰弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.3044-3053, 1998-11-15
参考文献数
20
被引用文献数
2

並列計算機のスケーラビリティを活かした並列ネットワーキング方式について検討した.複数のネットワーク・インタフェースを用いて同一クライアントと双方向通信を可能とするOSの機能拡張により,並列通信による通信性能の向上とインタフェース間の負荷の均一化によるシステム性能の向上を図った.32ノード構成の研究用並列計算機Paradise (Parallel and Data?way Oriented Information Server)を用いて評価した結果,6並列通信で転送量50MB以上の場合には通信性能が5.6倍に向上した.This paper discusses the parallel networking feature that supports performance scalability to the number of network interfaces.On our experimental parallel processor,Paradise(Parallel and Data-way Oriented Information Server),we have developed a new IP routing feature that allows every network interface to communicate to and from the same client processor,thus providing scalable high-performance communication not only for a single session by using multiple network interfaces,but also for total system throughput by balancing the sessions among the network interfaces.The results of performance evaluation,using six Ethernet nodes on Paradise,ATM-LAN and three workstations,has demonstrated the effectiveness of this parallel networking feature.
著者
丹下 和彦
出版者
関西外国語大学
雑誌
研究論集 (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.87-99, 2012-03

小論はエウリピデスの悲劇『フェニキアの女たち』の作品論である。本篇の上演年代は不明であるが、作者晩年のものと見なされている。古代から人気作品として知られているが、それが作品の完成度と必ずしも一致しない。劇は冒頭から最後に至るまでテバイ攻防戦を巡る各場面が連続してパノラマ的に展開するが、それらを繋ぐ統一的なテーマが見つからない。同時上演の他の作品との関連から、息子たちに対するオイディプスの呪いをそのテーマに擬する説もあるが、小論はそれを採らない。また劇の初めと終わりに登場するアンティゴネ像に人間的成長を認めて、それを本篇の意義と捉える説も採らない。論者は、本篇は互いに内的関係に乏しい、そして統一的テーマに欠ける各場面のパノラマ的展開の劇であり、その展開の妙こそが人気の源であったとする。
著者
山本 幸洋 藤原 伸介 田中 福代 高木 和広 松丸 恒夫
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.15-22, 2007-02-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
28
被引用文献数
2

10種の殺菌剤による土壌中のアンモニア酸化阻害活性を確認するとともに,そのなかで顕著な活性を示したクロロタロニル(テトラクロロイソフタロニトリル)の阻害活性について詳細に検討した.1)供試薬剤のなかでクロロタロニルとチウラムは土壌中のアソモニア酸化阻害活性が最も高かった.これらに比べ,トリフルミゾール,トルクロホスメチル,イプロジオン,フルトラニル,ヘキサコナゾール,イソプロチオラン,ベノミルおよびメタラキシルは,阻害活性が低いか,または認められなかった.2)クロロタロニルによる土壌中のアンモニア酸化阻害は,ジシアンジアミドと比べて長く持続した.また,クロロタロニルによる土壌中のアンモニア酸化阻害活性は,添加量に依存し,添加量が5mg kg^<-1>以上のときに土壌のNH_4-N含量と(NO_2+NO_3)-N含量の両方に影響を及ぼした.3)クロロタロニルの畑土壌における主要分解産物4-ヒドロキシ-2,5,6-トリクロロイソフタロニトリル(TPN-OH)は,土壌中のアンモニア酸化を阻害するが,その活性はクロロタロニルおよびジシアンジアミドと比べて低かった.4)クロロタロニルの類縁化合物テトラクロロテレフタロニトリル(TTPN)による土壌中のアンモニア酸化阻害活性は,クロロタロニルと比べて低かった.他の類縁化合物1,2,3,5-テトラクロロベンゼン(TCB),イソフタロニトリル(IPN),テレフタロニトリル(TePN),フタロニトリル(PN)およびベンゾニトリル(BN)は,いずれも土壌中のアンモニア酸化を阻害しなかった.5)アンモニア酸化細菌集積土壌において,クロロタロニル区(添加量100mg kg^<-1>)のアンモニア酸化細菌数は,クロラムフェニコール区(添加量500mg kg^<-1>)と比べて急激に低下した.以上のことから,クロロタロニルは,土壌中のアンモニア酸化阻害活性が高いこと,構造中のニトリル基と塩素の存在がアンモニア酸化阻害に必須であり,それらの分子内での配置が阻害活性の強度に大きく関与すること,クロラムフェニコールと比べてアンモニア酸化細菌に対して致死的に作用することが明らかとなった.
著者
佐藤 雅俊
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.69-80, 2015

1. 釧路湿原国立公園の湧水地において,新たにヌマハコベとカラフトノダイオウをそれぞれ優占種とする2 つの湧水辺植物群落の存在を認め,それぞれの種組成と立地を明らかにした.<br> 2. 調査は方形区法に従い,均質な植分に大きさ1 m×1 m の調査区を設置し,方形区内の維管束植物と蘚苔類の優占度および群度を記録した.確認された2 群落について,釧路湿原に既知の群落であるカラフトノダイオウ-エンコウソウ群集と比較した.このほか方形区の位置情報や表面土壌状況の記録と水温測定を加え,2 群落の立地で典型的な1 地点の湧水地を選び,簡易測量によって地形断面図を作成した.<br>3. 2 群落には植物社会学的な植生体系上の上級単位であるオオバセンキュウ-タネツケバナ群団の標徴種であるオオバタネツケバナとオオバセンキュウが出現したので,両群落とも同群団に属すると判断された.しかしながら,群団標徴種の常在度がやや低いヌマハコベ群落は群団レベルの所属において検討の余地があると思われた.<br>4. カラフトノダイオウ群落は,オオバタネツケバナやオオバセンキュウが高常在度で出現する点で,北海道内の大雪山高根ヶ原や十勝三股のカラフトノダイオウが主体となる群落と類似のものであった.一方で,本報のカラフトノダイオウ群落は,釧路湿原に記録されたカラフトノダイオウ-エンコウソウ群集と比較すると,エンコウソウの常在度と優占度がやや低く, クサヨシ,ツリフネソウ,オオカサスゲが欠落したので,低層湿原植生に位置づけられた同群集とは異なると判断された.<br>5. ヌマハコベ群落の立地は,湧水が表面全体を浅く流れる砂の平坦面であったが,カラフトノダイオウ群落の立地は泥の緩斜面であり,両群落の立地は大きく異なっていた.同一の湧水地の範囲内であっても,湧泉と谷底面との比高差が小さい場所では前者の立地が形成され,比高差が大きい場所では後者の立地が形成されると考えられた.<br>
著者
渡辺 賢治 辨野 義己 山本 雅浩
出版者
慶應義塾大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

漢方薬の腸内細菌に及ぼす影響について明らかにするとともに、アレルギー発症抑制が腸内細菌の変化を介して可能であるかどうかを検討した。まず漢方薬が腸内細菌叢に対してどのような影響を与えるかを検討した。従来の培養法では細かい腸内細菌の変化を捉えることが不可能であったが、腸内細菌のDNAを制限酵素で切断して塩基長を解析するT-RFLP法を用いて解析した。その結果、漢方薬では処方ごとに腸内細菌をある一定の方向に変化させることが分かった。腸管遺伝子発現と腸内細菌との関連を調べたところ、抗生剤(シプロフロキサシン)投与にて腸内細菌が変化し、ヒートショックプロテインの発現が低下した。このヒートショックプロテインの発現は漢方薬十全大補湯にても変化し、腸内細菌の変化を伴っていた。腸内細菌のない無菌マウスではこの遺伝子発現の変化は観察されず、ヒートショックプロテインの変化には腸内細菌の存在が不可欠であることが示唆された。次に抗生剤投与モデルでアレルギーを発症しやすくなるかどうかについて検討した。まずは免疫寛容の系を確立するために予備実験を行い、卵白アルブミン10mgの単回投与にて免疫寛容の誘導できることが分かった。このモデルを用いて抗生剤(セフジトレンピポキシル、アモキシシリン、カナマイシン)を投与し、免疫寛容が誘導できないかどうかを検討した。カナマイシン投与にて少し卵白アルブミン特異的IgEの上昇が見られたものの、基本的に免疫寛容は抗生剤投与により破綻しなかった。しかしながら経口的免疫寛容を誘導しなかった群において、逆に卵白アルブミン特異的IgEの上昇が抑制されており、抗生剤投与にて何らかの免疫系の破綻を来たしていることが分かった。
著者
龍 家圭 小口 勝司 三邉 武彦 天野 均 亀井 大輔 岩井 信市
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.333-339, 2014 (Released:2014-11-21)
参考文献数
25

炎症性サイトカインや機械的刺激により誘導されるプロスタグランジン合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)は,骨代謝に重要な役割を持つことが報告されている.COX-2により生成されるプロスタグランジンE2(PGE2)は,骨芽細胞を介して間接的に破骨細胞形成に作用するばかりでなく,その受容体を介して破骨細胞分化に直接影響するとされる.本研究は,選択的COX-2阻害薬であるセレコキシブのin vitroでの破骨細胞分化抑制過程の機序を明らかにすることを目的として行った.マクロファージ株細胞であるRAW264.7細胞に,可溶型NF-κBリガンド(sRANKL;100ng/ml)を添加し6日間培養することによって,破骨細胞へ分化誘導する実験系を使用した.酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色陽性の核が3個以上の多核細胞を破骨細胞として,形成された破骨細胞数を測定した.セレコキシブ添加群(2.5~10µM)は,濃度依存的に破骨細胞形成数が減少した.活性化破骨細胞の指標となるアクチンリングを持つ破骨細胞数も顕著に濃度依存的に減少した.ハイドロキシアパタイトコーティングした培養皿を用いた実験系においても,セレコキシブは濃度依存的にマウス骨髄細胞由来破骨細胞による吸収窩形成を抑制した.本研究により,COX-2活性阻害を介して,マクロファージ系株細胞から破骨細胞への分化を抑制する経路が明らかにされた.