著者
島谷 二郎 中村 泰
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2018-HCI-176, no.5, pp.1-6, 2018-01-15

空耳は,歌詞 ・ 言葉が別の言葉に聞こえる現象であり,日本ではユーモア,娯楽として親しまれている.人手による空耳文生成において使用する単語の種類を限定することでユーモアを向上させる手法がある.空耳の自動生成に関する研究は過去に行われてきたが,限定された単語のみを用いる状況は想定されてこなかった.使用できる単語の種類が限られる場合,日本語文を適当に区切り各パートに対する類音語を当てはめるという手法では,精度の高い空耳文の生成することが難しいという問題がある.そこで,動的計画法により文章の区切り方を含めて最適化することにより,音韻がより元の文章に近い空耳文を自動生成するシステムを開発した.Web アンケートを通じた評価により,文節で区切った場合よりも動的計画法を用いて最適化した場合において,音韻の類似性が主観的に向上することを示唆する結果を得た.

1 0 0 0 OA 夢とうつつ

著者
山本 信
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1961, no.11, pp.45-61, 1961-03-31 (Released:2009-07-23)

私がここで夢をとりあつかうのは、意識に関する一連の問題のうちの一環としてである。それも、たとえばフロイドの理論におけるように、内容的な側面からする夢の成立機構や意味についての問題ではなくて、夢における意識のあり方一般についての問題、もつと限定していえば、夢と知覚との区別の問題である。直接の機縁となつたのは、いわゆるデカルトの方法的懐疑であつて、それが成りたたないということを、私としては示したいのである。これは一つの小さな特殊問題にすぎない。しかし夢そのものに私の哲学的興味が向けられているわけではなく、目差すところはやはり正常な意識にある。その「正常さ」ということの意味や、意識存在の特性といつたことを考えるにあたつて、夢体験をどう性格づけるかが、少くとも一つの論点になると思われる。従つてこの考察は、知覚や想像や普遍概念などに関する認識論的な諸問題にも、また世界と人間とのかかわり方に関する存在論的な問題にも、直接間接に結びついてくるであろう、多少なりともそのことを示すため、最初に一節をついやし、哲学史を借りてこの問題の由来をのべ、また最後に、ここでえられた結論と関連のある幾つかの私見を附記しておく。
著者
森下 桂嗣 増田 靖
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2015年秋季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.311-314, 2015 (Released:2016-01-29)

既存市場に新規参入する場合には、コストや製品パフォーマンスなどにおける競合との差別化を図る競争戦略が必要となる。それらの差別化を実現する構成要素を相互作用させて一貫性のある戦略を立案してくために、ストーリーが有効であると言われている。そこで本稿では、創発的ストーリーテリングという手法を活用して市場調査により得られた情報から医療機器産業への新規参入を目指した戦略ストーリーを作成した事例を報告する。創発的ストーリーテリングとは、仮説ストーリーの検証と修正を繰り返しながら、ストーリーを完成させていく手法である。本稿では、戦略ストーリーを構築するために適用した。
著者
Hitomi Shikano Yoko Miyama Ryuzoh Ikeda Haga Takeshi Junichi Suda Kazuaki Yoshinaga Shu Taira
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
Journal of Oleo Science (ISSN:13458957)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.959-964, 2020 (Released:2020-08-06)
参考文献数
22
被引用文献数
1 5

The drying process used for persimmon fruit (Diospyros kaki) can alter the composition of nutrients, and especially vitamins. We visually determined whether the amounts of vitamin A1, vitamin B6 and vitamin C vary after drying persimmon fruit, using matrix-assisted laser desorption/ionization (MALDI) mass spectrometry (MS) imaging. Drying altered the amount of moisture between the fruit interior and surface. Vitamin A1 is lipophilic and localized at the desiccated outer regions (pericarp) and not in the inner region (mesocarp and endocarp), and its concentration was increased 3.4 times in dried fruit compared with raw persimmon. Vitamin B1 and B6 are water-soluble and concentrated in the moist mesocarp. The vitamin C content of dried persimmon is decreased by drying in the sun. The drying process affected the localizations and amounts of all the vitamins. The observed opposite localization of vitamin A1 compared to B1 and B6 was due to vitamin A1 being lipophilic and B1 and B6 being water soluble. Multiplevitamin imaging using MALDI-MSI has great potential for enhancing commodity value and for visually investigating the effects of manufacturing processes.
著者
長野 基 饗庭 伸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.235-240, 2007-10-25
参考文献数
9
被引用文献数
4

本研究では東京都内49市区を対象に地方議会と都市計画の関係を都計審への議員参加の実態分析から明らかにする。計量的分析から議会と都計審の人的な重複は自治体によって実態が異なっており、議会と都計審参加議員の政治構造は必ずしも重複しているわけではないことが示される。そして事例調査からは法定都市計画や関係諸政策で首長部局側と議会とは都計審の場以外に常任委員会と会派別勉強会、あるいは個別接触による情報提供というフォーマル・インフォーマル両方のルートを通じて調整が行われるという実態が明らかにされる。都計審を中心とする都市計画過程への議会関与の是非は古くからの論点だが、議会を代表した議員が都計審に参加し、常任委員会や本会議での議論と調整をしながら、議会の意思を都市計画に反映する、とした場合には以上の諸問題を踏まえて都計審への議会からの代表性を実質化するあり方を工夫することが課題となろう。
著者
小久保 温 角田 均 和島 茂
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 36.16 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.125-128, 2012-03-09 (Released:2017-09-21)
参考文献数
8

障害者と健常者がともに楽しむことができるような,美術館や博物館のユニバーサル化が模索されている。美術館や博物館にはさまざまな展示物があるが,絵画は視覚障害者にとって鑑賞することが難しい対象である.本研究では,青森県立美術館と連携し,視覚障害者が絵画を楽しむことができるようにするため,画像処理技術,CAD,3Dプリンタ,切削機などを活用して,絵画を複数の方法により立体化して出力した.立体化の方法は,具体的には,1)油彩画の明度を高さに変換,2)木版画を版木のような表現に変換,3)舞台背景画をレリーフに翻案の3種類である.制作の過程では,視覚障害者の方に鑑賞していただき,改善をはかった.また,青森県立美術館で2011年秋に開催された特別展Touch the Art!展に作品を出展した.
著者
李 彰浩 後藤 春彦 三宅 論
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.66, no.542, pp.175-182, 2001-04-30 (Released:2017-02-04)
参考文献数
15
被引用文献数
4 6

On account of the increase of students and the deterioration of facilities etc., the number of the universities that established new campus in the suburbs or moved to there increased. What is worse, in the case of the universities located in the city, the relationship between campus and its neighborhoods has weakened. Under the situation like this, university and its neighborhoods must search the way of coexistence in the city. In this study, the degeneration phenomena of the university neighborhoods are grasped. And then the community planning activities for the regeneration of university neighborhoods are investigated. Finally, the future assignments of the community planning activities are clarified.
著者
端 和夫
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.9, pp.592-595, 2001
参考文献数
8
被引用文献数
3 2

UCAS JAPANについて研究プランとバックグラウンドを紹介し, その必要性と妥当性を考察した.UCAS JAPANはすべての未破裂脳動脈瘤の登録事業で, 大規模な前向きコホート研究といえる.この研究は, 未破裂脳動脈瘤の破裂率, 治療結果に関して, 個々の患者の治療方針の決定に役立つ知見を欠く現在, 必要かつ最適の研究である.構築される大きなデータバンクは, 未破裂脳動脈瘤の多様な属性に対応した多くの未知の臨床病態を明らかにすることが期待される.
著者
三枝 優子
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.31-50, 2014-09

近年、多くの大学で実施されている授業評価だが、そのあり方は授業形態によって異なるものである。本稿では文学部開講科目の日本語教育実習授業で実施した授業評価について報告する。この評価の特徴としてプログラム評価の手法を用い複数の関係者による複眼的評価を行った点が挙げられる。一般の講義授業とは異なり、教師と学生のみならず実習機関の教師や学生など様々な立場の人が関わる教育実習における複眼的評価の有用性について言及する。さらに評価結果を利用した授業活動についても報告する。この活動の結果、実習生は評価結果を共有することにより授業改善のための評価の仕方を学べただけでなく、実習授業を俯瞰的により深く理解することが可能となった。
著者
新井 紀子 川本 佳代
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.155-163, 2004 (Released:2004-06-01)
参考文献数
7
被引用文献数
4 3

「e-教室」プロジェクトは,新井らが開発を行った「Net-Commons」という情報共有ポータルシステムを活用して,研究者・教員らが協力しながら,中高校生とともにインターネット上に通常のカリキュラムを超える,高度な学びのコミュニティを創出する試みである。「Net-Commons」は,テキストと画像を組み合わせて投稿することができる掲示板を中心に据えながら,インターネット上で提供されているデジタルコンテンツを柔軟に活用するオンライン協調学習環境を提供している。「Net-Commons」が提供する柔軟なページレイアウト機能により,コミュニティの状態に最適なページレイアウトをWeb上から簡単に実現することができる。学習支援者は,学習状況を観察しながら,さまざまなe-ラーニングツールの組み合わせ(Blended Learning)を自由に試みることができる。「e-教室」に参加している学習者は,学習支援者とともにコミュニティを形成しながら,インターネット上の学びの空間を体験する。「e-教室」の学習ログを解析した結果,「e-教室」での活動を通じて,学習者の (1) 論理的思考力 (2)(書き言葉による)コミュニケーション能力 (3) プレゼンテーション能力が向上したことが観察された。