著者
滝川 幸司
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.32, pp.41-58, 2004-03

延喜二年に開催された藤花宴の公的地位について検討した。この藤花宴は、通説では和歌が公的地位を獲得した晴の場として理解されているが、、資料を再検討して、藤原時平による献物という私的場であって、和歌の公的地位獲得の場とは評価できないこと、また、この藤花宴について記す『延喜御記』の記述からも、醍醐天皇が和歌を高く評価し、和歌の勅撰に強い意志を持っていたとは考えがたいことなどを指摘した。一般に、宇多・醍醐朝に和歌が公的地位を得、その結果、『古今和歌集』の勅撰に結びつくといわれるが、延喜二年の藤花宴の地位、『古今集』における作者層からも、和歌の地位は必ずしも高いとはいい難いことを述べた。
著者
今津 玲子
出版者
日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.21-22, 1990
著者
川原 律子 細谷 紀江 三木 治 吉田 敏郎 鴨下 一郎 桂 戴作
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.377-383, 2000
参考文献数
7

「食事をとらない」ことを主訴に来院した幼児に対し, 患児の内的状況把握と母子間のコミュニケーション調整を目的に, コラージュ療法の合同法(近喰, 1992)を導入した.方法はマガジン・ピクチャー・コラージュ法で, 母親持参の雑誌から母子が交互に自分の気に入った写真・絵・文字を切り抜き, 自由に四つ切り画用紙に貼付するものであり, 全4作品を制作した.母子が互いに洞察を深めるためには言語能力の問題など諸条件が必要だが, 本法の導入により, コラージュ・アクティビティが母子間の力動を明確にし, コミュニケーションを促したことで, 主訴改善が得られたものと考えられた.
著者
熊井 巧 青山 真大
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.141, no.4, pp.354-365, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)
参考文献数
27
被引用文献数
4

This paper reports a variable flux PM motor based on a new principle of self-excitation utilizing space harmonics that are inevitably generated in concentrated winding structures. In addition, it has a passive variable flux function. Its rotor is composed of consequent poles for each N- and S-pole pair and self-excited wound-field poles. The effects of the passive variable flux function on the driving performance and its efficiency map are demonstrated via the prototype.
著者
設樂 弘之 島村 綾 田中 亮治 有満 和人 峯木 真知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2016

【目的】食品、特に生鮮食品と呼ばれる領域の食品に関しては、その鮮度と風味には密接に関係がある。野菜や魚など鮮度が良いとおいしいといわれている一方、肉などのようにすこし貯蔵したほうがおいしくなるといわれている。その原因についても多くが研究されている。卵は長期保存がきくことが知られている一方で、生みたてがおいしいといわれているが、その科学的根拠となる研究例は少ない。そこで保存した卵と生みたてのもので風味に違いを明らかにすることを目的とした。 <br> 【方法】タカハシ養鶏場 深谷農場6号舎で養育されたハイライン種マリア(日齢292日)が産卵した卵を5℃で16日保存した。同じ鶏舎のもの(日齢305日)で3日保管した卵と比較した。基礎項目として卵重、HU、卵黄の色、卵白のpHおよびタンパク質量、卵黄のpH、水分、脂質量、およびタンパク質量を測定した。風味の違いを知るために、卵かけご飯、茹で卵、だし巻卵、カスタードプリンを作成し、風味試験に供した。パネルは、東京家政大学栄養学科管理栄養士専攻4年生と大学院生の計25名で行った。<br> 【結果】たまごかけご飯、および、だし巻き卵に関して、新鮮卵のほうが好ましいという傾向にあったが、有意な差はなかった。プリンについては有意に新鮮卵を使ったほうが好ましいという結果になった(p<.05)。2つのプリンには硬さに違いがあり、新鮮卵のプリンのほうが軟らかく口どけが良いことから好まれたと思われる。新鮮卵と保存卵のプリンでは固さに差は、タンパク質量、pHに差があったことが、影響した可能性がある。これらの結果から、野菜や魚と比較すると、卵は保管中の変化が少なく、おいしさにもあまり差はないことがわかった。
著者
朴 蕙彬 Hyebin Park
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.125, pp.77-104, 2018-05

本稿の目的は,社会文化にみられる高齢者のステレオタイプを分析することである。まず,高齢夫婦が主人公である映画『東京物語』(1953)とそのリメイク作品である『東京家族』(2013)を対象に,登場人物間の人間関係や援助行動,セリフの分析を通して,両映画にみられる違いを明らかにする。次に,映画分析の結果を既存のエイジズム研究で明らかになっている高齢者イメージと比較する。その結果,高齢者は悠々自適,親孝行,援助の対象,孫が好き,女性高齢者の自己犠牲というステレオタイプが明らかになった。しかし一方で,高齢者自身が他の世代を援助する行動は受動的なものから能動的なものへと変化し,その数も増加した。さらに,家族以外の人物による高齢者に対する表現(エイジズム)も多様になってきていることがわかった。論文(Article)
著者
岡本 裕司 中野 公彦 大堀 真敬 多加谷 敦 須田 義大 堀 重之
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.267-270, 2010-05-01 (Released:2010-09-22)
参考文献数
5
被引用文献数
3

本研究では,自動車運転時の乗員の筋電位を自動車の運動性能の評価指標として用いる可能性を調べるために,乗員の筋電位と車両の横加速度との相関を調べている.筋電位は,頭部を支える役割を持つ頚部左右の胸鎖乳突筋に対して計測を行った.実験では,被験者を後部座席に乗車させ,市販車とその剛性を改良した改造車でスラロームコースの走行を行った.結果は,加速度が生じる方向とは逆側の筋肉の筋電位が大きくなることが分かった.加えて,車両内部に生じる横加速度の小さい改造車に乗車した時の方が,筋電位のRMS値が小さくなる傾向がみられた.
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.710, 2019-04-22

NTT西日本は4月1日、ドローン(小型無人機)やAI(人工知能)を使って橋や法面などのインフラ構造物を低コストで点検する新会社「ジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW、大阪市)」を立ち上げた。自治体や電力・ガスなどのインフラ管理者の他…
著者
梅谷 献二 山田 偉雄
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.19-24, 1973-03-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
11
被引用文献数
27 28

コナガPlutella xylostella (L.)は日本全国に分布しているが,北日本における越冬の可否については確かめられていない。一方,本種は欧米においては長距離移動昆虫としてよく知られ,日本においても太平洋上の定点観測船上で採集された例がある。このことから,日本の個体群にも移動による他国との交流や,本州から北海道に及ぶような移動が行なわれている可能性を残す。これを確かめるひとつの手段として,札幌,平塚,鹿児島の各地およびインドネシア・ジャワ島Malang地方(Batu村)産の個体群を用い,温度と発育期間の関係について実験し,地理的な分化があるかどうかを調査した。温度と卵から羽化に至る発育速度の回帰から,発育零点を算出した結果,最も高かったのは平塚個体群の9.5°Cで,ジャワ島Malang(8.6°C)がこれにつぎ,鹿児島と札幌の個体群はそれぞれ7.5°C, 7.4°Cと低い値を示した。しかし,1世代の有効積算温量ではこれと全く逆に札幌個体群が313日度と最も多く,鹿児島(294日度),ジャワ島Malang(250日度)がこれにつぎ,平塚個体群の229日度が最も低い値であった。このような発育零点と有効積算温量の間には負の相関関係(r=-0.978**)が認められた。温度-発育速度の回帰について,2地点ずつ共分散分析法によって比較した結果,平塚個体群は札幌および鹿児島のそれに対して,回帰係数(b)が有意に大きいこと,および札幌-Malangの個体群間では回帰直線の高さ(a)において異なっていることがわかったが,その他の組み合わせではいずれも相互の回帰に有意差が認められなかった。したがってコナガの個体群のこれらの生理的特性にわずかながら地理的な分化があるように思われる。しかし,その変動の原因については推論することはできなかった。
出版者
日経BP
雑誌
日経コンストラクション = Nikkei construction (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.731, 2020-03-09

ジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW、東京都中央区)は、障害物を自動で回避するインフラ点検用ドローン「Skydio R2 for Japanese Inspection(J2)」を米スカイディオと共同で開発した(写真1)。橋の対傾構の部材間など幅・高さが1mに満たない隙間でも、安全…
著者
野口 佑太 伊藤 真里奈 伊藤 卓也 川村 直人
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.141-147, 2021 (Released:2021-03-28)
参考文献数
23

軽度認知障害を呈する血液透析(HD)患者8名に対し,N‒backトレーニングを1回20分,週3回,HD中に5か月間実施した.Mini‒Mental State Examination(MMSE),日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA‒J),ベントン視覚記銘検査(BVRT),視覚性抹消課題(VCT),Symbol Digit Modality Test(SDMT),Paced Auditory Serial Addition Task(PASAT)を介入前と介入5か月後,介入終了から6か月後(フォローアップ)の計3回評価した.PASATにおいて介入前から介入後,介入前からフォローアップで有意な改善を認め,BVRTでは介入前からフォローアップで有意な改善を認めた.透析中のN‒backトレーニングは,MCIを呈するHD患者のワーキングメモリの改善に有用であることが示唆された.
著者
Yuko MORIMOTO Satoshi F. NAKASHIMA Takashi KUSUMI
出版者
Psychologia Society
雑誌
PSYCHOLOGIA (ISSN:00332852)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.27-38, 2011 (Released:2011-05-15)
参考文献数
19

Recently, considerable attention has been paid to the reputational basis of punishment. The current study examines two issues: the justifiability of punishments and individual differences among observers. Participants evaluated the traits and likability of justified and unjustified punishers and were classified into two groups by the dictator game: monopolists and non-monopolists. As predicted, justified punishers were considered as having favorable traits and unjustified punishers were not. Additionally, we found that non-monopolistic participants regarded justified punishers as good partners, while monopolistic participants did not. Multiple regression analysis showed that this pattern cannot be explained by similarities between punishers and participants. It is likely that monopolists would avoid any punishers, due to the higher possibility that they would be targeted by punishers.
著者
平野 誉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.376-379, 2016-08-20 (Released:2017-02-01)
参考文献数
8

化学発光と生物発光は化学反応で光子を生成する。この魅力的な発光反応は分析技術から化学教育まで重要な役割を担っている。様々な分野での発光反応の利用・応用を拡げるには反応機構の理解が不可欠である。本稿では,励起分子を与える化学励起過程を含め,発光反応の特色につながる反応の仕組みについて解説する。
著者
井上 義郷
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.395-400, 1964-07-15

ゴキブリの駆除法の一つとして,蒸したジャガイモに,硼酸を混ぜたものを毒餌として適用する方法が一般に広く知られている事実から,ゴキブリの駆除は,個々にはかなり古くから行なわれている事が想像されるが,しばらくの間はその技術的な進展は,全国的に大きくとりあげられたハエ蚊駆除運動のかげにかくれていて,殆んどみられなかった。しかし,その間にあっても,新たな合成殺虫剤の登場に伴ない,近代的な駆除技術の検討は,実験的にすでに実地に進められていたわけであり,たまたまそれが大きく一般にとりあげられるようになったのは,最近のポリオの流行時からと云ってもよいであろう。ゴキブリの疫学的な意義はひとまずおくとしても,当時,ハエと全く同じ意味で不潔な害虫として,その駆除が行政的にも考慮された事がきっかけとなり,一方では,ちょうどそれに答える駆除技術が或る程度完成をみていた事も幸して,ゴキブリの駆除は急速に進展したと云う事が出来よう。 このように,ゴキブリの駆除が俄かに注目されるようになった為か,現在一般に行なわれている駆除法には,まず目につく彼等を追廻し,それらを叩きつぶしたり取り抑えたり,或いは走り廻る彼等をめがけて殺虫剤をふりかけたりする,至って素朴な段階から,蒸したジャガイモに硼酸を混ぜたものや殺虫剤の毒餌を適用する方法とか,くん煙,煙霧や局所重点残留処理法など,技術的にはより高度なものまで,いろいろな段階がみられるわけである。