著者
中村 雅俊 池添 冬芽 梅垣 雄心 西下 智 小林 拓也 田中 浩基 藤田 康介 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0402, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】スタティックストレッチング(SS)は筋の柔軟性の改善を目的として広く用いられている。SSが筋の柔軟性に与える影響については,関節可動域(ROM)を指標として検討されることが多い。しかし,ROMは対象者の痛みに対する慣れなどの影響があるため,近年では関節を他動的に動かした時に生じる受動トルクあるいは受動的トルクと関節角度との関係(角度―トルク曲線)から求めた筋腱複合体(MTU)全体のスティフネスを柔軟性の指標として用いることが推奨されている。我々は腓腹筋MTUを対象にSSが受動トルクに及ぼす影響を経時的に検討し,腓腹筋の柔軟性を増加させるには最低2分間以上のSS時間が必要であることを報告した(Man Ther, 2013)。しかし,筋の柔軟性を増加させるために必要なSS時間については対象筋によって異なる可能性が考えられる。そこで本研究は臨床においてSSを行う機会が多いハムストリングスを対象筋とし,5分間のSSがハムストリングスMTUに及ぼす影響を経時的に検討し,ハムストリングスの柔軟性を増加させるために必要なSS時間について明らかにすることを目的とした。【方法】対象は下肢に神経学的及び整形外科的疾患を有さない健常若年男性15名(平均年齢23.4±2.2歳,股関節90°屈曲位での膝最大伸展角度-33.4±6.1,最大膝伸展時の受動的トルク40.6±11.4Nm)の利き脚(ボールを蹴る)側のハムストリングスとした。スティフネスの評価は等速性筋力測定装置(Biodex社製Biodex system 4.0)を用い,背臥位にて骨盤を軽度前傾位に固定した状態で,股・膝関節90°屈曲位から痛みが生じる直前まで角速度5°/秒で他動的に膝関節を伸展させた際に得られる膝屈曲方向に生じる受動トルクの計測を行った。この受動トルクと膝関節角度との角度―トルク曲線を求め,先行研究に従って最終10%の角度範囲の傾きをスティフネス(Nm/°)と定義した。SSは等速性筋力測定装置を用い,スティフネスの測定と同様に股関節90°屈曲位で膝関節を伸展していき,痛みが生じる直前の膝関節角度で1分×5回(計5分間)のSSを行った。SS開始前(SS前)とSS開始後1分毎にスティフネスの評価を行った。なお,SS開始後のスティフネスの評価,すなわち最終10%の角度範囲での角度―トルク曲線の傾きの算出については,SS前と同様の角度範囲を用いた。統計学的処理は,SS前とSS後1分毎のスティフネスについて,一元配置分散分析とScheffe法における多重比較検定を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。なお,結果は全て平均±標準誤差で示した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は所属施設の倫理委員会の承認を得て(承認番号E-1877),文書および口頭にて研究の目的・主旨を説明し,同意が得られた者を対象とした。【結果】ハムストリングスのスティフネスはSS前:1.23±0.24Nm/°,SS後1分:1.14±0.17Nm/°,SS後2分:1.08±0.16Nm/°,SS後3分:0.90±0.18Nm/°,SS後4分:0.83±0.16Nm/°,SS後5分:0.74±0.11Nm/°であった。一元配置分散分析の結果,スティフネスに有意な変化が認められ,多重比較の結果,SS前と比較してSS後3,4,5分目で有意に低値を示した。さらに1分目と比較して4,5分目,2分目と比較して5分目で有意に低値を示した。【考察】本研究の結果,スティフネスはSS前と比較してSS後3,4,5分目で有意に低値を示したことから,SS開始後3分目以降でハムストリングの柔軟性向上効果が得られることが示された。我々は腓腹筋の柔軟性を増加させるためには最低2分間のSSが必要であることを報告しており,ハムストリングスの柔軟性を増加させるために必要なSS時間と乖離がある。その要因としては,筋の断面積の違いと耐えうる最大の受動的トルク,つまりSS強度に違いがあることが関連していると考えられる。筋の断面積ではハムストリングスの方が腓腹筋よりも大きく,SS強度に関しては腓腹筋の方がハムストリングスよりも強かった(腓腹筋:49.4±12.4Nm,ハムストリングス:40.6±11.4Nm)。これらの結果より,ハムストリングスは腓腹筋よりも断面積が大きく,弱い強度でのSSしか行えなかったため,柔軟性を増加させるためには腓腹筋よりも長い時間である3分間のSS時間が必要になった可能性が考えられる。【理学療法学研究としての意義】理学療法分野においてSS介入を行うことが多いハムストリングスの柔軟性を増加させるために必要なSS時間を検討した結果,最低3分のSS時間が必要であることが示唆された。
著者
Nakaema Olivia Yumi ナカエマ オリビア ユミ
出版者
大阪大学大学院文学研究科 日本文学多言語翻訳プロジェクト
雑誌
多言語翻訳 葉山嘉樹『セメント樽の中の手紙』
巻号頁・発行日
pp.32-34, 2013-03-31

<翻訳 ポルトガル語> 葉山嘉樹『セメント樽の中の手紙』Translations Portuguese Português
著者
有田 隆也
出版者
名古屋大学オープンコースウェア委員会
巻号頁・発行日
2016-06-29

この講義は、主にドイツ製のボードゲームやカードゲームを題材として、受講生同士がゲームを紹介しあい遊びながら、考えることの楽しさを味わってもらうことを目的としています。ルールを読み、理解し、他の受講生に説明し、プレイし (勝ったり負けたりし)、戦略を考え、討論する、というように、盛りだくさんです。他大学のごく一部でも囲碁、あるいは将棋を題材にした授業を行っているところがありますが、本講義の場合、海外の未知なゲームを扱う場合が多いので、受講生がまったく知識のないところから平等にスタートすることができますし、外国の文化を楽しめます。ボードゲーム先進国のドイツでは毎年数百の新作が発表されています。ゲームが扱うテーマは、思いつく限りの範囲をカバーしているといっても過言ではなく、ゲームのメカニズム自体も継続的に洗練がなされ、工夫されてきています。この講義では、そのように多様な世界の一端を20種類程度のゲームで味わいます。根本的な問題意識をここでほんの少しだけ述べましょう。私は (特に日本の) 現代社会が直面する問題群の根底には、人と人のインタラクション (相互作用) における想像力の不足、欠如があるのではないかと考えています (ちなみに、私の専門は人間関係に限らずに様々なインタラクションから創発する現象を計算機の中の世界で起こして理解することです)。ドイツのボードゲームは人と人との様々な状況における様々な種類のインタラクションについて考え、悩み、楽しむものです。ワクワクするようなプレイを通じて、他人の立場に立って、他人の気持ちを想像する力をトレーニングすることができるのです。そうしないと勝てませんので。このような意味からも、受講生はもちろん、それ以外の人たちにも、いろいろな場面で、ドイツなどの質の高いボードゲームをプレイする楽しさを知ってほしいと心から願っています。幸いなことに、このような私の問題意識やボードゲーム利用による教育効果は徐々に社会でも共有されるようになってきたようで、この授業やその実践に基づく知見は国内外のメディアで紹介されるようになってきました (北欧の大学が発行する雑誌への寄稿、テレビ番組での模擬授業の実施、テレビ番組へのコメンテーター出演など)。この授業の受講生達には、この先いろいろな場面で受講体験を活かしてほしいと願っています。
著者
兼子 純 山元 貴継 橋本 暁子 李 虎相 山下 亜紀郎 駒木 伸比古 全 志英
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

日韓両国とも,地方都市における中心商業地の衰退が社会問題化している。しかしながら,韓国の地方都市の中心商業地は,人口減少や住民高齢化のわりに空き店舗が目立たず,日本でいう「シャッター商店街」がみられにくい(山元,2018)。そこで本発表では,2016年と2018年に発表者らが行った土地利用実態調査の結果をデータベース化し,韓国地方都市の中心商業地における店舗構成の変化を明らかにすることを目的とする。<br><br>調査対象地域として,韓国南部の慶尚南道梁山(ヤンサン)市の中心商業地(新旧市街地)を選定した(図1)。梁山市は同道の東南部に位置し,釜山広域市の北側,蔚山広域市の南西側に接している。高速道路で周辺都市と連結されており,さらに,釜山都市鉄道2号線によって,釜山市の中心部とも直接結ばれている新興都市である(2017年人口:324,204)。旧市街地は梁山川の左岸に位置し,南部市場が立地している。新市街地は旧市街地の南西約1km,2008年に開通した地下鉄梁山駅前に位置している。近年では,両市街地と梁山川を挟んで対岸に位置する甑山(チュンサン)駅前で,新たな商業開発が進行している。<br><br> 韓国では短期間で店舗が入れ替わることもあって,日本の住宅地図に相当するような,大縮尺かつ店舗名などが記載された地図が作成されることはまずない(橋本ほか,2018)。そのため発表者らは,韓国における中心商業地の構造変化を明らかにするための基礎資料の作成を念頭に置き,2016年3月に梁山市の新市街地と旧市街地において土地利用調査を実施し,そのGISデータベースを構築した。この時の結果をもとに,2018年3月に同じ範囲かつ同様の調査手法で再度土地利用調査を実施し,2年間で店舗が変化している箇所の業種を抽出した。今回の発表では,1階で店舗が変化している部分を分析対象とする。<br><br> 2016年の調査では,新旧市街地での商業機能の分担,つまり旧市街地では伝統的な商品や生鮮食料品店の集積,新市街地では若年層向けの物販サービス機能が卓越し,チェーン店(それらが展開する業種)の立地が確認された。そうした両市街地における2016年から2018年の2年間で店舗構成が変化した箇所を確認すると,旧市街地では530区画中129区画(24.3%),新市街地では485区画中132区画(27.2%)で店舗が入れ替わっていた。<br> 旧市街地において,在来市場を中心とする中心部よりも周辺部で空き店舗が目立つようになり,市街地の範囲が縮小している。新市街地では,店舗の入れ替わりが激しいことに加えて,店舗区画の分割や統合なども顕著である。現地での聞き取り調査によると,賃貸契約は2年が一般的であるが,契約更新時の賃料上昇や韓国特有の権利金の存在もあって,現在では新市街地から,新規に建設が進む甑山駅周辺に移転する店舗が増加しつつあるという。当日の発表では,変化箇所の業種や地域,区割りの特徴などから,梁山市全体の商業地の構造変化について報告する。
著者
兼子 純 山元 貴継 山下 亜紀郎 駒木 伸比古 橋本 暁子 李 虎相 全 志英
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

<u>1.研究課題と目的</u><br> 日本においても韓国においても,国土構造として首都への一極集中が指摘され,首都圏と地方都市との格差が拡大している。共に少子高齢化が進行する両国において,地方都市の疲弊は著しく,都市の成立条件や外部環境,地域特性に合わせた持続的な活性化策の構築が必要とされている。その中で日本における地方都市研究では,モータリゼーション,居住機能・商業機能の郊外移転などによる,都市中心部の空洞化問題が注目されやすい。空洞化が進んだ都市中心部では,低・未利用地の増加,人口の高齢化,大型店の撤退問題,生鮮食料品店の不足によるフードデザート問題などが生じ,大きな社会問題となっている。 一方で韓国では,鉄道駅が都市拠点となりにくく,また同一都市内で「旧市街地」と「新市街地」とが空間的にも機能的にも別個に発達しやすいといった日本とは異なる都市構造(山元 2007)が多くみられる中で,バスターミナルに隣接した中心商業地などの更新が比較的進んでいる。そして,地理学の社会的な貢献が相対的に活発であって,国土計画などの政策立案にも積極的に参画する傾向が認められるものの,金(2012)によれば,研究機関が大都市(特に首都ソウル)に偏在し,計量的手法の重視および理論研究への偏重によって,事例研究の蓄積が薄い。 それらを踏まえた本研究の目的は,低成長期における韓国地方都市の都市構造の変容を明らかにすることを目指して,その手がかりとしての土地利用からみた商業地分析の手法を確立することである。なお,今回の報告は調査初年度の単年次のものであり,今後地域を拡大して継続的に研究を進める予定である。<br><u>2.韓国における一極集中と地域差</u> <br> 先述の通り,韓国は首都ソウルとその周辺部への一極集中が顕著である。その集中度は先進諸国の中でも著しく高く,釜山,大邱,光州,大田の各広域市(政令指定都市に相当)との差が大きい一方で,これら広域市と他の地方都市との格差も大きい。 <br><u>3.対象都市</u> <br> 地方都市をどのように定義するのかについては議論の余地があるが,本研究では首都ソウルとその周辺部を除く地域の諸都市を前提とする。今回の調査対象地域としては,韓国南部の慶尚南道梁山市の中心商業地を選定した。梁山市は同道の東南部に位置し,釜山広域市の北側,蔚山広域市の南西側に接している。高速道路で周辺都市と連結されており,さらに,釜山都市鉄道粱山線(2号線)によって,釜山市の中心部とも直接結ばれている。このように梁山市は,釜山大都市圏の一部を構成する都市である一方,工業用地の造成が進み,釜山大学病院をはじめとする医療サービスおよび医療教育の充実した新興都市として独立した勢力があり,人口増加も顕著である(2014年人口:292,376)。 そのうち新市街地は梁山川左岸に位置し,そこに梁山線が2008年に全通し,その終着点でもある梁山駅が開業した。同駅に近接して大型店E-MARTが立地しているほか,計画的に整備された区画に多くの商業施設が集積している。E-MARTに隣接してバスターミナルも立地し,全国各地への路線網を有する。一方,旧市街地は新市街地から見て国道35号線を挟んだ東に位置している。そこには梁山南部市場およびその周辺に生活に密着した小売店舗が集積しており,伝統的な商業景観が形成されている。<br><u>4.調査の方法</u> <br> 今後,韓国の各都市の都市構造の動態的変化を継続的に調査することを目指して,今回はその調査手法の確立を目指す。特に,韓国の商業地における店舗の入れ替わりは日本に比して頻繁で,その新陳代謝が都市を活気づける要因ともなっており,その変化に関心が持たれる。しかし,そうした変化を既存の資料から明らかにすることは難しく,実態調査が求められる。そこで今後,継続的に定点観察することを予定している中で,業種分類の設定の仕方なども重要となる。今回は予備的調査として,事例都市において商業地の調査手法を確立し,その方法を他都市に展開していくことを目指す。

1 0 0 0 OA 電子透かし

著者
栗林 稔
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.135-141, 2016 (Released:2018-01-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1
著者
井上 遼太 Inoue Ryota
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構特別資料: 環境試験技術報告: 第15回試験技術ワークショップ開催報告 = JAXA Special Publication: Proceedings of the 15th Workshop on Environmental Testing (ISSN:24332232)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-SP-17-008, pp.26-38, 2018-01-22

第15回試験技術ワークショップ (2017年11月22日. 宇宙航空研究開発機構筑波宇宙センター), つくば市, 茨城
著者
八尾 由子
出版者
岡山大学大学院文化科学研究科
雑誌
岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要 (ISSN:18811671)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.95-105, 2007-11

頻度を表す副詞トキドキとトキオリとは、複数の辞書において相互に解説に用いられていたり、『分類語嚢表増補改訂版』 (2004)でも同一グループに分類されていたりする 1。しかし両者の用例を観察すると、その現われ方がかなり異なっていることがわかる。もっとも明らかな違いは用いられる文体である。トキオリが話し言葉では用いられにくいのに対して、トキドキには文体上の制限はほとんど見られない。また、頻度の高低という点で比較すると、トキオリはトキドキに比べ、頻度がやや低い印象を与える2。しかし両者は文体の違いや頻度の高低だけでなく、それを用いて表される事態の性質も異なっている。文中のトキオリをトキドキに換えることはほとんどの場合可能だが、その道は必ずしも可能ではない。 本稿の目的は、事態の時間的限定性、そして話し手が当該事態をどのようにとらえているか、この二つの角度からトキドキとトキオリとの相違点を明らかにすることである。
著者
浅野 孝 小林 保 樋熊 孝信
出版者
Japan Health Physics Society
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.33-37, 1973

Half-face masks have been used routinely at plutonium facilities in the Power Reactor and Nuclear Fuel Development Corporation. In 1970, a mask man-test began to evaluate the protection efficiencies of masks when wearing and to instruct workers how to wear them properly. DOP was used as a test aerosol, and 232 persons were tested. In the first test 70% of the persons could wear the masks with a good fit (leak rate less than 1%). The persons with leak rate over 1% were repeatedly tested to investigate causes of the leak.<br>The persons were classified into three groups; the first one having experience of wearing masks, the second one having no experience and the third one being given some instructions about masks before the test. The persons in the first group weared the masks better than those in the second group, but the test suggest the instruction is the most effective.<br>The methods procedures and results of the tests are described.
著者
水上 裕造 澤井 祐典 山口 優一
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.105, pp.105_43-105_46, 2008-06-30 (Released:2011-10-07)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

This research aims to identify key odorants in roasted green tea. The aroma extract dilution analysis revealed 25 odor-active peaks with the flavor dilution factors of ≥ 16. We identified 2-ethyl-3,5-dimethylpyrazine as the most important odorant in roasted green tea with the highest flavor dilution factor of 4096. In addition, tetramethylpyrazine, 2,3-diethyl-5- methylpyrazine were also detected as potent odorants with the high flavor dilution factors. These three alkylpyrazines would be key contributors to aroma of roasted green tea.
著者
川西 悟生
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.123-128, 1963-04-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
8
被引用文献数
3

イチゴ果汁添加保存性乳飲料に対する縮合リン酸塩類の効果について検討し,つぎの結果を得た。(1) 0.2ppm程度の微量の鉄によってイチゴのアントシアニジンは紫変色を起こすものと推定され,この傾向は鉄濃度,pHの高いほど促進される。(2) この紫変色は市販縮合リン酸塩の0.1~0.5%添加で防止でき,この防止力はほぼ対数的である。実用上は0.1%の添加で十分防止できるが0.3%の添加で鉄8.0ppmまで封鎖できる。(3) 市販縮合リン酸塩をペーパークロマトグラフィーでしらべて見たところ,配合組成と異なったパターンを示した。使用条件に近い酸濃度,すなわち0.3%クェン酸溶液,0.5%乳酸溶液とし,80℃ 7分,15分殺菌,および40℃ 6日間保存を行なうと著しい分解が起こり高分子リン酸塩が減少し,低分子物が増加する。さらに実際試料に縮合リン酸塩を添加し40℃保存を行なうと,モデル実験同様にリン酸塩のスポットは移動し,添加した縮合リン酸塩の分解が推定された。(4) この乳飲料の保存中の安定性(沈澱)に対する縮合リン酸塩類の効果は,適切と思われる4種のなかで,標示組成でポリリン酸ナトリウムの多いポリリン酸-1Dを0.1%添加したものが沈澱量少なく良好であり,顕著な効果が認められた。さらにこの試料を冷蔵,室温,40℃の条件におくと,約3ヵ月の保存で沈澱量は冷蔵ではほとんど増加せず,室温では経時的に増加するが商品価値を失なうには至らないが,40℃では約1ヵ月で商品価値を失なう。また沈澱物中の蛋白質は沈澱量に対してほぼ比例して増加していくことがわかった。
著者
最上 おりえ 内田 勝幸
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.81-87, 2012 (Released:2014-03-15)
参考文献数
15

Alamin 996 is a mixture of mineral contained in the milk whey and has been reported to be effective against dysmenorrhea This study aimed to investigate the effect of Alamin 996 on the prostaglandin F2α (PGF2α)-induced contraction in the isolated rat uterus. PGF2α induced the rhythmic contraction. The frequency of this contraction was concentration-dependently inhibited by Alamin 996, but the contractile force was not significantly affected. To clarify this inhibitory mechanism by Alamin996, the effects of BAY K 8644, Ca2+ channel agonist, and dantrolene, inhibitor of the calcium-induced calcium release from the endoplasmic reticulum, were tested. The inhibitory effect on the rhythmic contractile frequency by Alamin 996 was significantly and concentration-dependently attenuated by the addition of BAY K 8644, suggesting Alamin 996 did not affect on the smooth muscle contractile function. Even under the pretreatment with dantrolene, Alamin 996 concentration-dependently inhibited the rhythmic contractile frequency, suggesting no involvement of ryanodine receptor on the effect of Alamin 996. Alamin 996 was found to inhibit phospholipase C activity by in vitro study. The effect of Mg2+ containing Alamin 996 was tested. Mg2+ significantly and concentration-dependently inhibited the frequency of PGF2α-induced rhythmic contraction. Moreover, contractile force was also markedly inhibited, suggesting the difference of the inhibitory mechanism between Alamin 996 and Mg2+ sulfate. These results show that Alamin 996 inhibits the PGF2α-induced rhythmic contractile frequency without affecting the contractile force and that this inhibitory action mediated by inhibiting calcium release from the endoplasmic reticulum through phospholipase C may explain the utility of Alamin 996 against dysmenorrhea.
著者
公文 富士夫 紙谷 敏夫 須藤 浩一 井内 美郎
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.39, pp.p53-60, 1993-03
被引用文献数
4

2km間隔の164地点で採取した5~10cmの深さおよび10~15cmの深さの堆積物について改良した比重計法で粒度分析をおこなった。琵琶湖全域にわたる系統的な粒度分析はこれが最初である。中央粒径値をもとにした粒径分布図には, 内側ほど細粒になり, 最中心部で少し粗粒になるという特異な環状の粒径分布が安曇川河口の沖合いに認められた。その位置は最近実測された第1環流の位置に対応しており, その粒径分布は, 垂直循環を伴なった収束する環流による運搬と選別の作用として説明ができる。北湖の沿岸域では, 水深10m前後まで砂質堆積物が分布している, 姉川河口域の沖合いでは, 北西と南東に伸びた砂質泥の分布が認められ, 温度成層期と非成層期の河川流入水の流れに対応したものと考えられる。堆積物の粒径分布は湖水の平均的な運動を反映したものと考えられる。
著者
櫻井 陽子 武市 尚也 杉村 誠一郎 飯島 節
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.171-175, 2017 (Released:2017-05-02)
参考文献数
18
被引用文献数
1

〔目的〕下肢筋力は最大一歩幅や歩行に大きく関与する.股関節屈曲筋群,膝関節伸展筋群,足関節底屈筋群に着目し,最大一歩幅と歩行におけるそれぞれの役割の変化を加齢的側面から調査することとした.〔対象と方法〕女性77名を対象とし,若年者群,前期高齢者群,後期高齢者群,超高齢者群の4群に分類し,身体機能や動作能力において検討した.〔結果〕最大一歩幅と最大歩行で,若年者群は股関節屈曲筋群,前期高齢者群は膝関節伸展筋群,後期高齢者群は膝関節伸展筋群および足関節底屈筋群と有意な相関がみられたが,超高齢者群では有意な相関はみられなかった.〔結語〕歩行や最大一歩幅において相対的に大きな役割を担う筋群は,加齢に伴い変化していくことが示唆された.

1 0 0 0 OA 科学探偵

著者
小酒井不木 著
出版者
春陽堂
巻号頁・発行日
1924
著者
Watt George
出版者
名古屋商科大学
雑誌
NUCB journal of language culture and communication (ISSN:13443984)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.79-94, 2005-11

Hurriedly inventing the nom de plume of Mishima Yukio, sixteen-year-old Hiraoka Kimitake published his first serialized story in 1941 and his first novella in the closing months of WWII. During the American Occupation(1945-1952) he produced almost 20 works. Despite this comprehensive output, he is not normally described as a "post-war writer" in any sense other than one of timing. Oe Kenzaburo, writing directly about the effects of the Hiroshima bomb, Dazai Osamu expressing national defeat through a personal nihilism, and Enchi Fumiko describing the domestic milieu in the face of scarcity, are clearly seen to be scrutinizing the post-war condition. Mishima, on the other hand, is usually described as a supreme esthete who writes highly individualistic fiction, the universal themes of which somehow exist outside place and time. This paper examines the first two major works published in the period of occupation, Confessions of a Mask(1949) and Thirst for Love(1950) and points to the need for further consideration of Forbidden Colors(published in two parts, 1951 and 1953). Though not previously acknowledged as such, Confessions is clearly part of post-war kasutori culture, the polemic of which attempts to argue for the acceptance of decadence, nihilism, and solipsism in the face of unprecedented catastrophe. Thirst for Love explains the murderous behavior of its main character by showing the connections between her individual pathology and the social tenor of early reconstruction. Both novels are about narcissism, but they are not about narcissism per se; they reveal and explore a narcissism in the context of post-war society and post-war literary culture.