- 著者
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土屋 巌
- 出版者
- The Japanese Society of Snow and Ice
- 雑誌
- 雪氷 (ISSN:03731006)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.4, pp.178-187, 1976-12-30 (Released:2009-09-04)
- 参考文献数
- 29
- 被引用文献数
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1973, 74年の寒候期に, 東北地方では各地で記録的な豪雪となったが, 日本海に面した山地の極端に大量の積雪現象のあったことが, 1974年4月6日に実施した積雪の航空写真測量によって認められた.飯豊山の北股岳東斜面と御西岳南斜面, 月山南東斜面および鳥海山南斜面について作成した1万分の1積雪深図の中には, 径1km円内の平均が17mになる例もあり, また従来越年性残雪の見られた場所では30mを超え, 一部に50mに達する場合のあることがわかった.40°N付近の東北山地の南東斜面で日当りの良い場所の高度1,400~1,800mでは, 残雪越年臨界量は実測, その他の方法でほぼ30mであると認定できたが, 今回の豪雪は多年性の雪氷の原因となり, 小規模氷河現象発現のもととなった. たとえば, 鳥海山南斜面の “貝形小氷河” は, 45mを超す雪積深を示し, 1974年10月には最深部20m以上で越年し, 1975年夏秋の間に, 2夏継続して残った雪氷は, 大部分氷化して流動現象を発現し, 小型の山岳氷河としての性格を示した.