著者
福田 宏之 斎藤 成司 都築 達 牟田 弘 高山 悦代 藤岡 正 鈴木 理文 北原 哲 磯貝 豊 粉川 信行 市川 忠 牧野 克巳
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.101-106, 1984-04-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
6
被引用文献数
4 3

Nobody can deny that lubrication is one of the factors which influences the phonatory function of the larynx. However, no notable studies on the mechanism of lubrication have ever been carried out. This study is an effort to clarify how the larynx is lubricated.In the present study, it is revealed that the secretory fluid from the tracheal and subglottic spaces passes instantly through the glottis at the moment of the onset of phonation. Thus, the initiation of the lubrication is accomplished. The fluid from the subglottis is then mixed with the supraglottic fluid which comes mainly from the ventricular gland. A lubricant column is bilaterally made by the mixed fluid on the upper surface of the vocal folds. This lubricant column is rotating perpendicularilly to the free edge of the folds. The lubricant column may lubricate the folds which vibrate during phonation. At the end of phonation, the column decomposes and mostly flows backward to the subglottis. By this flow, the glottis is lubricated again.In this paper, the results mentioned above were discussed and analyzed from the viewpoint of phonodynamics.
著者
小森 憲治郎 豊田 泰孝 森 崇明 谷向 知
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.350-360, 2016-09-30 (Released:2017-10-05)
参考文献数
33

意味記憶の選択的障害例である意味性認知症 (SD) の言語症状は, 語義失語である。SD に伴う語義失語では, 語の辞書的な意味の喪失を反映し, 語の想起と理解の障害像に特有の症状があり, また書字言語に関しては表層失読のパターンが認められる。これらの症状に共通する特徴は, 頻度や典型性から離れた対象に対する既知感の喪失である。SD 特有とされる語義失語であるが, 側頭葉前方部の萎縮を伴うアルツハイマー病 (AD) 例の亜型にも, SD と類似の言語症状や画像所見を認める場合があり, 注意が必要である。本研究で取り上げた2 例は, エピソード記憶障害に違いはあるものの, 年齢や教育年数など背景条件が類似し, 画像や神経心理学的検査プロフィールにおいても共通の特徴が認められた。しかし注意深い観察により, 次のような相違点を見出すことができた。まず, 呼称と理解成績の一貫性は, 症例2 では高いが, 症例1 では低かった。また理解できない対象への態度にも違いがあり, 症例2 では「わからない」反応が多いのに対し, 症例1 では命題的な場面で, 対象の個別の感覚的属性にとらわれ抽象的な判断能力が弱まる『抽象的態度の障害』を呈した。これは健忘失語の二方向性障害を示唆する所見である。これらの特徴から, 症例1 は側頭葉前方部の萎縮に伴い二方向性の健忘失語を呈したAD 例, 症例2 は高齢発症のSD 例と診断した。このようなSD と見誤り易い症候が出現する背景には, SD の神経病理として有力なTDP-43 の神経変性疾患における併存や, 比較的扁桃体周囲に限局する分布の特徴が関与している可能性を推測した。
著者
山﨑 奈穂子 新出 ちはる 粂井 貴行 炭田 康史
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.25-32, 2016-03-20 (Released:2017-03-21)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

われわれはリン脂質の構造特性に着目し,その疎水基の膜流動性とリン脂質と共存する物質の角層への浸透性の相関について検討した。膜流動性とは,アシル基の流動性のことを指し,リポソームの2分子膜の親水基近傍や疎水基部のブラウン運動を反映していると考えられている。さらにリポソームと角層細胞間脂質成分との相互作用を評価し,角層浸透メカニズムを確認した。最初に,アシル基が飽和脂肪酸からなるDPPC,不飽和脂肪酸からなるDOPC,1分子中に,飽和,不飽和脂肪酸の両方を有するPOPC,DPPCとDOPCを,1:1のモル比で混合した脂質成分(DP+DO)の計5種類のリポソームを調製した。疎水基部位の膜流動性と共存する水溶性成分の角層への浸透性の相関を確認した結果,膜流動性が高いPOPCおよびDOPCは角層への浸透性が高く,膜流動性が低いDPPCは角層での浸透性も低かった。次に,各リン脂質が角層細胞間脂質の膜流動性に与える影響を評価した結果,各リン脂質の疎水基部位の膜流動性と相関関係が示唆され,POPCが最も高い影響度を示した。以上から角層への浸透性において,リン脂質の不飽和脂肪酸は重要な因子であるが,POPCのように1分子中に不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の両方が存在し,かつ膜形成において交互に並ぶ構造が,特に効果的に角層細胞間脂質の膜流動性に変化を与え,角層における浸透性を促進すると考えられる。
著者
安達 修二 木村 幸敬
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

水溶性めビタミンC(アスコルビン酸)は,体内における吸収効率が低い.一方,炭素数6〜12の飽和脂肪酸である中鎖脂肪酸は腸管などの上皮での親水性物質の吸収を促進することが知られている.そこで,アスコルビン酸を中鎖脂肪酸によりアシル化することにより,その腸管吸収効率の向上を図るとともに,還元能を有するアスコルビン酸に疎水性を付与することによる脂溶性還元剤としての利用,並びに生成物が界面活性をもつと期待されることより還元能を具備した乳化剤(界面活性剤)としての使用を意図して本研究を行った.まず,Candida antarctica起源の固定化リパーゼがアセトニトリル中でラウリル酸とアスコルビン酸の縮合反応を効率的に触媒し,溶媒の含水率が低いほど収率が向上することを見出した.また,各種炭素鎖長の中鎖脂肪酸との縮合反応の平衡収率について検討したところ,脂肪酸の炭素鎖長は平衡収率に顕著な影響を及ぼさなかった.さらに,食品への応用を念頭において各種水可溶性有機溶媒を対象に反応溶媒の選択を行い,沸点が低く,精製過程での除去が容易と考えられるアセトン中でも本反応が効率的に進行することを見出した.また,アセトンの含水率が低いほど目的生成物の平衡収率が高かった.さらに,中鎖脂肪酸による親水性物質の腸管吸収機構などに関して小腸上皮様に分化したCaco-2培養細胞を用いた検討を行い,吸収促進効果には中鎖脂肪酸の界面活性剤としての性質が深く関与していることを示した.一方,リパーゼ触媒反応により調製したアスコルビン酸のアシル化物は比較的強い界面活性能を有していた.上述のように,酵素法を用いて中鎖脂肪酸によりビタミンCをアシル化する方法を確立するとともに,ビタミンCの腸管吸収効率の改善に関する基礎的な知見が得られ,所期の目的をほぼ達成した.
著者
川井 千敬 阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1253-1258, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1 3

近年訪日外国人観光客の急激な増加を背景に宿泊ニーズが高まっている。それに伴い京都市では簡易宿所が急増している。本研究では京都市東山区を対象に簡易宿所の立地動向を明らかにし、その立地が地域に及ぼす影響を考察することを目的とする。立地の特徴は(1)これまで商業地域に立地してきた簡易宿所が近年住居地域に拡がりつつあること、(2)細街路に立地が展開されつつあること、(3)簡易宿所の増加が地価上昇の一因になっている可能性があること、などが挙げられる。また、簡易宿所の立地が及ぼす地域への影響については、(1)地域住民は路地空間への宿泊施設の立地に抵抗感を持っていること、(2)住民にとって必要な古くからある小商いなどが宿泊施設に転換されていること、および、住宅利用の減退の可能性があること、(3)簡易宿所の立地によって住民退去が惹起されていること、などがあげられる。
著者
小町 祐史
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.323-333, 2008-11-29 (Released:2009-01-27)
参考文献数
13

ISO がSGML を制定することにより,マーク付け言語が国際的な舞台に登場した.HTML の構文としてSGMLが採用されてからSGML はインターネット上での圧倒的な利用者を獲得して,それはXML の開発に繋がった.XML の公表と共にXML 関連規定が充実し,マーク付け言語の第二世代が始まる.ここにDTD に代わるスキーマ言語の開発競争が激化し,この分野での日本のリーダシップが表面化すると共に,DSDL の国際標準化が進んだ.これらの議論を紹介し,今後の展望に言及する.
著者
桂 有加子
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、有袋類のオスがどのように遺伝的に決められるのかについて明らかにすることを目的として、これまで有袋類でのオス決定遺伝子SRYの進化・機能、オス精巣で発現する遺伝子の網羅的同定等を行ってきた。本研究の成果から、有袋類(ワラビー、コアラ等)SRYの配列は真獣類(ヒト、マウス等)のものと異なるが、有袋類SRYの機能は真獣類のものと類似していることが示唆された。以上の結果成果から、有袋類の性決定遺伝子は、SRYである可能性が高いことが示唆された。
著者
中谷 隼 石野 隆之 栗栖 聖 花木 啓祐
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第22回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.21, 2011 (Released:2011-11-07)
被引用文献数
1

定量的な環境情報の提供が消費者の購買行動およびリサイクル行動に与える影響を解析し,リサイクル行動の促進可能性を検討した。ケーススタディとして,仮想的な弁当チェーン店におけるプラスチック製の弁当容器へのカーボンラベルの表示と容器の店頭回収システムを想定し,環境情報の提供や容器返却に対する消費者選好を,オンラインアンケートによる選択型コンジョイント分析を用いて定量的に評価した。また,コンジョイント分析の評価結果をもとに,容器へのカーボンラベルの表示や,容器返却によるカーボンフットプリントの減少の情報提供,容器返却への経済的インセンティブの付与(容器のデポジット)が,弁当の購入割合や容器の返却意思に与える影響をシミュレーションした。特に,容器を返却した場合と返却しなかった場合のカーボンフットプリントを併記することによって,消費者の自主的なリサイクル行動を促進する可能性について検討した。

1 0 0 0 OA 公法判例研究

著者
横堀 あき
出版者
北海道大学大学院法学研究科
雑誌
北大法学論集 (ISSN:03855953)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.123-159, 2019-03-29
著者
赤堀 由佳 高木 俊 西廣 淳 鏡味 麻衣子
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.155-166, 2015-12-10 (Released:2017-05-30)
参考文献数
31
被引用文献数
5

近年国内の浅い富栄養湖のいくつかでヒシ属植物の増加が報告されている。本研究では,オニビシの繁茂が水質に与える影響を明らかにするために,印旛沼においてオニビシが繁茂する地点(オニビシ帯)としない地点(開放水面)の水質を比較した。繁茂期(7月から9月)のオニビシ帯は,開放水面に比べ溶存酸素濃度および濁度が有意に低かった。溶存酸素濃度の低下は夜間と底層で顕著であり,無酸素状態になることもあった。濁度はオニビシが繁茂している時期にオニビシ帯の表層と底層両方で低くなった。オニビシ帯では,浮葉が水面を覆うことにより,水の流動は減少し,遮光により水中での光合成量は低下するため,溶存酸素濃度や濁度が低くなったと考えられる。栄養塩濃度に関してはいずれもオニビシ帯と開放水面の間で有意な差は認められなかったが,8月と9月に,アンモニア態窒素濃度が高くなった。オニビシの枯死分解に伴い無機態窒素が放出されるとともに,貧酸素により底泥から溶出した可能性がある。一方,オニビシが繁茂しない時期には,地点間でこれらの水質項目に明瞭な差は見られなかった。栄養塩濃度の差は,地点間の差よりもむしろ季節による差のほうが顕著で,オニビシ帯と開放水面共に,7月から9月は全リン濃度が高く,それ以外の時期は亜硝酸態窒素及び硝酸態窒素濃度が高かった。印旛沼では,このような栄養塩濃度の季節変動は毎年確認されており,栄養塩濃度の季節変動に与える複数の効果に比べオニビシの効果は小さいと考えられる。
著者
吉田 成章
出版者
広島大学大学院教育学研究科教育学教室
雑誌
教育科学 (ISSN:13476181)
巻号頁・発行日
no.29, pp.43-67, 2012

本稿は、広島大学の「平成23年度 組織的な若手研究者等海外派遣プログラム」(日本学術振興会)(研究テーマ:コンピテンシー志向のカリキュラムデザインと授業構成-教員養成としての一般教授学の再編に向けて-)によって得られた、2012年2月20日~8月20日までのドイツ・オルデンブルク大学での在外研究の研究成果の一部である。
著者
渡辺 宏久 Bagarinao E. 祖父江 元 伊藤 瑞規 前澤 聡 寳珠山 稔 森 大輔 田邊 宏樹
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、fMRIと脳波 (EEG) を組み合わせたEEG-fMRIを用い、fMRIの有する高い空間分解能を活かした解析に加え、脳波の有する高い時間分解能生を活かした解析を組み合わせて、ヒトの高次脳機能神経回路や精神症状をサブミリセカンドで観察出来るシステムを構築した。我々の解析方法を用いることで、作業記憶課題を用いた脳活動の観察では、認知課題中に1秒未満で連続的に変化する脳活動を観察可能であった。またてんかん活動を観察しつつ同定した焦点は、手術により確認したそれと良く一致していた。我々の開発した解析手法は、高い空間分解能で1秒未満の連続的な脳活動変化を捉えられる。