著者
高橋 英之 速水 則行 内山 祐司 石川 悟 大森 隆司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.480, pp.177-182, 2009-03-04
被引用文献数
2

自動車運転において,人間は様々な危険を知覚しながら運転行動を行う.運転中の危険知覚は,運転場面に存在する不確実性だがありうる危険の知覚と,確実に生じる危険の知覚,という二つの脳過程が関わっていると考えられる.今回の研究ではこれらの脳過程に関わる脳部位特定の為に,自動車運転場面のシミュレータにおいて被験者が感じる衝突に対する不確実性を被験者の衝突判断から定量化し,不確実性が大きい場面における衝突判断時の脳活動と,確実に危険が生じると判断可能な場面における脳活動をそれぞれfMRIにより計測することを試みた.その結果,不確実性が大きい場面における衝突判断には前頭葉内側部が関わっていることが示唆された.また統計的には弱い結果であるが,確実に危険が生じると判断可能な場面においては島皮質に賦活傾向がみられる.この結果は,先行して行われてきた神経経済学の研究の知見と矛盾しないものであり,今後,自動車運転のような複雑な認知タスクの理解においても神経経済学的知見を応用することが可能であるという示唆を得た.
著者
中嶋 靖潤 田中 あけみ 川脇 寿 服部 英司 松岡 収 村田 良輔 一色 玄 井上 佑一
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.468-473, 1988-11-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

ムコ多糖症 (MPS IS2例, IIA1例, IIIB2例, VI1例) 6症例を対象とし, 頭部MRIを施行し, その有用性を検討した.MPS II A, Viでは大脳白質内に大小散在性のT1, T2延長像が認められ, MPSに特徴的な水溶性の酸性ムコ多糖を含有する血管周囲の小窩や小嚢胞性病変をあらわす病理変化に対応すると考えられた.またMPS II A, III Bでは大脳白質は全体にその特有の信号強度を示さず, 髄鞘の障害が考えられ, この病変と精神発達遅滞との関連が示唆された.一方MPSISでは脳内に異常所見は検出されなかった.MRIはMPSに特徴的な病理変化に対応すると思われる所見を得ることができMPSの病型の鑑別診断に有用である.
著者
増田 倫士郎 中尾 史郎
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.147-158, 2013-07-05 (Released:2018-09-21)

エサキアメンボの腹面色彩には黒色型と白色型の季節型が知られる.本研究では和歌山県紀の川市個体群を様々な光周条件下で飼育し,腹面黒化と生殖休眠誘導の関係を把握した.さらに野外での季節消長を調査して黒色型と休眠個体の出現時期を解明した.短日条件下で発育した雌には休眠が誘導され,その臨界日長は約13.75時間だった.明期14時間以下の短日条件で発育したすべての個体は黒色型となったが,明期14.5時間以上の長日条件で発育した大部分の個体は白色型となった.黒色型の雌には休眠虫と非休眠虫が出現したが,休眠虫は白色型には出現しなかった.幼虫後期(4齢と5齢幼虫)の光周条件が休眠誘導と色彩型決定に重要であった.野外において本種は年3回発生し,黒色型の休眠雌は9月上旬から出現することが示唆された.第1世代成虫は5月中下旬に出現し,それらはすべて白色型で,休眠せず産卵を開始するだろう.本研究結果は,黒色型の発現が休眠誘導と厳密に同調しないものの,越冬と密接に関連することを示唆した.
著者
上田 雄
出版者
神戸大学
雑誌
海事博物館研究年報 (ISSN:1880005X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.16-23, 2011
著者
堀越 孝一
出版者
学習院大学
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.179-253, 2004

1929年(新暦)の記事群が(494)の記事からはじまると判断したわけは、「前記の年、新酒の出来は」と妙ないいまわしが見られるからで、これは新暦で「昨年、新酒の出来は」と読む。ふたつめの記事(495)に「2月12日」と日付が見える。 「セルヴェーズ」はビールで、新暦で前年の10月の記事に、パリにビール醸造業者が30軒も店を出して、それでも足りなくて、サンドニやそこらからビール売りが大勢出張ってきたと書いている(487)。ブドウ酒が不出来だったからで、ましてや年明けで、ブドウ酒が不足し、ビールの消費量が増えて、消費税がかさんだと権兵衛は嘆いている。 暮らしが権兵衛の関心事で、「オルレアンの戦い」や「リエージュ戦争」のうわさを伝える権兵衛の文章に暮らしが影を落とす。(498)の記事がおもしろい。だからか、「このころ、人がいうには、レール川縁にひとりのプセルがいた」とジャーン・ダール登場のニュースを伝えながら、「大量の食糧を運んで」とか、「なにしろ食糧がたいそう不足していて、じつに3プランもするパンを食べていた」などと、なにしろそちらの方向に関心が流れる。(503)の記事である。 1929年の9月、「レザルミノー」が「かれらのプセルをともなって」パリを襲撃した。うわさの聞き手の権兵衛は実見者となる。(519)の長々しい記事である。 ここにいたるまで、「プセル」は権兵衛の関心の外で行動している。 当時ブルッへ在住で、おそらく商人の法律代理人の仕事をしていたヴェネッィア人が、父親に9通の手紙を宛てていて、5月10日付でオルレアンの陣の成り行きを報じておいて、第2信に、6月4日付ブルターンからの幾本かの手紙の紹介ということで、「ジェネタ・ポンッェラ」に触れている。ブルターンからの回船が積んできた手紙の束に入っていたのだろう。 ブルターン方面では、すでに「ジェネタ」、ジャネット(ジャーンの指小辞)の名が知られていたらしく、7月16日付の第3信と7月27日付の第4信は、王太子が「ポンツェラと2万5千を越す軍勢をひきつれて」、ランスに入り、大聖堂で王聖別の秘蹟を授かったことを報じている。 1429年の権兵衛の日記には「ジャーン」の名前と「ランス」が抜けている。人の名と土地の名が落ちている。「むすめ」はオルレアンから来た。「むすめ」は「なにしろレザルミノーに随伴する、ひとがラプセルと呼んでいる、これが何物かは神のみぞ知るだが、くだんの女の形をした一被造物」であった。This paper offers a collation and annotaton of the items through theγear of the new calendar 1429.The first itcm 494 contains no date. But the strangc phrase"de Ia dicte annee" means" 盾?@the last year of the new calendar". In thc item 495 the writer of the journal offers the date"lc xiie jour de fevrier". Consequently he wrote the item 494 in January or in early Februar}乙 The writer of the journal has a variety of interests in daily life. This kind of interests overshadowed the descr量ption of the rumour of the siege of Orleans or the Liege waL In thc description reporting the debut of''la puceUe"in the sicge of Orleans he inserts the phrase as"曹浮?@ung homme eust bien menge pour trois blans depain ason disner" Through the items of 1429 he doesn't can"la pucelle"jeanne or jeanette, He doesn't point out the ceremony of sanctifying the dolphin(in丘ench:dalphin)as the king at Reims. Another reporter as an Vとnetian who stayed in Brugge at that time mentioned the name "zeneta"in the lctter to、his father in Venice dated 10 May and reported that ceremony in the letter dated 27 july」For the writer of the journal"1a pucelle"is but one element in the description. He took note of her rumour, because he heard it. Early September he saw her verアclosely in the army raiding Paris. He described her closel}~beacause he saw her closely. He offers her presence in the record as he hears and sees her.
著者
いのうえせつこ著
出版者
新評論
巻号頁・発行日
1993

1 0 0 0 OA 水府志料

著者
小宮山昌秀
出版者
巻号頁・発行日
vol.[28],
著者
廣瀬 友介 中本 敬子 蛭田 政弘
出版者
文教大学
雑誌
文教大学教育学部紀要 = Annual Report of the Faculty of Education Bunkyo University (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.45-56, 2013-03-01

大学生を対象とした質問紙調査により、数学の学習における学習観、公式観、ならびに学習方略の関係を検討した。その結果、数学の学習観については、意味理解志向と、学習量志向の2因子が得られた。また、公式観については、公式への困惑、暗記偏重、導き方の意義重視の3因子が得られた。学習方略については、要点理解方略と反復演習方略の2因子が得られた。これらの因子間の関係について、構造方程式モデリングによる検討を行った。その結果、意味理解志向の学習観は、公式の導き方を重視する公式観を通して、要点理解方略、反復演習方略の双方に正の影響を持つこと、学習量志向の学習観は、暗記偏重の公式観を通して公式への困惑に結びつくこと、また暗記偏重の公式観は反復演習方略の使用にのみ正の影響を持つことが示された。また、公式への困惑は2つの学習方略の両方に負の影響を持っていた。以上から、数学学習への学習観の影響について考察を行った。

1 0 0 0 胎位異常

著者
平松 祐司
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp."N-54"-"N-57", 2008-03-01
参考文献数
6
著者
松山 毅彦 杉原 義信 岩崎 克彦 藤井 明和
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.1517-1522, 1989

妊娠前に開放性腎生検によりIgA腎症と診断された15症例の妊娠・分娩の臨床経過の観察や管理等からそれらにおける危険因子について若干の知見を得た. IgA腎症の病型は野本らの定義に従い, Grade I~Grade IVの4型に分類した. 妊娠経過は浮腫, 蛋白尿, 高血圧の出現の有無および程度より測定し, 判定基準は日本産科婦人科学会妊娠中毒症問題委員会分類の判定基準によつた. 検査成績は末梢血所見, 出血凝固能, 血液生化学検査, 尿検査, 腎機能検査等を指標とした. 尼ヶ崎らの正常妊娠・分娩を期待できる基準と異常妊娠・分娩を来す可能性が大きい基準も参考にした. Grade Iの3症例は良好な経過をとつた. Grade II (9症例)は全例尼ヶ崎らの正常分娩を期待できる基準を満たしたが, 妊娠末期には7例に蛋白尿が出現し, 浮腫は1例に, 高血圧は2例に認められ, 産科・内科の管理をきびしくする必要があつた. Grade III (3症例)は尼ヶ崎らの異常妊娠・分娩を来す可能性の高い基準にあてはまり, 1例に蛋白尿が初期より認められたが危惧された産科的異常の発現や腎機能の増悪は認められなかつた. また分娩は経膣分娩12例, 帝王切開3例であつたが胎内死亡の1例を除き健児を得た. 以上の検討結果よりGrade IIの中にも妊娠継続が不可能となる可能性のある症例があり, Grade III の中にも妊娠継続が必ずしも不可能でない症例が混在していることが明らかになつた. 妊娠前の腎生検所見だけでなく,腎機能の評価を十分に行ない複数の妊娠可否基準を参考にし, さらに妊娠中の腎機能の悪化徴候や中毒症症状の出現の有無を見極め, 総合的に判定することが必要であると思われた.