著者
田中 利幸
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、米陸軍航空軍が、1930年代からの伝統的な戦略爆撃論である「精密爆撃論」にもかかわらず、第2次大戦中の爆撃活動において、いかに公式論から乖離し、無差別爆撃へと急速に変容して行き、最終的には広島・長崎に対する原爆投下による無差別大量虐殺を犯すまでに至ったのかを分析することに目的をおいた。その変容を、米軍の軍事指導者、政治家のレベルでの戦略、政策の変化のみならず、国民の倫理観の変化という観点からも分析を試みた。
著者
平井 浩文 一瀬 博文 長井 薫 亀井 一郎
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

世界中で蜂群崩壊症候群や人類に対する悪影響が危惧されている難分解性ネオニコチノイド系殺虫剤(NEOs)が白色腐朽菌により分解可能であるとともに毒性も除去可能であることが明らかとなった。また、本分解反応にはシトクロムP450が関与していることも突き止めた。さらにNEOsのピリジン環を資化可能な細菌を選抜し、白色腐朽菌との共培養を行ったところ、NEOsを効率的に分解可能であることが示唆された。
著者
笠松 秀輔 杉野 修 植村 渉
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

第一原理計算とは、量子力学の原理をもとに、コンピュータ上で物質の振る舞いを再現するための計算手法の総称である。第一原理計算による「コンピュータ実験」を利用することで、物質・材料開発を加速することができると期待されている。実際には、量子力学の原理をそのまま用いようとすると計算量が世界最速のスーパーコンピュータ上でも扱えないほどに大きくなってしまうので、様々な近似手法が用いられるが、多くの場合で十分な精度で計算できていないのが現状である。そこで本研究では、データ解析の分野で着目されている「テンソル分解」を援用することで、高精度かつ適用範囲の広い第一原理計算手法を目指した開発を行った。
著者
本多 正純
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度は、M2ブレーンの低エネルギー理論の候補であるABJM理論と呼ばれる3次元の超対称性理論を数値的に解析することにより、M2ブレーンの場合のAdS/CFT対応を直接検証する研究を行った。この超対称性理論の数値的な解析は今まで大変難しいと考えられてきた。そこで我々はまず、最近発展してきた局所化と呼ばれる解析的手法とモンテカルロ法を組み合わせることにより、ABJM理論の物理量を数値的な解析を行った。このシミュレーションによりM2ブレーンの場合のAdS/CFT対応を直接検証すると共に、対応する重力理論に関して幅広いパラメータ領域での予言を行った。また、ABJM理論と並んでM2ブレーンを記述していると考えられているBLG理論と呼ばれる理論があるが、両理論の超共形指数を計算することによりあるパラメータ領域ではこの理論がABJM理論と等価であるという強い証拠を提示した。さらに、様々な次元のDブレーンの低エネルギー理論である極大超対称ヤン・ミルズゲージ理論に対して、この理論が様々な曲がった時空上で定式化された際に超対称性の性質がどのように変化するかを詳細に解析した。
著者
奥 直也 桑原 重文
出版者
富山県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

両生類や爬虫類は、体表の分泌腺から悪臭や毒を出して捕食者から身を守ると考えられているが、実験的に証明されていない。そこで苦味と悪臭でヘビからの捕食を防ぐと考えられるツチガエルを材料に、ヘビ捕食作用の物質的実体と考えられる苦味物質と悪臭物質の同定に取り組んだ。カエルへの影響を極力抑えた非侵襲的な体表分泌物の採取法及び新臭気捕集法“ドライヘッドスペース法”を開発し、苦味物質としてrugosamarin Aと命名したペプチドを、また悪臭を構成する成分の一部としてイオノン誘導体と2種のアルデヒドを同定した。
著者
内海 愛子 村井 吉敬 鎌田 真弓 加藤 めぐみ 飯笹 佐代子 田村 恵子 永田 由利子
出版者
大阪経済法科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

アラフラ海を中心とする海域に着目し、1)真珠やナマコ等の海洋資源をめぐって織りなされてきた人の移動の諸相を、戦争の影響や国際関係、特に日本、オーストラリア、インドネシア間の相互の関係を踏まえながら明らかにし、2)それを通じて、明治以降から現代にいたる、国家の枠組みからではとらえきれないこの地域の位置づけと意味を探るとともに、3)海域(交流史)研究の新たな展開に向けた論点と可能性を提示した。
著者
五十嵐 暁郎 田島 夏与 松本 康 石坂 浩一 藤林 泰 イ ヒョンジョン ユン イルソン 金 相準 李 国慶 武 玉江
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

都市空間の再編が進む日中韓の北東アジア3国の大都市について実証的、理論的な分析を行った。3国の状況について現地調査や、研究者に対するヒアリングを行って状況を把握した。理論的には、グローバル都市、居住者意識、コミュニティ、住民運動、市民参画、創造都市など、社会科学的分析視角によるアプローチを行った。シンポジウムなどを重ねることによって、こうして獲得した理解を検討し、この主題に関する分析をまとめた。この主題について社会科学的なアプローチは少なかったが、今後の展開にとって先駆的な研究を示すことができたと思う。
著者
石川 亮太
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

朝鮮開港後から韓国併合の前後まで、日朝漁民の紛争事件について可能な限り事例を収集し類型化したうえで、その背景や経緯を掘り下げる。研究方法としての特徴は次の2点にある。(1)日朝両側の文献史料の対照。双方からの紛争の記録を比較するマルチ・アーカイブ手法を採用し、立体的に史実の復元を図る。(2)現地のフィールドワークによる文献史料の検証。水産業のあり方は現地の人文・自然環境に応じて極めて多様であったことに鑑み、紛争の現場を実際に訪れ、文献史料の記述を現地の環境に即して検証する。その際、民俗学・人類学や地理学などの隣接分野の成果を参照し、それらの研究者の協力を仰ぎながら分析の深化を図る。
著者
庵逧 由香
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

朝鮮の「総動員体制」は、日本のそれの一部として構想・準備・構築された。朝鮮の「総動員体制」の運営は、一連の総動員計画に基づいて、体系化された動員関連法と、個々の朝鮮人を末端に組み込む動員機構を通じて実施された。朝鮮においては、被支配民族から「自発的」な戦争協力を引き出すために、朝鮮人の「皇国臣民化」が大きな課題とならざるをえなかった。しかし「体制」自体が日本の戦争遂行を排他的究極目標としていたため、その運営は戦況に大きく左右され、最終的には戦局の行き詰まりによって計画さえも破綻し、崩壊に至った。
著者
日野 こころ
出版者
明治国際医療大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

特徴の異なる頻尿モデルラットを作製し、シストメトリー法による蓄尿・排尿機能に対する仙骨部鍼刺激の効果について検討した。酢酸、塩酸、シクロフォスファミド(CYP)誘発頻尿のうち、CYP誘発頻尿においては排尿間隔(ICI)の変化がなく、頻尿誘発機序の違いが仙骨部鍼刺激の効果に影響する可能性が考えられた。酢酸誘発頻尿モデルラットに対する灸刺激は、下腹部の方が仙骨部よりもICIは延長する傾向にあり、鍼刺激との刺激様式の違いが影響している可能性が考えられた。カンナビノイド(CB1)受容体阻害薬によって仙骨部鍼刺激によるICI延長の効果は消失し、鍼刺激の効果機序にCB1受容体が関与する可能性が示唆された。
著者
川上 有光 河野 寛 田中 重陽
出版者
国士舘大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

先行研究において,反応時間は呼吸相による影響を受けることが明らかにされており,特に呼気相に局所的反応時間および全身反応時間が高まることが報告されている。つまり,この呼吸相と反応時間の関係は,反応時間がパフォーマンスに影響する競技においては重要な役割を担うことになる。剣道は局所および全身の反応時間を高める必要がある代表的な競技の1つである。全身反応時間は呼吸相のうち,呼気相に高まることが分かっている。しかしながら,剣道の打突反応時間における呼吸相の影響はいまだ明らかではない。これを明らかにすることで,剣道の試合中や練習中に呼吸をどのようンにコトロールすればよいのかが明確になり,剣道の競技力向上の一助になると考えられる。そこで、本年度は呼吸相が剣道における打突反応時間に影響を及ぼすかどうかを検討するために,剣道有段者の大学剣道部員を対象として,自由呼吸,統制呼吸および息止め中の打突反応時間を評価する実験を実施した。その結果,自由呼吸および統制呼吸において,呼気相と吸気相の打突の反応時間に有意な差は認められなかった。一方,膝が動き出す時間と剣先が動き出す時間のピーク値については,統制呼吸時と比較して息止め時で有意に低値を示した。このことは息を止めている状態がもっとも早く反応できる可能性があることを示している。しかしながら,実際に竹刀が目標に当たる時間については,試技間に有意な差は認められなかった。一方で,自由呼吸は,吸気相および呼気相いずれにおいても,統制呼吸よりも剣先の反応時間が早かった。これは呼吸の仕方が少なからず反応時間に影響を及ぼすことを示唆している。本研究では,呼吸相が剣道の打突反応時間へ明確に影響を及ぼすことを明らかにはできなかったが,少なくとも息を止めている状態において反応時間が早くなること,また呼吸の仕方が反応時間に影響を与えることを示唆する結果が得られた。
著者
片岡 祥
出版者
西南学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

恋愛内で生じる束縛が関係性に及ぼす影響について、束縛の強度の違いという観点から検討した。研究1では項目反応理論を用いて,「弱い束縛」因子と「強い束縛」因子からなる束縛尺度の開発を行った。束縛尺度は概ね許容できる信頼性と妥当性を示した。開発した束縛尺度を用いて,研究2では弱い束縛と強い束縛が恋愛関係に及ぼす影響について検証した。分析の結果,弱い束縛は恋愛関係にポジティブな影響を及ぼすものの,強い束縛はネガティブな影響を及ぼす可能性が示唆された。恋人に対して生じる支配的な行動の1つである束縛が支配であると捉えられにくい理由として,束縛の強さによってその影響が逆方向であるためであることが示された。
著者
柴田 護 清水 利彦
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

マウスのwhisker padに10 mMカプサイシンを30分間作用させてTRPV1刺激を6日間行った。刺激と同側の三叉神経節の切片を作成して電子顕微鏡でミトコンドリアの観察を行った。なお、三叉神経節採取のタイミングは2, 4, 6日間投与完了の24時間後とした。2日投与では特に形態異常は認めなかったが、4日投与では主として小型の三叉神経ニューロンで内部構造の破壊を呈したミトコンドリアが確認された。しかし、6日間投与後にはニューロン内のミトコンドリア形態はほぼ正常であった。以上のことから、何らかの修復機構が作動するものと考えられた。細胞実験からミトファジーの機能が重要であることがわかった。
著者
今井 健一
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、Epstein Barr virus (EBV)の歯周疾患への関与が示唆されており、われわれは慢性歯周炎患者の病変部から高率にEBVを検出すること、病態の進行に伴いEBVとP.gingivalisなどの共感染が認められることを見出した。さらに、細菌の代謝産物酪酸がEBVを再活性化、歯肉線維芽細胞からの炎症性サイトカインの産生を強く誘導することを解明し、細菌とEBVの負の連鎖が歯周病発症と進展において重要な役割を担っている事が示唆された。歯周病の予防と治療において新たにウイルス感染を考慮する必要性の分子基盤を提示することが出来た。
著者
木原 正夫 鈴木 仁 鈴木 祐介
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

IgA腎症は原発性糸球体腎炎のなかで最も頻度が高いが、有効な治療法が確立されておらず予後不良である。IgA腎症の病態には糖鎖異常IgA1 と糖鎖異常IgA1 免疫複合体が深く関与しており、その産生にはToll like receptor(TLR)などのPattern recognition receptors(PRRs)を起点とした粘膜免疫応答異常が考えられる。本邦においては扁摘パルス療法が一定の効果を示している一方で、北欧においては腸管選択的ステロイド薬の効果が示されており、その議論が分かれている。本研究では、腸管におけるPRRsを介した糖鎖異常IgA1 免疫複合体形成機序を検証することを目標としている。ヒトIgA腎症の自然発症モデルであるddYマウスを用いて、血中・消化管関連リンパ組織におけるIgA、糖鎖異常IgA、IgG-IgA免疫複合体を測定したところ、IgA腎症発症マウスの方が未発症マウスに比較して、血中・脾臓の細胞培養液中のGd-IgA, IgG-IgA免疫複合体が有意に高かったが、腸間膜リンパ節においては両者に有意差はなかった。今後は、腸管におけるPRRsがIgA腎症発症・増悪に寄与しているか調べるため、IgA腎症発症/非発症ddYマウスを用いて、TLR4/9やその下流のサイトカインの発現を検証し、さらにはTLR4/9のリガンドを投与することで、IgA腎症を惹起できるか検証する。また、グルテンフリー食、腸管選択性ステロイド薬、中和抗体・siRNA を用いて、Gd-IgAおよびIgG-IgA免疫複合体産生の抑制効果を検証する。
著者
古屋 徳彦
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究はNeurodegeneration with brain iron accumulation (NBIA)原因遺伝子群の機能解析をオートファジーとの連関に注目して行った。siRNAを用いたNBIA原因遺伝子群のノックダウン(KD)を試みたところ、FTL、 PANK2、COASYのKDによりオートファジーへの影響が認められた。CRISPR/Cas9を用いて作成したFTL ノックアウト(KO)細胞を解析したところ、フェリチノファジーの低下、ミトコンドリア機能の低下、酸化ストレスに対する耐性の低下が認められた。これらの表現型がNBIA病態発症メカニズムと関連していると考えられる。
著者
田中 マキ子 磯貝 善蔵 根本 哲也
出版者
山口県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

褥瘡予防等身体への弊害を考慮し行われる2時間おきの体位変換に代わる方法として、身体の一部に対する介入としてスモールチェンジ法を提唱し、その効果について、体圧・ずれ量・費用対効果の面から検討した。結果、従来からの体位変換方法と比べ同等以上の効果が得られた他、80%以上の看護師・介護士に体位変換に伴う負担の軽減が示された。よってスモールチェンジ法は、従来の体位変換方法に代わる優れた有効な方法と言える。
著者
越野 剛 田村 容子 村田 裕和 今井 昭夫 梅津 紀雄 杉村 安幾子 久野 量一 坂川 直也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

一年目は「前期社会主義」と「人の移動」、二年目は「後期社会主義」と「翻訳・翻案」、 三年目は「ポスト社会主義」と「ノスタルジー・記憶」をテーマにした研究会を国内で開催 する。各年度ごとに1名程度の海外の関連分野の専門家を招へいするほか、最終年度には日 本国内で国際シンポジウムを開催する。研究成果は国内外の学会で積極的に発表し、日本語および英語で論集として刊行する。