著者
橋本 竜作 柏木 充 鈴木 周平
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.368-376, 2006 (Released:2008-01-04)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

書字の習得障害を呈した学習障害児を検討した。症例は 7 歳 11 ヵ月,右利き男児。診断は ADHD と DCD。知能,口頭言語および読みの発達は正常,漢字と仮名に共通した書字の獲得に必要な能力 (視覚認知,運筆能力,構成能力) も正常であった。書字における誤反応の特徴は,漢字が不完全な形態,仮名が無反応であった。漢字に関して視覚性記憶を,仮名に関して運動覚心像を検討した。結果,漢字学習における失敗には記銘時の方略の欠如が,仮名学習における失敗には運動覚性心像あるいは音韻と運動覚心像との連合の形成不全が関与することが示唆された。それゆえ,われわれは本例の書字の習得障害には漢字と仮名で異なる障害機序が存在すると推察した。
著者
松尾 浩 小久保 光治 近藤 哲矢 三鴨 肇
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.827-830, 2003-07-31 (Released:2010-09-24)
参考文献数
10
被引用文献数
2 5

症例は43歳, 男性. 2001年3月22日午後9時頃より腹痛を自覚し, 腹痛が強度となり4時間後に救急車にて当院に緊急入院した. 腹部は軽度膨隆し, 全体に圧痛と筋性防御を認めた. 血液検査にてCRPは陰性であったが, 白血球の上昇を認めた. 腹部CT検査にてfree airと腹水, 骨盤腔にlow density areaを認めた. 肛門よりビニール製のひもが1mほど脱出しており, 出血を軽度認めた. 直腸異物による消化管穿孔の診断のもとに緊急手術を施行した. 開腹すると便汁を混じた腹水を認め, 骨盤腔に直径5.5Cm高さ19cmの哺乳びんを認めた. 腹膜翻転部から10cmの直腸前壁が長軸方向に10cmにわたり穿孔しており, 同部より哺乳びんが腹腔内に露出していた. 手術は同部を縫合閉鎖し, 横行結腸にて双孔式人工肛門を造設した. 経肛門的に異物が入った経過を何度も確認したが, 風呂場で転んだ拍子に哺乳びんが肛門から入ってしまったとのことであった. 術後6ヵ月後に人工肛門を閉鎖し経過良好である.
著者
峠岡 理沙
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.3, pp.499-504, 2021-03-20 (Released:2021-03-20)
参考文献数
19

食物アレルギーは経口摂取による消化管での感作が主体であると考えられてきたが,近年,皮膚を介してアレルゲンが侵入する経皮感作が注目されている.化粧品は皮膚の汚れを除去し,乾燥を防ぎ,外的刺激から皮膚を保護する働きを有している.その一方で,化粧品に含まれる食物由来成分あるいは食品と共通する成分により経皮感作が生じ,その食物を摂食し,アレルギー症状が出現した症例が報告されている.食物アレルギーの症例を診察する際には,化粧品による経皮感作によって発症した可能性を念頭に置いておく必要がある.
著者
宮本 悟
出版者
JAPANESE POLITICAL SCIENCE ASSOCIATION
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.195-215,253, 2005 (Released:2010-04-30)

For a long time, a majority of people have thought that the military would attempt a coup d'etat in the Democratic People's Republic of Korea due to the widespread economic deterioration in the past, and the fact that the domestic economy has seen some recent improvement makes this event more unlikely at present.Why haven't a group of officers within the Korean People's Army attempted a coup d'etat? In this research, I provide three key reasons that explain why, even during three crisis periods involving major politico-military purges, this has not happened.Chiefly these were: entrenched clique competition in the military; the existence of an organization that can oppose the armed forces; and a systemic and purposeful division of the military. I have confirmed through this research that the system that has divided the military still exists in the army, a system controlled effectively by a senior commissar. Therefore, this research concludes that the possibility of a coup d'etat occurring is low even in the present D. P. R. K.
著者
荒瀬 康司
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.6-26, 2019 (Released:2019-09-04)
参考文献数
22

科学論文の基本的3要素は,内容・構成・表現である.投稿された論文において,これらの3要素が適切に記載されていると判断された際に,はじめて採用と判定される.3要素における第一の内容は,新規性,独創性があり,さらに医療関係者ならびに受診者に裨益することが肝要である.陳腐的な,人口に膾炙された内容のみでは科学誌には採用されにくい.第二の構成は,理解されやすいこと,利用されやすいこと,等を念頭に組み立てられている必要がある.第三の表現は,「読み手」を意識して書かれることを要する.専門用語,省略語を我流で使用しすぎないこと,文末を常体(だ・である)で統一することなど,「読み手」にとって分かりやすい,読みやすい表現であることが必要となる1).科学論文の要素である内容・構成・表現の作成においてはルールがある.そこで,本稿では科学論文作成上のルールにつき記した.ルールは,1~144までの通し番号で示した.1~31は内容・構成,32~144は表現について記した.論文記載上の留意点については,すでに人間ドック学会誌に掲載されたが,今回は約10倍の分量で,より詳細に記した1-3).なお,図表の書き方は論文作成上,重要ではあるが,紙数の関係で記述しなかった.
著者
髙橋 亜希
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.68-77, 2016-01-30 (Released:2016-04-12)
参考文献数
27
被引用文献数
15 21

The present study developed a Japanese version of the Highly Sensitive Person Scale (HSPS) which was first devised by Aron and Aron (1997). The basis of the scale was to measure individual differences in sensory-processing sensitivity (SPS). In Study 1, the author identified 27 items of Japanese version (HSPS-J) after repeated bilateral translations and data collected from 324 college students exhibiting sufficient reliability of the scale. In Study 2, 369 undergraduates answered HSPS-J and other questionnaires to measure personality dimensions. 19 items remained after excluding the items with low factor loading scores. Factor analysis demonstrated 19 items of HSPS-J (HSPS-J19) having a three-factored structure of Low Sensory Threshold, Ease of Excitation, and Aesthetic Sensitivity. Adequate internal consistency was demonstrated by Cronbach's alpha, and its validity was also shown in terms of the relationship with personality dimensions of Neuroticism and Introversion.
著者
鈴木 誉保
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.031-035, 2021 (Released:2021-01-29)
参考文献数
10
著者
西脇 俊和
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.8, pp.575-582, 2013 (Released:2018-01-15)
参考文献数
22

従来,キノコは食材として捉えられることが主であったが,近年は新たに酵素のソースとしての側面に関心が寄せられているという。著者は,日常の食卓に上るようになって久しいおなじみのマイタケのタンパク質分解活性の高さに注目した取り組みを行っている。ここでは,マイタケアミノペプチダーゼの基質特異性を利用したタンパク質分解物の苦味除去や,血圧降下作用を有するぺプチドの生成などについて述べていただいた。ご一読いただければ,マイタケひいてはキノコの酵素の食品加工への広範な応用の可能性の一端がうかがえるはずである。
著者
佐藤 一光
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.152-171, 2020 (Released:2022-01-19)
参考文献数
50

現代的貨幣論(MMT)の基本構造を確認し,租税論と予算論から考察を行った。MMTはポスト・ケインズ派が発展させてきた内生的貨幣供給論を,政府・中銀の発行する垂直的貨幣である現金・準備・公債に拡張するものであるが,その理論構造の複雑性が理解の妨げになっている。本稿はMMTを「貨幣は負債である」という定義から派生する「水平的貨幣創造」とそれに付随する「アコモデーション」,「垂直的貨幣創造」とそれに付随する「貨幣主権性」「租税貨幣論」,さらに水平的貨幣と垂直的貨幣を一体的に把握する「債務ヒエラルキー」「Stock-Flow Consistent」という系統に分類して説明した。そこに「資金運用者資本主義」という認識と「ミンスキーの半世紀」という要素を加えることで「財政赤字の必要性」を導出し,「機能的財政論」と合わせて「雇用保証プログラム」(JGP)という政策提案に至る構造を解説した。さらにMMTの租税論・予算論を詳細に検討することで,既存の財政学との視点の違いについて整理した。
著者
Kotaro OZAKI Kanto NISHIKAWA
出版者
The Herpetological Society of Japan
雑誌
Current Herpetology (ISSN:13455834)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.162-170, 2023 (Released:2023-08-30)
参考文献数
18

The Japanese fire-belly newt, Cynops pyrrhogaster, is a near threatened species that is conservation dependent. Here, we examine feeding habits across the year within a genetically divergent intraspecific lineages of this species (the Central Lineage) to provide information to support future in-situ and ex-situ conservation activities. Stomach contents from newts were collected in a paddy field habitat, Kyoto City, central Honshu, Japan for two consecutive years. Throughout the year, dipteran aquatic larvae were the most important food source both for males and females, although terrestrial invertebrates were also important prey for the newts. During periods of low prey availability shed skin could also be a relatively valuable source of food. Sympatric frogs and newts appear to target different prey and this may facilitate their co-existence. Our study provides new information on suitable prey items for the Central Lineage of C. pyrrhogaster both in its natural habitat and in captivity.
著者
夏秋 優
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.116, no.14, pp.2259-2264, 2006-12-20 (Released:2014-12-10)

皮膚疾患を引き起こす有害動物はきわめて多い.これらの有害動物がヒトの皮膚に対して,刺咬,吸血,接触によって有毒成分や唾液腺成分を侵入させることで,刺激性,あるいはアレルギー性の非感染性炎症反応を惹起する.また,寄生虫の侵入,あるいは有害動物の媒介によって感染した病原微生物に対して,感染性の炎症反応を生じる.これらの疾患に対して適切な診断を下すには,個々の有害動物の分布や生息環境,生態などを熟知しておく必要がある.本稿では有害動物による皮膚病の概略を把握するため,皮膚疾患を引き起こす主な有害動物とその病害について簡潔に解説した.
著者
廣野 俊輔
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.43-55, 2015-02-28 (Released:2018-07-20)

本稿の目的は,川崎バス闘争の背景を先行研究よりも幅広い社会的文脈から検討したうえで,障害者が直面した困難はいかなる価値の対立によって生起したかを明らかにすることである.川崎バス闘争とは,1976〜1978年,川崎市と周辺で生起した車いすのままバスに乗ろうとする障害者とそれを制限しようとする関係者の闘争である.本稿では闘争をもたらした価値の相克を,障害者の立場から検討する.検討の結果は以下のとおりである.第1に,当時の地域社会においては,障害者の世話=在宅か施設で行うものという認識が強く,そもそも障害者の主張が受け止められるまでに至らなかった.第2に,障害者による「あらゆる人が障害者を介護すべき」という主張は特に理解されず,単なる「わがまま」として対立が鋭くなった.第3に,労働環境の悪化を懸念する労働者やそもそも市民や労働者に不信感をもっていた障害者の立場が,闘争をより複雑で困難なものにした.
著者
青木 洋
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.331-353, 2006-09-25 (Released:2017-08-09)
参考文献数
55
被引用文献数
1

This article focuses on the activities of the Research Groups (Kenkyu han) promoted by the National Research Council of Japan (NRCJ) during World War II. Research collaboration has recently attracted the attention of many scholars as a factor in the development of Japanese technology. In fact, there were a large number of research collaboration activities during the period, and the Research Groups were one of the largest of such groups. NRCJ, established in 1920 under the supervision of the Ministry of Education, had been mainly involved in the promotion of international academic collaboration until World War II. But when the Board of Technology (Gijutsuin) was established for the mobilization of science and technology and the tide of the Pacific War turned against Japan, the Ministry of Education enforced a reform so that NCRJ could launch widespread research collaboration throughout the country. The Research Groups were organized in 1944, and at its peak had 193 groups and a total of over 1,900 scientists. Typical research issues included electronics, scarce and rare materials, and public health. These were similar to those of the Research Neighborhood Groups (Kenkyu tonarigumi), which were promoted by the Board of Technology, resulting in some duplication of activities between the two groups and leading to inefficiency in the mobilization of science and technology research.

46 0 0 0 OA 人事興信録

著者
人事興信所 編
出版者
人事興信所
巻号頁・発行日
vol.第13版上, 1941