著者
植村 富彦 楯林 義孝 持田 政彦
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.223-234, 2015

統合失調症の病態仮説として,神経細胞を中心としたドーパミン仮説,グルタミン酸仮説などが従来提唱されてきたが,その本質はまだよくわかっていない。本総説ではトリプトファン代謝経路上の分岐点に位置するキヌレニン(KYN)を水酸化する反応律速酵素,キヌレニン 3-モノオキシゲナーゼ(KMO)のミクログリアにおける活性低下およびアストロサイトにおけるキヌレン酸(KYNA)産生増加による認知機能低下の可能性,すなわち,「統合失調症の KYNA 仮説」を中心に紹介する。統合失調症における慢性炎症,さらにはアストロサイトも含む神経-グリア関連にも言及し,今後の創薬の可能性について議論したい。
著者
宮坂 正昭
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.12, pp.960-965, 1980

人間の血液中に含まれている食塩は, 重要な成分である。しかし, 最近の新聞, 雑誌等をみると, 食塩のとり過ぎによる幣害についてのみ, 一方的に, いささか誇大気味に報道されているように思われる。<BR>そこで, 収集資料の分析結果をもとに, 食塩と味噌の関係について詳述していただいた。
著者
岩科 司
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.430-432, 2015-08-15 (Released:2015-08-20)
参考文献数
4

地球上には約500万~3000万種の生物が生存している。日本には植物だけでも7451種の陸上植物(5016種の被子植物,46種の裸子植物,623種のシダ植物,そして1766種のコケ植物)が生育している。しかしながら,それらの1/4は絶滅危惧植物に指定されており,その原因は大きく2つに分ける事ができる。1) 蛇紋岩地などの特殊な環境に生息し,もともとの個体数が少ない種と,2) 本来は多く生育していたが,人間によってその減少がもたらされた絶滅危惧種である。たいていの植物の減少は2)の人類による環境の破壊によってもたらされたが,一方,その修復をできるのも人類だけである。「生物の多様性とこれからの社会」はどうあるべきか,今後,我々人類が考えていかなければならない大きな命題である。
著者
大嶋 和雄 斎藤 文紀
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.213-231, 1993

Tokyo Bay is badly polluted, but would be in much worse shape were in not for sewage treatment and regulation. Such management techniques for water quality have rid the bay of toxic mercury sludge, and have made the average water quality of the bay head up to Class C rating, which indicates no unpleasant effects on everyday life. The bay still yields fishery products; a 30,000-ton catch in 1990. However, its yield is less than only a third of the maximum of the past fisheries yield. There is a limit, however, to technology. To bring the water quality rating of the entire bay up to Class B, suitable for fishing, would require that treated sewage dumped into the bay be able to support marine life. The construction of sewage treatment plants to perform such a feat would be prohibitively expensive, and the cost of the treatment would be a continuing liability, not a one-time fix. In other words, though technology can keep death at bay, it alone cannot restore Tokyo's coastal area to health. A Tokyo-Bay restoration project must harness the area's natural ability to recover from environmental damage. That recovery is accomplished through three mechanisms; sea-water exchange, sedimentation, and biological production. The coast is the interface between land and sea, where its ecosystem has developed over thousand of years. Technology works to fight pollution, but only to a point. Coastal restoration projects must be designed to work with the powerfull cleaning system of the bay itself if they are to assist truly sustainable development.
著者
川手 信行 水間 正澄
出版者
The Showa University Society
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.437-442, 2003
被引用文献数
1

在宅脳卒中患者の介護保険での介護給付について調査した.方法) 要介護認定を受けた脳卒中患者17名を対象に, (1) 要介護度, (2) 実際の介護支給額, (3) 介護給付内容, (4) 支給限度額まで利用しない理由など, 患者及び家族に調査した.結果) 介護度I; 4名, II; 4名, III; 7名, IV; 1名, V; 1名で, 16例が支給限度額半額以下の介護給付であった.給付内容はヘルパー, 訪問看護, デイサービスなどで, 全く給付のない症例も5名認めた.介護未利用理由は, 介護給付施設の不備・不足が多かった.また, 介護支援専門員から主治医へ介護情報の連絡は全くなかった.考察) 在宅患者の介護は, 地域の医療・保健・福祉及び介護の連携が必要と思われた.

1 0 0 0 OA 興亜の大義

著者
徳富猪一郎 著
出版者
明治書院
巻号頁・発行日
1942
著者
鈴木 慎一 中川 孝之 池田 哲臣
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.34, no.14, pp.1-6, 2010-03-12
被引用文献数
4

ハイビジョン映像を低圧縮・低遅延で無線伝送する高性能なワイヤレスハイビジョンカメラの研究を進めている.これまで,伝送容量の増大と回線信頼性の向上を目的として,ミリ波帯(42GHz帯,55GHz帯)の電波とを受信ダイバーシティ技術含むMIMO-OFDM伝送技術を用いたワイヤレスハイビジョンカメラ「ミリ波モバイルカメラ」の開発を行ってきた.そして,屋内撮影用・屋外撮影用のミリ波モバイルカメラを試作し,複数の番組撮影で使用した.今回,使用された番組の中からオープンゴルフ選手権,第60回NHK紅白歌合戦,ジャンプスキー競技の撮影で使用したミリ波モバイルカメラのシステム構成と運用方法について報告する.
著者
三木 雄介
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.126-142, 1965-06

二 宝永の藩札停止令と享保の解禁
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.1105, pp.40-43, 2017-10-12

東日本大震災で立体駐車場のスロープが崩落して8人が死傷した事故は、刑事責任を問われた構造設計者が二審で逆転無罪となった。その一方で10億円超の損害賠償を求める民事訴訟が提起されていることが判明した。 東日本大震災で立体駐車場の車路スロープが崩落…
著者
下村 大樹
出版者
公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
雑誌
天理医学紀要 (ISSN:13441817)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.81-89, 2016-12-25 (Released:2016-12-25)
参考文献数
40

我々は,直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant; DOACs)が投与される患者のために,腎機能を簡便に評価するシステム,および抗凝固作用の評価として,PT およびaPTTの検査値に服用後経過時間を併記するシステムを構築した.DOACsは腎排泄率が高い薬剤であるため,重度腎機能障害の患者へ投与が禁忌とされている.DOACs投与時の腎機能評価は,Cockcroft-Gault計算式によるクレアチニンクリアランス(creatinine clearance; CCr)が採用されている.国内で頻用されている糸球体濾過量推算式(estimated glomerular filtration rate; eGFR)と比較すると,日本人に多い小柄な高齢者はCCrよりeGFRが高くなる傾向があり,eGFRでは代用できない.そのため,当院ではCCrを検査システムに取り入れ,禁忌症例の判断,処方前および定期的な腎機能評価に活用している.DOACsは固定用量の投与で,抗凝固作用評価(モニタリング)が不要とされているが,出血リスクの高い患者にはモニタリングすることが推奨されている.DOACsは半減期が短く血中濃度の変動が大きいため,服用からの経過時間により検査値が大きく異なる.当院では,検査技師が採血時に患者から聴取したDOACsの服用時間を検査結果に併記し,服用後経過時間を考慮してPTあるいはaPTTを評価することにより,DOACsのリスク管理を行っている.
著者
福田 晴政
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.1084, pp.88-90, 2016-11-24

第㉑回東日本大震災の地震によって建物の一部が崩落した事故で刑事責任を問われ、一審で有罪判決を受けた構造設計者に、二審では無罪の判決が下った。福田晴政弁護士は、二審判決に疑問を呈する。(本誌) 東日本大震災で、大型量販店の「コストコ多摩境店」…
著者
武田 駿 名取 隆廣 田邉 造 古川 利博
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.12, pp.1-6, 2013-05-10

本論文では,ステレオ楽曲 (ボーカル信号+左右 BGM 信号) からボーカル信号を抑圧して左右 BGM 信号を抽出するステレオ型ボーカル抑圧手法を提案するとともに,この手法をスマートホンで実装したステレオ型自動カラオケアプリレーション"カシレボ"を紹介する.提案手法は,(i) VAD(Voice Activity Detection) よりボーカル信号の分散値を推定した後に,(ii) 拡張型有色性駆動源カルマンフィルタを用いることで,臨場感のあるステレオ型 BGM 信号を抽出する手法である.開発したカシレボの特徴は,スマートフオンにダウンロードした楽曲から (1) ステレオ感を損なうことなく,(2) リアルタイムに,(3) ボーカル信号を抑圧して左右 BGM を抽出する自動カラオケを実行可能なことである.提案手法の有効性は App Store や Google Play にて配信することで確認している.This paper proposes the stereo typed vocal suppression method for the stereo music. The proposed method estimate the realistic back ground music without sacrificing the stereo music using the voice activity detection and the Kalman filter with the colored driving source. The remarkable features of this method are (1) applied to stereo music and (2) realization of the real-time and practical vocal suppression system. Numerical example shows that effectiveness of proposed method algorithm.
著者
渡邊 美咲 野口 実華子 橋本 多美子 吉田 精作
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.228-233, 2018-10-25 (Released:2018-11-14)
参考文献数
5
被引用文献数
5

2008年から2016年に購入した小麦製品中残留有機リン系農薬濃度を調査した.国産の小麦粉34検体中,クロルピリホスメチルは検出数16,最高値0.016 ppm,ピリミホスメチルは不検出,フェニトロチオン(MEP)は検出数14,最高値0.004 ppmであった.国産のクッキー38検体中,クロルピリホスメチルは検出数22,最高値0.054 ppm,ピリミホスメチルは検出数1, MEPは検出数16,最高値0.007 ppmであった.ふすまを含む国産クッキー中のクロルピリホスメチル濃度は高かった.外国産クッキー68検体ではクロルピリホスメチルは検出数25,最高値0.025 ppm,ピリミホスメチルは検出数32,最高値0.11 ppm, MEPは検出数4,最高値0.004 ppmであった.ヨーロッパ地域の製品からピリミホスメチルが高頻度に検出された.全調査検体において検出値は基準値未満であった.
著者
山﨑 朋美 三宅 司郎 佐藤 夏岐 平川 由紀 岩佐 精二 成田 宏史 渡辺 卓穂
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.200-205, 2018-10-25 (Released:2018-11-14)
参考文献数
30
被引用文献数
5

アフラトキシンB1, B2, G1, G2(AFB1, AFB2, AFG1, AFG2)汚染の総量を測定するための直接競合ELISAを開発した.開発に当たっては,これらの各AFに同等に近い反応性を示すマウスモノクローナル抗体を用いた.開発した直接競合ELISAの測定範囲は,AFB1が50~230 pg/mL,AFB2が50~270 pg/mL,AFG1が60~390 pg/mL,AFG2が65~700 pg/mLだった.ローストピーナッツを用いて行った総AF添加回収試験の結果,直接競合ELISAは98%の回収率を示した.さらにAFB1, AFB2, AFG1, AFG2のすべてのAFが汚染している4種類の実試料を用いて測定を試みた結果,その認証値と高い相関関係が示唆された.開発した直接競合ELISAは,日本の規制値周辺の総AF濃度を測定するために好適と考えられた.
著者
宮川 弘之 杉木 幹雄 田原 正一 山本 純代 山嶋 裕季子 植松 洋子 門間 公夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.213-219, 2018-10-25 (Released:2018-11-14)
参考文献数
11

LC-MS/MSを用いた加工食品中のステビア甘味料のスクリーニング分析法について検討した.試料中のステビア甘味料を透析抽出後,抽出液を水で希釈してLC-MS/MSにより測定した.本法を用い,5種類の加工食品にステビオシド,レバウジオシドAを各10 mg/kg,また,酵素処理ステビアを100 mg/kgになるように添加し回収試験を行った.その結果,いずれの食品においても添加量に相当する濃度の各ステビア甘味料溶液と同等のピーク高さのクロマトグラムが得られ,妨害ピークは観察されなかった.本法を用いてステビア表示がある市販加工食品36製品を分析したところ,すべての製品からステビオシド,レバウジオシドA,酵素処理ステビアのうち1種類以上が検出され,33製品からステビオシドを,33製品からレバウジオシドAを,11製品から酵素処理ステビアを確認することができた.また,ステビア抽出物と酵素処理ステビアを併用したと思われるものが5製品確認された.
著者
中西 徹 河村 葉子 城市 香 渡邊 雄一 杉本 敏明 阿部 裕 六鹿 元雄
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.193-199, 2018-10-25 (Released:2018-11-14)
参考文献数
3
被引用文献数
2

食品衛生法では,器具・容器包装からの総溶出物試験として蒸発残留物試験が規定されている.油脂および脂肪性食品の最適な食品擬似溶媒は植物油であるが,蒸発乾固が困難であることから,合成樹脂ではヘプタン,ゴムでは20%エタノールが浸出用液として用いられている.一方,欧州連合では,油脂および脂肪性食品に使用される合成樹脂に対してオリブ油への総溶出物試験が規定されており,その試験法は欧州標準規格EN1186-2に収載されている.しかし,試験操作上の問題が多いことから,試料の恒量化を43%硫酸デシケーターで行い,溶出後試料に残存する植物油を内標準浸漬抽出法で抽出し,植物油のメチルエステル化にナトリウムメトキシドを用い,GC測定条件を変更するなどの改良を行った.その結果,操作が簡便で試験時間が大幅に短縮され,試薬の有害性が低減され,合成樹脂だけでなくゴムにも適用可能な試験法を確立することができた.さらに,本法とEN1186-2に示された試験法を6種類の試料を用いて比較したところ,同等の試験性能をもつ優れた試験法であることが確認された.