著者
仁平 尊明 コジマ アナ 吉田 圭一郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.32, 2007

<BR> 熱帯湿原特有の豊かな動植物相を有することで知られるブラジル・パンタナールでは,1990年代からエコツーリズムが盛んになり,とくに欧米から多くの観光客が訪れるようになった.エコツーリズムのブームにともなって,ファゼンダの観光化や大規模なホテルの建設が進行し,生態系へのインパクトや住民生活の変化などの地域問題が顕在化した.本研究では,南パンタナールのエストラーダパルケ(パンタナール公園道路)を対象として,宿泊施設の立地展開に注目することから,パンタナールにおけるエコツーリズム発展の課題を考察する.調査を実施した時期は,2003年8月,2004年8月,2005年3月,2005年8月,2006年8月であり,調査の内容は,宿泊施設の経営者や管理者への聞き取りである.<BR> <b>研究対象地域</b> 南パンタナール(マトグロッソドスル州)のエストラーダパルケは,北パンタナール(マトグロッソ州)のトランスパンタネイラと並んで,ブラジル・パンタナールにおいて観光開発が最も進んでいる地域の一つである.エストラーダパルケは,ボリビアとの国境にある大都市・コルンバの南から湿原に入る未舗装の道路である(Fig.1).パラグアイ川の渡河点であるポルトダマンガからクルバドレイキまでは東西に走り,クルバドレイキから連邦道路262号線沿いのブラーコダスピラーニャスまでは南北に走る.総延長は120kmであり,ミランダ川,アボーブラル川,ネグロ川などの主要河川とその支流の上には87の木橋が架かる.<BR> <b>宿泊施設の分布</b> トランスパンタネイラ沿いとその近隣には,19の宿泊施設が立地する(Fig. 1).そのうち,スポーツフィッシング客を主な対象とする釣り宿は6軒(サンタカタリーナ,パッソドロントラ,タダシ,パルティクラ,カバーナドロントラ,ソネトゥール),エコツアーを提供する設備が整った大規模なホテルと民宿が3軒(パルケホテル,パンタナールパークホテル,クルピーラ),既存のファゼンダが観光化したエコロッジが5軒(ベーラビスタ,アララアズール,サンタクララ,シャランエス,リオベルメーリョ),キャンプ場または素泊まりの安い部屋を提供する民宿が3軒(エキスペディションズ,ボアソルテ,ナトゥレーザ),そのほかに,ホテルに付随した観光ファゼンダ(サンジョアオン)と大学の研修所(UFMS)がある.<BR> <b>宿泊施設の開業年</b> 1960年代と1980年代に開業した宿泊施設は,5軒が釣り宿であり,そのほか,民宿,研修所,キャンプ場が1軒づつある.1990年代に開業した宿泊施設は,ホテルが2軒,釣り宿が1軒,エコロッジが1軒である.2000年以降に開業した宿泊施設は,ファゼンダが4軒,キャンプ場などが2軒,ホテルの付随施設が1軒である.このように,エストラーダパルケの宿泊施設は,1980年代以前には大河川沿いの釣り宿,1990年代には大河川沿いの大規模なホテル,2000年以降には河川から離れたファゼンダとキャンプ場の開業に特色がある.<BR> <b>エコツーリズム発展の課題</b> 世界遺産にも登録されたパンタナールは,観光地として有名になり,観光によるバブル経済を引き起こしている.1990年代後半に宿泊施設を開業した経営者は,1haあたりの土地を230~300レアルで購入した.2001年に開業した宿泊施設の土地購入価格は,350~400レアル/haであり,2003年になると730レアル/haまで上昇した.近年では,東部海岸の大都市や外国出身の地主が増加している.また,観光客が家族から個人の若者になったことも問題である.彼らの多くは,ボリビア,ブラジル西部,パラグアイ,アルゼンチンと移動するムッシレイロ(バックパッカー)である.<BR>[本研究は,平成16・17・18年度科学研究費補助金「ブラジル・パンタナールにおける熱帯湿原の包括的環境保全戦略」(基盤研究B(2) 課題番号16401023 代表: 丸山浩明)の補助を受けた.]
著者
佐藤 和弘
出版者
青森公立大学
雑誌
青森公立大学紀要 (ISSN:13419412)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.13-20, 2004-09-30

The 1/f (f inverse) fluctuation is observed in nature quite generally. It is found that the 1/f fluctuation influences the human brain, and strongly settles the central nerve system. However the mechanism of this phenomenon is unknown as yet. This paper suggests that the interaction between the brain stem and the limbic system is responsible for this mechanism. The 1/f fluctuation is detected by the A10 nuclei (a pair of small neural network) in the brain stem, and the excited A10 stimulates the amygdaloid body in the limbic system. Then the amygdaloid body exhibits an emotional response (satisfaction) instinctively. When the 1/f fluctuation vanishes, the brain will recognize that a certain kind of dangerous situation progresses inside or outside of the body.
著者
丹保 健一
出版者
三重大学
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 人文・社会科学 (ISSN:03899241)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.11-22, 1988

佐治氏の命名になる「状況陰題文」は、題述文の一つというより、状況に深く係わりを持つ特殊な存現文、強いて名付ければ、「状況存現文」とでもいうべき性格を持つ文である。というのは、状況陰題文における「状況」は、判断の対象としての主題というより、表現、理解のための無意識の前提として働いているにすぎないからであり、又、状況陰題文の述語が持つ判断作用は、文末の感動表出によりコト的なものとして収まると考えられるからである。
著者
阿部 長 丸山 泉 原 直哉 明吉 康則
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.232-236, 1996
参考文献数
10
被引用文献数
1

脳卒中片麻痺患者(CVA患者)21例を対象に,下肢筋の能力の一部である筋持久力が歩行耐久性に及ぼす影響について検討した。対象は屋内歩行自立以上の歩行能力を有するCVA患者の内,麻痺側下肢のBrunnstrom stageがIV・Vの者に限定した。両側下肢の筋持久力及び歩行耐久性の指標として,膝伸展最大収縮20回前後の膝伸展筋力と300m最速歩行前後の歩行速度の低下率を用いた。また,歩行耐久性評価時に歩行率・重複歩距離に関しても前後比を求め,それぞれ比較した。その結果,麻痺側下肢のみ,筋持久力と歩行耐久性とに正の相関関係を認めた。また,歩行率及び重複歩距離の前後比はt検定で有意差を認めなかった。これらの結果より,麻痺側下肢の筋持久力が高い者程,歩行耐久性も高いと考えられた。
著者
杉山 幸丸
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.27, pp.27, 2011

&nbsp;餌付けされた高崎山のニホンザルが寄せ場で投与される餌にどれほど依存しているか。Soumah & Yokota (Folia Primatol, 1991) および横田直人(「霊長類生態学」2002)の資料を基に分析した。原調査は1987、1988年に実施したものであり、この頃、餌投与量は300Kcal/頭/日以下に減量していた。調査は4回にわたり(7-10月と2-3月)各4-5頭のメスを終日追跡してその採食内容を詳細に記録したものである。優位メスがより高い採食量を、高い人工食依存度を示していたのは予想されたとおりだった。人工食率は優位で63.7%、劣位で37.9%だった(平均57.3%)。しかし夏冬ともに、優位・劣位ともに必要エネルギー以上を摂取していた。ただしこの計算には通常の運動量は考慮してあるが成長、妊娠、出産、育児に要するエネルギーは含まれていない。高崎山では出産率の年変動が激しいが、これは森の生産量の年変動に強い影響を受けていると考えられる。
出版者
日経BP社
雑誌
日経情報ストラテジ- (ISSN:09175342)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.170-173, 2006-08

首都圏12カ所の駅ビルを運営するルミネ(東京・渋谷)は「小売業の心を持つデベロッパー」を目指してきた。この際に欠かせないのは、顧客の動向を教えてくれるルミネーカードだ。そのカードの運用効率が、会員数の増加とともに低下の一途をたどってきたため、一昨年11月に顧客情報分析システムを刷新した。 従来は、分析に時間がかかるうえに他店舗の動向も分からなかった。
著者
松岡 紘史
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1145-1150, 2010-12-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
20
被引用文献数
2

本稿では,慢性疼痛に対する認知行動療法の効果および治療効果の媒介要因,調整要因を概観することを目的とした.過去に実施された複数のメタアナリシスによって,慢性疼痛に対する認知行動療法の効果は確認されているものの,効果サイズが小さい,効果がみられないアウトカムが存在する,などの問題も残されている.治療効果の調整要因および媒介要因を検討している過去の研究からは,認知的要因が媒介要因として重要であること,また,調整要因としてはMultidimensional Pain Inventory(MPI)を用いたサブグループと治療に対する期待が重要であることが明らかにされた.臨床実践への提言および今後の方向性が論じられた.
著者
壬生 百香
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1104-1105, 2017 (Released:2017-11-01)

私は、平成15年3月に岐阜薬科大学薬学部を卒業したあと、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科修士課程、三重県庁勤務、早稲田大学ロースクール等を経て、平成25年に弁護士としてのキャリアを開始した。これまでの取扱分野は、医薬分野、知的財産権、企業法務から一般民事、家事事件まで多岐にわたる。本稿では、いくつかの弁護士の業務について話すことで、弁護士の仕事を読者の皆さんに紹介したい。
著者
山口 晴保 中島 智子 内田 成香 松本 美江 甘利 雅邦 池田 将樹 山口 智晴 高玉 真光
出版者
社会福祉法人 認知症介護研究・研修東京センター
雑誌
認知症ケア研究誌 (ISSN:24334995)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.3-10, 2017 (Released:2018-11-06)
参考文献数
17

【目的】適切な医療を提供するため、認知症疾患医療センター外来受診者のBPSDの特性 をNeuropsychiatric inventory (NPI)を用いて検討した。 【方法】対象はMCI群16例と認知症群163例の計179例(80.2±6.9歳)。NPIと認知機能 (HDS-R)や年齢、病型との関係や各質問項目の出現頻度などを検討した。 【結果】MCI群ではNPI 13.3±20.6点、認知症群ではNPI 22.7±22.8点で、MCI群が低かっ た(有意差無し)。介護負担(distress)を表すNPI-DはMCI群10.5±10.9点、認知症群 10.1±9.8点で同等だった。病型別ではDLB群20例がADD群75例よりも有意に高かった (p=0.005)。相関を調べると、全体ではNPIがHDS-Rと有意な負の相関を示した(r=0.188, p=0.021)。認知症群では、NPI-DがHDS-Rと有意な負の相関を示した(r=-0.212, p=0.037)。NPIとNPI-Dは高い相関を示した(r=0.800, p<0.001)。出現頻度が高い項目 は無関心57.5%、興奮54.2%、易刺激性44.7%、不安39.7%、妄想36.9%の順であった。平 均点が高い項目は、興奮3.51、無関心3.12、易刺激性3.0、妄想2.63の順だった。NPI-Dを NPIで割って負担率を検討すると、興奮(0.6)や妄想(0.56)が負担になりやすく、多幸 (0.12)や無関心(0.3)は負担になりにくかった。 【考察】BPSDはMCIの段階からみられ、進行とともにBPSDが強まり、介護負担が増大 する傾向が示された。興奮や妄想は介護者の負担になりやすく、認知症疾患医療センター ではこれらのBPSDへの適切な対応を用意する必要がある。
著者
藤井 信忠 高井 剛 貝原 俊也 菅原 貴弘
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.2G5OS25b6, 2015

<p>SNSの普及により,SNS上での情報伝播の速さに起因して誹謗中傷などが急激に拡散し,いわゆる炎上発生が散見される.企業活動においてもそれらは無視できず,ネガティブ情報の流布が企業イメージを毀損することにも繋がりかねない.本研究では,過去の炎上事例を分析するとともに,エージェントベースシミュレーションによりネガティブ情報拡散防止方策について検討する.</p>
著者
駒谷 和範 上野 晋一 河原 達也 奥乃 博
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.75, pp.59-64, 2003-07-18
参考文献数
12
被引用文献数
7

各ユーザに応じた協調的な応答を行うユーザモデルについて述べ,これを実装した音声対話システムの評価実験について報告する.従来のユーザモデルの研究では,ユーザの知識に重点を置いたものや典型的なユーザを想定したものがあるが,我々はより包括的なユーザモデルを提案する.具体的には,システムに対する習熟度,ドメインに関する知識レベル,性急度の3つの次元を定義する。これらのモデルは,決定木学習により自動的に得ることができる.実際の対話データを用いたユーザモデルの判別実験では,3つの次元それぞれに対して妥当な判別制度を得た.これらのユーザモデルに基づく対話戦略を,我々の研究室で開発している京都市バス運行情報案内システムに実装した.評価実験により,各ユーザに適応した協調的応答が,熟練したユーザに対する対話時間を増加させることなく,初心者に対して適切なガイダンスとなることが示された.We address appropriate user modeling in order to generate cooperative responses to each user in spoken dialogue systems. Unlike previous studies that focus on user's knowledge or typical kinds of users, the user model we propose is more comprehensive. Specifically, we set up three dimensions of user models: skill level to the system, knowledge level on the target domain and the degree of hastiness. Moreover, the models are automatically derived by decision tree learning using real dialogue data collected by the system. We obtained reasonable classification accuracy for all dimensions. Dialogue strategies based on the user modeling are implemented in Kyoto city bus information system that has been developed at our laboratory. Experimental evaluation shows that the cooperative responses adaptive to individual users serve as good guidance for novice users without increasing the dialogue duration for skilled users.
著者
藤賀 雅人
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.82, no.732, pp.443-450, 2017 (Released:2017-02-28)
参考文献数
19
被引用文献数
1

This paper analyzed characteristics of deliberation process draft of land law and amendment of urban planning law made by War Damage Reconstruction Institute after the World War II. In the immediate postwar period, engineering officers recognized necessity of the law about land in the city. They have begun to consider land law while studying related laws and regulations. This land law was considered from 2 ways of thinking one of the meaning as the method of multidiscipline urban planning including urban planning law and land readjustment act and the other meaning as the expansion type of the land readjustment act. As a result of examination, engineering officers made land law and bill to amend the urban planning law set up the new zoning for deliberate development and strengthened compelling force for the land rearrangement. After completion draft of land law and amendment of urban planning law, Ryoichiro Tsurumi examined proposals for changes. This draft was considered the land use planning divided in time.
著者
淺田 英直 和田 光雄 古澤 敏雄
出版者
炭素材料学会
雑誌
炭素 (ISSN:03715345)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.104-117, 1954-10-01 (Released:2010-06-28)
参考文献数
34
著者
八島 正明・水谷 高彰
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.115-119, 2010-04-15 (Released:2016-09-30)
参考文献数
8

その2 では,原因究明のために行った発熱開始温度測定,最低着火温度(くすぶり温度)測定,模擬着火実験,部材の軟化する温度測定等を述べた.現場から採取した試料との吸発熱挙動の比較のため,食品の代表的な油脂成分であるパルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,リノール酸を使用した.DSC 測定による発熱開始温度は,現場採取試料170℃,パルミチン酸223℃,オレイン酸186℃,そしてリノール酸125℃であった.リノール酸の値が際立って低いことがわかった.おがくずを5 から50 mm まで堆積させ,くすぶり温度を測定した結果,着火温度が330 から240℃に低くなることがわかった.