著者
柴田 政彦 渡邉 嘉之 寒 重之 西上 智彦 植松 弘進 宮内 哲 壬生 彰 大迫 正一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

身体部位(手)のメンタルローテーション課題を用いた心理物理学的実験では,上肢CRPS患者8名と健康成人40名のデータを取得した。両群の正答率および反応時間を比較した結果,健常者に比べCRPS患者で有意な正答率の低下と反応時間の遅延を認めた。健康成人のデータについては,これまで検討されてこなかった回転角度の増加に対する反応時間の変化にばらつきがあることに着目して統計学的解析を行った結果,4つのグループに分類することができ,「手の左右判別課題時には自身の手を動かす運動イメージを行っている」とする先行研究の結論とは異なる回答方略をとるものが存在することを明らかにした。
著者
前多 敬一郎 平林 真澄 井上 直子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

ヒトのモデルとして有用な実験動物であるスンクスでは、これまで初期胚操作技術が確立されていなかった。本研究において、スンクスの受精卵採取、偽妊娠誘起ならびに胚移植の確立に成功し、マイクロインジェクション法によりVenus遺伝子をスンクス前核期胚に導入したところ産子を得ることに成功した。Venus遺伝子を発現する個体は未だ得られていないが、今後例数を重ねることにより遺伝子改変スンクスの作出が期待できる。また哺乳類では、霊長類とスンクスでのみ存在が確認されているGnRH2遺伝子を標的とした遺伝子改変スンクスの作出を目指し、スンクスGnRH2遺伝子のプロモーター領域を同定した。
著者
濱田 有香
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

平成28年度は2つの研究を行った.研究1では,咀嚼および味覚に伴う口腔刺激が食事誘発性体熱産生(DIT)に与える影響を検討した.実験は2015年度に行い,データ解析を2016年度に行った.普通体重の健常成人男性に,200 mL(200 kcal)の飲料を一口20mLに分け,3通りの飲み方で5分間かけて摂取させた.すなわち,①対照試行:30秒毎に一気に嚥下する試行,②味覚試行:30秒間口に含んでから嚥下する試行(対照試行に味覚刺激が加わる),③咀嚼試行:1秒に1回の頻度で30秒間咀嚼してから嚥下する試行(対照試行に咀嚼と味覚の刺激が加わる)を行わせた.ガス分析装置にて酸素摂取量を食後90分まで測定し,食後90分間の累計のDITを算出した.味覚試行の累計のDITは対照試行と比べて有意に増大し,咀嚼試行の累計のDITはさらに増大した.咀嚼および味覚の両方の口腔刺激によって,DITが増大することが明らかになった.研究2では,食べる速さが食後長時間にわたるDITに及ぼす影響について検討した.実験は2016年度に行った.普通体重の健常成人男性に,734 kcalの食事(スパゲティ,ヨーグルト,オレンジジュース)をできるだけ速く(早食い試行)あるいはできるだけゆっくりよく噛んで(遅食い試行)摂取させた.ガス分析装置にて酸素摂取量を食後7時間まで測定した.遅食い試行のDITは早食い試行よりも食後2時間まで有意に増大した.食後7時間まで早食い試行と遅食い試行のDITの応答は逆転しないことが確認された.食後7時間の累計のDITは早食い試行よりも遅食い試行の方が有意に増大した.研究2の知見は,ゆっくりよく噛んで食べることが肥満を予防するよい習慣であることの裏づけとなろう.研究実施計画のとおりにおおむね順調に実施できた.今後,研究1および研究2について論文を執筆し,学術ジャーナルに投稿する。
著者
森田 章夫
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

「無国籍船舶」に対する規定を置く条約の先例として、海賊問題を中心とする研究が成果となった。特に、普遍的管轄権の根拠が、「海上交通(往来)の一般的安全」の保護であることを精密に実証した。この過程で、この管轄権行使の根拠として、(1)「授権」(authority)不存在要件説、(2)海賊は、いずれの国家の規制にも服さない海の「無法者」ないし「法外者」(outlaw)であることを根拠とする学説があり、前者については、国連海洋法条約上、「私有の船舶」要件の問題であり、後者については、普遍的管轄「権」を規範的には肯定できないことが明かとなった。
著者
清水 一彦
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、(1)アメリカの大学におけるオナーズ・プログラム(honors program)の導入過程及び歴史的発達過程を明らかにするとともに、(2)わが国の大学への導入・実践の可能性及びその諸条件を提言することを目的とした。本研究によって得られた知見は、次のようにまとめられる。1.選択制や単位制度を世界最初に開発したアメリカの大学では、量的システムの弱点を補強するためにオナーズコースを導入し、優秀な学生のための教授内容・方法の改善を図った。2.このオナーズコースは、当初から大学によって多種多様な形態で実践されていたが、その実践形態は大きく次の二つに分類できるものであった。一つは、2〜3の通常のコース(科目)が免除される「不完全タイプ」であり、二つは、大部分のコースが免除されオナーズ試験が課せられる「完全タイプ」である。3.今日多くの大学で実践されているオナーズ・プログラムは、初期の形態とはやや異なり、通常のコースとは別に固有のコースを設けたり、プロジェクト方式のコースを設けたりする大学もみられる。また、ハイスクールと大学のアーティキュレーション(接続)の改善に寄与し、1年次プログラムや下級年次プログラムといった移行の円滑を図るプログラムと結びつける場合もある。4.オナーズ・プログラムの実践は、大学間というより領域や専門分野において著しい差異があり、それぞれの特性に応じた多様な形態が可能である。わが国の場合、飛び入学という特別措置的なシステムの中に類似したものがみられる、入試制度の多様化への対応ではなく、教育プログラムやカリキュラムの編成あるいは教授法の改善の中で導入される必要がある。
著者
小島 道生
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

発達障害者を対象として、自尊感情と主観的幸福感(well-being)に関して、アンケート調査を実施した。その結果、自閉スペクトラム症者27名と同年代の対照群60名との比較を行ったが、自尊感情と主観的幸福感について違いはなかった。ただし、自閉スペクトラム症の学生の主観的幸福感は、社会人に比べて低いことが示唆された。そして、自閉スペクトラム症者と同年代の対照群に共通して自尊感情が高いと主観的幸福感も高くなることが明らかとなった。したがって,自尊感情を高めることが主観的幸福感をも高める可能性があり,自閉スペクトラム症の学生について,特に心理的支援を行っていく必要性があると考えられた。また、青年期ASD者を対象として、自尊感情と主観的幸福感にかかわる影響要因を明らかにするために、面接調査を実施した。その結果、主観的幸福感の測定とともに、幸せに感じている事柄について尋ねた。その結果、回答理由に関して家族関係や友人関係などの対人関係にかかわる言及は少なく、源泉においても定型発達者よりも偏っている可能性が示唆された。また、中学生や高校生においては、友人とのかかわっている時や良い成績をとった時などに主観的幸福感は高まることが示唆された。逆に、他者よりもうまくできないという経験や友達がいないといった孤独感が主観的幸福感を低下させている可能性も明らかとなった。したがって、青年期ASD者も成功・失敗経験と他者との比較、さらには孤独感が主観的幸福感の高低に影響をしていると考えられる。学校教育現場などでは、孤独感を抱かないように他者とつながる支援が求められると言えよう。これら研究成果の一部については、国内や国際学会において発表を行うとともに、学術雑誌に投稿中及び投稿準備中である。
著者
杉本 和弘 大佐古 紀雄 田中 正弘 鳥居 朋子 林 隆之 福留 東土 高森 智嗣 川那部 隆司 高 益民
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、各国の大学質保証における機関レベルの内部質保証システムの構造と機能を国際比較の観点から考察し、我が国の大学が内部質保証システムをいかに再構築し効果的運用すべきかを明らかにするため、(1)先行研究の整理・分析、(2)国内外の大学・質保証機関への訪問調査、(3)教育マネジメントに関する国際セミナーの開催を行った。その結果、大学の内部質保証システムを構築し機能させるために、全学レベルで学位プログラムを中心としたデータに基づく教育開発・教育改善が一体的に機能した質保証システムの整備を進め、さらに学内外にそのプロセスが明示されるようにすることの重要性が明らかとなった。
著者
黄 福涛
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

まず、調査対象の一部の国々では、英語による学位プログラムの実施は最初の時点では、主に研究型大学を中心に進められていた、今日は、一部の地方大学や非伝統大学セクターにおいても、それらの開設が急速に拡大されてきた。次に、国により、英語によるプログラムを提供するには、その背景や、目的、実施方法などについて相当な違いがみられる。最後に、多くの国々において、英語による学位プログラムや授業の実施は多くの問題を抱えている。
著者
齋藤 理一郎 長田 俊人 依光 英樹 町田 友樹 楠 美智子 長汐 晃輔 上野 啓司 塚越 一仁 若林 克法 越野 幹人
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

本新学術領域研究は、「人類史上最も薄い物質」である、一原子層の厚さしかない物質(以下原子層物質)を合成してきました。また合成した非常に薄い物質を使って、消費電力が非常に小さい電子デバイスや、光デバイスの作成と検証を行い、その社会における有用性を実証しました。さらに、異なる原子層物質を積み重ねることによって、今までにない物質(複合原子層物質)を人工的に合成し、超伝導や量子的な性質を持つ、新しい機能材料を開発することに成功いたしました。これらは、国際共同研究基金を用いて国際共同研究を推進することによって、新しい物質の開発を加速いたしました。
著者
岩坂 泰信 張 代洲 小林 史尚 牧 輝弥 柿川 真紀子 洪 天祥
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

タクラマカン砂漠での気球観測では上空に浮遊する黄砂の約10%が微生物と合体していた。黄砂が偏西風帯にまで舞い上がった時点ですでに微生物を付着させている可能性が高い。能登半島での観測は、黄砂濃度上昇時に微生物濃度が上昇し「黄砂とともに大気圏を移動している」ことを強く示唆した。立山山頂付近の積雪の黄砂層の微生物多様性はタクラマカン砂漠のものと高い類似性があり、砂塵発生源地からの長距離移動・拡散を示唆した。
著者
石川 幹人 菊池 聡
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

疑似科学を判定するための科学性の10条件を選定し、実際の項目に適用することでその有効性を確立してきた。また、それを応用した科学コミュニケーションサイト(http://www.sciencecomlabo.jp/)を運営し、その有効性を広く公表している。このサイトは運用1年で、訪問者15万人、50万ページビュー、コメント数500件以上を達成して、定評を確立している。この業績により科学技術社会論学会の実践賞を受賞した。
著者
吉田 雅則 西澤 真樹子 見明 暢 和田 岳
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本申請研究においては当初の目的どおり、博物館や資料館に収蔵されている動物(主に哺乳類)の骨格標本から「手」を題材としてフォトグラメトリーにより3Dデータ化、3Dプリンタによる立体出力を行い、手作業による組み立てを経て正確な交連骨格標本のレプリカを作成する。さらにデザイン関係者やアートの実践者、博物館関係者に向けて広く公開し、様々な意見や活用方法に関するレスポンスを得るなどし、それぞれの専門分野への応用の糸口を探ることを目的としている。当該年度においては、昨年度に確立したクリーンなデータを得る手法や立体出力のノウハウを基盤とし、それを実践。撮影方法やデジタルツールの使用法を工夫しつつさらなる効率化を獲得することができた。また「大阪市立自然史フェスティバル」、「いきもにあ」などの展示イベントへの出展や日本哺乳類学会における自由集会での発表なども行うことができ、デザイン関係者や博物館関係者からの意見を収集するなど、当初の目的に適った発表を行うという点においても順調である。さらに、特定非営利活動法人静岡県自然史博物館ネットワークの協力により、ヘラジカの前肢の骨格を借り受けてスキャンを実現した。前年ながら欠損した部分が数点見つかったため、現在は今後は足りない部分を他の標本から流用したりゼロから仮の形状の制作を行うなどの展開を見込んでいる。また、現在は大阪市立自然史博物館より、カバ、シカ、ゾウの前肢を借り受けてスキャンを行っている。 新たな展開としては微細な動物の拡大模型についても検討中である。
著者
佐方 功幸 西澤 真由美 古野 伸明 渡辺 信元 岡崎 賢二
出版者
久留米大学
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1992

c-mosキナーゼ(Mos)は、細胞分裂抑制因子(CSF)として、脊椎動物の卵成熟を第2減数分裂中期で止める生理活性を有する。一方、Mosは体細胞で発現するとがんをひきおこす。本年度の研究では、MosのCSF活性の発現制御機構、およびMosのがん化活性と細胞周期・細胞内局在性との関係について調べた。1.卵成熟および受精におけるMosのCSF活性の制御機構Mosはツメガエルの卵成熟過程において、代謝的に不安定型から安定型へ、また機能的にも、卵成熟誘起活性からCSF活性へと変換する。40種をこえるMos変異体を用い、Mosの代謝的安定性がMosのN末端の単一のアミノ酸(Pro^2)によって規定されていること(2nd-codon ruleと命名)、CSF活性のためにはPro^2に隣接するSer^3のリン酸化による代謝的安定化が必須であることを示した。また、Mosの代謝が、ユビキチン経路によることをはじめて明らかにし、細胞周期制御におけるユビキチン系の重要性を指摘した。さらに、受精に際するMosの分解がSer3の脱リン酸化を伴うユビキチン経路によることも明らかにした。2.Mosのがん化活性と細胞周期・細胞内局在性Mosは生理的(卵成熟)には細胞周期上のG_2→M転移で機能し、がん化の際にどの細胞周期の時期で機能するかが問題となっている。そこで、M→G_1期に特異的な分解を受けるサイクリンとMosのキメラ遺伝子を作製しNIH3T3にトランスフェクトすることにより、Mosが細胞をがん化するときにはG_1期での発現が必須であることを明らかにした。この結果は、原がん遺伝子の生理活性とがん化活性の違いを細胞周期上での発現の違いとしてはじめてとらえたものである。さらに、Mosキナーゼの基質が、細胞質から核に移行する物質(たとえば、転写因子等)であることを示した。
著者
近藤 成一 海老澤 衷 稲葉 伸道 本多 博之 柳原 敏昭 高橋 敏子 遠藤 基郎 渡邉 正男 神野 潔 野村 朋弘 金子 拓 西田 友広 遠藤 珠紀 山田 太造 岡本 隆明
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

未刊古文書釈文作成のための協調作業環境を構築することにより、未刊古文書の釈文を歴史学のコミュニティにおいて協同で行うことを提起し、史料編纂のあり方について新たな可能性を模索するとともに、歴史学のコミュニティの実体形成にも寄与する基礎とした。釈文作成のために外部から自由な書き込みを許す部分と、作成された成果を史料編纂所の管理のもとに公開する部分を構築し、前者から後者にデータを選択して移行するシステムを設けた。
著者
住谷 昌彦 井上 隆弥 松田 陽一 精山 明敏 宮内 哲 真下 節 宮内 哲 精山 明敏 井上 隆弥 松田 陽一 眞下 節
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

難治性疼痛疾患の幻肢痛やCRPS を対象に、視覚系と体性感覚系(疼痛系)のcross-modalityについての心理物理研究を行い、疼痛患者の視覚情報認知が障害されていることを明らかにし、さらにその視覚情報認知を修飾することによって疼痛が寛解することを明らかにした(Sumitani M et al. Neurology 2007 ; 68 : 128-33 ; Sumitani M et al. Neurology 2007 ; 68 : 152-4 ; Sumitani M et al. Rheumatology 2008 ; 47 : 1038-43 ; Sumitani M et al. Eur J Pain 2009 in press)。これらの知見はこれまで知られていた難治性疼痛疾患の発症メカニズムに、体性感覚系だけでなく運動系が密接に関連していることを示唆し全く新規の治療への応用展開が期待できるものである。光トポグラフィーに加えfMRI による運動系と体性感覚系(疼痛系)との相互作用についての脳機能画像研究も継続して行い、deep somatic allodynia と呼ばれる運動時痛の発症メカニズムについての知見を得た。
著者
岡本 浩一 杉森 伸吉
出版者
東洋英和女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

東京都と神奈川県に在住する成人を対象に、1500通の調査冊子を発送し、551人から回答を得た。リスク認知については、「恐れ」因子と「未知性」因子の2因子による相関構造が見出され、slovicらによる従来からの知見が認識された。また、社会的信頼感は、一般因子の存在が示唆された。リスク認知の2因子と、社会的価値観の種々のスコアとの相関を調べたところつぎのような結果が得られた。(1)政治的効力感の高い人ほどリスクの恐れが強く、リスクの未知性を高く感じている。(2)平等主義的価値観の強い人ほど、リスクの恐れが強く、逆に、権威主義的価値観の強い人ほどリスクの恐れが低い傾向があった。(3)リスクの統制感スコアの高い人ほど、リスクの未知性を低く感じる傾向があった。(4)社会に対する信頼感の高い人ほど、リスクの恐れぬ傾向があった。(5)社会的価値観のうち、個人主義尺度と政治的態度(進歩的か保守的か)はリスク認知と有意な相関をもっていなかった。(6)従来、リスク認知と相関すると報告されることの多い、神秘的世界観や宗教性はリスク認知と有意に相関していなかった。(7)情報への感受性の尺度のうち、情報認知の高い人がリスクの未知性を低く感じている傾向が有意であったが、情報探索傾向はリスク認知の変数と有意な相関をしていなかった。リスク認知が社会的価値観や社会的信頼感を心理的に投映している可能性を予測した研究であったが、その予測はおおむねデータによって裏付けられたといえよう。
著者
山本 英弘
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究課題では、日本において政治参加が低調である背景に、一般市民の社会運動や政治参加に対する態度があるものと想定し、質問紙調査による国際比較分析を通して検討した。分析の結果、日本では、政治的有効性感覚の低さや公的領域における自己実現的価値の弱さともあいまって、社会運動の代表性や有効性に対する評価が低く、秩序不安感を抱く傾向にある。そして、こうした態度が社会運動への参加に対する許容度とも関連しており、社会運動が受容されない政治文化を形成している。一方で、反グローバリゼーションや脱原発など個別の運動に対しては、政治に対して市民の意思を表出するプロセスとして評価されている側面もみられる。
著者
山本 英弘
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題では、社会運動や市民活動の変容過程を数量的に捉えることによって、変動期における政治社会と市民社会の接点と、それを媒介する市民社会組織の機能について探究した。社会運動のイベント分析では、2002~08年の7年間で、イベント数に明確なトレンドを確認することができなかった。また、一連の分析から、社会運動や市民活動への制度的な参入回路が開かれつつある一方で、政治体外に訴えかけるアウトサイド戦術も行われていることが明らかとなった。