著者
中澤 智惠 余田 翔平
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.171-205, 2014-11-28 (Released:2016-11-15)
参考文献数
185
被引用文献数
4 1
著者
鷲見 みゆき 大泉 宏 三井 翔太 崎山 直夫 鈴木 聡 樽 創
出版者
日本セトロジー研究会
雑誌
日本セトロジー研究 (ISSN:18813445)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.1-7, 2023-11-20 (Released:2023-11-30)

スジイルカStenella coeruleoalbaは,世界中の熱帯から温帯の海域にかけて広く分布するハクジラ亜目に属する小型鯨類である.本研究では,本種の食性解明のための基礎的知見を得ることを目的として,2019年1月から2021年5月までに相模湾の神奈川県沿岸に漂着した10個体の胃内容物を調査した.その結果,6個体の胃から頭足類(カギイカ,ホタルイカモドキなど5科3種)の顎板,魚類(ハダカイワシ,オオクチイワシなど2科3種)の耳石が確認された.魚類・頭足類ともに日周鉛直移動を行う中・深層性の種が主体であったことから,漂着したスジイルカ6個体が索餌のため中・深層まで潜水したか,或いは夜間に表層へ浮上した小型遊泳動物を採餌していたことが示唆された.
著者
池内 龍彦
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.118-129, 2017-03-25 (Released:2021-05-21)

乗物での移動中にもトイレが快適に利用できれば気持ちの良いものである.最近の公共交通機関のトイレはにおいのない快適な空間が求められている.乗物にトイレが付いていれば悦ばれていた時代から,付いているのが当たり前の時代,そして最近では入ってみたくなるような豪華なトイレが付いている乗物も登場してきた.乗物のトイレは,上下水道の完備した住宅用とは環境条件や不特定多数の人が使用するなどの条件が異なるため,独自の歴史をたどった.時代の流れと共に,様々に改良された列車やバスのトイレと排水処理を紹介する.
著者
木田 聖吾 由利 拓真 加藤 早紀子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.647-654, 2023-10-15 (Released:2023-10-15)
参考文献数
12

脳卒中後高次脳機能障害者の復職率は低く,復職支援には課題が残っている.本報告では,回復期リハビリテーション病棟にて脳卒中後高次脳機能障害者を対象として元の職業への復職を目的に模擬的就労訓練と段階的な定着支援を行い,模擬的就労訓練の適応方法と効果,および定着支援の段階付けについて検討した.その結果,脳卒中発症後11ヵ月で時短勤務,12ヵ月でフルタイム勤務にて元の職業へ復職となった.この結果から,回復期リハビリテーション病棟において模擬的就労訓練で実務に近い業務経験を行い,段階的に元の職場での定着支援を行うことが復職支援として有効である可能性が示唆された.
著者
長瀬 勝彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.16-26, 2008-06-20 (Released:2022-08-19)
参考文献数
24
被引用文献数
1

人間の意識は理性的な意思決定を志向するが,人間の意思決定の主役は無意識であり,無意識からのシグナルが感情となって意識に押し寄せてくる.ある種の意思決定に関して感情には理性を上回る合理性があるが,意識は無意識を適切に解釈できず,感情を非合理的とみなしてしまう.意識によって感情を否定するのでなく,感情を理解し感情と折り合いをつけることで,より生産的な意思決定が可能となる.
著者
川合 泰代
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.188-198, 2016-09-30 (Released:2016-10-11)
参考文献数
3

現在の日本の地理学は,近代以降の欧米思想の導入に基づき成り立っている.一方,それ以前の日本では,中国に源を発する思想が,日本の思想や文化の根幹を形成していた.それは,「道」の思想であり,陰陽五行の思想である.近世までの日本人の聖地信仰も,この思想に基づいていたと考えられる.本稿ではまず,「道」や陰陽五行の思想と,陰陽五行に基づく干支の意味を説明した.そして,干支を用いた時間と空間の概念を説明した.その後,近世江戸の富士講による富士信仰を,庚申という干支を用いて読み解いた.本稿は,近世までの日本人が生きていた時間・空間感覚の再考を提案するものである.
著者
内藤 誠人 十塚 響 小澤 丈夫
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.88, no.814, pp.3426-3436, 2023-12-01 (Released:2023-12-01)
参考文献数
32

The aim of this study is to clarify the transition of the editorial policy and some aspects of the contents of “VOLUME”, launched in 2005 as a platform for international architectural discourse in the Netherlands, founded by O. Bowman, R. Koolhaas and M. Wigley. First, the history of this magazine from its first issue in 1929 to “VOLUME” is summarized. Next, the editorial policy is summarized, and 59 issue are divided into six periods according to the differences in them. In addition, the writing of the editorial and the articles contributed by the co-founders reveal differences in their editorial involvement.
著者
Yoichi Sugiyama Noriaki Moriyama Hirokazu Miyashita Hiroaki Yokoyama Tomoki Ochiai Koki Shishido Mikko Jalanko Futoshi Yamanaka Tommi Vähäsilta Mika Laine Shigeru Saito
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-23-0593, (Released:2023-11-28)
参考文献数
23
被引用文献数
1

Background: Transcatheter aortic valve implantation (TAVI) is an established treatment for severe aortic stenosis (AS), but despite estimates of life expectancy after TAVI being essential in heart team discussion, these data are scarce. Therefore, the current study sought to assess long-term survival and its trends in relation to chronological age, surgical risk, and treatment period.Methods and Results: We included 2,414 consecutive patients who underwent TAVI for severe symptomatic AS between 2008 and 2021 at 2 international centers. For the analysis, long-term survival was evaluated according to age, surgical risk, and treatment period categorized into 3 groups, respectively. The longest follow-up was 13.5 years. Overall survival was 67.6% at 5 years and 26.9% at 10 years. Younger patients, lower surgical risk, and later treatment period showed better survival (log-rank P<0.001, respectively). In the multivariate analysis, age <75years, lower surgical risk, and later time period were significantly associated with better survival. The incidence of paravalvular leakage ≥moderate, red blood cell transfusion, and acute kidney injury were independently associated with increasing risk of 5-year death.Conclusions: In a real-world registry, survival was substantial following TAVI, especially in younger and lower surgical-risk patients, with improving outcomes over time. This should be considered in heart team discussions of life-long management for AS patients after TAVI.
著者
中島 憲一郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.783-799, 2008 (Released:2008-11-17)
参考文献数
106
被引用文献数
5 6

薬物の乱用は世界中で大きな社会問題を引き起こしている.乱用によるリスクから人々の健康を予防し,守るためには乱用薬物の分析法の開発と応用が重要である.一方,薬物の摂取を証明するには,血液や尿などの生体試料の分析が不可欠であるが,その中で,毛髪は長期にわたる摂取情報を知ることのできる貴重な試料といえる.毛髪分析の歴史は比較的新しいが,分析機器の発展に伴って,実用的で有用な分析法が開発されるようになり,現在では法中毒学あるいは臨床化学などの分野で大いに利用されるようになっている.本総説では,毛髪分析の歴史,意義などを解説するとともに,最近の分析例を紹介する.
著者
小倉 健太郎
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.5-26, 2021-01-25 (Released:2021-02-25)
参考文献数
19

日本のアニメを論じる際に、しばしば強調されてきたのが平面性だ。アニメの平面性を強調する議論は枚挙にいとまがない。こうした議論では、アニメの平面性はときに日本の伝統美術と結び付けられ、日本固有の性質とされる。日本文化研究者のトーマス・ラマールはこうした議論と距離を置きながらも、やはりアニメの平面性に着目している。彼はセル・アニメーション制作に用いられる撮影台に特有の多平面を層状に合成する構造を「アニメ・マシーン」とし、アニメ・マシーンによって生み出される運動を「アニメティズム」としている。アニメティズムという概念は、とりわけ美学的にアニメを分析する際にはしばしば言及される概念となっている。しかし、彼がアニメティズムの例として挙げる大友克洋監督の『スチームボーイ』(2004)は、じつのところアニメ・マシーンとは異なる構造によって生み出されている。こうした構造の先行例としてはフライシャー・スタジオが用いた回転式撮影台を挙げることができる。本論は、回転式撮影台の構造が作り出す独自の映像をフライシャー的空間と定義し、それが日本のアニメにも現れていると主張する。フライシャー的空間は、アニメ・マシーンという議論に欠けているものを浮き彫りにする。平面性に囚われないアニメの可能性がそこには表れているのだ。
著者
堀川 宗一郎
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.34-18, 2015-10-01 (Released:2017-07-28)

これまで、芸術的要素を含む写本資料においては、多くの表記研究が為されてきた。その一方で、消息・文書といった実用的な資料を対象とした表記研究は、あまり蓄積されてこなかったように思われる。そこで、鎌倉遺文所収の仮名文書を採り上げ、「とん」の表記に着目し、実用的な書記実態の一端を明らかにする。鎌倉遺文における「ん」は、撥音・促音の表記の他、モの異体字としても使用される。「ん」がモの異体字として使用されるのは、「とん」という文字連続に限定され、必ず連綿で表記されることで、「ん」がモの異体字だと判読できる。また、連綿で表記された「とん」という文字連続は、必ずしも語や文節など意味とは対応しない。これを「固定的連綿」と呼ぶ。「固定的連綿」は「とん」以外の文字連続にも認められ、書記者の居住地域や性別・身分に左右されない、鎌倉時代における書記法の一つと捉えられる。
著者
宅間 雅哉
出版者
山梨英和学院 山梨英和大学
雑誌
山梨英和大学紀要 (ISSN:1348575X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.A9-A40, 2011 (Released:2020-07-20)

古英語hamm はイングランドの地名を構成する重要な要素の一つで,「囲い地」「河畔の低地草地」「突起地形」「河川の湾曲部」「島状・谷状地形」を意味する.この古語に由来する地名は,通常語末の綴りが-hamとなり,大半がイングランド南部,とりわけ南東部と南西部に多く分布する.ただ多義的であるが故に,hammがいかなる意味で語源に関与するかによって,これらの地名は異なる分布状況を見せる.また初期には「河川の湾曲部」「河畔の低地草地」の意味で関与する場合が多いが,最盛期には「囲い地」の意味で関与するものが過半数を占める.文献初出年の新旧によって分布の推移を追跡すると,まず南東部に最初の分布が見られ,続いて中西部,中東部,南西部の順で分布域が拡大する.この推移は,『アングロサクソン年代記』に記されたウェセックス王国の版図拡大史にほぼ一致する.
著者
鎗野 真吾 田口 志麻 西本 幸夫 中川 智晴
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.60-62, 2015-02-28 (Released:2015-02-28)
参考文献数
9
被引用文献数
1

アナフィラキシー患者の一部は,アドレナリン自己注射製剤(エピペン®)(以下,エピペン)を所持している。しかし,エピペンの使用状況は明らかでない。今回,救急隊員と母親の連携でエピペンを使用した小児症例を経験した。症例:13歳男性。外出先で菓子摂食後,呼吸困難と紅斑が出現し,帰宅後に母親が救急要請した。救急隊到着前に母親がエピペンを注射しようとしたが,患児は注射に対する恐怖があり,母親では実施できなかった。救急隊到着時,患児は意識清明で自力歩行可能であったが,呼吸困難を訴え,喘鳴と全身紅斑を認めた。救急車内収容後,救急隊員が母親とともに患児に説明し,同意を得て母親がエピペンを注射し,救急搬送した。病院到着前に症状は軽快した。本症例は,患児がエピペン注射を拒んだものの,救急隊員と母親との連携により注射を実施でき,奏功した例である。