著者
西原 利治 大西 三朗
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.541-545, 2003-11-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
24
被引用文献数
1
著者
土居 忠 田中 信悟 佐藤 康裕 太田 英敏 南 伸弥 藤見 章仁 蟹澤 祐司 田村 文人 平川 昌宏 小野 薫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.501-507, 2010 (Released:2010-10-07)
参考文献数
19
被引用文献数
3 3

脂肪性肝疾患(FLD)の発生に及ぼすアルコール摂取の影響には不明な点が残されている.今回我々は2008年1月から12月までに腹部超音波検査を含む健康診断を受診した3185名を対象に脂肪肝の頻度に対するアルコール摂取の影響を多重ロジスティック回帰分析により解析した.内臓脂肪性肥満,空腹時高血糖,脂質異常症はいずれも脂肪肝頻度の増加と関連していた.1日アルコール摂取量20 g未満(少量飲酒群),20 g以上から40 g未満(軽度飲酒群)および40 g以上から60 g未満(中等度飲酒群)では脂肪肝のオッズ比は有意に低下した.男女別に飲酒の影響を検討したところ,男性では軽度飲酒群から中等度飲酒群におけるFLDの調整オッズ比は非飲酒群および1日アルコール摂取量60 g以上の多量飲酒群より低かった.一方,女性ではアルコール摂取の影響は明らかでなかった.以上の結果からFLDに及ぼす飲酒の影響には性差があり,男性では軽度ないし中等度までのアルコール摂取は過栄養性FLDの発生を抑制する可能性が示唆された.
著者
大塚 淳司 千布 裕
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.98, no.2, pp.184-187, 2001 (Released:2008-02-26)
参考文献数
10

症例は21歳女性.98年5月,食欲不振,悪心・嘔吐出現.4日後,40°C台の発熱,過換気,意識障害出現.Reye症候群を疑い,血漿交換,ステロイド投与を行ったが,入院後第5病日死亡した.肝臓necropsyにて中心核性脂肪肝の所見を認め,Reye症候群と診断した,Reye症候群は大部分が2歳以下に発症し,成人発症はまれである.今回我々は成人Reye症候群の1例を経験したため,文献的考察を加え報告する.
著者
小野寺 博義 鵜飼 克明 岩崎 隆雄 渋谷 大助 松井 昭義 小野 博美 町田 紀子 阿部 寿恵
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.211-214, 2000-11-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
31
被引用文献数
6

1991年度から1998年度までの宮城県対がん協会の腹部超音波検査を併用した成人病健診(現在はがん・生活習慣病検診)受診者を対象として,脂肪肝の頻度およびBMIと血液生化学検査結果の変化を検討した。脂肪肝の頻度は16.6%から32.6%と7年間で2倍となった。総コレステロール,中性脂肪も有意に上昇しているのが確認された。生活習慣指導に役立つ事後指導システムの開発が急務である。
著者
小野寺 博義 岩崎 隆雄 渋谷 大助 松井 昭義 小野 博美 町田 紀子 阿部 寿恵
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.157-161, 2001-08-31 (Released:2012-08-27)
参考文献数
7
被引用文献数
3

1996年度健診受診者2,396人中744人(31.1%)が超音波検査で脂肪肝と診断された。この744人全員が1999年度も脂肪肝と診断された。この中の12.0%の人でBMIが1.1以上減少しており,脂肪肝と診断されたことで肥満を改善しようという努力が感じられた。ALT,総コレステロール,中性脂肪でも異常値が改善・正常化している受診者が多くみられた。健康的行動変容の存在が示唆された。
著者
鈴木 康裕 田邉 裕基 船越 香苗 塩見 耕平 石川 公久 江口 清
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】バランスとは支持基底面内に重心を投影するために必要な平衡にかかわる機能がその重要な要素の一つと考えられており,定量的なバランス能力や姿勢の安定性の評価には重心(足圧中心)動揺計を用いた測定(以下重心動揺検査)が多用されている。望月らは重心動揺検査を用いた評価として,身体の揺らぎの程度を表す重心動揺の大きさ,および一定の支持基底面内で重心線を随意的に動かせる程度である安定域の大きさの2つの変数に着目し姿勢安定度評価指標(Index of Postural Stability:以下IPS)を考案しその有用性を提唱している。IPSは,重心動揺測定値を多角的に組み合わせることで,より臨床的なバランス能力の評価といえる。一方IPSは,評価自体の難易度は高くなく広い対象者に行える長所はあるが,潜在的な軽度のバランス不良の抽出には難しい側面もある。そこで我々は,従来から用いられているIPSに加え閉眼および軟面での立位環境面からもバランスタスクをかけ,難易度を上げた筑波大式修正IPS(以下修正IPS)を考案した。本研究の目的は,修正IPSの信頼性を確認し,またその有用性を従来から用いられているIPSとの比較を行うことで検討することである。【方法】対象は健常者52名(男性29名,女性23名,年齢26.6±5.9歳),測定には重心動揺計(アニマ社製グラビコーダGS-10)およびバランスパッド・エリート(エアレックス社製:横47cm×縦38cm,厚さ6cm:以下軟面)を用いて行った。本研究の一連の検査手順を被験者に対して,以下の通り行った。①両側でそれぞれ閉眼片足立ち検査を2回実施し,長い時間を代表値とする。②十分な休息を与えた後に,通常の重心動揺計の検査台上にて,IPSを行う。③一度検査台から降ろし,検査台上に軟面をセットする。被検者に十分な休息を与えた後に,検査台上の軟面上にて閉眼・直立させ修正IPSを行う。それぞれの計測は初回1回のみとする。④日時を変え,①②③同様の検査を実施する。閉眼片足立ち検査を行うことで,どちらか片側が10秒未満である場合をバランス不良とし,それ以外をバランス非不良と定義し,2群に分類した。IPSは,望月による報告に則り実施した。修正IPSの測定方法については,望月による報告に準じて実施した。通常の重心動揺検査の検査台の上に軟面を敷き,被検者の立ち位置については,足底内側を平行に10cm離した軽度開脚立位の足位とした。被検者には測定内容を説明し,測定台上で前後・左右への重心移動を行わせ,足底の要領を得た後に測定を開始した。統計解析は,修正IPSの信頼性について級内相関係数ICC(1.1)を用いて算出した。また修正IPSの有用性を確認するため,バランス非不良群と不良群をIPSおよび修正IPSの2指標にてMann-Whitney U検定を用いて比較を行い,検討を行った。同様に両群の属性についても検定を用いて比較を行った。使用統計ソフトはSPSS(ver21)を用い,全ての統計的有意判定基準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】対象者には,研究の内容と目的を説明し,同意を得た後に測定を実施した。【結果】修正IPSの測定値は1回目0.77±0.38,2回目0.84±0.17であり,ICC(1.1)は0.619であった。バランス非不良群(39名)と不良群(13名)両群の属性に有意な差は認められず,両群のバランス能力の比較ではIPSでは有意な差を示さなかったが(2.13±0.19vs2.01±0.19,p=0.062),修正IPSでは有意な差を示した(0.82±0.17vs0.66±0.19,p=0.007)。【考察】今回の結果において,修正IPSはICC(1.1)=0.619と中等度の信頼性が認められ,臨床応用は可能と考えられた。また修正IPSは,従来のIPSでは困難であったバランス不良を抽出できる可能性が示された。直立姿勢における身体の平衡は,視覚・前庭・下肢の体性感覚からの入力が中枢神経系で処理され,四肢体幹の骨格筋に出力されることで維持される。本研究の対象は,前庭感覚に問題のない若年健常者であり,閉眼・軟面上での立位では視覚情報が遮断され下肢の深部知覚からの入力が制限されてしまうため,バランスを維持するため僅かな深部知覚からの情報に依存した可能性がある。さらに修正IPSは,随意的に最大限に重心を移動するタスクがかけられるため,さらに鋭敏な深部知覚を必要とする。これらのことから若年健常者を対象とした本研究の結果として,IPSでは現れず修正IPSに反映されたバランス能力の差は,深部知覚の感度差が鋭敏に反映された可能性が考えられた。【理学療法学研究としての意義】修正IPSは一定の信頼性を認め,また従来のIPSでは困難であったバランス不良を抽出できる可能性が示された。修正IPSは有効なバランス評価の方法になりうると考えられた。

1 0 0 0 OA 宗教論

著者
福地桜痴 (源一郎) 著
出版者
干河岸貫一
巻号頁・発行日
1883
著者
馮 競舸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100243, 2017 (Released:2017-05-03)

1.はじめに 近年、遠隔操作により無人で空中を進むことができるドローン(Drone)に注目が集まっている。従来ドローンは軍事用、農薬散布等の産業向けに使われていたが、近年の技術革新に伴い、商用物流ドローンの活躍にも関心が高まっている。 本研究では、現代都市地域の特徴と自然農村の特徴を兼ね備え、日本の先進技術を代表するつくば市を事例に、地理学の視点から、GISを援用した土地利用解析手法を用い、商用物流ドローンの配達航路と飛行リスクを解析する。 2.方法 本研究では、商用物流ドローンを配達する際に、飛行の安全及び離着陸に影響する因子を対象として、「飛行禁止空域」及び「離着陸禁止地域」を導出する。ユークリッド距離とラスタ演算解析により、因子の影響力を推定し、つくば市における飛行リスクコストを導く。新たな最小コストパス解析方法を導入して、配達状況と目的に応じて、多様な飛行航路モデルを構築する。 3.分析 「飛行禁止空域」と「離着陸禁止地域」に関する分析では、因子の影響範囲の面積が全体面積に占める割合を算出し、因子影響力を評価した。 研究対象地域の面積約293k㎡のうち「飛行禁止空域」が約79.6k㎡、「離着陸禁止地域」が約167.4k㎡を占める。特に、都市地域では、人口が集中しているため、「飛行禁止空域」と「離着陸禁止地域」が複雑に分布する。 飛行空域のリスクを求める際に、従来の一般的リスクコスト研究ではなく、本研究ではユークリッド距離を飛行リスクとして解析することで直感的に飛行リスクを地図化することが可能になる。計算も容易である。 ラスタ演算で影響因子を統合した「飛行空域のリスク分布」から、人口集中地域では飛行リスクが高いことが明らかになった。この分布をコスト評価モデルに適用し、コストパス解析手法を通して、商用物流ドローン配達航路の解析に応用した。そして、実用化に向けて実際の荷物を配達する際に発生する様々な状況を予測し、異なる目的と場面の配達航路をモデル化した。本研究では、特に緊急医療運送を対象に、コリドー解析手法による配達圏の解析を行った。 最後に、構築したモデルの有効性を実証するためにシミュレーション分析を行った。その際、最もリスクが高いと見られる都市中心部の人口集中地域において、複数の安全飛行航路をランダムに設定し、衝突が発生する状況を検証した。その結果、すべて安全航路で衝突が発生せず、本研究の有効性が実証された。 4.結論 本研究では、商用物流ドローンの配達において、「離陸」から「飛行」、続いて「着陸」、又は「帰着」のプロセル全体を視野に入れ、リスク分析による独自の航路解析モデルを考案した。 本研究で構築したモデルでは、他の地域においても応用が可能である。また、専用のプログラム構築により、自動的に飛行航路を計算することもできる。 商用物流ドローンの実用化に向けて、地域と配達の安全を守ることにより、商用物流ドローンに対する規制について検討することが重要である。
著者
鎌田 佳宏 三善 英知 竹原 徹郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.111, no.1, pp.25-34, 2014 (Released:2014-01-05)
参考文献数
42

NAFLDからNASHを鑑別診断するには肝生検が必要であるが,わが国に約1000万人いるNAFLD患者すべてに行うことは困難である.最近,非侵襲的なNASH診断法としてさまざまな血液マーカーを用いたスコアリングシステム,最新の画像診断法であるエラストグラフィーやControlled Attenuation Parameter(CAP)が用いられるようになってきた.また単一の血液マーカーとしてサイトケラチン18断片の有用性が報告されている.われわれは最近糖鎖マーカーを用いた新規NASH診断の血液バイオマーカーを発見した.これら非侵襲的診断法は肝生検に取って代わる新しいNASH診断法となることが期待される.
著者
谷村 顕雄 秦 邦男 竹下 隆三
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.652-655, 1964-07-25 (Released:2010-02-19)
参考文献数
11

Analysis was made on the composition of torula yeast, prepared from sulfite pulp waste liquor, using Torulopsis utilis, in order to elucidate the factor accelerating animal growth. Ethanol extract of torula yeast was fractionated and examination was made on several crystalline substances obtained. Besides D-galactose, ergosterol, and myristic acid, 1, 2, 3, 5, 6-penta-O-acetyl-α-D-galactofuranose was obtained in 0.11% yield. This is the first example of its presence in a natural product and it is interesting that a substance with so many acetyl groups had been found in nature.
著者
多田 稔 高木 馨 川久保 和道 白田 龍之介 石垣 和祥 武田 剛志 藤原 弘明 梅舟 仰胤 齋藤 圭 斎藤 友隆 渡邉 健雄 秋山 大 内野 里枝 岸川 孝弘 高原 楠昊 高橋 良太 山本 恵介 濱田 毅 水野 卓 宮林 弘至 毛利 大 松原 三郎 木暮 宏史 中井 陽介 山本 夏代 佐々木 隆 笹平 直樹 平野 賢二 伊地知 秀明 立石 敬介 伊佐山 浩通 小池 和彦
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.8, pp.1474-1478, 2015-08-05 (Released:2015-08-05)
参考文献数
15

IPMN,膵嚢胞は,膵癌高危険群の中で最も効率のよい指標である.IPMNは進行が緩徐で比較的予後のよいIPMN由来浸潤癌がよく知られているが,予後不良の通常型膵癌の発生もともなう.最適な経過観察方法は定まっていないが,EUSがいずれの発癌形態にも最も感度のよい検査方法である.ただし,スクリーニングのための最適な検査方法については検討事項である.
著者
正宗 淳 濱田 晋 下瀬川 徹
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.8, pp.1464-1473, 2015-08-05 (Released:2015-08-05)
参考文献数
44

慢性膵炎が膵癌のリスクファクターであることは,疫学研究により確立されている.メタ解析によると,慢性膵炎の膵癌リスクは一般人口に比べて13.3倍,慢性膵炎の診断2年以内の膵癌症例を除いた場合でも5.8倍とされる.特に遺伝性膵炎では69倍と非常に高い.発癌メカニズムとしてK-ras変異の重要性や間質細胞との相互作用,細胞老化(senescence)回避機構の関与が明らかとなりつつある.一方,実臨床において慢性膵炎に合併した膵癌を早期発見することは容易ではない.慢性膵炎に合併した膵癌に特異的な所見はなく,断酒や禁煙などによる炎症のコントロールが,膵癌予防という点からも重要である.
著者
加藤 直子 国分 一郎 金子 史男 大河原 章 目黒 高志
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.794-800, 1987-10-01 (Released:2012-03-10)
参考文献数
9

Disseminated DLEとして発症し, SLEへの移行を示し急性膵炎を併発した1例を報告した。患者は41才女子, プレドニソロン60mg投与で加療中, 心窩部痛後, 急激な左腹部痛が出現した。検査上, 血清および尿アミラーゼの上昇がみられ, 腹部エコーおよびCTにより膵臓の腫大と腹腔内の浸出液を認めたことから急性膵炎と診断した。ただちに膵床ドレナージ術を施行したが回復せず死亡した。剖検所見から急性出血性膵炎, 急性多発性胃潰瘍, 肺アスペルギルス症, 肝細胞変性などが確認された。
著者
高林 克日己 末石 真 冨岡 玖夫 今泉 照恵 吉田 尚 杉山 隆夫 木村 亮 井坂 茂夫 島崎 淳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.1579-1585, 1985-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
14
被引用文献数
3 10

全身性エリテマート一デス(SLE)にまれながら間質性膀胱炎を合併することが最近示され,これはlupus cystitis (ループス膀胱炎)と呼ばれている.今までにこのループス膀胱炎の本邦におけるまとまつた報告はなかつたが,われわれは最近4例のループス膀胱炎と思われる症例を経験した.いずれも中年女性で,頻尿などの膀胱症状を訴えて発症し,亜急性に進行して水腎症に至つている.これらの患者はまたいずれにも悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状を合併していた.うち1例はステロイド療法・腎瘻造設術後も腸管運動の低下からイレウスを繰り返し,消化管出血により死亡した. 1例は腎瘻造設後にネフローゼ症候群が出現しSLEと診断された.他の2例はループス膀胱炎と診断後,ステロイド療法により膀胱・消化器症状の改善をみた.本疾患はまれではあるが,膀胱の他消化器症状を合併するなど特有の臨床像をもつたSLEのsubgroupの一つと考えられる.しかし既知の特定の自己抗体との相関は認められなかつた.また1例で消化管粘膜下の血管にimmune depositsを認めたが,膀胱では明らかな血管炎はみられなかつた.この疾患は初期には他覚的所見に乏しく,診断が遅れる傾向があるが,早期治療により症状の改善が期待できることから,膠原病患者の膀胱症状に遭遇した際には,念頭におかなければならない疾患と考えられる.
著者
三木 則尚 PRIHANDANA Gunawansetia PRIHANDANA GunawanSetia PRIHANDANA GUNAWANSETIA
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、ナノ多孔質ポリマーを用い、マイクロデバイスの界面をバイオメディカル用途に適するよう制御することであった。特に、ナノ多孔質ポリマーとしてパリレンならびにフッ素添加ダイアモンドライクカーボン(F-DLC)を、マイクロデバイスとして携帯型人工透析システムのためのマイクロフィルタリングデバイスおよび、脳波検出用フレキシブル針電極を研究対象とした。マイクロフィルタリングデバイスは、ナノ孔を有するポリエーテルサルフォン(PES)膜をフィルタとして用い、透析を行うが、膜表面に血液成分が固着する問題を有していた。これを、PES薄膜をナノ多孔質パリレンならびにF-DLCにより被覆することにより解決した。血液成分の固着による透析性能の低下を実験的に導出し、これをナノ多孔質ポリマーによる表面改質により防止できることを明らかにした。本結果を複数の国際論文誌ならびに国内外の学会において発表した。また、フレキシブル針電極においてはフレキシブルなポリマー上に銀薄膜を成膜するが、銀薄膜とポリマーとの密着性が悪い。そこで、銀薄膜上にナノ多孔質パリレンをコーティングすることで、導電性を有しつつ、刺入などの機械的な負荷に対して銀の剥離を防ぐことができた。また脳波検出に必要とされる10Hz程度の低周波数においてインピーダンス10kΩ以下を実現した。これらの結果を国際論文誌ならびに複数の国内外の学会において発表した。本研究の成果は、マイクロデバイスのバイオメデイカル応用において不可欠な生体適合性の付与手法として、極めて効果的と考えられるナノ多孔質ポリマーの成膜技術を確立、またその効果を実証したものであり、大きな意義を有するものである。
著者
村田 俊明
出版者
摂南大学
雑誌
摂南大学教育学研究 (ISSN:13498118)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.63-76, 2007-01

わが国では、いま道徳意識の低下や社会規範の崩壊が問題になっている。これらの諸現象は必ずしも学校・教師だけの責任ではなく、家庭・地域社会の教育力低下、より広く大人社会や社会的な風潮、あるいは教育政策などの反映である場合が少なくないかもしれない。けれども、学校で道徳教育に携わる教師の責任が全く問われずにすむものでもない。こうした状況に鑑み、将来「道徳」の授業を担当する受講生が、どのような基礎的指導力を身につけておかなければならいかは、教職科目「道徳教育の研究」の課題でもある。本稿では教員をめざす受講学生を対象にした筆者の「道徳教育の研究」の実践を報告する。教職科目の「道徳教育の研究」では、『授業計画』に示すとおり、教職志望をもつ学生が、教員免許法に基づいて修得すべき教職教養として、道徳教育の歴史や子どもの道徳性の発達、さらには『学習指導要領』の内容等について総合的に計画している。受講生は、これらの内容を半期間で習得するのであるが、筆者はより実践的な「学習指導案づくり」を中心とした授業を行う必要を感じ、「道徳」の学習指導案が書けることを「道徳教育の研究」の主要な目標の一つと考えている。なぜなら、学習を構想できなければ、授業はできないからである。特に「道徳」の学習指導案づくりで重要なことは、指導する側の「ねらい」、すなわち「中学生に気づいてほしい、あるいは考えてほしい」ことは何であるかを明らかにし、中学生が「自分とむき合う」道徳の指導とは、どうあればよいかを考えてほしいという点である。