著者
平田 修造
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では液体π共役分子と高分子材料からなる伸縮性のゲル状材料を開発し、この材料を活性層とし、伸縮性陽極と液体陰極からなる太陽電池を作成した。ゲル状材料は通常の固体高分子半導体の1/100以下の弾性率と100倍以上の歪みを示した。このゲル状材料を活性層に用いたデバイスの光電変換効率は非伸縮時には0.01%であった。通常のπ共役高分子とフラーレンからなる固体材料を活性層として用いた太陽電池では20%以上の歪みに対して変換効率が大きく低下した。一方で、本ゲル状材料を用いたデバイスでは、100%の歪みに対して特性の劣化は観測されなかった。
著者
落合 謙太郎 佐藤 聡 近藤 恵太郎
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2010

ブランケットによる燃料トリチウム自己供給技術の確立は核融合炉達成の必須条件であり、技術開発には生成から回収までのトリチウム循環に関する特性の解明が必要である。本研究ではDT中性子源による核融合炉ブランケット増殖材照射実験を実施し、増殖材から回収されたトリチウム量を測定することで、増殖材料からのトリチウム回収性能を明らかにし、核融合炉トリチウム増殖回収技術に必要な工学データの取得と設計課題の解決について貢献することを目的としている。原子力機構FNSでのDT中性子照射によるトリチウム回収実験の測定システムを用いて回収性能の試験を実施した。実験の具体的な手法は、固体増殖ブランケットの最有力中性子増倍材であるベリリウム体系(直径63cm、厚さ45cm)のほぼ中心にステンレス角柱で囲まれたヒーター付のアッセンプリ中にペブル状の増殖材(Li2TiO3)を挿入し、DT中性子源にて照射しながらトリチウム回収量を評価するものである。さらに照射時オンライン回収実験の準備を開始し、リボルバー式のバプラー切換装置を導入し、スイープガスの水分計測定、コールドトラップや酸化銅ベットの調整を行うことで、水形(HTO)ならびにカス形(HTやT2)成分分離で時間分解が可能な回収トリチウム測定システムを構築した。平成23年度は、震災により、原子力機構核融合中性子源(FNS)による照射ができなかったため、次年度の平成24年度に上記のトリチウム回収実験を改めて実施した。増殖材温度300℃と600℃のHTOとHTの分離回収測定から、トリチウム生成量の95%以上を回収できることが解った。また温度によるHTO回収量とHT回収量の違いがあることが明らかとなった。さらに時間分解測定の結果からガス系の回収は照射開始から遅れて回収されることがわかり、生成から回収までの時間が数時間必要であることが明らかとなった。
著者
磯部 友彦 秋山 哲男 佐藤 克志 園田 眞理子 吉田 浩 畑農 鋭矢
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.バリアフリー化のための設備投資を考慮した簡便な経済モデルを構築し、効率性の基準によって最適なバリアフリー化水準を明らかにした。効率性基準で考えた場合でも、およそ半分程度の社会資本をバリアフリー化することが効率的である。2.コンピュータ・シミュレーションの方法により、移動障壁の程度、集団に含まれている高齢者の割合の多寡別に移動時間を計測し、バリアーの移動時間増加に与える効果を測定した。その結果から、政策的にバリアフリー事業を推進するべき程度について、30%が一つの転換点であることがわかった。3.バリアフリー環境整備による影響・効果を一つの土俵上で評価するために、SDモデルを作成し、(1)障害者・高齢者、(2)介助者、(3)商業施設などの事業者、(4)一般市民、(5)行政の各セクターに分けて、その挙動確認のためのシミュレーションを実行した。4.実際の駅前商店街の商店および商店街通りで実態把握調査、利用者実験を実施した。それを元に商店および商店街のユニバーサルデザインに関する整備条件の把握、整備方法の提案、整備に関する費用対効果の検討を行った。5.鉄道駅内での昇降装置の設置が完了した駅で、利用実態調査・利用者に対してアンケート調査を実施した。エレベーターは、高齢者や移動制約者など本当にバリアフリー整備を必要としている人に対する効果が非常に高いこと、エスカレーターは、設置場所や昇降方向によって違いがあるが、一般の利用者には段差解消として効果は高いが、車椅子使用者や視覚障害者にとっては効果はあまりないことがわかった。6.ユニバーサルデザインをめざした新しい交通システムの適用性の研究を行った。過疎地域の公共交通の現状、及び高齢者の特性を踏まえ、ダイヤの最適化を図り、ドアツードア性を高めてしかも料金を安くするシステムを考案した。その結果、市民の利用は予約の手間を除いて、概ね好評であった。
著者
藤野 毅
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

2005年から試験堪水が開始された荒川水系中津川の滝沢ダム上流とダム直下を対象に、流下有機物と底生動物群集の構成調査を行った。試験堪水以降、下流域のほうがタクサ数、バイオマスともに豊かであった。バイオマスの増加は主に大型のヒゲナガカワトビケラが早々に定着したことに起因した。底生動物群集の出水後の回復過程を比較すると、ほぼ同時期に同程度の回復が見られた。統計解析(CCA)によっても出現優占種と環境要因との対応関係が明確に示された.
著者
田島 智子
出版者
四天王寺大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、文献と絵画の調査を行った。文献については、主として平安・鎌倉期の歴史資料と文学作品を対象に、絵画に関する記述を抜き出して整理した。絵画については、主として現存する絵巻・屏風絵・障子絵を対象に、屏風歌などの文献の説明と似通う絵を、抜き出して整理した。とくに、絵画を広く調査したことにより、平安期の屏風絵の構図とかなり近いものを見出すことができた。それを参考に絵と歌の関係を再考した結果、たとえば「網代」について、その典型的な光景が、絵と歌の相互作用により形成されていったことを明らかにした。
著者
吉田 祥子 穂積 直裕 福田 敦夫
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

自家開発した酵素光学デバイスにより培養初期のグリア細胞からGABA放出が観察され、一方培養後期のグリア細胞でGABA放出が著しく減弱した。インピーダンス顕微鏡を用い細胞膜直下のアクチン線維の安定性によるインピーダンスの変化を非接触で観察した。抗てんかん薬バルプロ酸の投与は、初期のグリア細胞からのGABA放出を増大し、早いATP放出を示し、プルキンエ細胞樹状突起の伸長を早めた。GABA-トランスポータ系が小脳発達を制御する可能性を示唆した。バルプロ酸の作用機序とHDAC阻害剤の関係は未だ不明だが、胎生期の特定時期での遺伝子発現への介入が、GABA放出と小脳発達に影響することが強く示唆された。
著者
植原 健人 増田 税
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

1)国内のジャガイモシストセンチュウ抵抗性トマトはHeroA遺伝子を保持することが明らかとなった。2)ジャガイモシストセンチュウ抵抗性トマトはタバコシストセンチュウ抵抗性である。3)F1抵抗性品種の分離試験を行った。接種試験で抵抗性と感受性の分離比は3:1と考えられる。すなわち単一優勢遺伝子により支配される。4)マイクロアレイ解析を行った。抵抗性品種にタバコシストを接種して3日目と7日目のアレイ解析で、PR1が誘導されており、典型的なサリチル酸系の誘導抵抗性と考えられた。5)抵抗性品種による線虫密度低減試験を行った。抵抗性品種で土壌中のタバコシストの密度が減少した。
著者
渡辺 美樹
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

王権神話における王と道化の関係を軸にして作り上げられたファンタジー『指輪物語』はファンタジー文学の嚆矢であるばかりかジャンルの支配的なテクストとして存在している。架空の世界を構築するファンタジーのジャンルの特徴として、対立する概念をすり抜ける存在を主人公に持つ必要がある。また特に王権神話にまつわる物語の場合には王権の起源への回帰を果たすことで読者に慰めや郷愁を与えたりするという特徴を持つ。
著者
野村 大成 中島 裕夫 藤堂 剛
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

1.マウス胸腺リンパ球Apoptosisの放射線感受性を決定する優性および劣性遺伝子群:凍結切片を用い微量放射線(0.01-0.5Gy)によるApoptosisを鋭敏に検出する方法を開発した。この方法を用い、中程度の放射線感受性を示すN4系マウスと抵抗系のC3H/HeJマウスとの遺伝交配により、単純にメンデル遺伝する1つの優性遺伝子(Apo-1)があることを証明した。従来のlinkagetestに加え、PCR法を用いた染色体標識遺伝子(マイクロサテライト)による全染色体マッピングを行った。その結果、第4染色体に連鎖を認めた。更に、高感受性のC57BL/6Jマウスと抵抗性C3H/HeJマウスのRecombinant inbred(RI)マウス(BXH)を用い、2つの劣性遺伝子(apo-2,3)を見つけ、マッピングを行い第9染色体Mod-1、第12染色体Ighの近傍に存在することがわかった。2.胸腺リンパ球の集団自決機構:本来、胸腺リンパ球のApoptosisは単一の細胞死によるとされていたが、本法により一定数の細胞が集団で死亡することを判明した。この集団死は、2時間後には観察され、4時間でピークに達する。12時間を過ぎると死細胞は排除され、単一の死細胞が散在して観察されるため、誤解されていたのかもしれない。また、胸腺の器官培養により放射線誘発Apoptosisは、低温処理およびcyclophosphamideで抑制されることがわかった。3.リンパ性白血病との関係:マウスリンパ性白血病発生に関する放射線感受性にも系統差が見られ、Apoptosis高感受性マウス系統は白血病高感受性であることを証明した。しかし、RIマウスを用いて検討したところ、異なる遺伝子によることが判明した。
著者
本行 忠志 野村 大成 青笹 克之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

膿胸関連リンパ腫(PAL)と甲状腺リンパ腫(TL)のp53,K・rasの遺伝子変異をPCR・“Cold SSCP"法,Direct sequencing法にて解析した。TLは、microsatellite instability(MSI)も検討した。PALでは、21症例中14症(67%)にp53遺伝子の変異を認めた。13個の点突然変異のうち12個(92%)にG:C→A:T transition、2個(15%)にCpG siteのtransition,10個(77%)にdipyrimidine siteのtransitionを認めた。これは、PAL以外のリンパ腫や放射能被爆した人に発生した肺癌における変異のパターンと大きく異なっている。K・rasの変異は、3例(14%)で、p53の変異との関連性は見られなかった。TLでは、21症例中2例(9.5%)にp53の変異を認め(codon190.codon272)、K・ras変異は4例(19%)(2例codon12、2例codon13)であった。次に21例のTLに対して16個の異なったmicrosatellite repeatsをPCR法にて解析した。21例のTLは病理学的にdiffuse large B cell lymphoma(DLBL)10例、follicle center lymphoma6例、marginal zone B cell lymphoma of extranodaltype3例、lymphoplasmacytic type2例に分類され、DLBLのみに5例microsatellite instability(MSI)が見られ、他のタイプに対して有意(p<0.05)に高い頻度であった。これら5例中4例(80%)がK・ras遺伝子の変異を伴っており、replication error(RER)とK・ras変異の関連性を示唆した。また、これは、“遺伝的不安定さ"がTLのlow gradeからhigh gradeへのprogressionに関与している可能性を示唆している。PALとTLの遺伝子変異には明らかな違いが見られた。PALではEBV感染(PALは100%)の影響や、長期にわたる治療薬や細菌やウイルスの産物がp53遺伝子に特殊な変異を引き起こした可能性が、TLでは慢性甲状腺炎に加え、EBV感染の影響や、免疫異常によりRERが起こった可能性が考えられる。今後、さらに各リンパ腫に影響を及す因子について追求していきたい。
著者
梁 治子 中島 裕夫 野村 大成
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

電離放射線のヒトへの継世代的遺伝リスクを、人類の通常の被曝形態(低線量・低線量率による被曝)で調べるのが本研究の目的である。チェルノブイリ核施設崩壊による被曝は、人類が放射線曝露を受ける被曝形態そのものである。共同研究者K.G.Yelisseeva博士により被曝者群(ベラルーシ共和国に居住し事故後、除洗作業に携わった父親とその配偶者および子供から構成されている家族)、非被曝者群(同国内の非汚染地区に居住している家族で被曝者の子供と年令、性別をマッチさせた子供をもつ家族)のリンパ球を冷凍保存し、大阪大学医学部放射線基礎医学講座で保存している。遺伝リスクの検出には、マイクロサテライト変異検出系を試みた。リンパ球は約10^7個まで培養増殖させた後DNAを抽出し変異を検出した。最終的に変異検出可能な対象としてのF1子孫は、被曝者群62人、非被曝者群85人である。用いたマイクロサテライトは常染色体由来21、X染色体由来1、Y染色体由来19種である。マイクロサテライト変異頻度(/locus/gamate)は、被曝者群、非被曝者群について、常染色体由来が0.64%(12/1858)と0.80%(19/2362)で統計学的にも差はみとめられない。Y染色体由来については、被曝者群、非被曝者群で、0.44%(3/675)と0.23%(2/835)で被曝者群で変異頻度が高い傾向がみられたが、有意差はない。被曝者群については、父親の精細胞の照射時期から分類すると、F1子孫はspermatogonia期40、post spermatogonia期22人である。両精子期についての、変異頻度はpost spermatogonia期におけるほうが低い頻度であった。
著者
上杉 繁 玉地 雅浩
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

片麻痺患者における動作の不自由さの理解を手助けする教育ツールを目指し,健常者において非侵襲かつ安全に片麻痺患者の擬似体験をするための方法とその活用に関する研究に取り組んだ.特に片麻痺歩行に焦点を当て,多くの患者が体験している,下肢を動かそうとしても動かない,勝手に動いてしまうなどの,感じている・イメージしている下肢の動きと,実際の物理的な下肢の動きとの間に齟齬が生じてしまう体験に着目した.そして,このようなずれを体験させるため,運動錯覚と反射運動を生じさせ,さらには変動する負荷を付与するという方法を考案し,体験ツールを開発した.さらに,歩行動作への影響について調査を行い,装置体験会を実施した.
著者
尾関 宗孝
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

法医実務への応用を目的として、日内変動することが知られている生体時計遺伝子の発現量を測定することにより、死亡時刻が推定できるかどうか検討した。対象遺伝子としてArntl、Clock、Cry、Per2を選択し、6時間ごとに安楽死させたマウス諸臓器より得たmRNAについて、リアルタイムPCRを用いた定量を行った。いくつかの遺伝子は脳や腎臓において死亡時間に依存した異なる変動が認められ、本研究をヒトへ応用することにより有効な方法となりうるものと考えられた。
著者
真鍋 真
出版者
国立科学博物館
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

魚竜の胎児から、幼体、亜成体、成体にかけての個体発生における、大きさと形の変化を数量的に解析した。大きさは、従来から数量解析が行われていたが、形を数量化することが本研究の目的であった。東北大学、北海道大学、神奈川県立生命の星・地球博物館の所蔵の魚竜標本を35mmスライドフィルムで撮影し、本補助金で購入したスライドスキャナーでデジタル画像として取り込み、現有コンピューターで画像処理、計測を行い、統計処理を行った。徳島県立博物館、林原自然科学博物館準備室の標本については、写真の提供を受け、写真をもとに解析を行った。このほかにも、画像取り込みをビデオで行ったり、ドロ-イングスレートを用いる方法を試みたが、現段階では、上述の方法が最適であるという結論に達した。ステノプテリギウス、イクチオサウルス属をもとに得られた2属の相対成長(アロメトリー)データから、コンピューター上で、骨格各部の成長率、成長開始時期、成長停止時期の3変数を変化させることによって、可能な形と大きさの多様性をシミュレーションした。その結果、中性代のいろいろ時期に繁栄した代表的な魚竜10種の形態の多様性は、イクチオサウルスからステノプテリギウスへの相対成長の変数を変化させることによって、創り出せる可能性があることが明らかになった。魚竜の進化をヘテロクロニ-で説明できる可能性が明らかになったわけである。本研究では、3次元(立体)の魚竜化石を、平面に投影することによって、2次元のデータとして扱ったが、3次元から2次元への変換の際の歪みが大きいことから、今後は3次元のままデータ処理を行えるような方法を、ハード、ソフトの両面から研究する必要がある。また、化石化の過程での変形による誤差が、解析の結果に及ぼす影響が大きいことから、変形した化石標本を復元するモデルが必要であることが指摘された。本研究における試行錯誤の結果、仮想の3次元フレームを定義し、それに化石を投影して近似するような方法を開発する必要があると考えられる。
著者
堀越 桃子 高本 偉碩
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

2型糖尿病の主要な原因遺伝子の1つとして同定されているTCF7L2遺伝子のin vivoにおける糖代謝との関連に注目した検討をTcf7l2の機能を膵β細胞で低下させたモデル動物とヒトにおいて解析した。TCF7L2の機能低下型マウスでは野生型に比べて,糖負荷試験におけるインスリン分泌の低下と高血糖を示された。またヒトにおいては糖尿病リスクアリルをホモに持つヒトで、90分血糖値が有意に上昇、120分インスリン値が有意に低下しており、膵β細胞におけるTCF7L2の機能低下はインスリン分泌低下による耐糖能異常を惹起したことが示された。
著者
田中 愛子 丹 佳子
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

第1段階は、健康な成人を対象に、45分の笑いヨガを4回行った。参加者7人の血液検査、POMSテストを分析した結果、NK細胞活性は笑いヨガ前後の有意差はなかったが、POMSテストでは「不安‐緊張」等が有意に減少した。第2段階は、がんの既往歴がある5人の女性を対象に、40分間の笑いヨガを月に2回、全5回実施した。結果、笑いヨガ前後で、NK細胞活性に有意差はなかったが、POMSテストでは緊張-不安」等が有意に減少した。以上より、定期的に笑いヨガを行うことは、精神的な効果が顕著であることが示唆された。
著者
渡辺 智恵 青木 信之
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

英語eラーニングにおける自律的学習者の養成を支援するための「eポートフォリオ」を構築し、その有効性について検証を行った。その結果、統計的には有意な結果ではなかったが、ログイン回数が多く、学習時間が長く、教材消化率の高い受講者、すなわち熱心な受講者はeポートフォリオをより利用する傾向があり、逆に、ログイン回数が少なく、学習時間が短く、教材消化率の低い受講者はあまり利用しないことが明らかになった。
著者
青木 輝夫 本山 秀明 竹内 望 的場 澄人 堀 雅裕 八久保 晶弘 山口 悟 田中 泰宙 岩田 幸良 杉浦 幸之助 兒玉 裕二 藤田 耕史 朽木 勝幸 庭野 匡思 保坂 征宏 橋本 明弘 谷川 朋範 田中 泰宙 植竹 淳 永塚 尚子 杉山 慎 本吉 弘岐 下田 星児 本谷 研
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

グリーンランド氷床上での現地観測から、涵養域ではアルベド低下に対するブラックカーボン(BC)等積雪不純物の寄与は小さく、積雪粒径増加効果の方が大きいことが分かった。また2012年7月の顕著な表面融解には下層雲からの長波放射が効いていた。消耗域では表面の不純物中に微生物が大量に含まれ、アルベド低下へ大きく寄与していた。衛星観測から2000年以降の氷床表面アルベドの低下原因を解析した結果、涵養域では積雪粒径の経年増加が主要因で、消耗域では裸氷域と微生物を含む暗色域の拡大が原因であった。内陸域で深さ223mの氷床コアを掘削し、その解析からBC濃度は1920-30年に現在の数倍程度高いことが分かった。
著者
加藤 雅信 青木 清 太田 勝造 河合 幹雄 野口 裕之 藤本 亮 岡田 幸宏 菅原 郁夫 フット ダニエル
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

多くの法科大学院院生は「進学決意時」の職業希望を法科大学院入学後、教育を受けながらも維持していることがあきらかになった。また、そうした理想は理想として、現実的に予想する際にも約3分の2の院生は理想と現実的予想が一致しており、その一致率は年度を追い、微増する傾向が観察された。本調査が執行された段階では、まだ「弁護士の就職難」といわれる現象はメディアがとりあげるような話題にはなっておらず、現在の院生にこのような調査をした場合にはまた異なった回答がなされるであろう。また、実際に司法修習修了後にどういった職種に就いているのか等の追跡調査が今後求められてくるであろう。抽象度の高い法のイメージについての法意識は短期間では大きく変化しないと考えられる。そのため、多くの項目では経年変化はみられなかった。しかし、二年の間をあけた調査問の比較では、より大きな差がいくつかの項目に観察された。このことは三年間のインテンシヴな法科大学院教育がこうした一般的な法意識、法態度にも影響を及ぼすことを示唆している。法科大学院は大学の枠を越えて多くの他大学出身の院生を受入れており、また、受験生も複数の大学院を受験することが通例である。入学前には受験生は全員が適性試験を受験することが義務づけられ、また大学院終了後も全員が司法試験を受験し、司法修習へと進む。したがって個別大学での調査ではなく、本研究のように大学横断的に法科大学院生のさまざまな状況について調査研究することは重要である。
著者
ハフマン マイケル エー (2009) HUFFMAN M A LECA Jean-Baptiste
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究は計3年度(19~21年度)に渡る計画で、今回の実績概要は最終年度の21年度の8ヶ月に渡って行った研究である。本研究の目的に添って、ニホンザルの文化的行動の一つとして知られている石遊び行動を体系的に霊長類研究所の集団飼育ニホンザル群の個体追跡による詳細による分析や加齢による変化、数量的に行動の学習過程の評価,学習によって伝承される(文化的行動)という仮説を初めて行動実験によって検証出来るデータを採集した。複数の地域におけるSH行動の比較および横断的、実験的アプローチを組み合わせた結果、以下のことが明らかになった:1)ニホンザルのSH行動の総レパートリーは45種のパターンによって構成されていた2)それぞれの群れが持つSH行動レパートリーには変異があり、ある群れで顕著に観察されるSH行動が他の群れでは全く観察されないこともあった3)こうしたSH行動のレパートリーは地理的に近い群れ同士が明確なクラスタを形成しており、文化圏のようなものが観察された4)遺伝的要因と、いくつかの明白な環境要因がこうしたSH行動のレパートリーに影響を与えるという仮説は否定された5)群れサイズと性・年齢構成およびグループの凝集性はSHを行う群れ個体の割合に影響を与えることがあることが示唆された6)社会的要因は文化的行動としてのSHの獲得とその維持において重要な役割を果たす。SHの学習モデルとして幼児が母親の行動を観察することによって起こる直接的な効果と、他個体がSHを行ったことにより1箇所にまとめて石が残され、それが刺激となってSHが始まるという間接的な効果が観察された7)いくつかのグループではSHがすでにtransformation phaseに達していると思われた。ここではSHの行動パターンがより複雑に多様になっており、さらにSHが起こる文脈の拡大が認められた。