著者
畠山 真一 坂本 浩 加藤恒昭 伊藤 たかね
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.1, pp.1-8, 2005-01-11

語彙概念構造 (Lexical Conceptual Strucuture LCS) とは,言語学のフィールドにおいて,少数の意義素により動詞の持つ基本的な意味を捉えるために考案された意味表現のフォーマットである.LCS は言語学のみならず,自然言語処理の分野でもその応用が提案されている.しかし,どのようにして個々の動詞の持つLCS を推定するかという問題については,確固たる手法が確立されているわけではない.実際,現在までに提案されている LCS 推定に用いられるテストには,いくつかの問題が存在する.本稿では,対象変化動詞と接触・打撃動詞という他動詞の2つのカテゴリを区別する手法を提案する.In linguistics, Lexical Conceptual Structure (LCS), whichis constucted from some semantic primitives, is used to represent the meaning of a verb. In addition, LCS is used in Natural Language Processing as a representation format for the verb meaning. However, the problem of how to determine the LCS of a verb is still disputed. In fact, existing tests for determining the LCS of a verb have some shortcomings. In this paper, we pin down the problems with the existing tests for distinguishing a causative verb and a non-affecting verb, and propose a better test for it.
著者
石井 昌幸
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.31-50, 2013

「スポーツマンシップ」という言葉は、ながいあいだスポーツの社会的・教育的価値を示す際に重要な意味を持ってきた。この言葉の近代的語義の成立について従来の研究は、パブリックスクールにおける競技スポーツ熱の高揚により、それまで「狩猟の技量」のような意味であったスポーツマンシップに「競技の倫理」という意味内容が加わり、それが競技の普及とともに一般化したと理解してきた。本研究は、19世紀の新聞・雑誌を大量に収録したデータベースを使用して、スポーツマンシップの語の使用頻度と意味内容を分析することで、そのような従来の理解を再検討したものである。<br> その結果、次のようなことが分かった。この言葉は、1870年代半ば頃から競技スポーツに関して使用される例がいくつか見られるものの、80年代なかばまで依然として狩猟や銃猟に関するものが大多数であり、その意味はなお多様であった。すなわち、19世紀を通じて「スポーツマンであること」を漠然と指す用語であり、それがもちいられる文脈のなかで、「技量・能力」、「資格・身分」、「倫理・規範」などを意味する多義的で曖昧な言葉のままであり続けた。<br> 倫理的ニュアンスがコンスタントに見られるようになるのは1880年代半ばからであるが、その際にそれは、スポーツマンシップの「欠如」を批判する文脈のなかで多く見られた。欠如を指摘されたのは、大部分が労働者階級や外国人・植民地人であった。同じ時代に、スポーツはこれらの人びとにも急速に普及し、ジェントルマン=アマチュアは、彼らに勝てなくなってきていた。労働者階級が参政権を獲得しようとしていたこの時代、ステーツマン(為政者)であることだけでなく、スポーツマンであることも、もはやジェントルマンの特権ではなくなろうとしていた。スポーツマンシップの語義変化は、そのような社会変化を反映したものだったと考えられる。
著者
牟田 和恵
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
no.3, pp.29-41, 2004-05-22

日本において「セクシュアル・ハラスメント」が問題として社会的に浮上したのは1989年のことであった。それは、福岡における裁判の提訴をきっかけとしていたが、まもなく「セクハラ」という略語が登場し人口に膾炙することとなった。その後1999年に、男女雇用機会均等法改正および人事院規則改正により、法制度上の規制対象となった。それと前後して、職場や大学で防止や問題解決のための取り組みが始まり、「セクハラ事件」に関連するメディアの報道も繰り返されて、セクシュアル・ハラスメントは私たちにとって「目新しい」問題ではなくなった。だが、そうした積み重ねにもかかわらず、問題の「解決」は相変わらず容易ではなく、セクシュアル・ハラスメント問題に関する社会的合意の形成に直接にはつながっていない。逆に、さまざまな対策や報道が問題をより紛糾させ「被害」を拡大再生産する可能性をはらんでおり、しかも対策の行われる制度上の限界や、過度に単純化される傾向のある報道のために、被害や問題の取り扱われ方が制限され、ある意味で「矮小化」される傾向を生んでいる。「セクシュアル・ハラスメント」は、このような意味で、「発見」された問題が法や制度に取り入れられる中で変容していく例として非常に興味深く、またそれだけでなく私たちがいかに知恵を結集し、少なくともより良い方向性を見いだしていけるかの試金石でもある。
著者
関根 康正 野村 雅一 小田 亮 鈴木 晋介 和崎 春日 近森 高明 北山 修 南 博文 Teasley Sarah Salzbrunn Monika 阿部 年晴 Gill Thomas 朝日 由実子 村松 彰子 西垣 有 内藤 順子 Subbiah Shanmugampillai 根本 達
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

現代のネオリベラリズムに抗してストリート人類学を確立することが本研究の目的である。そのためにストリート・ウィズダムとローカリティの生成の実態把握を行った。研究成果のキーポイントは、中心からの徹底した一元化としての「ネオリベ的ストリート化」が作り出す敷居(ストリートエッジやローカルエッジ)での創発行動の解明にあり、そこでは「自己が他者化」するという動的過程が必ず見いだされ、それを「根源的ストリート化」と概念化した。エッジを不安定とともに生きている人々は現代人の生の本質を映す鏡である。その状況は「人が生きるとは何か」という哲学的究極の問いを現実的に問う。その探求にストリート人類学の存在意義がある。
著者
田中 宏幸
出版者
JAPANISCHE GESELLSCHAFT FUER GERMANISTIK
雑誌
ドイツ文学 (ISSN:03872831)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.142-150, 1963 (Released:2009-01-30)

Im Deutschen gibt es ziemlich zahlreiche Konsonantenverbindungen, während solche im Japanischen sehr selten sind. Deshalb scheint es nicht nur theoretisch, sondern auch praktisch sehr fruchtbar, deren Typen und Regeln zu untersuchen. An Hand des Duden (Bd. 1, 141958) und Siebs (181961) habe ich hier versucht, einen Abriß mitzuteilen.Im Anlaut des Wortes gibt es etwa 25 zweigliedrige (meistens Geräusch-+Sonorlaut) und nur 3 dreigliedrige Verbindungen (/šp/ špr štr/). Im Auslaut erscheinen über 50 zweigliedrige (meistens Sonor-+Geräuschlaut), etwa 60 dreigliedrige (/KKs, KKt/-Typus) und 25 viergliedriee Verbindungen (/KKst/-Typus). Der stimmhafte Geräuschlaut erscheint im Auslaut weder einzeln noch gruppenweise. Der Inlaut-Typus ist gewöhnlich dem Auslaut-Typus gleich (z.B /lp, rt/) oder ähnlich (z.B. /lb, rd/). Bei dem anderen Typus, der aus dem ersten Quasi-Auslaut-Typus und einem Sonorlaut besteht (z.B. /fn, tm, rtn, ndl/), ist die Silbengrenze vor dem Sonorlaut eindeutig zu finden. Bei den übrigen ist die Silbentrennung aus dem phonotaktischen Gesichtspunkt manchmal etwas willkürlicher.
著者
津曲 敏郎
出版者
北海道大学大学院文学研究科
雑誌
北方言語研究 (ISSN:21857121)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.i-iv, 2011-03-25
著者
堀内 和美
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.11-21, 1993-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

The purpose of this study was to clarify the psychological changes in middle-aged women based on three occupational groups (housewives, nurses and school teachers) from a viewpoint of the Erikson's concept of ego identity (1950). Semi-structured interviews were conducted with 59 women in their 40's: 17 housewives, 23 nurses and 19 teachers. The following results were found. First, ego identity changes were reported to occur in middle-age, and the nature of changes differed among the three groups: 1) housewives intended to get a new identity outside the home, because domestic roles were thought inappropriate as the bases of identity; 2) nurses tended to keep occupational identity built firmly in adolescence, and 3) identity changes among teachers were closely related to the quality of education in the school. Second, the four patterns of ego identity changes were suggested: a) stable home (occupational) identitypersonal identity: b) unstable home (occupational) identity personal identity ; c) stable home (occupational) identityreconfirmation and continuance ; and d) unstable home (occupational) identity unable to change.
著者
安斉 了 和田 隆一 奥田 敏男 青木 仁久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.999-1002, 2002-10
被引用文献数
2 14

わが国における馬伝染性子宮炎の清浄化にPCRの野外応用が効果があるか否かを評価した.1998年から2001年の4年間に,ハイリスク馬検査と疫学調査のために国内の延べ4,026頭のサラブレッド繁殖牝馬および種牡馬から採取された7,534検体の生殖器スワブから,分離培養ならびに直接および培養PCR法によりTaylorella equigenitalisの検出を行った.その結果,PCR法により12頭の繁殖雌馬と1頭の種雄馬からT.equigenitalisが検出された.分離培養法では,その中の2頭からだけT.equigenitalisが分離された.T.equigenitalisが検出された馬は化学療法と外科手術の併用による治療を行ったところ,その後3年間に亘る追跡検査でT.equigenitalisは全く検出されなかった.今回の成績から,PCR法は野外において繁殖用馬の生殖器スワブからT.equigenitalisを検出する方法として分離培養法よりも高感度であることが証明された.さらに,馬伝染性子宮炎の清浄化達成には,PCR検査と治療の組み合わせが有効な手段であることが示唆された.
著者
辻本 恭子 Kyoko Tsujimoto
雑誌
日本文藝研究 (ISSN:02869136)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.47-63, 2004-03-10